【AS06】罪の炎と目覚めた封印

担当マスター:真名木風由
開始14/11/15 22:00 タイプ全イベ オプションお任せオプション
状況 SLvC 参加/募集144/― 人
料金600 Rex Rex 分類事件
舞台国アメリカ 難易度難しい

◆周辺地図
   

オープニング
●同時任務へ
「先日は、皆さんも調査にご協力いただき、ありがとうございます」
 そう前置きした聖戦機関職員は、調査の結果得られた情報や新たに入手した情報について話し始めた。
 大統領ディオン・トゥールスの豹変。
 それは、大統領夫人エルマ・トゥールスが異端襲撃に遭った日を境にするという。
 吸血鬼に関連する事件もその襲撃より急激に発生率が上昇しているが、ディアボルスがワシントンD.C.に表立って出入りした形跡はない。
 しかし、『黒い霧』は発生が相次いでおり、ワシントンD.C.から遠ざかる程減少している。
 それら一連に合わせてヨーロッパでも吸血鬼関連の事件が発生したが、それらは陽動であろうという見方もされている。
 吸血鬼が動いているのは明らかである。
 ディオンが既に吸血鬼になっている、或いは吸血鬼が摩り替わっているという見方もあったが、彼を護衛する任務においてあるSINNの機転により、彼自身がそうではないことは証明されている。
 では、何故、彼は豹変したのか。
 それには、エルマの豹変も語らねばならない。
 エルマは、未成年で構成された異端による襲撃にとてもショックを受けていた。
 その事件以後、ホワイトハウスの自室に篭り、食事も数日に1度しか取らない。
 事件のショックがあるとしても、大きすぎる豹変であるが、副大統領ジョン・ケイバーも理由に思い当たる節がないと言う。
 しかし、そのジョンにも紅グループが接触を試みようとしているという情報があり、彼自身もまた疑いを向けねばならない人物である。
 紅グループは、『陽炎の軍勢』を中枢に抱く。
 吸血鬼、クドラクと接触した情報はないが、悪魔の軍勢を見逃すことは出来ない。
 そして近日、この2人が、ワシントンD.C.に居合わせる日があるという。
 その日は、ホワイトハウスにディオン、アイゼンハワー行政府ビルにジョンがそれぞれ公務でその身を置くらしいのだ。
「またとない好機になります」
 職員の言葉ののち、傍らに控えていた エンリコ・アルベルティ(sz0002)が、SINN達の前に立った。
「今回は、エンリコ師の立場を大義名分に使って、作戦行動を行います」
 そう、職員がSINNに告げる。
 エンリコがホワイトハウスに外交官として『黒い霧への対処相談』を名目とした訪問を行い、それを足掛かりに『ホワイトハウス内部を直接調査』を行う、という作戦だ。
 多少ならずとも強引な調査になるだろうが、それをする必要がある程には、事態が切迫している可能性が高い。
 この作戦を聖戦機関に進言したのは、他ならぬエンリコ自身であった。
 ただし、聖戦機関の長ではなく、ルークス市国に所属するひとりの職員として。
 そしてしばしの検討ののち、聖戦機関はこの作戦の実行を決定した。 
「好機である以上、逃す手もありません。同時進行で行政府ビルにも進むべきでしょう」
 エンリコが言う。ジョンもワシントンD.C.にいるならば、彼の身柄確保も必要であるというその考えは、聖戦機関の方針とも合致していた。
 そして、同時進行の任務が成立したのである。
「ホワイトハウスへの訪問は、大丈夫なんですか?」
 マリア・アンジェリーニ(sz0003)が、エンリコを見る。
 相手は豹変したとは言え、アメリカ大統領。
 ホワイトハウスに外交官として赴いても簡単に内部へ入れるだろうか。
 彼女の疑問に対し、エンリコはひとつ頷き、こう言った。
「おそらくは。幸い、大統領とは知らぬ仲ではないので」
 エンリコは、かつて大統領暗殺阻止任務でディオンとは面識がある。
 聖戦機関の長ではなくなったとしても、その縁がなくなった訳ではない。
 足掛かりにはなるだろう、とエンリコは話す。
「今からお呼びする方は、当日、エンリコ師とホワイトハウスに向かっていただきます。続いてお呼びする方は、アイゼンハワー行政ビルへ副大統領の身柄確保に向かっていただきます。尚、副大統領は我々の動きを知りません、言わば抜き打ちです」
 職員は集うSINN達の顔を見た後、その名を呼び始めた。

●不意に輝く
 任務当日。
 任務の最終打ち合わせを行っていた作戦室に聖戦機関の職員が飛び込んだ。
「ワシントンD.C.が、『黒い霧』に包まれました‥‥!」
「状況は、どうなのですか?」
 出発直前のエンリコが、鋭く問い返す。
「ホワイトハウス周辺では特に濃度が高い『黒い霧』が発生している模様です。民間人が取り残されているそうですが、現地支部の報告によれば、ヴァリアントヒューマン発生の可能性あり。そして───」
 職員が、この状況における最悪を告げた。
「ワシントン記念塔より、『生命の樹』が立ち上ったことが確認されているそうです」
「何ですって!」
 職員の言葉にマリアが顔色を変える。
 悪魔も秘密裏に探している封印。
 そこにあるのではないかと目された街もあり、その街でSINN達が悪魔と一触即発の状態になったこともあった。
 けれど、それが予想外の場所にあったなど。
 それも、突き止める前に目覚めてしまったなど。
「私、ワシントン記念塔へ行きます」
 本来、ホワイトハウスに向かうつもりだったマリアが毅然とした眼差しで言い放つ。
 『神の子』アリア・アンジェリーニ(sz0004)がいない今、自分が何とかしなくては。
 ファティマのうらぶれた教会に身を寄せていたらしいアリアが、どこにいるか分からないけど、でも、今は自分が向かわなくてはならない。
「マリア、恐らく、この具現は誰も予想していなかったことでしょう」
 エンリコは、誰もが突き止めていなかった封印だったからこそ、予想外の覚醒であると言う。
「覚醒が確認されたならば、どの勢力に所属していたとしても確保に動くでしょう。単純な戦いにならないかもしれません。それでも、行きますか?」
「行きます」
 マリアの言葉に、迷いはなかった。

 任務の構成を再編し、マリアを始めとしたSINN達はワシントン記念塔へと向かう。
 そこで待ち受けている戦いを覚悟して。

●微笑向ける紅闇
 『生命の樹』の立ち上がりは、アイゼンハワー行政府ビルからも見えた。
「こ、これは‥‥」
「案ずることは何もありません」
 驚愕の声を漏らすジョンに微笑むのは、艶やかな銀髪を持つ青年。
 紅グループの若き総帥、紅 玄暁(ホン シュエンシャオ)。
「全ては『黒い霧』が晴れた時に解決するでしょう」
「だが、この『黒い霧』がワシントンD.C.を覆うこと自体未曾有の事態ではないのかね‥‥?」
 余裕たっぷりといった口調の玄暁に対し、ジョンは動揺を隠せない。
「しかも、あの方向はワシントン記念塔‥‥ああ、アメリカはどうなってしまうのだろうか‥‥」
「ご心配には及びません。───ケヴィン、クリストファー」
 玄暁が目配せすると、控えていた2人の青年が前に進み出た。
「既に紅グループの者が様子を見に行くよう手筈を整えました」
「何か異常があれば、報告するよう厳命してあります」
 ケヴィン・エルフィス、クリストファー・ノグチからの言葉に玄暁は満足げに頷いた。
 だが、それでも、ジョンの顔は晴れない。
「『黒い霧』という未曾有の事態であるならば、このビルも安全ではないかもしれませんが───」
 我々が、あなたをお守りします。
 力強い玄暁の言葉は説得力を持ち、ジョンの心を支えるのだった。

●楽園喪失の物語、開幕
 ホワイトハウスは、静寂に包まれている。
 警備人員を一新されたが、その内部に異常はない。
 エルマの自室にディオンはいた。
「あなた‥‥霧が、黒い霧が全てを包んでしまっているわ。暗い、暗い闇。まるで人の心のよう。悲劇的な物語の始まりね」
「何故、このようなことが‥‥」
 ディオンが憂うと、エルマが寄り添う。
「全て、全て中国が悪いの。ええ、全てあの国を蝕む悪魔が悪いの」
 だって、ジョンは紅グループにたらしこまれている。
 接触しようとしたでしょう?
 エルマの囁きは、その吐息でディオンの髪が揺れてしまいそうな程、近い。
「彼らの陰謀なの。分かるでしょう? ああ、何ていう悲劇的な物語なのかしら‥‥」
「エルマ、何も案ずることはない。大丈夫だ」
 ディオンはエルマの頬にキスをして立ち上がる。
 最近、常に持ち歩いている黒のブリーフケース───『核のフットボール』を手にし、エルマの自室を去る。
 自室前に控えていた警護担当者がディオンに敬礼を送った。
「妻を頼むよ」
 そう言い執務室へ向かったディオンは、警護担当者の頭部から人間と異なる耳、そして揺れる尻尾に気づくことが出来なかった。

 執務室へ戻ったディオンは、窓の外を見る。
 このブリーフケースは、自分だけが持っている訳ではない。
「ジョン、私は覚悟したよ」
 同じく所持している彼へディオンは、そう語りかける。
 最後の決断を行うその瞬間、自分はこのケースを開けるだろう。
 全ては、人類の為───

 エルマは、窓の外を眺めていた。
 これから始まるのは、失われる楽園の物語。
 どんな物語が綴られていくのかと思うと、初めて恋をした少女のように胸が高鳴る。
「楽しみだわ───」
 ソファに腰を下ろすエルマ。
 その足元には、最後の黒のブリーフケースが置かれてあり。
「人は世界に数十億もいるんだもの。たった数億、罪の炎に焼かれたって、どうってことはないわ」
 そして、部屋の外を知らぬ黒猫がブリーフケースに甘えるように寄りかかっている。
「失われゆく楽園の物語の始まりよ?」
 うっとり囁くエルマの声に黒猫は満足げに擦り寄った。

 ねぇ、イザベラ───あなたの楽園は、どこにあるかしらね?

◆登場NPC

 エンリコ・アルベルティ(sz0002)・♂・45歳・エクソシスト・地・聖職者
 マリア・アンジェリーニ(sz0003)・♀・15歳?・エクソシスト・地・聖職者

◆マスターより

こんにちは、真名木風由です。
今回は、全体イベント【AS06】ParadiseLostのメインシナリオを担当させていただきます。
全体イベントにおきましては、没ありプレイングとして処理され、MVP(物語に重要な貢献をした者)を中心として物語が描かれます。
選択肢をプレイング第1行で【ア】のように記入し、次行より本文を続けて下さい。(複数選択肢不可)

ア:ホワイトハウスに向かう
 関連NPC:エンリコ・アルベルティ(sz0002)
 大統領ディオン・トゥールス及び大統領夫人エルマ・トゥールスの身柄確保を行う選択肢となります。
 身柄確保だけでなく、『核のフットボール』奪取も重要な任務です。ここには吸血鬼勢力が潜んでいることが確実視されています。
 PL情報になりますが、この選択肢には上位のオリジンがいるようです。
 痕跡:血の臭いの他は確認されていません
イ:ワシントン記念塔に向かう
 関連NPC:マリア・アンジェリーニ(sz0003)
 『第三の封印テアテラ』確保を行う選択肢となります。吸血鬼勢力だけでなく、紅グループの軍勢の一部が差し向けられているようです。PL情報になりますが、この軍勢の指揮官は、かつて『漆黒の城』と呼ばれていたそうです。
 尚、勢力がぶつかり合う為、三つ巴の戦いに発展する場合もあります。
 痕跡:赤い布きれ、獣毛、鱗、羽毛×2
ウ:アイゼンハワー行政府ビルに向かう
 副大統領ジョン・ケイバーの身柄確保及び『核のフットボール』奪取を行う選択肢となります。
 ただし、その場には紅グループの総帥とその一団が来訪しているという情報があり、一筋縄ではいかないようです。
 痕跡:紅の羽根、赤い布きれ、獣毛、羽毛
エ:市民の避難誘導を行なう
 ホワイトハウス周辺で『黒い霧』の発生により倒れた民間人の救護活動、及び発生したヴァリアントヒューマンへの対処を行う選択肢です。
 霧の濃度が高く危険である為、注意が必要です。また、ヴァリアントヒューマンへの断罪許可は出ていませんので、どう無力化するかが鍵でしょう。
 痕跡:うめき声
オ:その他の行動
 どの選択肢にも該当しない行動はこちらとなります。
 内容で判断させていただきますので、他選択肢に割り振られたり、採用率そのものが低い場合がありますのでご了承ください。

リプレイ
●憂う故に
 テオ・マリピエーロ(sk8101)は、その事実を彼らに伝えた。
「有事の際は、転移装置の使用も許可いただけるとのことではございましたが───」
 テオはルークス市国に留まり、有事の際は一般人も転移装置を使用させ、アメリカから離脱させるべきと聖戦機関に働きかけた。
 回答は、有事であれば使用を許可するとのこと。
 が、聖戦機関はテオにその可能性を添えていた。
 核が発射されるならば、それは国内ではないだろう。
 最も有力な標的は、国外───具体的に言えば、中国。
 場合によっては、国外へ離脱する方が危険であるかもしれない。
 同時に、転移装置の使用優先順位を巡った人同士の争いもありうるということ。
 それ故に、最終手段であるとのことだった。
「ですが、可能性ならば国民全員が人質ということもありえなくはありません」
 そう言ったサラディン・マイムーン(sj1666)は、ガディン・ベルリアン(sk6269)を見る。
 パラディン正装を身に纏う彼らは頷き合い、そしてユビキタス・トリニティス(sa1273)を見た。
「参りましょう。最悪の事態は常に想定して然るべきです」
 彼らが向かう先は、戦いの場ではない。
 けれど、戦いの場である。

