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図書館イベントEast End【AS08】関連情報

◆企画イベント「vs日本人!」

 ――こちら、池袋支部。
「はい、はい、いえ、そのようなことは。‥‥はい、ですから――」
「え、超常現象? 世界の破滅、ですか? いえ、わたくし共はそのようなことは断じて――」
「○○新聞社、さん? いえ、当教会ではそのような取材は断っておりまして――」
 大変なことになっていた。
 そこそこ大きな支部である池袋支部の教会は、緊急連絡用を含めて幾つかの電話線が引いてあるのだが、
 鳴る電話。
 鳴る電話。
 鳴る電話。
「「「もう、いい加減にしてくれー!」」」
 御覧の有様だった。
「‥‥どうなってるんですか、これ」
 今回の騒動をうけて、池袋支部にやって来ていたマリア・アンジェリーニ(sz0003)に、池袋支部の神父は些か困り果てた様子で、
「それが‥‥、この間の『あす★らば』という連中が国会でルークス教を批判したことが原因で‥‥、抗議の電話と抗議のメールと抗議の手紙と抗議のハッキングと抗議のピザデリバリーが山のように‥‥」
「ピザデリバリーはただのいたずらじゃ‥‥」
「美味しかったです」
 だから少しおなかがふくよかなのかしら、と、思ったマリアであった。
「まぁ、おかげでこの支部はもう、ほとんど機能してませんよ‥‥。うちだけじゃありませんが‥‥」
 聞けば、東京近郊の主だった教会支部は、同じような調子で一般市民の皆さんの対応に追われているとのことだった。
 困り果てている神父の様子を見て、マリアもまた困った。
 台湾で起きているという異常豪雨の件について、この支部の人々にも協力を仰ごうとしていたのだが、
「‥‥ちょっと、手伝って、もらえませんか?」
 どうやら、本当に協力が必要なのは、彼らのようだった。

■企画イベント「vs日本人!」

 このイベントは史上空前の大攻勢に出た日本人をどうにかすることを目的とした無料参加イベントです。
 PCは行動宣言で5つの選択肢から1つを選び、100文字以内のプレイングを書くことができます。
 このイベントの結果は、後日開始される企画イベント「極東轟嵐」の内容に大きな影響を与えます。
 具体的には、こちらでいい結果が出るほど、「極東轟嵐」で入手できる情報量の上限が増加します。
 行動宣言は、締め切りまでに何度でも行なうことができますが、反映されるのは最新のものとなります。
 ここで受けたストレスや、使用した錬金素材はすべて、聖戦機関が責任をもって治療・補填します。
 参加者の行動は必ずしもリプレイ内で描写されるわけではありません。あらかじめご了承ください。
 また、舞台が日本であるため戦闘行為は厳禁です。SLvはAとなります。
 行動の判断基準となるのは、装備、スキル、魔法va、プレイングです。
 言語スキルについては、職員が通訳しているという扱いとなるため、言語が通じなくても問題はありません。
 なお、各選択肢で最も優秀な働きを見せた1PCには、それぞれささやかながら褒賞が贈られます。
※01月19日追記:次回企画イベントの名称を「極東轟嵐」に変更させていただきました。ご了承ください。

■選択肢

・電話対応
 抗議の電話への対応を行ないます。
・ネット監視
 抗議のメールへの対応と、ハッキングへの対応を行ないます。
・周辺警備
 都内の主だった支部の警備を行ないます。
・対話と説法
 直接抗議にやってきた市民に対して対話や説法を行なって説得します。
・マリアを手伝う
 神父に請われたマリアが、上記4つの対応を行ないます。それを手伝う選択肢です。