●齎される悪意
「もう、緊急事態でございましょう!」
 フリージア 李(so6182)は、苛立ちを募らせていた。
 彼女は、ワシントン記念塔に『生命の樹』が具現した、つまり封印が目覚めたことより、マリア・アンジェリーニ(sz0003)と共に向かうSINNのひとりだ。
 どの勢力に所属していたとしても封印を狙うだろう、という点より、単純な戦いにはならないかもしれない───そうした懸念もある中、フリージアはマギアを付与した車での突撃策を打ち出した。
「でも、ワシントン記念塔があるのってナショナル・モール‥‥国立公園内だもの。流石に難しいと思うわ」
 有栖川 彼方(sp2815)に護衛されるマリアは、フリージアに困ったように笑う。
 やがて、ワシントン記念塔が、『黒い霧』の向こうに見えてくると、既に対峙している軍勢同士があった。
「三つ巴の戦いになりそうだな。サンクトゥアリィでの隔離は難しそうだ」
 鷹羽 叶望(sd3665)は、状況を把握し呟く。
 ディアボルレジスティを特殊能力への耐性が低めのSINNへ付与すると共に烏ツ木 保介(sd0147)とヴェルンハルト・ラヴィーネ(sp3868)が協力し、エクレシアの効果をより多くのSINNへ付与する。
 SINN達も効果時間が長い魔法を成就させ、戦いの準備を行いつつ、急行した。
「今日、皆で集まるのにお手紙なかったよね」
「私達だけ、貰ってなかったのかな‥‥」
 栄相 セイワ(sa0577)と栄相 サイワ(sa0543)は顔を見合わせていたが、戦いの時は近づいており、待ってはくれない。
「‥‥面倒な敵がいますね」
 保介が吐き捨てる。
 どの軍勢同士かは分かりかねるが、馬に跨り毅然とした姿を見せているその姿には見覚えがあった。
 上級魔神、サブナックである。
 この魔神の悪魔魔法は、一定空間に魔法成就の妨害を及ぼす結界を張るものだ。
 また、他に知るものでは、上級魔神エキドナがおり、特殊能力も悪魔魔法も侮れるものではない。
 詳細な能力は思い出せないが、上級魔神クロケル、そして───
「ウァラク‥‥?」
 保介がモンスター知識を通達していく中、彼に遭遇経験がない魔神の名を漏らしたのは、サラ・オブライエン(so7648)。
 残念ながら、彼女もウァラクの能力の詳細を思い出せず、クロケルと共に何の能力かを警戒しなければならない。
「ですが、魔法成就を妨害する結界があるなら尚のこと、自分は後方からの狙撃支援に努めるべきと判断します」
「同意だ。確実な狙撃こそ戦線構築に必要な要素と考える」
 ブリギッタ・ブライトナー(si7746)に頷いたのは、テムジン・バートル(sa5945)。
 結界の範囲は分からないが、恐らく自分達の射程範囲外の可能性が高い。
 また、仮に射程範囲内であったとしても、火力支援は影響がそこまで出ない。
 2人の狙撃手の一致した見解に鷹羽 歩夢(sj1664)も頷く。
「場合によってはリフレクトフォースも混ぜれば‥‥いける」
 魔法成就が不安定だからこそ、自分の役目は大きい。
 2人の狙撃手は既に攻撃目標について軽く打ち合わせており、彼らの意識の高さを物語る。
 火力を集中させ、速やかに戦力が削っていくことが重要だろう。
 SINN達は狙撃手達が狙われないよう護衛もつけて先に進む。
「オマエ達、殺されるぜ? なァ、狙ってるのはあっちだぜ?」
 サラがウァラクと特定した魔神が狂気じみた声を上げる。
 ウァラクは本来、友好的な対応をする魔神では、と己の知識の剥離にサラが眉を顰める。
 けれど、ウァラクに声をかけられていた軍勢、レッサーヴァンパイアとクドラクの軍勢の内、何人かが彼に煽られるようにしてその悪意をSINNへと向けてきた。
 SINN達は知らなかったが、ウァラクの悪魔魔法は悪意を発露させるもの。
 元より、SINN達に敵対意識を持つ彼らは、目の前の軍勢よりもSINNへの悪意を優先してしまったのである。
「同じ軍勢、なの?」
 ティファニー・エヴァーツ(sa1133)が、困惑の声を上げる。
「貴様らに答える筋合いはあるまい。夜の住人が我らと共闘していようがいまいが‥‥戦うことに何が変わろうか」
「『城』‥‥殺していいんだよなァ?」
 その会話で、何人かのSINN達は察した。
 彼らは、『陽炎の軍勢』───紅グループの手の者。
 『城』とされるサブナックは、『漆黒の城』と呼ばれていた個体だろう。
「相手が誰であろうと、潰す。それだけじゃねーか、全部潰して封印確保する。それだけだろ」
「俺達は誰であろうと、負ける訳にはいかない」
 狼牙 隼人(sa8584)がそう言えば、神代 翼(sb3007)は頷き、敢えて後方へ下がった。
 早期に火力を集中させる必要があるならば、フルメンの射程を生かし、確実に撃てる距離を保った方がいい。
 サブナックの悪魔魔法は恐らく成就されていると考えるなら、尚更。
「ディアボルスの皆様に関しましては、可能な限り皆様のお力添えをしたいですわ」
 アンネリーゼ・ブライトナー(so1524)が、敢えて前に出る。
 クオヴァディスの使い手である彼女が真名を看破すれば、強力な支援となるだろう。
 けれど、アンネリーゼ自身は防御力があるとは言えず、前線に出すのに不安が残る。
 それをフォローするようにマイア・イェルワジ(sj7576)が前に出た。
「マイアがお守りするのです」
 一度射程外に出て成就させたゲミニーで分身もあるマイア。
 防御力に関しては、この場にいるSINNに敵う者はいない。
 敢えて、アンネリーゼにひとり割り振ることで、真名看破の時間を稼ぎ、『陽炎の軍勢』勢力を早期排除をと考えたのだ。
「マリア様、ここは皆に任せて先に参りましょう。私が御身を命に代えてもお守りします」
 彼方が具申という形でマリアに申し出る。
 命は平等であれ、役割の重さは人によって異なる。
 そうした意図の発言だったが、マリアは首を横に振った。
「私を思うなら、あなたはあなたも大事にして。私は、皆と戦い、皆と生きて帰りたい」
「‥‥そうだね。あたし達は、皆だから意味があるね」
 困惑する様子の彼方に対し、神楽坂 凛(sp3316)はマリアの言葉をありのまま受け入れた。
 サブナックは指示を出し、『陽炎の軍勢』もまたレッサーヴァンパイアとクドラクの、結果としてのバックアップを受ける形で戦闘を仕掛けてくる。
 この戦い───負ける訳にはいかない!!

●正攻法VS正攻法
「‥‥任せておけ」
 ジュラルディン・ブルフォード(sn9010)がマシンダイブを成就し、行政府ビルに設置されている監視カメラからディプレンド以外の情報入手に乗り出す。
「どうして、どうして悪魔なんかと───」
「副大統領、だからだよ」
 アメリア・ロックハート(sh1732)が胸の前でぎゅっと拳を作る。
 その疑問に答えを返したのは、リュカ・フィオレンツィ(sk3006)。
「副大統領として大統領の暴走を止めたいだろうし、あちらも自衛を望むなら、両者の利害は一致しているからね」
「でも、悪魔と手を組むなんて、そんなのやっぱり、おかしいです‥‥」
「彼らのやり方もあるでしょう」
 困惑するアメリアに告げるのは、玖月 水織(sh0007)。
「彼らは人間社会に生きている。社会的地位も持っており、中国中枢に手を伸ばし、掌握しているなら、中国政府の後ろ盾もある。そうした彼らが、正式な手続きを経て副大統領に面会を求めた場合、副大統領に断る術がないかと」
 強引な方法であれば話は違うだろうが、自分達は情報を入手し来ることが出来た。
 つまり、ジョンは非合法な手段ではなく、正式な手続きを取った為に中国政府の後ろ盾もある彼らに対して強硬な拒否姿勢が取れなかったのだ。
 親中国派でもあるジョンは、大統領の核発射強行への対応という名目の会談に応じなければならなかった───異端の可能性も排除しきれないが、それこそが、『彼ら』のやり方。
 そう説明した水織は、彼らの牽制には彼らの社会的地位を利用したものが有効であると説いた。
「彼らへの牽制は君に任せるとして、僕はウォルンで副大統領を説得するよ。勿論、魅了や言霊を使用されている可能性も考慮した方がいいとは思うけど」
「私が洗礼者の衣の力を使っておくわ」
 ウィリディシア・クレール(sj3049)が口を開いた。
 動かざるを得なかっただろう『彼ら』がこの状況を利用し何かをなすという思惑はあるだろう。
 それが何であろうと叩き潰すつもりのウィリディシアは、ローレムが付与されたCROSSを握り締める。
「副大統領はローレムの結界に確保した方がいいでしょう。その方が安全だわ」
「サンクトゥアリィの隔離は行うつもりですが、効果時間内に全てが終了する保証はございませんから‥‥」
 アルカ・カナン(sf2426)がウィリディシアの言葉に頷く。
 やがて、彼らはその人数に応じた会議室にいると判明する。
「他に何か異常とかあった?」
 ミリーナ・フェリーニ(sa0081)が、駆け出そうとするSINNを制止、ジュラルディンに確認する。
 敵がいるならば、その行く先々に異端はいないか、また、目視出来る範囲でも罠の類はないかと確認したのである。
「ないな。本当に正面切った正攻法であるようだ」
「僕らも正攻法で行くしかないってことか」
 ジュラルディンにミリーナが答える。
 SINN達が会議室のドアを開け───
「副大統領、お迎えに上がりました」
 リュカが笑顔をジョンに向けた。
 室内にいる紅グループの一団は敢えて無視している。
「‥‥あなたが、そうなの」
 控えているケヴィン・エルフィスを一際鋭く睨んだウィリディシアはその目を紅グループ総帥紅 玄暁(ホン シュエンシャオ)へ向ける。
 隠すこともない敵意の冷たさに彼は楽しそうに瞳を細めただけだ。
「『黒い霧』で事態は切迫しております。お身体も心配ですから、診察させていただきたく」
 水織が玄暁を牽制するように言葉を発する。
「中国が核攻撃されないよう我々が全力を尽くしています。案ずることはありません。今は、ご自身を大切にされてください」
 本性を見せてないからこそ、リュカは彼らを『悪魔』と断じるのを避けた。
「まずは、診察‥‥脈を取られた方がいいでしょう」
「手が震えてます。どうぞ」
「ありがとう───」
 リュカのウォルンの誘導に応じたジョンが彼らから離れる。
 進み出たウィリディシアがジョンに触れ、祈りを捧げた瞬間。
 突如、紅蓮の翼が広がった。
 それを合図に擬態していた魔神が本性を現し、半魔達も応戦体制を取る。
 ウィリディシアがローレムを付与したCROSSをジョンに持たせ、謝罪してから脇に突き飛ばす。
 その最中に副大統領の姿が消えた。
 魔結界───察したSINNの向こうで、紅蓮の翼の持ち主、玄暁ことベリアルは笑っていた。

●その激しさは───
 アルカは魔結界内であることを承知で前へ進み出、サンクトゥアリィを成就した。
 敵の陣形状況により分断は出来ず、より長い時間魔結界の影響を受けるだろうが、ジョン以外一般人も取り込まれているだろうことを考慮し、サンクトゥアリィを成就したのだ。
 彼を守るように前へ立つのは、ダニエル・ダントン(sa2712)。
 そのダントンをベリアルが見る。
「‥‥おや、影響がない。抗う術を心得ていると見えるね。対策を取っていることについては、賞賛しよう」
「お褒めに与り光栄です、ムッシュ」
 ベリアルの一言でベリアルが魅了の力を行使したことに気づくダントン。
 けれど、ビル内部に入った時より昇意カルマを効果時間上昇で成就するダントンは、魔結界がどのようなものであれ、無効化する。灰色の聖典も所持しており、精神に累を及ぼす特殊能力については回数限定であっても絶対の防御を持っていた。
「少し君の力を借りたいね」
「御意」
 ベリアルの声と同時にクロケルが翼を広げ、SINN達に向かってきた。
 呼応するように半魔達が下がり、結果、クロケルが突出する形を取る。
「どういうつもりか知らねぇが───」
「遠慮は要らねぇな?」
 ジョニー・ジョーンズ(sa2517)が迎撃するように前に出、カミーユ・ランベール(sf0920)が援護すべく拳銃で狙いを定める。
 クロケルの微笑が深められた瞬間。
 大津波の幻影が、SINN達を襲った。
 精神力で抗えなかったSINN達が一瞬、時を停めたのを見計らい、ケヴィンの姿を取っていたサマエルが突出してくる。
 それを援護するように半魔達も───
「皆、火力を集中させて、確実に倒していくんだよ!」
 皆本 愛子(sb0512)がその精神の立て直しを図り、指示を出す。
「気をつけろ、毒を持っている!」
 サマエルの攻撃を食らったジョニーはすぐに気づいた。
 レディンテグロの恩恵により、自分はその毒に対する対抗策がある、しかし、それらを有していないSINNにとって脅威だ。
「力を、殺ぐものかもしれねぇっす」
 村正 刀(sf6896)が攻撃を食らったウルセーヌ・モローアッチ(sp5281)の毒をサナティで除去しながら呟く。
「尚のこと、サナティが重要な意味を持ちますな」
「抗う力が落ちているのかもしれマセンネ」
 ジェーン・ミフネ(sk6098)が魔結界、そして大津波の幻影の悪影響に気づく。
 サマエルを援護するようにクロケルがロングロッドを振るう。
 そのロングロッドに凍結効果を付与する力があるのか、食らったSINNの動きが緩慢なものとなった。
「黒い霧を起こしたのは、てめぇらの仕業か!?」
 それでも戦う意思を手放さないビート・バイン(sf5101)が声を荒げる。
 クリストファーことブエルを倒すつもりで彼は、刀とジェーンと共にこの場に来ていた。
 しかし、副大統領がそこにいると判明している以上、緊張のバランスに影響する恐れがあるとして、会議室に入ったと同時にデビルスレイヤー的な名乗りは反対された為、出来なかったのだ。
(機を見なければ、危険だわ)
 九門 桔梗(sn6431)が心の中で呟く。
 陣形入り乱れた状態でのイグニスは、味方にも被害が大きいだろう。
 その瞬間、会議室のガラスが叩き割れた。
「おや、無粋な人がいるね」
「ホントダヨネ」
 そんな会話を交わすベリアルとサマエルの視線の先に、エテルナ・クロウカシス(sp1494)がいた。
 アルカがエテルナの介入を考慮し時間より範囲を優先させ、尚且つ成就した位置も考慮してくれた為に何とか取り込まれていた彼女、実はビル外部から奇襲し、フルメンで悪魔を怯ませている隙にジョンが持つブリーフケースの奪取を考えていた。
 が、『黒い霧』の視界の悪さと内部の割り出しが1部屋ずつの確認であった為、時間が掛かったのだ。
「間に合ったようですね」
 エテルナが会議室に窓から侵入したと同時にラピア・ヴァージニス(sp4717)が温存していた、最後のベネディクタを成就、エテルナに祝福を与える。
「お願いします、今が好機です!」
 ラピアの声と同時にエテルナとカミーユのグレイスが成就され、魔神だけを狙い撃つ。
 カミーユとエテルナの対応に魔神達も乗り出すが、愛子とジュラルディンのパペットが手分けして彼らの妨害に入った。
 結果、愛子のパペットは蹴散らされるもグレイスは正確に彼らへダメージを与える。
 彼らの生命力は不明だが、消耗はしているだろう。
 アルカがそう思いながらも効果上昇のサナティを成就し、傷つくSINNを癒す。
 傷が癒えたSINN達は回復薬も惜しみなく振舞ってくれる彼に礼を言う形で再び戦いに身を投じようとした、その時だ。
 クリストファー・ノグチを名乗っていたブエルが、ポイントショットMAをアルカに放った。
 ディフェンシオを成就しているダントンはサマエルに足止めを食らっている!
 けれど、アルカは無事だった。
 所持していた祝福の金貨が砕け散り、身代わりとなったのだ。
 アルカは、この瞬間に祝福の金貨が身代わりとなった、その奇跡に感謝を捧げる。
「中々上手くいかないものだね」
 くすり、とベリアルが笑い、後退。
 同時に半魔が前に出てくる。
 魅了の力を得た半魔なのではと気づいたダントンと愛子は、灰色の聖典を持つ自らがと率先してその役目を負い、聖典が壊れるまで身代わりとなった。
 攻撃もまた、苛烈だ。
 凍結効果が作用していることもあり、本来の動きも実は難しい状態のSINNも少なくはなく、装備する防具の破損も目立ち始める。
 愛子がジョニーの回復薬を得て傷を回復しながら指揮を続け、負傷が無視出来ないSINNに対し、アルカまで後退する指示を出す。
 アルカが回復の殆どを掌握している状態だ。
 戦線維持の為に敢えて前線から下がらないカミーユと刀がアルカの負担軽減でサナティをSINNに成就し、解毒や負傷軽減をしているが、やはり極められたサナティが範囲に及ぼす力は絶大だ。
「今は、この状況を乗り切らないと‥‥」
 回復薬を積極的に使うアルカは、この状況では堕天使シェミハザの環の力はサナティのメモリー回復に充てざるを得ないと判断している。
 既に自身のサンクトゥアリィは終了間近であった為、刀がサンクトゥアリィを張り直してくれているが、そこまで長くはない。
 アルカの言葉を受けたSINNは、尚のことサンクトゥアリィ内での決着を望むが、半魔の数も多く、ままならない。
 けれど、負けられない───
 と、リュカが自分達を面白そうに見ているベリアルを見る。
「その笑み、気に入らないんだけど」
 どうすれば、その笑みを叩き潰せるだろうね。
 しかし、その鋭き意思に反し、サンクトゥアリィの効果は全て終了。
 魔結界はまだ終わらず、SINN達は半魔の数を減らしながらも魔神はまだ倒せないでいた。
 特にブエルへはエテルナのフルメン以後、有効なダメージを与えられていない。
 やがて───
「そろそろかな」
 その笑みを受け止めるベリアルが呟いた。
 瞬間的に、ウィリディシアと水織は気づく。
「いけない!」
「魔結界が───」
 その言葉が終わる直前、再び前進してきたクロケルが、大津波の幻影を見せる。
 それに気を取られたSINN達は、現実へと戻された。