■作戦スケジュール

 行動宣言期間:01月16日21:00〜01月18日15:00
 結果公開:01月19日夜頃

■行動宣言はこちら



企画イベント「vs日本人!」関連を記述するカテゴリー。

●やまない電話
「ホアッツユアネイム? パードゥン!? テルザテレフォンナンバ‥‥ファックオフ! 切りゃあがった! スピーク・イングリッシュ・オア・ダイってんだ!」
 レイヴェンス・エーベルト(sq2046)が受話器を叩きつける。すぐさまそれが鳴り出したが、レイヴェンスはコードを引っこ抜いて息の根を止めた。
「さすがに日本語じゃないと‥‥マリア君も呆れてますよ」
「いやむしろ日本語できなくて正解だったかも」
 陸奥 政宗(sa0958)とマリアらは、苦笑して事務所の惨状を見回す――電話にかじりついたSINN達の、疲れた表情よ。
「コーゆのハ良くないゼ? 俺チャーンのファンなーラ、俺チャーンとルクスキョーのトローン会に期待してくれっよナ!」
 アンナリーナ・バーリフェルト(sp9596)は片言の日本語で、アスモデウスの声を真似て対応するという曲芸を発揮し、相手を戸惑わせているし。
「あっ、菜那佳ならもっと上手にあす☆らばのまねっこできるよ!」
 珠坂 菜那佳(so7174)はそれに触発され、喉に手を当てて「あーアー俺様ちゃーん」などとボイスチューニングを始める始末だ。
「‥‥こんな対応で大丈夫なのでしょうか?」
 ソフィア・イェリツァ(sb4811)はいつも以上に儚げな表情で、誰に問うでもなくつぶやくと。
「大丈夫なワケないのです! こういうボケには、ボケ返し! はーいラーメン2つとギョーザ1皿ですねー?」
 御剣 四葉(si5949)もノリノリでこのザマである――酒匂 博信(sh4156)は大慌てで四葉の受話器を剥ぎ取りぺこぺこと無礼を詫びてフォローし、もーカンベンしてよ〜とソファに倒れこむ――彼は、さっきからこんな事ばっかりやっていた。
「いやあ、会社員時代のクレーム処理を思い出しますね」
 川上 誠一(sa0247)がげっそりと言うと、
「スタッフ教育がムチャクチャな点では、それ以上だよー‥‥ベツレヘム星章とナイスボディよ我に力を‥‥!」
 博信はサプリメントをザラザラと飲んで眉間を揉む。
「二人とも過労死しないでくださいね‥‥でもこのままじゃらちが明きません。SNSとかで見掛ける『有明スタッフ名言集』みたいな感じで、ユーモアを利かせた回答を用意出来たら、話題にならないでしょうか? ‥‥もしかすると、電話が増えて、応対が大変になるかもしれないですけど」
 雫石 結氷(sp9763)の発言に、ミラベル・ロロット(si6100)は腕を組んで考え込むと。
「よくよく考えたんだけど‥‥というかよく考えなくても当たり前なんだけど、みんなで好き勝手にやってもダメよね。ある程度チームとか組んで、あとはしっかりした対応マニュアルよね」

 ――こうして、至極まともに対応ラインが動き出すと、負担はだいぶ減ったようだった。
 それでも、電話の件数はなかなか減らない。だいたいにおいて、納得してもらえるわけではない。疲れる作業だ。しかし――
「‥‥でも、誠意をもって接すればきっと思いは届くはず、ですよね」
 アーティーン・スノーウェイ(sn2115)は祈るように言った。
「ええ、きっとそうよ‥‥!」
 マリアもそう唱えた。カーク・ルッフォ(sc5283)は、そううまくはいかないだろう、とは思ったが、黙ってマリアや皆にお茶を注いでやった。

 ともかく、誰でも対応できる体制はできた。あとはSINNがいなくとも、これ以上ひどくはならないだろう。
「よし、他の支部にもノウハウを届けるか」
 カークはマリアを招いて、外回りへ。