●その道を開け
「腕に覚えがあるクレスニクは、先に行け! この場は俺達に任せろ、これがな!」
 ハーケン・カイザー(sc1052)が張り上げた声と共にエンリコ・アルベルティ(sz0002)を連れたSINN達がホワイトハウスの奥へと進む。
 ホワイトハウスへ難なく入れたかと思いきや、SINN達は、そのエントランスで待ち構えていたレッサーヴァンパイアとクドラクに襲い掛かられたのだ。
 しかし、とハーケンは、冷静に結論を導き出していた。
 今はのんびりと対応している事態ではなく、オリジンとの戦いが予想されるならクレスニクの力は温存されるべき。
 レッサーヴァンパイアとクドラクがここにいる全てとは思ってないが、多数投入の可能性は高い。
 ならば、ここで自分達が彼らを相手にすることこそ勝利に繋がると考え、ハーケンは仲間に託したのだ。
「クドラク‥‥解呪し、捕縛出来る者がいればいいが」
 ハーケンと共に残ることを選んだひとり、アシェン・カイザー(sd3874)。
 他のエクソシスト達と共に多めにメモリーしていたベネディクタで皆を支援して戦いに臨んだ彼女は真剣。
 マーナガルムを成就しているSINNも多く、かつ、事前に見取り図も入手出来た為、大統領や夫人を当ての推量で探す必要がなくなったが、クドラクもいるならば、解呪し可能ならば捕縛した方がいい。
「吸血鬼勢力がどのような形で悪魔と繋がっているかの情報源になる。この戦い以後も関係することだ」
 その意味を説明し、見据えるアシェンの先では戦いがもう始まっている。
「アシェンの姐さんが解呪するにしても状況は整えるべきだろ」
「そうね。少し踊ってもらいましょう」
 房陰 朧(sc2497)の言葉に頷くのは、赤城 圭(sg9025)。
 決め手と言うより支援を目的としたパペットと銃撃は、レッサーヴァンパイアとクドラクの機先を制するには十分である。
「足元、お留守ね?」
 くすり、と笑ったのは、 ノーラ・ローゼンハイン(so6720)。
 敵陣まで進ませた預言者パペット達を味方を巻き込まない形でパペットボム、その体勢を崩す。
「ハーケン殿、私と結氷殿で動きを鈍らせる! 後は頼む!」
 そう言い、駆け出したのは、御剣 キョウ(sp0401)。
 ベネディクタだけでなく、ポステリタの恩恵もあり効果上昇のグラキスを成就させた彼は、銀のナックルを携え、凍結の行動不能を目的としたマルチアタックEXを次々に繰り出す。
 再生で受けたダメージは回復出来ても凍結効果の付与を解除する能力は有しておらず、見事その影響を受けたレッサーヴァンパイアが行動不能に陥る。
 ダメージ以上の脅威を感じたクドラクがレッサーヴァンパイアを守るようにキョウへと殺到するが、それは叶わない。
 コロランテスを成就していた雫石 結氷(sp9763)が見えぬ姿でその翼を広げ、飛行していたのだ。
「皆が信じて任せてくれましたから、僕達は負けません」
 その言葉の終了と同時に吹雪が荒れ狂い、結氷が姿を現す。
 効果上昇でネブラを成就させていた彼は、強烈な吹雪と共に凍結効果を広範囲に及ぼす。
 息を吐き終え、後退した結氷が向かったのは、ラティーファ・アミン(sq2900)の元。
「あてなりに出来ること精一杯務めさせてもらいますわぁ」
 そう言う彼女が口に上らせるのはニュートラリィの呪文。
 結氷は、息を全て吐き終わってもネブラの効果時間は続くことを知っている。
 効果的に使うには、ラティーファにニュートラリィでネブラを解呪してもらい、再度成就、それを繰り返すことだと考えたのだ。
「アシェン、解呪は任せるぞ。特に凍結効果が重なっている相手を狙うんだな、これがな!」
 凍結効果の付与で混乱する彼らに向かい、ハーケンが再生不能の力を持つ魔剣を振りかざす。
 過重状態とも言える彼が本来の動きをしているとは言い難いが、キョウや結氷が凍結効果を広範囲に効率よく付与したからこそそのデメリットをあまり受けることなく、レッサーヴァンパイアへ振り下ろせた。
「任される」
 アシェンがリムーベマレディクタでクドラクの解呪を行うと、ハーケンのダンボール王パペット『アルパトピア』がスタンアタックで沈め、SINN達によって捕縛される。
「ヴァンパイアが、こちらへ近づいてきます」
 マーナガルムを成就していた結氷が警戒の声を発する。
 奥から、ひとりの女性が歩いてくる。
「お客様も多くお通ししたばかりか、滅ぼされるのを待つその身、美しくないですわね」
 溜息のその声で、SINN達は理解する。
 恐らく、目の前にいるのは、オリジン。
「伯爵の身なれど、あなた方に後れは取りませんわ」
 ヴァンパイアカウントは、凍るような微笑をSINN達へと向けた。

●急がば回れ
 ミラベル・ロロット(si6100)のガンシップパペットが、より濃い『黒い霧』内部へと入っていく。
「今は、時間が惜しいからこそこうした時間をかけなければならないわ。闇雲に捜索しても手遅れを増やしてしまうかもしれない」
 すぐにでも向かいたいと思うSINN達を制したミラベルは、『急がば回れ』とこういう状況だからこそ効率を高める為、事前の捜索活動が必要だと訴えた。
 そのミラベルは、効果上昇のスカイパペットを施したガンシップパペットを用い、より速く広い範囲の捜索を提案したのだ。
 ガンシップパペットと五感共有しているミラベルが触れているのは、柴神 壱子(sa5546)。
「あ、このエリアにもヴァリアントヒューマン、かな‥‥、暴れてる人がいるね。場所は───」
 ミラベルが身に着けるパープルリングの力を借り、ガンシップパペットの視界を得ることで捜索している範囲より地図でヴァリアントヒューマンとなってしまった人や救助を待つ人々の情報を書き込んでいるのだ。
 これは、ミラベルが短時間で濃い『黒い霧』の内部を捜索出来るようガンシップパペットを派遣しているからこそ、壱子の救助活動に携わるSINN全体への位置情報告知が速やかに行えるのだ。
 同時に壱子が地図を用いた位置情報を全員に伝え、ミラベルと共に割り振るということがなければ、視界悪く、また土地勘もない場所で彼らを捜索することから始めねばならず、手遅れが逆に増えてしまうことだろう。
 その意味において、ミラベルの短時間で確実な捜索、壱子がその情報を確かな形にしたこと、同時に2人による各エリアへの割り振りは、時間短縮の観点より大きな貢献である。
 驚くべき短時間でミラベルが調べ上げ、壱子が形にすると、割り振られたエリアへ皆、向かう。
「どうしても暴れるなら、無力化もと思ったけれど───」
「‥‥ま、まずは、あたし、声‥‥かけて、いいかな‥‥」
 厳島 雪花(sp0998)に対し、三輪山 珠里(sb3536)が控えめに申し出る。
 万が一を考え、単独行動は危険とされる状況、この為、珠里は雪花と行動することになるが、場合によってはショットガンで催涙弾を撃ち、怯んでいる隙に両肩を脱臼させての無力化を考える雪花に対し、珠里は最後の手段としてほしいと願い出た。
「もちろん‥‥危ない、時は‥‥し、仕方ない、けど‥‥でも‥‥」
 ヴァリアントヒューマンとなっている人間は、キニスを帯びており、通常の状態ではない。
 けれど、戻れる可能性を持っていることを珠里は知っている。
 攻撃を積極的に加えれば、その分彼らが戻れなくなる可能性が高まるのではないか。
 無力化させても、彼らの心の闇が晴れる訳ではなく、根本的な解決ではないからこそ、珠里は対話を重視したいのだ。
「分かったわ。でも、あなたが危ない時は、ごめんなさいね」
 雪花は珠里の意向を汲みつつも、そう言った。

 フェリシア・エドフェルト(sp7734)と スティナ・エーケンダール(sp7978)は、割り振られたエリアへと急ぐと、彼女達は動けないでいる一般人を見つけた。
「シア、そちらの人、お願い」
 気持ちだけでもと思い、スティナはハンカチで口元を押さえるよう一般人に指示し、肩を貸す。
「ティーナ。こっちは任せてくれ」
 頷くフェリシアも助け起こした一般人に肩を貸した、その時だ。
 ヴァリアントヒューマンがこちらへ歩いてくるのが見えた。
「ここは僕達が食い止める。早く行け」
「無力化さえすれば、説得するSINNに任せられるからな」
 同じエリアを担当するローウェル 一三(so2674) と相模 仁(sp6375)が運良くヴァリアントヒューマンの平静ではない声を聞きつけてやってきた。
 礼を言う2人は、避難場所へ急ぐ。

 クリシュナ・アシュレイ(sa0267)とリュドミラ・マシェフスキー(sd4001)は、ミラベルのパペットと共により多くの救助を必要としているエリアへと向かった。
 パラディン正装を着用することでクリシュナは人々の精神の安寧を図る意味もある。
 これは、アメリカという国ではルークス教の権威が失墜していないからこそ出来る行動だ。
 ポスタリタを成就し、その恩恵も得てウォルンを効果時間上昇で成就させた彼は、ミラベルのガンシップパペットの先導で進む。
(私に、力はないけど‥‥)
 プロデジョムの恩恵があればとリュミドラは願ってやまない。
 アクアリオのように、奇跡を明確にする力があれば‥‥この願いは形になるかもしれないのに。
「いた!」
 クリシュナが小さく叫ぶ。
 目に入ったのは、ヴァリアントヒューマンだ。
 冷静ではない様子のヴァリアントヒューマンは喚き散らし、傍に停車している車を破壊している。
 動けない様子の一般人がおり、このままでは危険───そう判断したクリシュナが目配せすると、リュミドラがサンクトゥアリィを成就、特殊空間を展開した。
 動けない一般人には刹那、暴れていたヴァリアントヒューマンは崩れ落ちる。
 特殊空間内でウォルンによる昏倒を受けたヴァリアントヒューマンは、目覚めるまでひとまず誰かを襲うことはない。
 特殊通信機で説得に動いているSINNへ連絡を入れたクリシュナは、自らも異形になりかねない一般人へ声をかける。
「大丈夫、俺達が助ける」
 ウォルンの魔が乗った言葉は、説得力となり、一般人を落ち着かせる。
 まずは、彼らの安全を。

 ガブリエル・オリヴェイラ(sa0293)と癒槻 サルヴァトーレ(sc5529)は、確保されている避難場所へ一般人を避難誘導していた。
「ヴァリアントヒューマン以外の脅威がないのがせめてもの救いか」
 サルヴァトーレが一般人に聞こえないよう呟く。
 油断出来るような状況ではないが、現在進行で流れる情報においてもヴァリアントヒューマン以外の脅威はなく、それらが発生する前に救助を完了としたい。 
(良い方向にいけばありがたいね)
 ショック大きい一般人へ心療も行いつつ、ガブリエルは心の中で呟いた。
 この国が崩れようとも、人々が崩れてはいけない。
 その為に、自分達がいるのだ。

●異常、その正体とは
 ユーチャリス・ミッドナイト(sp9432)がヴァンパイアの位置を捕捉しつつ、大統領の執務室へと急ぐ。
 マリク・マグノリア(sp3854)が己の技能を駆使して入手した見取り図は可能な限りSINN達へ通達されているが、マリクは現在進行で監視カメラのデータを確認し、大統領ディオン・トゥールスが執務室にいることを割り出していた。
「大統領に聖痕をお伝えすれば、その考えも改めていただけるでしょう」
 大統領の説得を願うひとりであるたナイ・ルーラ(sb0124)が呟く。
 だが、とディミトリエ・シルヴェストリ(sb9264)。
「大国を任される者が悪魔に屈するなどあってはならない。必要であれば、すぐに断罪すべきだろう」
「‥‥大統領は、一般人です」
 躊躇う様子も見せないディミトリエに対し、エンリコが静かに告げる。
「魅了や言霊と言った、人ではないものの介入がある可能性もあります。仮に彼がその心を変えたとしても大国を任される者であるからこそ得ている情報の可能性を考慮し拘束となります」
 この場で異端と断じ即断罪すればいいと言う問題でもなく、また、彼に接近した者の情報は今後に必要である。
「人の心に影響を与える呪い、なんてのもありえそうだしね」
 エティエンヌ・マティユ(sj6626)が憂慮し、溜息。
 ローレムの結界内に入れることでその呪いから脱せられないかと考えはしたものの、ディオンをどう収めるかも問題だし、ハンドラーのパペットのスレッドを切ってしまう可能性もある為ローレムの扱いは慎重にならなくてはならない。
「えっと‥‥執務室にヴァンパイアも結構いるんじゃないかな」
「護衛名目でいるんじゃないですかね。お迎えが来ましたし」
 マーナガルムの恩恵で話し声からヴァンパイアの数を数えるユーチャリスに対し、マリクが肩を竦めた。
 その言葉通り、前方からクドラクが走ってくる。
「ここは、任せるさね」
 ファミリア・サミオン(sb0511)がチャクラムを投じ、クドラクの機先を制する。
 クドラクとなれば断罪、けれどファミリアは己の事情によりそこへ至れない。
 この為、ナタク・ルシフェラーゼ(sa2677)も残ることを選んだ。
 要人を逃す盾としての役割を考えていた彼女だが、その要人に至れなければ意味がない。
「廊下だと、身を隠す場所も作れないね」
 ナタクは苦笑するも向かってきたクドラクの数は執務室を守る観点があるからか、そんなに多くない。
 託すようにSINN達は執務室へ駆けていく。
 そのドアを開けると、ユーチャリスが指摘していた通り、ディオンの他、執務室にはヴァンパイアの姿がある。
「大統領の近くにいる女性、オリジンの可能性があるかもしれないわ」
 配置からヴァンパイアの力関係を察した琴宮 涙湖(sb1982)が全員に警告を発する。
「大統領! 神の御心を思い出してください」
 ナイが聖痕の意味を伝え、ディオンの説得に入る。
 けれど、ディオンがそれに心を動かされている様子はない。
「大統領、お久し振りです。私のことを覚えておいででしょうか」
 ダニエル・ベルトワーズ(sh5510)が前に進み出る。
 大統領暗殺阻止任務の際、彼はディオンをその身を挺して庇った経緯がある。
 その件より、ディオンは白だと思い、彼へ他の懸念事項を提示することでその決意を揺さぶることが出来ればという思いがあった。
 ディオンに触れることで魅了と言霊の影響があるならばそれを排し、同時に天使ハーヤーの環の力で安全を確保しておきたい。
 無反応のディオンへ一歩、踏み出そうとした所で、ベルトワーズの腕を誰かが掴んだ。
 涙湖である。
「待って。様子がおかし過ぎる。心に変化がないということは───指摘があった通り、人ならざる力が大統領には働いている」
 魅了、言霊───エティエンヌが挙げた人の心に影響する呪い。
 何か対策を取らねば大統領の確保は出来ないだろう。
「けれど───」
「わー! 助けて欲しいのです!!」
 ベルトワーズがディオンの無事を優先すべきと口を開く前に御剣 四葉(si5949)が執務室に飛び込んできた。
 内部へ皆が進んだ際、彼女は単独行動をし、実は核のフットボールと称されるブリーフケースが別の場所にあると考え行動していたが、クドラクに見つかってしまい、逃げてきたのだ。
 緊張のバランスが崩れ、大統領の側にいた女性が命令を飛ばし、配置されていたレッサーヴァンパイアがクドラクと共に襲い掛かってきた。
「‥‥後ろは、任せて‥‥、皆と、がんばる、から‥‥」
 シャーロット・エルフィン(si6767)が友達とも言えるパペット達を展開し、クドラクへの対応に入る。
 彼女自身にクドラクの罪を断つことは出来ないが、フリーズパペットとカンフーパペットで強化されたパペット達が対応すれば、凍結効果の付与により行動制限と言う支援を行える。
(がんばらない、と‥‥取り返し、つかない‥‥の)
 人が生み出した悪夢が放たれれば、本当に取り返しがつかないとシャーロットは気づいている。
 使わせることなく、確保しなければ。
 マリクのドラゴンパペットの内1体、石榴石(スリュス)もクドラク対応へと回る。
「任せて。前は私達が何とかするわ」
 アンナリーナ・バーリフェルト(sp9596)がシャーロットに薄く笑む。
 人ではないものの力が働いているなら、大統領本人に魅了のコンタクトレンズの力は恐らく通じない。
 そう判断し、コロランテスを成就し、身を潜めているルナール・シュヴァリエ(sp6369)のジャケットから出た彼女は、エウレーラのリスの姿から戦う為に現れたのだ。
 この場にメモリー回復出来るレベルのサナティの術者は多く、ラーを思い切って使うことも出来るが、涙湖が看破した通り、奥の女がオリジンなら、狙うはその女───
「させる訳ないでしょう? 侯爵相手に弁えなさい、子リスちゃん」
 ヴァンパイアマークウィスの揶揄にアンナリーナは笑い返す。
「その顔、いつまで続くかしらね?」