●どっとハッキング
 過重アクセス。不正ログイン未遂。ウィルス送信――回線は肉声だけでなく、電子的な悪意をも運んできている。
「アイドルの一言でこんな事になるって、日本ってお気楽だね‥‥一種のお祭りなのかな」
 ギルベルト・ブライトナー(si7759)は、やれやれと兄ユリウス・ブライトナー(si7758)を見る。
「何つーか、ほんっと日本人って変わってるよなー! 俺は嫌いじゃないけどなっ」
 ユリウスは気合を入れて、なんでもやるぜといった姿勢を見せる。
「ふーん、ネットから攻撃してくる相手もいるんだ‥‥なんだか燃えてきたね! 不審なアクセスがあったらどこからアクセスしてきているのかマシンダイブを使って逆にハッキングし返しててみちゃえ!」
「それにこういう時はルークスを騙って炎上動画や投稿を投げる人もいるはずです。マシンダイブも併用してそういった動画の投稿先をハッキング、個人情報をばらまき返しちゃいましょう」
 月島 悠(sa1735)と烏丸 文(sd4043)は邪悪な笑みを浮かべるが、
「燃えてきた、って‥‥やりすぎはダメよ!?」
 マリアは慌てて止めに入る。
「マリアさんの言う通りです。違法やノーマナーに、同じ方法でやり返していては、我々の潔白を捨て去るようなものですよ」
 小茄子川 隆人(sp1454)はセンセイらしい説教をしてから、しばし考え込むと。
「‥‥しかし、この中に陽炎の軍勢の尻尾もあるかも知れませんね」
「では、それも念頭に入れて、いろいろやってみるか」
 ジュラルディン・ブルフォード(sn9010)がマシンを並べ始めると、腕に覚えのあるSINNも、続々と愛機を設置していく。
「分担して当たりましょう」
「ええ。私は私の戦場で戦いますよ」
 クラリーチェ・ラグランジュ(se5708)とユビキタス・トリニティス(sa1273)も、こうした作戦はお手の物――サーバーの強化から、セキュリティの改善、違法画像や動画への対応、ハッキングへのトラップ設置などを皆でそつなくこなし、同時に『明確な悪意』がないかログを辿っていくが。
「‥‥今のところ、陽炎とかそのへんっぽいのはいない感じですかね?」
「だね。一応、対策はしておくけど」
 マリク・マグノリア(sp3854)とエティエンヌ・マティユ(sj6626)はそう確認しあうと、最後の詰めをおこなった。

「ふう、これで電子対策はバッチリなんだよっ。ああ、おなかすいたなあ」
 皆本 愛子(sb0512)がウ〜ンと伸びをすると、そこへちょうど、『ブラックピザで〜っす』と、宅配が来たりなんかして。
「お待ちどおっす! 超本物ブルーハワイピザとソーセージクラブ20人前、たしかに届けやしたぜ!」
「まっ、またイタズラ!?」
 マリアはがび〜んとする。と、外からアメリア・ロックハート(sh1732)がよろよろと戻ってきて。
「ふぇえ、ごめんなさ〜い‥‥ピザ屋さん断固拒否の構えをとってたんですけど‥‥いらないですって言ったら『じゃあピザを無駄にしていいんすか!? 心が痛まないんすか!? モッ・タイ・ナ〜イ!』ってそこのツンツン頭のおにいさんがぁ〜‥‥」
「つまり、断固拒否できなかった、と‥‥ま、いいじゃねーか」
 ギィ・ラグランジュ(sf9609)は、マリアを見て苦笑する。マリアは不自然に青いピザを「美味しそ〜!」とガン見していたから。
「日本じゃ抗議でピザをデリバリーで送りつけてくるのか‥‥いい国だな。そんじゃこの抗議の気持ちがこもったピザ、俺達で全部平らげてやろうぜ! 食べる様子を動画で上げりゃ相手の気持ちも落ち着くかもしれねぇしな!」
 ジョニー・ジョーンズ(sa2517)が袖をまくると、
「うん、いいアイデアだね。いっただっきまーす」
 鷺沼 妙子(sp1602)も涼しい顔で、大食いを開始‥‥‥‥そうさ育ち盛りのSINNにかかれば、この程度のピザなど30分とかからず完食!
「おいおい食い足りねえよな。もうおしまいか?」
 ジョニーが余裕を見せると、そこへ追加のピザと寿司が!
「気を利かせて追加しといてやったぞ‥‥俺も食いそびれてたし」
 アウグスト・ソウザ(sa2367)が注文したらしい。そして消えていく寿司とピザ! ワッショイ!
「あ、食べ放題のお店が近くにありますよ〜」
 紺野 きつね(sp9415)がはらぺこフォンの検索結果を伝えると、ジョニーは「おいおい」と笑って。
「先に言ってくれりゃあアウグストの注文が無駄にならなかったのによ。ま、いいか。前菜は済んだとこだ、みんなで行くか?」
 そう聞いて手をあげたのは――妙子だけだったという。