●暴く太陽の輝き
 大統領夫人エルマ・トゥールスの自室へは、大統領の執務室に踏み込むのと同じタイミングで行われた。
 そこには、既に先行していたエルマ・グラナーテ(sj0377)がいる。
「良かった。間に合ってくれて」
 ほっとした彼女は、既にぼろぼろだった。
 警備員が一新されたなら確認が甘いのではないかと踏み、それを装ったのだが、部屋に誘い込まれ、戦闘状態に陥っていたのだ。
 聖ピリポのCROSSの力を用い、盾で攻撃を阻みつつアクケルテで応戦していたが、誘い込んできただけあり、広い室内にはレッサーヴァンパイアとクドラクの数がそれなりにおり、持ち堪えるだけで精一杯だった。
「メーコさん、本気出しちゃうわよ!」
 メーコ・カトウ(sh3828)がエルマを囲むクドラクに向かって走り出す。
 極められたアルゲントから繰り出される拳は、無視出来るようなものではない。
「数は、足りるか」
「ああ、問題ない」
 煌 宵蓮(sa0253)の問いにジェラール・テステュ(sa8825)が短く答える。
 今後の情報を得る為、クドラクは可能な限り捕縛を。
 そうした連絡を受けたジェラールは、メモリー回復出来るエンジェリングが多く同行していることもあり、クドラクの呪いを解呪することにしたのだ。
 クドラクの警備員は、5人。
 彼女のリムーベマレディクタのメモリー数より少ない。
 メーコの攻撃を受け、怯んだクドラクに対し、ジェラールがリムーベマレディクタを成就する。
 意味に気づくクドラクが襲い掛かるが、この場で唯一の断罪権限も持つ宵蓮が腕輪に仕込んだ鋼糸でクドラクを絡め取り、その対応に追われている間にシャムロック・クラナド(sp9296)がクドラクに攻撃を叩き込む。
 当たれば、クドラクの呪いは弱体化する。
 ジェラールはすぐさまリムーベマレディクタで解呪を行った。
「ここでどうにかしなければ世紀末ですが、ここだけで終わる話ではないでしょうしね〜」
「だからこそ彼らから証言を得られる可能性を上げるべきだろう」
 シャムロックに応じるジェラールは、敵意を剥き出しにするクドラクを見据える。
 レッサーヴァンパイアを率いるかのように大統領夫人の前に立つ女がいた。
 彼らの力関係より、恐らくこの女はオリジンだろう。
「気をつけた方がいい。オリジンならば───」
「勘が鋭い方もいらっしゃるのね」
 イーゴリ・トルストイ(sq0700)の言葉を遮るようにその女が笑う。
「私は公爵の位を持つ者。今までの方々とは比較対象になりませんわよ?」
「それは、どうかな」
 ヴァンパイアデュークの言葉を遮ったと同時にその攻撃は繰り出されていた。
 アンリ・ラファイエット(sp6723)である。
 マーナガルムでの感知役も兼ねていた彼は、部屋に入って以後はコロランテスの恩恵そのままに隙を伺っていたのだ。
「‥‥無粋な」
「おばさま? 僕達の逢瀬を邪魔しないでね」
 姿を現したアンリに嫌悪を示したヴァンパイアデュークに対し、オリヴィエ・ベル(sp7597)が微笑を零す。
「この場は任せる。行くぞ、セイディ!」
「ええ」
 オリヴィエの脇を駆けたのは、アスラン・ノヴァク(sq1286)とセイディ・ゲランフェル(sp8658)の2人。
 向かった先は、大統領夫人エルマ───
「あら、困ってしまうわ。あなた達は、私を───」
 その言葉は、最後まで言えなかった。
 アスランが拳銃を撃ったのだ。
 ただし、エルマ夫人ではなく、その傍にいた黒猫を。
 しかし、黒猫は軽やかな跳躍を持ってその攻撃を避けた。
「当たりだな」
 アスランの言葉と同時にセイディが動く。
 アスランが成就したマーナガルムには、何も感知されていない。
 けれど、アスランは黒猫を疑い、セイディと行動を起こしたのだ。
「ヒメコさん、ここは俺に任せるッス!」
「ありがとうなのです、陽平!」
 志島 陽平(sa0038)の言葉に応じ、アニムウェンテを成就させたヒメコ・フェリーチェ(sq1409)が宙を飛ぶ。
 ヒメコもまた、黒猫を疑っていた。
 この状況において、毛も逆立てず大人しくしている、それこそが何よりもの異常だと考えて。
 レッサーヴァンパイアの隙間を縫うようにして黒猫が走り、それを追う形をとるセイディとヒメコ。
 けれど、機動力ではアニムウェンテで翼を得ているヒメコが射程内に到達すると、切り札を出す。
 掲げられたのは、小型の擬似太陽。
 眩いラーの光にヴァンパイア達の悲鳴が上がる。
 けれど、躊躇なくセイディは進み、黒猫の姿が崩れるそこへ拳を繰り出した。
「勇ましい方も好きですわ」
 拳を受け止めたのは、女。
 直射日光が忌々しいであろうその女は、人ではないものだけが持ちえる美で構成されていた。
「何者、ですか」
「申し遅れました、勇ましい方」
 鋭く問うセイディに女は名乗った。
 エリザベート・バードリー。
 聖痕の記されたイザベラを意味する『血の伯爵夫人』であった。

●崩せ、その『城』
 悪意が発露したレッサーヴァンパイアとクドラクは、煽られるまま味方をも煽り、SINN達へ突撃してくる。
 彼らに主に対応することになるのは、クレスニク達だ。
 先陣を切ったのは、エスター・ゴア(sq0475)。
 真っ白い花びらを食し、成就したマーナガルムの補強を行っていた彼女は、保介とも連携し、早い段階で対立していた軍勢のひとつが吸血鬼であることは見抜いていた。
 後方からの狙撃があるとは言え、『陽炎の軍勢』の魔神達もただ立っているだけの存在ではないならば、狙撃する彼らが立ち回りやすいよう吸血鬼勢力が介入しないようにしなくては。
「まずは、キミ達に上手く通用すればいいんだけど」
 エスターが上げる咆哮に抗う者も勿論いたが、クドラクもその抵抗力は高い方ではなく、多くが咆哮の力により弱体化される。
「遠慮は必要なさそうね」
 千種 蜜(sp9590)が助走をつけて強烈な一撃を突出してきたクドラクへお見舞いする。
 攻撃直後の隙も多いこの技、同じクドラクも警戒していない訳がなく、多くのクドラクが蜜へ殺到しようとする。
 カラパスを成就しており、その恩恵があるとは言え、孤立していいと言うことではない。
「後退しろ、援護する」
 すぐ、上月 累(sq2012)の弓が彼らを狙い、後退を支援する。
 一撃の重さより攻撃間隔を置かないことを重視した弓の援護もあり、蜜がすぐさま後退すると、上随 スウソ(sq1318)が上空から回り込んでおり、トニトゥーラで得ている稲妻を吐き出す。
「ふらいんぐりすりすパワー!!」
 守るべきものがあれば強いとばかりにスウソが得意げに笑う、その下を東雲 燎(se4102)のパペットの援護を受けた東雲 凪(sb4946)が駆ける。
「兄貴、遠慮なく行けっ!」
「ああ。指揮官から討つ」
 燎に応じた凪の狙いは、『陽炎の軍勢』で指揮官を務めていると思しきサブナック。
 彼らに続くようにSINN達も突破した。
 が、レッサーヴァンパイアとクドラクの後方に陣取っていたエキドナとクロケルが黙っていなかった。
「下がれ!!」
 本能的に拙いと判断した隼人が腕輪の力を発動させつつ、成就失敗覚悟でメタスタシスを試みたその瞬間。
 目の前に大津波の幻影が迫っていた。
 ディアボルレジスティを付与されていたSINNは何のことかよく分からなかったが、精神力が高くないSINN達の足が止まる。
 その一瞬の隙を、エキドナが逃さずコンゲラーティオ。
 無事に成功し、後方転移していた隼人は事なきを得ていたが、多くが吹雪による大ダメージを受けた。パラディンの聖面が機能しなくなった者やパペットが大破し、使い物にならなくなった者もいる。
 サイワがローレムのCROSSでスレッドに注意しながらも慎重に負傷者を回収している間にもう一撃叩き込まれ、その被害はローレムによって免れたもののCROSSは衝撃を喰らって壊れた。
 スウソが鋼糸でエキドナの動きを一瞬絡め取るもサブナックの剣が絡め取る為に降下していたスウソの髪飾り、その仕込みの部分を貫き、機能を停止させると、ウァラクの大蛇が追撃を仕掛け、スウソは攻撃を受ける。
 集中攻撃を受ける形になると判断したハンドラーのパペット達がすぐさまスウソの後退支援に入り、彼らが撃破されている間にスウソは後退した。
 聖獣シムルのしーちゃんに跨り、コンゲラーティオの難を受けなかった十文字 翔子(sf7297)は、後退するSINN達が凍結効果の付与を始め、状態異常を受けているSINNが多いことに気づき、すぐさま後方にいるレティシア・モローアッチ(sa0070)へ報告した。
『あなたが堪えた大津波の幻影に、もしかしたら抗う力を削ぐ能力があるのかもしれない。とにかく、プライェルでその異常を除去することを優先した方がいいわ』
「分かった。とにかく挟撃を防ぐ為に僕がフォローに入るよ」
 SINN達の後退を妨げないよう注意しつつも翔子によって展開されたサンラファエルのアエルの乱気流に苛立つウァラクが翔子を狙おうとし───歩夢の撃ったポイントショットEXに仰け反る。
「てめェ‥‥」
 狂気じみたウァラクが後方を睨む間に翔子は上空へ逃れる。
 そのウァラクを撃った本人は、ウァラクの凍結効果は運良く作用しなかったことを聞きながらも焦ることなく、翔子への追撃を防ぐべく狙いを定める。
(まとめて潰す。そう、それだけでいい)
 その為に出来ることをするだけとばかりに歩夢はウァラクを撃ち抜く。
 守られる翔子は、後方に下がり、今度はレッサーヴァンパイアとクドラク相手にアエルの乱気流を展開することで戦線の立て直しを図っている。
 クロケルの精神力による抵抗力を削ぎ落とす特殊攻撃が厄介であることに代わりはないが、それらが被害が少なかったのは、叶望の力が大きい。
 サナティの術者が多いことを看破した彼は、幼馴染であるセルゲイ・クルーツィス(sc4350)に依頼し、サナティによるメモリー回復も加えてのディアボルレジスティだったのだから。
 全員に行き渡らなかった分は、ヴェルンハルトが運良く成就されたプライェルでフォローしてくれたお陰で抵抗力が削ぎ落とされたまま戦闘を続行させる必要はなかった。
 ニュートラリィを試みることもあり前線付近にいた為、彼自身も攻撃を受けたが、大事になるのをSINN達は防いだ。(結局ニュートラリィ自体はヴェルンハルトの力量では不足していたのかこの空間に対して有効ではなかったようだが)
「前に出るだけが戦いではない」
 エレメントアローを番え、叶望は弓を放ち、レッサーヴァンパイアを貫く。
 その効果が作用し、転倒するレッサーヴァンパイア。
 後退支援である為、攻撃間隔を空けないことが必要であると認識する彼は、エレメントアローを3本、後退し体制の立て直しを図るSINN達を狙うレッサーヴァンパイアへきっちり決めた。
 矢の補充を叶望に行ったセルゲイは、上空へ舞い上がる。
 上空には、ティファニーと翼がおり、セルゲイを待っていた。
「私達に断罪の権限がない以上、クドラクへ当てることは得策ではないわ。私も射程を延ばすこと自体は可能だけど、範囲があることを考えれば、2人の役目は重要よ」
「クドラクを避けつつ、効果的な援護、か。確かに直線に延びるフルメンが的確だな」
 ティファニーの見解に対し、セルゲイが頷く。
 テムジン、ブリギッタの狙撃が『陽炎の軍勢』、取り分けサブナックに集中しており、狙撃に気づいたサブナックは馬を高速移動させ、逃げの体勢に入っている。
「彼らの狙撃を的確に決めるには、重要だわ。特にあなたは多くフルメンをメモリーしている。レッサーヴァンパイアへの決定打を与えられる」
「ああ。レッサーヴァンパイアを優先的に狙うことでクドラクの指揮系統の混乱も狙えるからね」
 ティファニーに応じる翼。
 このフルメンによる射程外からの攻撃の指揮が執れるのはティファニーがそれだけその能力に長けるからであり、その攻撃の意図を理解する2人もその能力が無視出来えないものだからこそ、なしえるのだ。
 夜魔の身体を有し、高い再生能力を持つレッサーヴァンパイアであっても、極められたフルメンを笑い飛ばすことは出来ない。
「良かった、成就決まった‥‥!」
 ほっとした呟きを発するアルベルト・ルードヴィッヒ(sa0074)のハレルヤが運良く成就され、アスケンションの効果でヴァンパイア達にフルメンで致命傷を受けるレッサーヴァンパイアを確実に滅ぼす。
 けれど、レッサーヴァンパイアを守るべく、クドラクがアルベルトへ殺到する。
 しかし、真幌羽 鈴鹿(sh5555)のボムタンクパペット達が黙っていなかった。
 パペットが何か仕掛けると判断し、上空へ逃れた魔神達の代わりにとばかりにパペットボムを起こす。
 その爆発は、5回。
「妾が出来ることはこれまでじゃ」
 ボムタンクパペットによる効率のよいダメージを与えた鈴鹿は無理することなく、ボムタンクパペットを後方へ下げ、狙撃手のいるラインまで鈴鹿は後退した。
「高速移動の効果時間は有限、また隙が全くない訳ではないならば、その瞬間を狙うのが得策でしょう」
「無論。前線を思うならば、我々の火力支援は重要と考える」
 ブリギッタの言にテムジンが頷く。
 サブナックは、アンネリーゼの真名看破を恐らく恐れる筈。
 真名が看破されることは、魔神にとっては致命傷だ。
 なら、それを利用するしかない。
 妹はマイアに守ってもらっているが、自分が彼女へ指一本触れさせない。
 ブリギッタは敢えてアンネリーゼに突出をと連絡した。
『分かりましたわ。わたくしも目視の為にこの身を賭しますわ』
 アンネリーゼの答えは明瞭。
 姉を疑うことなど、ない。
 マイアがアンネリーゼを守るように動きつつ、けれど隙を見せる挙動を行うと、サブナックは前進してきた。
 すぐさまマイアがフォローに入る。
 回避力が高いマイアを上回る的確さで剣が振るわれている所を見ると、何らかの悪魔魔法の恩恵があると見ていい。
 能力的には、詳細を知らないウァラクかクロケルの───
 分析するアンネリーゼはマイアに守られながら、サブナックの真名を見る。
 映ったビジョンより推察を始めようとするが、エキドナがサブナックの援護の為に前進してきた。
 だが、それこそある意味狙い通り。
 隼人がアーサー・ラヴレス(sa4830)と共に駆け込んできていた。
 狙いに気づいたサブナックがすぐさま翻そうとするが、テムジンとブリギッタの銃はタイミングをずらしたポイントショットEXを浴びせることで火力を絶え間なく集中、援護を許さない。
「うらぁぁぁぁ!!!!! 例え97Eのぷるるんでも揉んだ後は容赦しねえ!!!!!」
 容赦はしなくていいけど、揉まなくていいだろ。
 アーサーはそう思ったけど、別に悪魔だからと思い直し、バックルで決めポーズ。
 エキドナの胸をしっかり揉んだ後、強烈な攻撃を息つく隙も与えぬ隼人に続くアーサーは、渾身の力を込めたパワーショットでグングニルを投擲する。
 最早息も絶え絶えといった様子のエキドナがその一撃を受けて浄化していく。
 その背後のサブナックも絶え間ない狙撃を受け、風前の灯といった状態だった。
「あなたは、文字通り『城』なのですわね」
 アンネリーゼが看破したその真名を保介は躊躇うことなくエクソシスムへ盛り込む。
 放たれたメギドに抗う術もなくサブナックは焼き払われた。
 罵声を飛ばすウァラクを見る保介。
 これを突破すれば、封印への道も開ける。
「介入がないといいが‥‥」
 アーサーが懸念事項を口にする。
 この封印の目覚めが予期せぬものであり、どの軍勢も狙うものならば、カリス(sz0009)が黙っているだろうか、いや、姿を消しているアリア・アンジェリーニ(sz0004)がもしかしたら───
「今は封印確保を優先しましょう」
 敵が来ようとも討ち、確保するのみ。
 保介は、何よりも封印の確保を目的とし、動く。

●すべきことは───
「ルークス教のパラディンです。助けに来ました! 動けない方は、声を!」
 九面 あずみ(sn7507)の声が拡声器に乗って響く。
 ウォルンの魔の言葉は拡声器を介しては発揮されないとしても拡声器で広範囲で呼びかければ、効率的だ。
『この先に、ヴァリアントヒューマンとなってしまった人がいるわ。気をつけて』
「ありがとうございます。まずは、対話したいと思います」
 シオン・エゼキエーレ(si6186)が遠隔通信パペットから寄せてくる情報に実和 真朋(sn6429)は返答する。
 『黒い霧』の濃度が一層濃くなる寸前の場所にいるシオンは、護身のにょろにょろパペット以外のパペットを内部に送り込み、内部で活動するSINNのサポートに徹しているのだ。
「説得が間に合えばよいのですが‥‥」
 真朋は小さく溜息をつく。
 万が一の時はフリーズパペットで強化されているパペット達に凍結効果を付与してもらい、無力化するしかないが、そうなれば、元に戻れる可能性は低くなる。
『‥‥今は、出来ることをしましょう。それしかないわ』
 真朋と通信するシオンの声が響く。
 頷く真朋の隣であずみは、目を閉じる。
(私達が、必ず守る)
 何故なら、『あなた』は、胸に希望を持つ『人間』だから。

 クローディア・エヴァーツ(sa0076)は、辛抱強い対話を重ねていた。
 今、この人達に必要なのは、心だ。
 そう思うからこそ、クローディアは彼らの負を受け止めることを選んだ。
「私は、本当に、救えてるのか分からないのよー‥‥」
 クローディアが、ぽつりと呟く。
 共に行動するリュールング・アマーリア(sg1023)は、彼女もまた不安なのだと知っている。
「少なくとも、僕はそう思っているよ。だって───」
 僕は、君を守る為の行動をしていない。
 微笑むリュールングの言葉は、彼が奏でるハープの音色よりクローディアへ優しく染み渡った。

 『非科学救助隊デクノボイジャー』───茂呂亜亭 萌(so4078)が、どうにかならないのかとぼやくこのチームも救助活動を続けていた。
 濃い『黒い霧』内部では、予想以上に視界が悪い為、ミニバンや救命のオフロードバイクを積極的に使う作戦は見送られたが、それらがなくとも十分な救助活動が出来ている。
「落ち着いてください。大丈夫ですよ」
 荒井 流歌(sp5604)が穏やかに笑い、サナティで精神ショックを解消させ、落ち着かせる。
「今はここから離れましょう。先導しますよ」
 萌がそう声をかけ、立ち上がらせる。
 また、碇矢 未来(sp5129)が、導くようにボードを掲げ、行く先を確かなものにしていく。
 と、その行く先を塞ぐように道端でブツブツ呟いている一般人が目に入る。
 ヴァリアントヒューマンか、と思うより早く、ジェローム・モローアッチ(sc1464)が歩いていった。
「大丈夫。私達が君の安全を約束しよう」
 まだヴァリアントヒューマンへ至っていないと見抜いたジェロームは、心療を行うべく言葉を投げる。
 バックアップするのは、萌、未来、流歌の音楽。
「とにかく、今は僕達についてきて」
 ニア・ルーラ(sa1439)がほっとした様子の一般人へ声をかける。
 テスラ軍団の護衛だけでなく、ゆるキャラパペットの咆哮で皆の緊張を解すニアは、一般人と共に濃い『黒い霧』からの脱出を急ぐ。
『どう? 大丈夫?』
「今の所、大丈夫。何とかなってる」
 ガンシップパペットを用い、情報変化にも対応するミラベルからの通信に未来は答えた。
 避難は、もうすぐ終わるだろう。

 壱子は、敢えて自らが割り出した避難場所へ身を置いていた。
 一般人を運んでくるSINNの補佐にはパペットのクロやチビを派遣し、避難場所に迷いなく到着出来るようフォローし、場合によっては自らもゴンスケに護衛してもらいつつ、出迎えた。
(こんなことになってるんだもん、助かっても不安だよね)
 そう考える壱子は、不安に怯える人々へ積極的に声をかけていく。
 壱子の英語は、拙い。
 けれど、心配する表情は本物だ。
「俺も手伝うよ。‥‥内部も目処がついたからね」
 不安に怯える人々の数を思えばとクリシュナが声をかけてきた。
 クリシュナは時として横転していた車をウィースで戻し、取り残されていた人の救助も行っている。
 パラディン正装を身に纏ってのその行為は、人々の確かな希望。

 珠里は心療を行い、ヴァリアントヒューマンを戻す行為に尽力していた。
 既に多くの一般人がこの濃い『黒い霧』の内部から脱出をしている。
 けれど、彼らも救わなければ、彼らは堕ちてしまう。
 彼らを刺激しないよう配慮する珠里は、対人鑑識能力から心の闇のヒントを見つけ出し、適切な言葉をかけることでその闇を晴らしていく。
「‥‥あ、ど、どう、かな‥‥」
 ミラベル本人と合流した珠里は、現在の状況を確認する。
 彼女の傍には一般人がおり、恐らくミラベルが心の闇を晴らしたであろう一般人であるというのは想像がつく。
「大丈夫よ。この人で最後だわ」
「良かった‥‥」
 ミラベルの言葉に珠里は安堵に微笑む。
 夢羊パペットのシャオユンのフォローを借りる一幕もあったそうだが、ミラベルもまた、心療を行い、心の闇を的確に晴らしていたようだ。
 彼らを連れ、壱子が出迎えてくれた避難場所へと向かう。
 クリシュナがウォルンを用いた言葉で彼らの心の安定を図っている。
「行きましょう。まだ、すべきことがあるわ」
「‥‥うん」
 ミラベルの言葉に頷く珠里。
 2人は、避難場所へ向かって歩いていく。

 こうして、人々の避難が完了した。
 特に功績が大きいのは、やはりパペット達を派遣、短時間で捜索活動を行うことで確実な情報を得て救助活動の効率化を考えたミラベルだろう。
 その情報を形にし、全員への共有化を図った壱子、自身の出来る範囲を考え一般人へウォルンを用いた救助活動をしたクリシュナ、傷ついた者へ救いの手を差し伸べ、ヴァリアントヒューマンの心の闇も晴らし続けた珠里の貢献も大きなものだ。
 けれど、彼らは知っている。
 これは、全員の功績、誰かが欠けても出来なかったことである、と。

●その危機は駆け巡る
 アメリカ全土に及ぶTV局へ向かうと、サラディンとガディンはパラディン正装を示し、すぐさま緊急ニュースを流すよう掛け合った。
 けれど、唐突な行動であったことは否めず、片言ではあったがガディンがウォルンでTV局の上層部にも打診するが、中々色よい返事が出ない。
 パラディンと信じさせることは出来たものの、彼らに困惑を与えてしまったことは事実である。
「時間がありませんね」
 一刻を争う事態である、とサラディンがユビキタスを見る。
「止むを得まい」
 ガディンが促すようにユビキタスを見る。
 頷いたユビキタスはマシンダイブを成就し、TV局の電波をジャックした。
「落ち着いて聞いてください」
 パラディン2人を背後に控えさせるユビキタスは、アメリカ全土に向け発信する。
 核の発射の危険性。
 その発射には、人ならざる存在が絡んでいるということ。
「すぐには信じられないかもしれませんが、今はこの言葉を信じて国外へ───」
 最悪の事態が回避する為の言葉を紡ぐ。
 TVの向こうの人々がこの言葉を信じ、核の脅威から逃げられるよう。

●伯爵を滅ぼせ
「動けぬレッサーヴァンパイアとクドラクの対応は任せておけ。我らの領分ではない」
 ラミア・ドルゲ(sg8786)がクレスニク達を見る。
「任せろよ。連中が何を企ンでようがやるこたァひとつ‥‥ゴミ掃除だ」
 そう笑うのは、鷹宮 奏一朗(sp8529)。
 彼は、敢えてこの場に残ることを選んだクレスニクだ。
 多くのクレスニクが内部に向かった為、手薄になりかねない場所で暴れ、数を減らすことで最終的に勝つことを選んだのである。
「そうね。オリジンならば、超再生を封じられるのは私達クレスニクのみ。私達が当たるわ」
 応じるアリス・フリュクレフ(sq1159)が、奏一朗と共に地を蹴る。
 先に到達したアリスの攻撃を回避したヴァンパイアカウント、けれど、奏一朗の拳を回避出来なかった。
 そう、テンパランスリングで格闘能力を引き上げていたのだ。
「超再生がないなら、動きやすくなるな!」
 アーク・カイザー(sq0753)が上空から回り込むと、ユストゥーラの炎の息をヴァンパイアカウントに浴びせた。
 きっちり2回、超再生以外では再生出来ない炎を浴びせたアークと入れ替わるようにして結氷がヴァンパイアカウントの頭上よりネブラの吹雪の息を浴びせる。
 その意図は、凍結効果の付与。
 ダメージの嵩みもあり、ヴァンパイアカウントに運良く凍結効果は作用する。
「く‥‥!」
 忌々しげなヴァンパイアカウント。
 結氷が警告の声音を発した為、新手としてエントランスに雪崩れ込んだレッサーヴァンパイアもクドラクも自分達の戦況を良くしないと優れた知性で理解したのだろう。
「レッサーヴァンパイアは、こちらで引き受ける。ハーケン殿も加勢をお願いしたい」
「頼むんだな、これがな!」
 キョウの言葉を受け、ハーケンがヴァンパイアカウント対応のSINNへ加わる。
 クレスニク達の攻撃を受け、ヴァンパイアカウントはその持ち味である超再生を封じられているなら、この再生封じの剣が手助けになる筈だ。
「あいつを狙え!」
 レッサーヴァンパイアの怒号と共に空を飛ぶ能力を持つクドラクが吹雪の息で広範囲に凍結効果を及ぼすことで戦闘能力を殺ぎに掛かる結氷を狙う。
 その前に立ちはだかるのは、雫石 雪凪(sp8252)だ。
 アニムイグネの恩恵で咆哮を上げた彼は自身への攻撃に対する命中率を下げると、クドラク達に立ち向かう。
「結氷、躊躇うなよ」
「分かってるよ、雪凪」
 雪凪の言葉に結氷はこの状況でも微笑む。
 命中率を下げているとは言え、殺到するクドラクが取り囲めば、対応しきれない攻撃も出てくる。
 けれど、雪凪は構うことなくストライクを放つ。
 それこそ結氷を守る行動であり、彼がその力を十分に発揮出来る機会を与えることだと知っていたからだ。
「あと、任せるぞ」
 雪凪は短い言葉と共に離脱、同時にネブラの吹雪の息が宙を飛ぶクドラクを襲い、地へと落ちる。
「捕縛はもう難しいだろう。これ以上はこの場の手に余る」
 きちんとそれを理解していたアシェンがそう言うと、彼女の言葉の意味を理解したパラディン達が断罪対応へと移る。
 捕縛した者とそうでない者の差、それはクドラク個人の抵抗の激しさもある。
 解呪を行ったクドラクもアシェンは対人鑑識能力より比較的心が折れている者を選んでいた。
 ‥‥後の尋問のしやすさも考慮して。
「ま、どのような相手であれ、我が『技巧』の前に口を割るとは思うがな」
「あれはやめた方がいいんだな、これがな!」
 いかにもそれっぽく言ったアシェンの言葉を耳に拾ったハーケンが彼女の『技巧』がとてもマニアックかつ人を選ぶものであるとし、するなと暗に言った。
 無念そうなアシェンが視線をやると、ヴァンパイアカウントは風前の灯、そろそろ出番と前へ進んだ。
「アシェン殿もオリジンへ。我々が確実に討つ」
 キョウがそう言うと、ラミアもアシェンに任せろと頷く。
 礼を言ったアシェンが急ぐと、ヴァンパイアカウントはハーケンの一撃で霧散化していた。
 すべきことは、ひとつ。
 ハレルヤを成就させたアシェンは、霧散化のヴァンパイアカウントを聖なる光で完全に仕留めた。
「悪いが、俺達は負ける為に残った訳ではないんだな、これがな」
 魔剣を構えるハーケンが残るレッサーヴァンパイアとクドラクに向き直る。
 彼らが辿る道は、ヴァンパイアカウントと同じだ。