 ところで妙子といえば、この間にこっそり電話をしていて。

「酒池肉林‥‥ここっすね。ど〜も〜ブラックピザと」
「スシブラックで〜っす! それぞれ10人前お届けにあがりました〜!」
 なんと妙子は『秘儀・電話返し』で、バー・酒池肉林に嘘オーダーを届けさせたのだ! なんたる卑劣、よい子は絶対マネしちゃダメだぞ!
「オゲェ〜!? こんなに頼んだの、アスモたんなのぉ? ちょっとは自重ってものを学んでくださいよぉ〜」
 マモンが誤解すると、そのツルッパゲを、アスモデウスにパコンとはたかれた(スリッパで)。
「何ちゃっかり“たん”付けしてんのこのハゲ丸。てか俺様頼んでね〜っつの。だからお前責任持って食えよ、ヌレギヌ着せた罰だかんな! あ、でもこのカニさんソーセージだけ俺ちゃんのな!」
「ヒエエ具なしピザだけ食わせようってんですかあ!? ていうかコレ、たぶんSINNの報復ですよ、だからボクのせいじゃないですよ」
「んだとぉ!? あいつらに嘘デリバリーしたのは俺様ちゃん達じゃないってのによ‥‥おいハゲ! やり返せ! 倍返し‥‥いや、十倍返しだ!」
「エヘヘ、それくらいなら喜んで」
「あと土下座しろ、そこにツルツルをこすりつけてな!」
「ナンデエエエ!?」
「経理担当者はケジメ案件でドゲザする! ドラマの常識だろ! ‥‥あ、このタマゴいただきっ」
「ヒエエエエシャリだけ食えってんですかあ!?」
「うっせーなカッパ巻きはそのままやるよ。お前好きだろ? ハゲだし」

 んで翌日、支部にたくさん届いたピザと寿司は、スタッフとSINNと来訪者にとってちょうどいい量だったらしく、美味しく召し上がられたのだという。


●火には何を注ぎましょう
 東京近郊を、手分けして警備するSINNであったが――池袋支部に相当な人数が押し寄せている、とのことで、多くの者がそちらへ回ったのだが。

「‥‥‥‥‥‥‥‥」
 パラディン姿のオルフェオ・エゼキエーレ(si1323)は、ハッスルする人の波を前に、ほとんど立ち尽くしていた。硬い笑みを浮かべて。

「「「かーえーれ! かーえーれ! 祖国に帰れ!」」」

 支離滅裂なシュプレヒコールをあげる民衆の群れ――オルフェオは、思わず両手をあげたくなる。
「祖国に帰れ、って言われてもねー‥‥支部のスタッフって、ほとんど日本人じゃなかった?」
 竜造寺 こま(sj3153)の指摘はもっともで。
「日本のルークス信者を全部ルークス市国に送り届けたら、大聖堂がパンクするんじゃないか」
 アンリ・ラファイエット(sp6723)もまったくその通りなのだが――相手は、暴徒とまではいかぬものの、少々冷静さを欠いた小市民の群れである。ここで正論を言ってもしょうがない。
「ったく、どうしてこうなった‥‥とりあえず、強行突破しようってやつは黙らせてから中に連れ込んで、事情を聴いてみるか」
 御剣 龍兵(sa8659)がこう言い出し、
「集団ヒステリーは悪魔より怖いかもしれませんね‥‥ええ、何か手を打ちますか」
 アドリアン・メルクーシン(sb5618)もずずいと前に出て、
「ようし、怪しいヤツと気に食わねえヤツはまとめてボコす! いいかテメエら! ンなキラキラテカテカした女に騙されてンじゃねぇ! イイ女ッてのは、ニッコリ淑やかに笑いながら顔面ブチ抜くような女なンだよ!」
 鷹宮 奏一朗(sp8529)も拳を振り上げたが、そこへマリアが必死に止めに入る。
「待って! 火に油を注いじゃダメ!」
「そうよ! ダメよ、ダメダメ!」
 アリス・フリュクレフ(sq1159)も無意識にナウい日本風なセリフになってしまったが、ともかく暴力はいけない、という事で血気盛んな男たちは押さえ込まれる。
 その代わりは、冷静な女性達だ。
「暴力は最後の手段ですわ。殴られても、殴り返さない。その姿勢が求められてると思いますわ」
 アンネリーゼ・ブライトナー(so1524)はおっとりと言い、
「ええ、武器を持たぬ女性が堂々としていれば、そうは突破してこないはずですから」
 ブリギッタ・ブライトナー(si7746)も、毅然として矢面に立つのだった。
「チッ‥‥っつても言葉も通じねェし、ラチがあかねェよ‥‥どうする?」
 ルナール・シュヴァリエ(sp6369)が苛立ってくると、そこへ駆けつけたのは、クリシュナ・アシュレイ(sa0267)。
「そういう時は‥‥はいっウォルン!」
 おお、なんという事でしょう――魔法の言葉を聞いた、少々おつむの過熱していた人たちは、続々と我に返り、すごすご帰って水族館とかメイド喫茶とかに散っていったとさ。スゴイ!

「あっちは済んだか‥‥しかし、悪魔の痕跡はないな」
 御剣 キョウ(sp0401)は人ごみの中で警戒していたが、陰謀の影は見出せず。
「隠れていた者も見つからなかった」
 煌 宵蓮(sa0253)の周辺偵察も空振りで。狼牙 隼人(sa8584)もまた、これといった収穫もなく。
「だが、まだわからねえ‥‥ここは陽動だったかもしれねぇ。他の支部も覗きに行こうや」
「‥‥覗き、と言ったか?」
「み、見回るって意味だっつの、キョウ。宵蓮も睨むなよ!?」
「これが素の目だ」

 その頃、秋葉原のほうでも、支部に向けたデモ行進が始まり、膨れつつあった。こちらは急速で、SINNの対応も追いつかない!
「やあ、ここが秋葉原かい。シビれるねぇ。さて、状況はどうかな?」
 なんとか駆けつけたヘルムート・ケンプフェルト(sa1943)に対し、単車で来ていたディミトリエ・シルヴェストリ(sb9264)は、バイクにまたがったまま、顎をしゃくった――熱くなった民衆。ぞっとしない光景だ。
「嫌な予感がする。当たってくれなければいいが‥‥見ろ、この雲行きを」
 ディミトリエは空を見上げた。いつの間にか急激に雲が覆い、やがて、バケツを引っくり返したような雨が――
「うわあ、今日は快晴じゃなかったのか!?」
「ゲリラ豪雨だ、冬なのに!」
「ちょ、牛丼屋に避難しようぜ!」
 と、気づけばデモ隊は急な雨にくじけ、散り散りに。きょとんとするヘルムートだが――ふと、ラジオ屋の軒先で雨宿りする娘に目を留める。
「まぁ、困りましたね‥‥皆さん風邪には注意してくださいね」
 プリム・ローズ(sn6401)。彼女の平和な祈りが通じたのか。プロデジョム[自然]が、デモを中止させてしまったようだ。
「‥‥シビれるねぇ、この寒さ」
 ヘルムートはディミトリエの背中を叩くと、傘を買ってきてやりなよ、とささやいた。

 さて、それ以外のこまごました支部は、アントーニオ・インザーギ(sa5938)とスティナ・エーケンダール(sp7978)とヒメコ・フェリーチェ(sq1409)が、ロードワークがてら見回っていたのだが、結局大きな混乱もなく、無難に押さえる事ができていた。
「ま、だいたい話せばわかるのさ。オランダやベルギーのフーリガンと違って、日本の野球オーエンダンは行儀がいいからな」
「ええ、日本人はいい人が多いと、ヒメコも信じていたのです」
 ヒメコは誰かの顔を思い浮かべて、にこーっとするが。
「だが油断するなよ。関西の球団が優勝すると、ドートン・ボリに人身御供を捧げる野蛮な風習もあると聞く。まさに異端の所業だ。それから――」
「アントーニオ、その話長い?」
「急くなよスティナ、20分もかからないさ」

●話してわからせる
 しかし、怪しげなデモ隊ではなく『訪問者』を門前払いしていては、教会の名がすたる。
 というワケでの『対話と説法』なのだが――むろん、一筋縄でいくはずがない。その多くは信徒だが、そうでない者も混ざっているし、『ルークスじゃなくてあすらば信者』が混ざってくるのも防ぎようがないからだ。