 エントランスでの戦いは、圧倒的な勝利で幕を閉じる。
 防具を破損し負傷を負っている者もいるが、戦闘終了後、余力あるエンジェリングに効果上昇のサナティを依頼すればその傷は全て癒えるだろう。
 ハーケンが役割を理解し、クレスニクの為の道を作った、それは内部の戦いを楽にする大きな力となった。
 また、この戦いを楽にしたのはキョウ、結氷が凍結効果の付与を効率よく行った為である。
 クドラクの捕縛を行い、今後の情報収集にも貢献するであろうアシェンは、ヴァンパイアカウントの浄化も行った。
 本人的にはネタが色々仕込めず、しかも『技巧』も振るえなかったが、そこは我慢してもらおう。

●数は多く、されども負けず
「俺達は、負ける訳にはいかない!」
 翼のフルメンが効率よくレッサーヴァンパイアを狙う。
 防ぐ術のないその攻撃にレッサーヴァンパイアとクドラクの陣形は、乱れに乱れていた。
 後方に下がったアンネリーゼがリムーベマレディクタの支援でクドラクの解呪を行い、情報を得る必要性を感じたSINN達によって捕縛される者も出てきた。
「このような状況では仕方あるまい」
「だな。あのくそガキが来るかどうか分からんが、来るまではこいつらを相手にするか」
 バイオレット・エアレイダー(sa7966)に応じるのは、御剣 龍兵(sa8659)。
 龍兵はともかく、バイオレットはグラディウスの効果時間の為、効果時間が終了しては一旦後退し、成就して戦線に戻るを繰り返している為、中々リズム良い攻撃が出来ているとは言えないでいた。
 けれど、クドラクを断罪出来るのはパラディンだけである。
 とにかく、捕縛出来ない者については断罪もやむなし、と2人はクドラクへ立ち向かっていた。
 まだウァラクにより悪意を煽られた個体がおり、尚も敵意を剥き出しにした攻撃が繰り出されるが、トウマ・アンダーソン(sn7273)は、銀のナックルを装着し、ストライクを叩き込んでクドラクへ効果的な攻撃を浴びせていく。
 そのトウマの側面に回り込もうとするクドラクを来海 朽葉(sp4469)が殴り飛ばす。
 既に手袋に仕込んだ鋼糸は戦いの最中機能を失っているが、拳は健在だ。
「最後は、任せるぜ?」
 朽葉が視線をやった先には、ギィ・ラグランジュ(sf9609)がいる。
 マリアの護衛として待機していたが、彼女の護衛が多く、また、彼女自身がギィにそれをと望んだ為、前線に上がってきたのだ。
 結界の外で魔法成就を行った彼は、クドラクにオーバースイングEXを叩き込む。
 既に負傷していたクドラクであった為、その末路は言うまでもなかった。
「助かりました」
「まずはここ、守りきろうぜ!」
 短く礼を言うトウマにギィは応じ、クドラクを確実に討つことを目標とする。
 エキドナのコンゲラーティオが的確に痛めつけていた為、トウマを含めSINN達が所持する盾は既に機能を失っているものがほぼ全てだが、戦う意思が機能していない訳ではないのだから。
 前方では、ニーチェ・シュートラー(sp6098)が足技で翻弄させつつ、ジル・ディンフェルダ(sp9610)、オズウェル・クローチェ(sq1494)と共にレッサーヴァンパイアを掃討しにかかっている。
「フェンリルに足る影とならない場所というのが、もどかしいですが‥‥」
 オズウェルが拳銃で牽制しつつ、漏らす。
 フェンリルは、自らの影を狼とし使役するルーガルだが、影のない場所では成立しない。
 この為、『黒い霧』内部において光源を用意してなかった為に影となりえず、フェンリルで影の狼を作り出すことが叶わなかったのだ。
 けれど、出来ることをと思うオズウェルは、ジルがサーベルで追い立てたレッサーヴァンパイアを更に牽制し、一箇所へ集中するようにする。
「頃合いでございますね」
「キュ〜っと縮みあがっちゃう〜ん?」
 ジルが微笑んだ瞬間、ニーチェの口から吹雪の息が放たれる。
 ジルとオズウェルが協力して一箇所に集められたレッサーヴァンパイアに対し、ニーチェは吹雪吐息の魔法薬を飲み、機を伺っていたのだ。
 巻き込まれたレッサーヴァンパイアの多くが灰となり、滅していく。
 生き残るレッサーヴァンパイアの抵抗をジルがホイップに切り替え、彼らを確実に滅ぶよう足止めする。
 レッサーヴァンパイアはすぐさまホイップを破壊するが、戦いにおいては一瞬が致命的とばかりにSINN達は滅ぼしていく。
「僕達が、君達の相手だよ」
 酒匂 博信(sh4156)が、神楽 マナ(sf8860)と共にフルメンの被害を逃れていたレッサーヴァンパイアを足止めを主な目的としていた。
「相手の方が上手でござったなぁ」
 マナは反対が出ようとも紅グループと一時休戦し、吸血鬼勢力を滅ぼすべきと考えていたが、彼らはそれらに対する手は打ってきていた。
 勢力ごとの撃破を考えていた者や戦闘調整を考えていた者にとっては誤算とも言える。
 けれど、戦いなったならば、勝利の為にその武を振るうのみ。
「マイアがお守りしますので、一旦後方へお願いしますです!」
 マイアが負傷が目立ち始めたSINNへ声をかけ、後退させる。
 絶対に負傷させないというその決意を持って敵の攻撃を受け止める彼女に傷を与えられる敵が存在しない。
 結界の外にさえ出れば、効果上昇のサナティが有効である。
「もうすぐですー。皆さん無事に帰れますようにー!」
 メイリア・フォーサイス(sa1823)の効果上昇のサナティが成就され、多くのSINNの重傷が一瞬にして癒える。
 そうして、彼らはまた前線に戻る。
 結界の外にまで出るという意味で手間はかかるが、多くのSINNがこの作戦に参加している為、離れている間のフォローが出来るからこそ可能であるとも言えよう。
 けれど、そうした行動が可能であるのも保介がサブナックの知識を完全なものとしており、結界の大よその範囲を過去の任務から見当をつけていたからこそ出来るものだ。
 メイリアがサンラファエルの機動力も生かし後退の補助も行うこともあり治癒もスムーズだ。
 しかし───
「おかしいわね」
 ティファニーがふと、漏らす。
「エヴァーツ殿も気づきましたか」
「遅滞戦闘を行っている可能性を否定出来ない」
 既に気づいていたらしいブリギッタとテムジンがティファニーにそう声をかけた。
 サブナック、エキドナと倒れた『陽炎の軍勢』サイドの魔神はウァラクとクロケルのみ。
 それだけ考えれば、前線にいる隼人が地力で圧倒出来る筈。
 けれど、ウァラクも当初の凶暴性をどういう訳か抑えようとしているし、クロケルに至ってはまだ残る吸血鬼勢力を遮蔽物に動きつつも積極的に前へ出てこない。
「遅滞戦闘‥‥まさか」
 特殊通信機で彼らの会話を聞いた保介は、その可能性に気づいた。
 幹部クラスの魔神は、肉体構成能力を持っている。
 そうなると、(この『黒い霧』内部ではそもそもディプレンドが機能していないかもしれないが)気づくことはほぼ出来ない。
「‥‥内部構造を考えれば、見つけること自体はそう難しくはないだろう」
 建築知識に長ける叶望が、肉体構成能力を持つ魔神が内部侵入しているとしたら、迷うことなく中を歩き、封印に辿り着いている確率の高さを指摘する。
「クソ! そこを退け!!」
 隼人が気づかれたことに気づいた為にウァラクが蛇を繰り出してくる。
 その攻撃自体を避けるのは隼人にとって造作もないことだが、攻撃に対応する分前進は阻まれる。
 まだ、サブナックの魔法の影響下にあり、封印確保の為を思うなら温存しておきたい。
 既に腕輪の効力も終了している為、クロケルの大津波の幻影が来れば、それも脅威と───
 追撃を許さないように叶望の狙い澄まされた弓矢がウァラクを貫く。
 隼人が後を追えるよう、何が最適化を考慮し、弓矢は放たれている。
 妹の歩夢が兄の弓を確実に生かす為、勝負と成就させたグラキスを乗せた弾丸がウァラクへ決まると、ウァラクの動きが緩慢なものとなった。
「殺す‥‥俺は、オマエ達を───」
 凛が牽制で放つレージングチェーンを砕くウァラクの執念は、ここで終わる。
 機を見たラルフ・フェアウェイ(sg4313)がレティシアよりその意を受け、前進し、付与したマギア───1回は失敗したものの、2回目で成功し、『魔的』と『浄化』を付与されていたトゥナックルの一撃を喰らって、ウァラクは浄化されだのだから。
「早く行け!!」
 ラルフの叫びと共に隼人が前へ進もうとした、その時だ。
「これは‥‥困りましたね」
 困ったように笑う赤毛の青年が塔から出てきた。
 ケヴィン・エルフィス、人間社会でまだ失われない男。
 そして、その手には、『第三の封印テアテラ』がある。

●歌劇望む『血の伯爵夫人』
 本性を現したエリザベートにエルマ夫人が寄り添う。
 その手にブリーフケースがあり、それが核のフットボールであることを示している。
「エルマ夫人の保護をお願いするのですよ!」
 その言葉と共に急降下してきたのは、ヒメコだ。
 ラーの小型擬似太陽は、この相手にぶつけるべきであると判断したのだ。
 恐らく、ラーをぶつけることも並大抵ではないが、退くことは考えていない。
 援護するようにラティエラ・テンタシオン(sb6570)の聖獣カーシー、シエルが咆哮を上げた。
 一般人であるエルマ夫人ならば、シエルの咆哮に無防備、この場から離脱するのではないかと試したのだ。
 けれど、エルマ夫人はヒメコがラーをぶつけないようその手を彼女に伸ばそうとする。
「ヴラドの可能性を疑うべきだな」
 ヴァンパイアデュークの対応をマルセル・ロン(sq1413)に託したイーゴリが駆けつけてきた。
 イーゴリは、オリジンはヴラドと呼ばれる呪いを扱うことが出来、そのヴラドは物にも施すことが出来ることを口にする。
「一般人であっても今は人ならざる影響が強いと言うことか」
「恐らく、夫人もヴラドの影響を脱すれば───」
「男とは、反吐が出る物体ですこと」
 ラティエラの看破に頷くイーゴリに絶対零度の声音を発したのは、そのエリザベート。
 つまり、それは正解を意味する。
 セイディへの対応との温度差を見るに女性に対する愛情は深いが、男性は物体呼ばわりする程度に気に入らないらしい。
 けれど、その瞬間だった。
 エルマ夫人が、突然バランスを崩す。
 同行していたマリクの黒衣パペット、黒曜石(ヘイヤオシ)がエルマ夫人を軽く突き飛ばしたのだ。
 黒衣パペットは、それ程高い能力を持つパペットではない。
 だが、不意の攻撃は、エルマのバランスを崩すに十分だった。
「忌々しいですわね」
 気分を害するエリザベートがその手で黒衣パペットを裂いた瞬間、セイディが星十字のナックルを振り抜いていた。
 星明りのような淡い光を帯びたナックルは、ストライクとしてエリザベートに叩き込まれる。
 超再生を封じた瞬間を狙い、ヒメコがラーの小型擬似太陽をエリザベートに叩きつけた。
「く‥‥!」
 呻くエリザベートがエルマ夫人を人質に取ろうと手を伸ばすが、その腕が絡め取られる。
 クドラクの解呪を終えたジェラールが、髪飾りに仕込んでいた鋼糸を繰り出したのだ。
「生憎、お呼びではなくてね」
「そういう方を躾けるのも楽しみですのよ」
 ジェラールに応じたエリザベートがその鋼糸の絡めを髪飾りの破壊と共に脱する。
 しかし、その合間に事態は大きく動いていた。
「アメリカならば、ゴールドグラブ。そうだろう?」
 アントーニオ・インザーギ(sa5938)が、ニヤリと笑う。
 バランスを崩したエルマ夫人からブリーフケースを奪取したアスランが、アントーニオに放り投げたのだ。
 重量あるブリーフケースは弧を描き、アントーニオは見事キャッチ。
 ちなみに、『空間』内の守備のポジショニングを『神出鬼没』なものとし、華麗な『跳躍』にて対象をガッチリ『束縛』するグローブの力を借りてのことらしい。
 まさにアントーニオゾーンとほくそ笑むアントーニオは、すぐさま駆けつけたナタクにそれを渡す。
 レッサーヴァンパイアが追う前にナタクはメタスタシスで離脱した。
 忌々しげなレッサーヴァンパイアは、解呪され、捕縛されているクドラクを睨む。
「ま、ヴァンパイア相手にマタタビにはなれへんけど」
 郡上 浅葱(sd2624)が、彼らを守るべく立ちはだかる。
 既にエルマ夫人が通常の状態ではないことは判明しており、その状態をどうにかしなければ言葉をかけても仕方がないと判断した浅葱は、サンラファエルのアエルによる乱気流を展開する。
 乱気流に気を取られている間にメーコが背後から強襲、エルマと浅葱が援護に入る。
 オリジンが2体いる状況、速やかにレッサーヴァンパイアは討つ必要があると判断した宵蓮もグラディウスを成就、メーコの攻撃が的確に決まるよう補佐に入った。
「逃さないでね♪」
 抵抗激しくも最終的にエルマがハレルヤを効果時間を拡大させて成就させれば、その光が収まる頃、範囲内に足止めされたレッサーヴァンパイアは全て灰と化していた。
 直後、ヴァンパイアデュークが楽しそうに笑う。
「太陽が万能だと誰が決めたんですの?」
 マルセルのラーを4度喰らって尚、ヴァンパイアデュークは立っている。
 高位のオリジンであるならば、直接ぶつけた方が効果的であるというイーゴリのアドバイスを受け、何とかラーを当て続けていたマルセルは、ブランシュ・ブランシャール(sp4332)からラーのメモリー回復を受ける。
「まだ‥‥撃てる、から‥‥」
「ありがとうございますの。この方はこちらで引き受ける以上、ラーを出来る限り効率よく運用したいですから」
 ブランシュの言葉にマルセルは微笑む。
 ラティエラが天使ラビエルの環を介しサナティをチャージしており、尚且つ彼女のサナティに余力もある。
 回復薬の備えも十分ならば───このサナティはメモリー回復に使うべきだろう。
 そう判断したブランシュは、味方に守られるようにして、自分のすべきことに専念する。