「お、落ち着いて‥‥うう‥‥こんなに一気に来られて、ちゃんと話せるわけ無いじゃない‥‥」
 三輪山 珠里(sb3536)は涙目のまま、わんこの伊勢をもふる――おどおどした彼女には、敵意ある大勢との会話は難しく、それを言うならわんこにも会話はちょっと難しい!
「あらあら、みなさん、ルークス教に対して誤解なさっているようですねー。ここはひとつ、正しい教義を(物理的に)教えて差し上げましょうかー?」
 シャムロック・クラナド(sp9296)は聖書を持ち上げたが、テオ・マリピエーロ(sk8101)はそれを穏やかに取り上げると、代わりに声を張り上げた。
「ルークス教が悪だというのは根も葉もない事。メディアに踊らされてはいけません。混乱を招く存在を信じるのですか? 根強い信仰の存在を否定するのですか? まずは落ち着いてください」
「んだんだ。あのアイドルの発言にしろ『らしい』しか言ってねーし、ネットやメディアの裏付けのない発信に騙されてるんじゃねーの? アイドルも大変だよなー。スポンサーが言えって言ったら言わなきゃなんねーもんなー」
 淀屋 ケイ太(so8112)が意味深な言い方をすると、抗議者は軽くざわついた――まさか、俺らのアスモたんが騙されちゃってる!? メディアの陰謀とかに!?
 と、そこに隙を見出したラティエラ・テンタシオン(sb6570)は、抗議者をうまく整理し、系統立てて『相談者』の元へ行かせるようにした。これで、ある程度良識の残っていた人に対しては、ほとんど対処ができたのだが――

「‥‥しかし、興奮した一般人は下手な悪魔よりも大変だな」
 月島 淳(sb3085)が言うのは、『話が通じないタイプ』の来訪者だ。いわゆるモンスター信徒である(ヴァリアントって意味じゃないよ)。彼ら彼女らには、冷静な対応や、筋道だった説得も、あまり効果はない。
「そうですね‥‥。話題を逸らそうにも、こっちの話を聞いてくれない人が多くて‥‥」
 相手の感情を読み取り、そこから説得の道筋をつけようとしてきた玖月 水織(sh0007)も、『話が通じないタイプ』には辟易としていた。何せ、話が通じないのだ。
「正攻法ではダメなのかしら‥‥ねえ、なにかいい手はないの?」
 マリアが救いを求めて厳島 雪花(sp0998)を見上げた。これが間違いの始まりだった。
「そうね‥‥悪魔は色で彼らを惑わしているわ。となれば、こちらも色で対抗よ!」
「色? 色って‥‥何色?」
「しいて言えばピンクよ! さあマリアさんもよく見てて、こうやるのよ――ねえアナタ、いかにもな事を言ってるけど要はクレミアたんだの何だのにヤられただけでしょ? ルークスにもイイ女がいるの知らないの?」
 胸元をはだけて、ずずいっと若い男に迫る雪花。
「こ、これがイロ・ジツなのね!? ‥‥わ、私もピンクの下着を用意しなきゃ‥‥」
「何を教えてるんですかー!」
 と、メイリア・フォーサイス(sa1823)が割って入ってしまったので、マリアが新エモーション魔法(意味深)を修得する機会は失われた。
 それよりこっちもひどいぞ、女性信徒相手になんだけど。
「女の子相手のお話は僕がやるんだよ!?」
「いや君みたいな少年には、妙齢の女性相手は務まらないよ」
 デミル・ウルゴスティア(sd9633)とリュカ・フィオレンツィ(sk3006)が、女性への色仕掛けにおいて何か取り合いめいた事を言い合っているようで。
「違うんだよ、ある程度熟れた女の人は、僕みたいショタっ子にそそられるんだよ?」
「まあ、そこまで言うなら、おばさんは譲ってあげてもいいけど」
 ――が、すぐにナシがついたようだ(けど、2人もメイリアにおこられた)。

「‥‥それでも支部で個別対応してたらキリがありません。会見場でも作ったほうが良さそうですね」
 烏ツ木 保介(sd0147)がこう言うと、ウェスタ・イェルワジ(sg1931)も同意。
「どこかの公民館でも借りて対話会でも開いた方が手っ取り早そうだけど‥‥集団だと暴走しやすそうかな」
「なんとかなるんじゃない? 日本人は優秀だって信じてるよ。うん」
 アルベルト・ルードヴィッヒ(sa0074)も賛同し、いざ借りたぜ公民館――そして押しかけたぜたくさんの人・人・人!

「これはまた‥‥うかつな事は言えませんね」
 アルカ・カナン(sf2426)は会場の熱気に倒れそうになる。ウェスタはアルカにおしぼりを与え、そしてウィリディシア・クレール(sj3049)は、演台に立つべく控える皆のメイクを担当。
「ルークス教の顔としての対応が求められるわけだからね。頑張って」
 ――やがて、最初に立ったのはイーノク・ボールドウィン(sd3868)。年季の入った穏やかな神父たる彼の説法に、会場は真面目にならざるを得ず。
「‥‥あなた方は、何かを絶対と思ってはいけません。それは、自らの世界を狭めてしまうだけですから」
 まばらな拍手ののち、続いたのはイェンス・レーン(sk2780)。学者風の彼は、英語で講演し、淡々とした通訳を介す事で、会場に『聞かせる』雰囲気を根付かせる。
 そして最後は、ダニエル・ダントン(sa2712)だ。神父ではなくパラディンとして、国内外のルークス教支部が、貧困対策などのNPO活動に尽力している事を具体的に諭した。

 会場を去る人々とマスコミ。彼らの顔には『冷静に考えれば教会が悪なわけないよな』といった風情が刻み込まれていた。
「騒動もなく、うまく行ったか。これで収まればいいんだがな?」
 竜造寺 巌(si7760)は退場者を誘導しながら、花村 三月(sj0016)に話しかけるが。
「ううん、細かなところでは、まだまだこちらにも不備があるよ。聞いた不満点をまとめて、みんなで善処していかないと!」

●目には目を
「お疲れさまでした。これで少しは安穏な時間が訪れることでしょうね」
 ジル・ディンフェルダ(sp9610)は、仕事を終えたSINNたちに紅茶とケーキを配って回る。
「よしわかった。こっちはマリりんをアイドルにしよう」
 意味もなく唐突に文倉 羽留(sn2556)が言い出した。「は?」と固まるマリアだが、マユリ・バルギース(sp0231)もんっんーと賛意を示す。
「目には目を、アイドルにはアイドルを、ね。最後にアイが勝つ。黒の双子姫さん、やってみれば?」
「え、いや、私は他に‥‥そう! 仕事とかあるし」
「そうだよ、萌えには萌えを! 一般の皆様とアスモデウスに興味を持たせて同じ土俵に立つ! でもそれなら私は、我らがロッテちゃん推しでいきたい!」
 柴神 壱子(sa5546)は、シャーロット・エルフィン(si6767)の両肩をガッチリ掴んで、プロデュースプロデュース、動画うpうpとはやし立てる!
 シャーロットは当然、なにがなにやらときょとんとしたものだが――ちょっと待ったァ〜! と止めに入ったのは!
「アイドルなんかに負けられるか、俺達はクールジャパンを代表するV系バンドだ!」
「そうだ、今こそ『斬月』推して参る! 歌え、狂え! かかってこいよ!」
 不知火 夜都(sa1219)&不知火 焔羅(sg1015)がギャーンギャーンとギターをかき鳴らし、ミョーな対抗心をむき出しに!
 誰かが言った。「もう、SINNでユニット組めばいいんじゃない?」、と。
「おーそれだ、SIN72とか?」
 羽留がぽんと手を打てば、
「なんで72人なんだ‥‥そんな数字で大丈夫か?」
 淳はちょっと不吉な予感がしないでもなかったが、
「なあに、大は小を兼ねるっていうさ。よし、オーディションにはあいつも連行するか」
 アンリもこんな具合で、わいのわいの言うなか――マリアはそっと、エンリコ・アルベルティ(sz0002)に電話をかける。
『おや、どうしましたマリア?』
「あの、SIN72、ってどう思います?」
『はい? それはどういったものですか?』
「ええと‥‥わかりやすく言うと、SINNの厳選アイドルスペシャルユニット‥‥みたいな?」
『却下です』