●一手に崩れる侯爵
「守ってはくれているのでしょうが、近づけないのも考えものですね」
 須経 蘭華(sb0118)が溜め息をつく。
 レッサーヴァンパイアとクドラクの事実上の挟撃を受けている為、その数よりも位置的な問題によりSINN達は対応に苦慮していた。
「大統領の確保を!」
 レッサーヴァンパイアを相手取るジョルジェ・フロレスク(sp6083)が叫ぶ。
 手間取れば、大統領がブリーフケースを開けてしまう確率が高まる!
 けれど、そこにレッサーヴァンパイアを従えるヴァンパイアマークウィスが立ちはだかった。
 ユーチャリスの髪飾りに仕込まれていた鋼糸を破壊し絡めを脱すると、彼らに足止めを命じる。
 ベルトワーズと共に進んでいたオルフェオ・エゼキエーレ(si1323)は、この敵の排除が仲間と大統領を守る為の最優先事項と判断、攻撃に転じた。
 ただし、その瞬間を待って。
「油断し過ぎだねェ」
 嘲笑と共にヴァンパイアマークウィスに浴びせられたのは、ルナールの蹴り。
 透明化していた彼は、ヴァンパイアマークウィスが油断するのを待っていたのだ。
「ご助力、感謝致します」
 二打不要のナックルを構えたオルフェオがフォースで強化された一撃をヴァンパイアマークウィスに浴びせた。
 その力に抗われたとしても、アンナリーナには絶好のチャンス。
「あなたは耐えられるかしらね?」
 叩きつけられたのは、ラーの小型擬似太陽。
 超再生を封じられているヴァンパイアマークウィスにとって、それは恐るべき脅威。
 思わず悲鳴を上げたヴァンパイアマークウィスの異常を察したディオンがブリーフケースに手をかける。
「いけない!」
 アルフォンス・ヴィヴィエ(sf9647)が聖獣フェニックスを妨害に向かわせる。
 サンクトゥアリィの成就は、彼が人のままであるなら最終的な意味がない。
「私は、決断しなければならない」
 聖獣フェニックスの妨害を物ともせず、また、天狐の尾で転移し、蛇眼のコンタクトレンズを用い、制止しようとしたルナールを人とは思えない力で振り払ったディオンが、そのブリーフケースを開けた。
 しかし───
「何故、動かない?」
 何も、起こらなかった。
「‥‥間に合った、の‥‥」
 シャーロットだった。
 ホワイトハウスに来る前、核のフットボールを調べていた彼女はクドラクの対応をパペットに任せながら、アルケミーを行ったのだ。
 それを開けただけでは核は発射されない。
 発射の意思は電波に乗せて統合参謀本部に伝わり、全てはそこから始まる。
 ならば、その電波を遮断すればいい。
 シャーロットは、周辺の『空間』内にある『電波』に『干渉』し、『遮る』のを目的としたアンテナを作成したのだ。
 何かするのではとクドラクの猛攻を呼んだ為、パペット達に被害が出ているが、シャーロットは何とかアルケミーを成功させ、この瞬間に用いたのである。
「ありがとうございます、シャーロットさん」
 エンリコが彼女にそう言った時には、鷺沼 妙子(sp1602)の弓が放たれた。
(アルケミーの効果がある内に仕留めなければ全部無駄になる)
 主にレッサーヴァンパイアを確実に仕留めていた彼女は、シャーロットのアルケミーが有効である内にそのブリーフケースの無力化を試みたのだ。
 核のフットボールとされるブリーフケースは見事射抜かれ、爆音の勢いに驚いたディオンが尻餅をつく。
 その隙にアビス・フォルイン(sa0959)がディオンを取り押さえた。
(‥‥エヴァンゲリムでは、白、か‥‥)
 被憑依者、ディアボルスの擬態、半魔、ディオンはいずれも該当しない。
 ならば、ルナールを振り払った腕力も考えれば、人ならざる力が作用して───
 ふと、アビスは、ブリーフケースから零れ落ちた機器を見る。
 妙子の矢が貫いたそれに何か紋様が描かれていることに気づいた。
「大統領自身のあの力は、オリジンのヴラドによるもののようです」
 駆け寄ったイーノク・ボールドウィン(sd3868)が、アビスにそう告げた。
 たった今、ヴラドにより一般人以上の力を得ている可能性の連絡があったのだ。
「なら、心を操る呪いも現実的だね」
 アビスは溜め息をつき、執務室の外のクドラクを排除したナタクにブリーフケースを念の為託す。
 夫人がブリーフケースを所持していると連絡を受けているナタクは、確保の為、すぐさま執務室を出て行った。
 この間も戦闘は続いている。
「ふふ、私を滅ぼせるかしらね?」
 ラーを叩き込まれ、けれどもヴァンパイアマークウィスは滅びない。
 余裕を見る限り、死を免れる力があるかもしれない。
 が、アンナリーナはサナティでラーのメモリーを回復してもらいながら、言う。
「あなたは、何回太陽をぶつけられたら滅びるのかしらね」
 既にレッサーヴァンパイアの多くが灰となり、クドラクがその後を追っている。
 シャーロットのパペット達は一部健在で、フリーズパペットの凍結効果付与を重視とした支援もあり、パラディン達が確実に断罪している。
 彼らの反撃はあるものの、ユーチャリスが成就させたフェンリルの影の狼はSINN達への集中攻撃を許さず立ち回る為、アルフォンスのサナティで対応出来る範囲でしか負傷を負わせられない。
 その圧倒的優位をアンナリーナは示している。
 掲げるラーの光だけでも十分腹立たしいだろうが、ぶつけることを主目的としているアンナリーナが、常に超再生を封じるよう立ち回るルナールの援護を無駄にする訳もなく。
 ヴァンパイアマークウィスは、その身が霧散化するまでラーの小型擬似太陽を叩き込まれた挙句、エクソシスト達が成就したハレルヤによりその身を浄化させられた。
 この後、ディオンは呪いを受け下僕となっていた事実が判明し、その影響から脱するが、これだけの事態を引き起こした責任は取らざるを得ず、大統領から退くことにはなるだろう。

 大統領は、確保された。
 ブリーフケースが開けられるもシャーロットのアルケミーがそれを無効化した為、この執務室から核発射の命令が出されることはなかった。
 側にいたヴァンパイアマークウィスもアンナリーナが中心となったからこそ滅びの道を歩んだ。
 ひとまず安堵するSINNは、並行される奪取任務の成功を祈る───

●それを確かなものとして
 ケヴィンを守るようにクロケルが舞い降りる。
「封印は奪われる訳にはいかない!!」
 陸奥 政宗(sa0958)が前に進み出る。
 本当なら、ウィースでの奪還が望ましいと考えていた。
 が、魔法成就がままならない空間では、ウィースの成就は全て失敗した。
 マリアの盾として敵は問わず全て斬る、そのつもりである。
「お引取りいただけませんか?」
 微笑すら浮かべるケヴィン。
「貴様にあるのは、死のみだ」
 アドリアン・メルクーシン(sb5618)が銃口を向けている。
 神の名の下滅ぼす為、それに迷いはない。
 だが、ケヴィンの微笑は崩れず、そのことが余計アドリアンの躊躇いを消し、フリージアが何とか成功させたマギアの効果を得た拳銃で攻撃を仕掛けようとした、その瞬間。
 ケヴィンが突然、後ろに退いた。
「残念ですわ。少し露骨過ぎましたか」
 媛 瑞玉(sd3404)が微笑んでいた。
 会話に集中している間にメタスタシスの転移でケヴィンの傍に行き、奪取を考えていたのだが、サブナックの魔法の影響下が続いており、メタスタシスが1回で成就しなかった為、瑞玉が何か仕掛けてくることを察したケヴィンは警戒していたのだ。
 瞬間、カウンターでクロケルの大津波の幻影が起こり、周囲のSINN達はその影響を受ける。
 クロケルの凍結効果付与を目的とした攻撃を受けて尚、政宗とアドリアンは立ち向かった。
 それは、『彼』を意識の外に置くことに繋がる。
 イングリッド・シンドラー(sb3753)の願う奇跡だったかもしれない。
 『彼』は、『黒い霧』に隠れて全てのアイテムの効果を使った。
 自然のものではない霧が動くことはなく、この内部も自然の力が作用しているかどうかも断言出来ない空間、けれど、土は彼の細心の注意で運ばれる足跡の痕跡を見逃してくれた。
 時間経過と共にいつその効果が切れるか分からないその状態は保たれ、『彼』という存在を導く。
 そう、この瞬間の為に!
「!?」
 その瞬間、ケヴィンの手の甲は斬られていた。
 思わず『第三の封印テアテラ』を取り落とすケヴィン。
 『彼』───隼人が手にしていたエクスカリバーの時間停止の力が作用し、その時は停められた。
「貴様!!」
 クロケルが姿を見せた隼人に襲い掛かろうとしたが、それは突き刺さる弾丸に阻まれた。
 ブリギッタとテムジンがその瞬間を待っていたのだ。
 その隙に『第三の封印テアテラ』を拾った隼人は、ある種の賭けで行ったメタスタシスが無事成功し後方へ転移する。
「マリア、お前の力が必要だ」
 隼人は、迷うことなくマリアへそれを渡した。
 頷くマリアが『第三の封印テアテラ』へ祈りを捧げる。
 まるで、それを待っていたかのように封印は光を帯び、同時に空間に何かが割れる音が響いた。
「今の、音は‥‥?」
「分からねぇが‥‥今は、何よりも優先することがあるだろ」
 驚くイングリッドに答えた隼人は、マリアを担ぎ上げた。
 この封印を奪われない為、隼人は前線に立ちたい己を封じたのだ。
 何が何でも『第三の封印テアテラ』は彼らへ渡さない、その強い想いを秘め───ヴォーロを成就した。
「皆頼んだぜ!!」
 隼人は何者の介入も恐れ、走り去る。
 『黒い霧』の内部、支部へ戻るにはどのルートが良いか。
 カーク・ルッフォ(sc5283)がそのスキルを生かし、導き出していたからこそ、それらは円滑に行えるのだ。
 時が動き出したケヴィンは、事の事態をすぐに理解した。
「困ッタナァ」
 その口調は、明らかに異質なもの。
 けれど、最早容赦をする理由はない。
 テムジンとブリギッタのポイントショットEXが決まると、ケヴィンの肉体が崩れ去る。
 現れたのは、大蛇を身にまとう赤い衣の異形───サマエル?
「ファルスですわ」
 サナティでクオヴァディスのメモリーを回復させてもらっていたアンネリーゼがそのことを看破する。
 ギルベルト・ブライトナー(si7759)がスピーカーパペットでそれを全体に通達し、同時に警告した。
「ユーリ、遠慮しなくていいから」
 そう告げられ、ユリウス・ブライトナー(si7758)は、イグニスを成就した。
「悪魔相手ならどっかんに遠慮はいらねーからな!」
 ダメージの色が濃くなってきたクロケルが体勢を整えようとするが、叶望の弓矢が翼の付け根に命中し、クロケルのバランスが崩れる。
 そのバランスが崩れたのをブリギッタは見逃さない。
「そちらはお任せしますゆえ」
「心得た」
 ブリギッタがクロケル対応の専念を他の狙撃手に伝えると、テムジンは了承の旨を告げた。
 ファルスであると看破されたサマエルは既に前線のSINNが対応に入っているが、自身の能力が高いのか或いは別の要素があるのかその攻撃は当たらない。
「マイアは、絶対に、守りきると決めたのです‥‥!」
 けれども反撃の牙はマイアが全て受け止め、誰かが深い傷を負っているということはないようだ。
「魔法成就に影響がなくなるなら、私達も前に出ましょう」
「もう俺達を縛るものは何もないね」
 更にここへ来て、ティファニーが翼と共に前線へ向かう。
 サナティと指令に集中していたが、彼女自身もまたニクスの使い手である。
「ウルサイナァ」
 面倒そうにサマエルが言い放つ。
 連携を円滑にするギルベルトのパペットの幾つかを破壊し、朽葉の遠隔通信パペットも落として後方支援の妨害にかかる。
 けれど、サマエルの狙いを分散させるように翼が注意を引けば、ティファニーが撃つ位置を変えてニクスを2発叩き込む。
 その要所を押さえるようにテムジンがポイントショットEXを撃ち抜く。
「先に仕上げさせていただきましょう」
 ロングロッドに凍結付与の効果があるのか、前線のSINNに攻撃を浴びせ、凍結効果を付与しているらしいクロケルに対し、ブリギッタは攻撃させないよう回数重視での射撃に切り替える。
「そのまま押し切ってくれ」
 カークがマギアを成就し、それに礼を言ったブリギッタの銃は、クロケルに仕上げの一撃を浴びせた。
「困ッタナァ」
 驚異的な回避力を持つサマエルも前線のSINNの執念とも言える攻撃に対応する余り、テムジンと歩夢のポイントショットEXへの対応が難しいようだ。
「目視に、条件があるのかもしれませんね」
 保介は注意深く見ていたからこそ、サマエルのそれに気づいた。
 よく見ると、サマエルは相手を観察する動きをしている。
 その動作に何か意味があるのではないか。
 立てた推察をすぐさま伝えれば、SINN達は後方からの攻撃を効果的に決めさせる為、彼らを目視させないよう立ち回る。
「隙を作るから、後は頼むぞ」
 叶望が弓を当てることを目的として撃つ。
 自分が仕留めなくとも、味方が必ず仕留める。
 彼は、それを知っていた。
「逃しはしない‥‥潰す、それだけ」
 叶望の弓を面倒そうに振り払ったサマエルに歩夢の弾丸が刺さる。
 兄の作った隙は、決して無駄にしなかった。
「任務を遂行する」
 テムジンの一片の容赦もない言葉と共に撃たれた弾丸。
 カークのマギアによって『魔的』と『浄化』が乗せられたその弾丸は、サマエルを貫き、消滅させた。
 捕縛されたクドラクを除けば、生きているのは自分達だけである。
「狼牙殿は、最寄の支部へ到着したそうです」
 やがて、支部の通信施設から隼人の連絡を受けたブリギッタが皆に言う。
 マリアと共にすぐに転移装置でルークス市国へ戻るそうだ。
 けれど、アリアもカリスも彼らの前に姿を現していないと言う。
 何か意味があるのかそれとも───浮かぶ疑念はあれど、『第三の封印テアテラ』は確保に成功したのだ。

 効果上昇のサナティを最高レベルで扱えるエンジェリングが多かったこともあり、SINN達は無傷での帰還だ。
 携わった多くの者が装備するものは破損と言える状態のものが多いが、激しい戦いがあって尚それだけで済んだのは、ブリギッタとテムジンの攻撃目標を設定とした狙撃を集中させる戦略があり、彼らがそれに集中出来るよう歩夢がフォローしたのが大きい。
 それも保介がモンスター知識を多く有し、全員への共有化を図ったのもあるだろう。
 全ての知識のフォローは出来なかったが、叶望が戦線の崩壊を防ぐ一助として大きく機能し、マイアが多くのSINNを守り抜いた。
 吸血鬼勢力の数の多さに対抗出来たのは翼のフルメンによるものであり、ティファニーは自身だけでなく、他のエンジェリングの力を引き出し、追い詰める為の道を作った。
 アンネリーゼがいなければ困る場面も多く、特にクドラクを解呪したことで、彼らから情報を得る為捕縛という道も選ぶことが出来た。
 勿論、彼らだけの活躍だけで成し得たことではなく、全員の力があったからこそ、隼人があの瞬間に『第三の封印テアテラ』を奪うことが出来たのだ。
 これらの成功こそ、真に神へ祈りが届いた───そういうことなのかもしれない。