 ――まあドタバタしたが、各所はスムーズに改善した、といってもたぶん大丈夫だろう。
 なお、懸念した【陽炎】の介入は、残念ながら(?)見られなかった。どこかで観察はしているだろうが、それはテレビごしによるものかもしれない。
 【狂月】の妨害も、まあピザ寿司百人前くらいだったが、SINNの鉄壁の胃袋を傷つけるには至らなかった模様だ。
 こうして、日本人とSINNによる、愛と泪のドスコイ・バトルは幕を閉じた。

●その日の夜
「‥‥なんでダメなのかしら」
 秋葉原支部に戻っていたマリアは、未だSIN72への希望を捨て去っていなかった。だがダメっぽい。本当に何故なのだろうか。
 と、悩んでいると、秋葉原支部の電話が鳴っているのに気づいた。
「えっと‥‥」
 マリアは周りを見るが、生憎、自分以外にそこには誰もいないようだった。
 ――出ても大丈夫かしら。
 日本語の使えないマリアではあるが、秋葉原支部に所属しているハンドラーが錬成した錠剤で一時的に言語を通じさせることはできる。
 但し、今回のものはここ数年ずっと研究し続けてきたモノで、数自体はそこまで多くなかったらしく、製作者のハンドラーは効果の確認ができたことには喜んでいたが、錠剤がほぼ消費されてしまったことについては嘆いていたっけ。
 そして、マリアの手にはそんな錠剤の最後の一錠が――
「‥‥‥‥ゴックン」
 飲んだ。
 そして電話に出た。
「モ、モシモシ、ドスエ(も、もしもし)?」
 英語で喋ってるつもりで、口から出たのは英語ではなく別の言語だから、マリアは改めて驚いた。なかなか新鮮な感覚だ。
 しかしこれで合ってるのだろうか。日本語。日本語のはず、だよね‥‥?
「もしもーし、もっしもーし! おまえ誰ー? 俺ー? 俺ちゃんー」
 と、不安が先行するマリアの耳に聞こえてきた声は、あれ、なんかつい最近どこかで聞いたことがあるような――
「おまえ責任者ー? 責任者じゃないー? ま、いっかー! あのよー、今回は俺ちゃんらの身内がとんだ御無礼を働いちゃったみてーじゃん?
 それもこれも俺ちゃんが愛され過ぎちゃってるからなんだけどよー、やっぱそーゆーのもやりすぎあかん、絶対! って思うワケよ。な?
 それによー、なんかおまえら接客態度バッチシだったらしーじゃん? スゲーなー、ルークス教とかマジスゲーわー、俺ちゃんリスペクトるね!
 あ、ワビっつーワケじゃねーんだけどさー、おまえら明日ウチ来いよ。ウチ。分かる? 秋葉原のさー、カフェビルなんだけど。『酒池肉林』っての。
 なんかヘルメスからおまえら悪いヤツって聞いてたけどよー、実際どーなのか俺ちゃんが直々に確かめてやんよ!
 あ、それはそれとしておもてなしはしてやっかんな、覚悟しちゃうんだっぜぃ! あ、名前言い忘れてるじゃねぇか! 俺ちゃんアスモちゃん!
 人数とかは好きにしろい! むしろいくらでも来いや、俺ちゃん一向に愛してるぜー! じゃーなー!」
 ツー、ツー、ツー。
 電話が切れた。
「‥‥‥‥ナンノコト、デッシャロ(何だったの、かしら)?」
 受話器を持ったまま、しばらく立ち尽くすマリアであった。

◆最終結果
評価:大成功!
結果1:次回イベント「極東轟嵐」で「今回の騒動により調査能力が低下する」事態を回避しました。
結果2:接客対応に感動した魔王アスモデウスが、カフェビルにSINNを招きました。何人来てもよいそうです。

優秀PC一覧:
ミラベル・ロロット(si6100
ジュラルディン・ブルフォード(sn9010
クリシュナ・アシュレイ(sa0267
アルベルト・ルードヴィッヒ(sa0074
カーク・ルッフォ(sc5283
※優秀PCに選ばれたPCには、お好きなアイテムが1つ(オンリーワン品除く)が授与されます。01月31日23:59までにお問い合わせフォーム「その他の質問」より、希望するアイテムについてお送りください。
最終更新:15/01/21 14:01:26
更新者:アスモデウス(sz0014
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