●悪夢
 魔結界終了と同時に全員が元いた場所へと戻った。
 刹那の出来事でしかないジョンは、周囲に突如起こる変化に顔を青ざめさせる。
「さて、SINNの皆、『ころしあってくれないか』」
 ベリアルが、笑顔で言い放つ。
 魔結界の影響はない、けれど、大津波の幻影がそうさせたのか、その言霊に屈したSINNは、いた。
「‥‥く!」
 言霊に抗ったウィリディシアは洗礼者の衣の力を使うことなく、ジョンへ走る。
 言霊で混乱させた、その意図に気づいたからだ。
 ジョンの前に立ち、少しでも時間稼ぎになればとキニスイーターを振るう。
 けれど、それはサマエルの牙により、その力を失う。
 ベリアルの剣が、一太刀、振るわれた。
 それがウィリディシアに届くことはないが、ジョンが所持していたCROSSを破壊する。
 近づいてきたベリアルの剣が振り下ろされた、その瞬間。
 水織の黒衣パペットがベリアルの腕を攻撃していた。
 透明化で潜んでおり、不意打ちとも言える攻撃だったが、ベリアルにとってはダメージにもならない。
 しかし、攻撃の軌道を逸らすことに成功する。
 それでも振るわれた剣はウィリディシアに吸い込まれたが、致命傷にはならなかった。
「助かったわ‥‥」
 重傷のウィリディシアが駆けつけた水織を見る。
 返す剣で黒衣パペットを蹴散らしたベリアルを水織は睨んだ。
「あなたは、誰ですか?」
 それは、漠然と抱いた問い。
「あなた達は、『人間』ではない。けれど、『人間』への拘りを感じる」
 人の理に生き、けれど人を嘲笑う。
 人間社会で人間を利用するが、その制約の中にある。
「あなた達は───『人間』ですか?」
「真実は、自分で到達しなければ意味がないものだよ」
 予想していた答えだ。
 けれど、予想に反したのは、そこに続く台詞。
「ルークス・クライストも同じことを言っていたね。随分昔に」
 水織の反応を見るまでもなく、ベリアルはジョンに言い放った。
「『ブリーフケースを開けなさい』」
 ベリアルの言霊にジョンが抗う術もない。
 いつの間にか、傍にはいない筈の大統領ディオン・トゥールスがいる。
 恐らく、姿が見えなくなったサマエルだ。
 気づいたウィリディシアと水織が阻もうとした瞬間、生き残っていた半魔が彼女達を羽交い絞めにした。
 慌ててラピアがブラストグラスで破壊を試みるべく前進してきた。
「破壊すれば気づかれると思うけれど?」
 ベリアルが揶揄する。
 そのブリーフケースを開けても核が唐突に発射される訳ではない。
 発射装置のボタンがそこにある訳ではなく、統合参謀本部へその情報が伝わり、大統領が攻撃の選択を行った上で命令を下し、更に国防長官が承認する。
 命令を下す大統領の本人確認も行われ、尚且つ実行する軍の部隊へ通達された後も確認事項は山とあるのだ。
 それ程慎重に扱われるものだからこそ、ブリーフケースの破壊が逆に異常として統合参謀本部へ伝わってしまうかもしれない可能性の指摘に対し、ラピアが躊躇した瞬間。
 ブリーフケースが、開けられた。
 追うようにして、ディオンがジョンのスマートフォンで明らかな嘘の状況説明を行い、核の発射指示を出した。
「大統領は混乱されている!」
 リュカがディオンからスマートフォンを奪い、命令の撤回を試みるが、大統領の本人確認がされており、リュカがパラディンという身分証明を行うのは電話越しでは困難であった。
 押し問答の末、核は発射される。だがその先は太平洋。名目上は実験で。
「‥‥最善ではない。美しくないね」
 そう言ったベリアルは、その方向に視線をやった。珍しく、憮然とした表情だ。
 ミリーナが駆けてきていた。
 水織とウィリディシアを羽交い絞めしていた半魔を断罪したミリーナに対し、ベリアルは動じない。
「君達がそこまでする必要はないんじゃないかな」
 ベリアルがそう言うが、ウィリディシアは頷かない。
 何故なら、ウィリディシアは、疑っていたからだ。
 魅了と言霊を扱う彼の悪魔魔法は、例えばリュカのウォルンのようなものであったら?
 先程ラピアが躊躇したのは、その力によるものだとしたら?
 ───洗礼者の衣の能力でどうにか出来ないかもしれない。
 ウィリディシアは何よりも優先すべきと判断し、ディアボルレジスティを成就、ジョンへ悪属性への耐性を付与する。
「べりある様、気ヅイテルミタイダケド」
「読みが鋭いお嬢さんだね」
 ディオンから戻ったサマエルの言葉に応じるベリアル。
 リュカが、そう言いながらも攻撃を仕掛けるベリアルに分銅鎖を放つもベリアルによって破壊される。
 だが、時間稼ぎには十分だった。
 ミリーナの銃が火を噴く。
 その弾丸は彼らの知識のそれとは違うもの。
 死すべき命を討つ為に転移したのだ。
 とにかく、隙を作る、それが大事。
 その重要性をミリーナは知っていた。
 ダントンの洗礼者の衣によって言霊の効果を無効化されたSINN、或いは言霊に屈しなかったSINNが駆けてくる。
「困ったね」
 ベリアルが振るうその剣をダントンが盾で受け止める。
 盾はその機能を失うが、ジョニーとビートがベリアルの側面に回り込み、ベリアルを一斉に攻撃した。
「少し黙っててくれないかな」
 笑うベリアルの反撃を喰らい、ビートが血の海に沈む。
 尚もビートを狙うベリアルに立ちはだかったウルセーヌがネットを投じるが、それも裂かれ、反撃によって彼も血の海に沈む。
 しかし、それ以上を誰も許さなかった。
 死力を尽くした攻撃の末、ジェーンがメギドでベリアルを焼き払う。
「アーア、べりある様死ンジャッタ」
「あなたも後を追うのよ」
 サマエルの言葉を遮り、ウィリディシアは重傷の身を押し、効果上昇を伴わないスピニアムを成就した。
 今の反応でベリアルが本物ではないと察したウィリディシアは、サマエルもその可能性があると判断、真名を織り込まず、成就されたスピニアムはサマエルを光の荊で縛った。
「後は僕達に任せて」
 読みを当てたウィリディシアに微笑むミリーナはポイントショットEXを撃つ。
 その銃、アクケルテの能力を使えば回数限定であってもポイントショットEXの狙い動作は必要としない。そう、死すべき命を探り当てる伝承そのままに。
 サマエルを守るようにクロケルとブエルが動き出す。
「それを、待っていたわ」
「そっすね」
 ブエルが攻撃の為にエテルナが割った窓から外に出た、それこそ好機。
 ゲミニーを成就し分身を生み出した桔梗と刀がブエルへメモリーの限りイグニスを撃つ。
「クロケル殿のラディクスで支援がなければ危なかったですね。今日の所はお暇しましょう。───アメリカと中国が今後も良い関係であることを願います」
 が、仕留めきれず、ブエルはそれを引き際として撤退した。
「ボクニヨロシクネ」
 そう言うサマエルにミリーナが弾丸を浴びせる。
 SINN達の猛攻を受けたサマエルは、ジェーンのマギアを付与されたミリーナの銃弾によって仕留められた。
 残るは、クロケル。
「君の命も死すべき命、探り当てるだけだよ」
 ミリーナの撃つ銃弾が転移し、同じく撤退しようとするクロケルの体勢を崩す。
 回復手段は最早なく、重い傷を負う者もいたが、死力を尽くした猛攻を受けたクロケルはラピアのエムンドで浄化される。

 されども、戦いは終わった。
 水織とリュカの尽力あってこそ紅グループにジョンを引き渡すことはなかった。
 ウィリディシアのローレムが最終的に結界が破られたとしてもジョンを守り、その為に魔結界へ取り込ませなかった、それにより彼と言う枷がなく戦えたのも大きかっただろう。
 不利な状況を死者なく切り抜けられたのは味方の支えあれどアルカの力が大きく、その状況の終着の基点を作ったのはミリーナだ。
 ブエル以外の魔神、そして率いられた半魔は討伐された。
 核は発射された。ただ、その影響が計り知れないとは言え、人類の絶望へと直接繋がるをSINN達は確かに阻んだのだ。

●去り行くイザベラ
 エリザベートは、まるで舞うようにその血塗れた手を翳す。
 恐るべきその手が吸い込まれると、身に纏う防具はいとも易々とその機能を終えていく。
 それでも、負ける訳にはいかない。
 軽やかな身のこなしで攻撃を回避し、まるで戯れるようにその血塗れた手を繰り出す。
「ふふ、滅び行く楽園‥‥あなた達は終幕に向かって歩いているだけ‥‥。素敵な、素敵なこの歌劇‥‥その死で幕を閉じるまで続ける、それだけですわ」
「いいえ、ヒメコ達はあなた達に負けないのです!」
 ヒメコの強い叫びが部屋に響く。
 人ならざる力を持っていたエルマ夫人は、既にイーゴリによって無力化された。
 まるで庇うように手にしていた懐中時計、それがヴラドではないかと考えたイーゴリは、何とか懐中時計を奪うことに成功し、成就していたプレッセラの息で懐中時計を物理的に破壊したのだ。
 これによりエルマ夫人は一般人と同じ能力に戻った為、アントーニオによって拘束された。
「マルセルの方は、問題なさそうだな」
 エルマ夫人を見張るアントーニオが呟く。
 ブランシュがマルセルのラーのメモリーを積極的に回復させ、ヴァンパイアデュークを討つ作戦に出ている。
 回避能力も高いヴァンパイアデュークに対し、超再生を封じる意味も含め、アンリとオリヴィエが義兄弟らしい連携を見せ、立ち回っていた。
「忌々しいですわね」
「僕達、若いから元気なんだ」
 ヴァンパイアデュークに微笑むオリヴィエはヴェナティウルも成就させており、連携攻撃をより強化している。
「若い、ねぇ」
「あの人に比べれば、ずっと若いですよ〜」
 アンリがそんな年齢かとぼやくと、合流したシャムロックが地味にヴァンパイアデュークの神経を逆撫でする。
 その隙にマルセルは宙から回り込み、ラーの擬似小型太陽を浴びせた。
 マルセルが諦めずラーの擬似小型太陽をぶつけ続けると、やがてヴァンパイアデュークは霧散化した。
「若さへの嫉妬って醜いよね☆」
 笑うエルマがしっかりとハレルヤで仕上げ、後ろを振り返る。
 その先には、エリザベートがいる。
「流石に困りましたわね」
 ふぅと吐息を漏らすエリザベート。
「策に溺れたな。私達を侮り過ぎたのが、敗因だ」
 一矢報いる、それ所か追い詰めているといった状態であってもアスランは油断することなく、その銃を構える。
 セイディが陽平、メーコと協力して攻撃を当て、超再生を封じる間にヒメコがラーをエリザベートへぶつける。
 浅葱がヒメコのラーのメモリー回復に入っているが、合流したブランシュのサナティのメモリーもまだ残っており、回復を担うラティエラがメモリー回復に入る必要はなさそうだ。
「滅びるのですよ。ヒメコ達は、あなた達吸血鬼を許しはしません!」
「とてもいい瞳ですわね」
 毅然とするヒメコにエリザベートが笑みを向ける。
「その瞳が終盤になるにつれ、絶望に彩られていく‥‥それこそが観客の望むものだと思いません?」
「それは、そちらの方だね」
 ジェラールがそれを否定した。
「クドラクという役者は、僕達の劇団へ移籍を望んでいるよ。役者も揃えられないならば、退場しかないだろう?」
 ジェラールは、解呪されたクドラクを見やる。
 解呪されたクドラクに対し、ジェラールは戦線に合流する前にその弁を振るった。
 彼らの末路は保証出来ないにせよ、奴隷とも言える彼らの魂の解放の為に彼女は自身が振るえる最も強力な武器を惜しみなく振るった、その結果である。
「彼らは役者足りえませんわ」
 ジェラールの言葉に微笑を浮かべるエリザベート。
 その視線が、動く。
 会話をしていたからとは言え、油断していないということなのだろう。
 セイディが地を蹴り、迫っていた。
「勇ましくも可愛らしい方‥‥もうそろそろ終幕ですわ?」
「私の終幕ではありません」
 その言葉と同時にセイディが横に飛び退いた。
 目の前に迫っていたのは、アスランだ。
 瞬間、エリザベートの顔が嫌悪に歪む。
「お呼びではありませんわよ!」
「ああ、呼ばれていないな。けれど、来ない理由もない」
 笑うアスランは手を振り翳すエリザベートの攻撃を敢えて『受けた』。
 それは、その一瞬の為。
 側面に回り込んだイーゴリのプレッセラの息がエリザベートに叩きつけられた。
 それ自体は、超再生がまだ封じられていても、エリザベートにはそこまで問題ではないかもしれない。
 しかし───
「!!」
 まともに喰らったエリザベートの懐から零れ落ちたのは、アクセサリーケース。
 手を伸ばすエリザベートの手を宵蓮が腕輪に仕込んでいた鋼糸で絡め取る。
 それを腕輪ごと破壊したエリザベートが宵蓮に手を振り翳し、聖面を割る勢いで顔面を叩いた。
 しかし、それは致命的な隙。
 アスランがアクセサリーケースを抱えて飛び去ると、セイディがエリザベートに攻撃を叩き込む。
 全ての幕引きを彼女に託すその拳に迷いがある筈もない。
「この世界は、あなた達で綴られる歌劇ではありません! ヒメコ達がヒメコ達の手で綴る、たったひとつの物語です!」
 ヒメコのラーがエリザベートに叩きつけられる。
 浅葱、ブランシュに残っていたサナティは全てヒメコのラーのメモリーを回復させ、ヒメコは撤退の構えを見せるエリザベートを追う。
「とても、興味深い物語でしたわ。けれど、好みではございませんの」
 その言葉と同時にマーナガルムを成就していたクレスニク達がヴァンパイアの伏兵がこの部屋に迫っていると警告を発した。
「可愛いお嬢さん、エルマ夫人と移籍希望のクドラクを無視してわたくしの破滅まで太陽をぶつけられますかしら?」
 ヒメコは、エリザベートを睨みつける。
 エリザベートは、見抜いていたのだ。
 ヒメコの強さが、彼らを見捨てられない優しさから来るものであることを。
 彼らを守る為に、ヒメコは身を翻す。
 笑うエリザベートは窓から舞い降りた。
 悠々とした足取りで、彼女は舞台から去っていく。
 彼女の危険性を思えば、追ってはいけない。
 そう判断せざるを得なかったSINN達が残存のレッサーヴァンパイアを滅ぼした時、彼女はホワイトハウスから姿を消していた。
 その姿は、誰も見つけられない。

 エリザベート・バートリー。
 『血の伯爵夫人』とされる彼女が絡んだこの戦いは、幕を下ろす。
 エルマ夫人の無力化及び大統領夫妻の下僕化解除に貢献したイーゴリは勿論、クドラクの解呪を行い、その弁で彼らを真に解放したジェラールの功績は大きい。
 そして、黒猫こそ今回の黒幕ではないかと考察したアスラン、セイディ、ヒメコはそれぞれ出来る全てを尽くした。
 アスランが隙を作らなければセイディはその攻撃を当てることは難しく、セイディが超再生能力を封じなければ、ヒメコのラーは文字通り輝かなかっただろう。
 守りたい優しさ故にエリザベートを逃したが、その強さがなければ追い詰めることは出来なかった。
 それこそ、SINNでなければ綴れない物語だろう。

 揺るぎなき物語は、生の輝き。
 喪失の楽園を謳う、死の賛美に負けはしないのだ。

●幕の落ちない歌劇
 戦いは、終わった。
 負傷者の数こそ少ないが、その戦いの激しさは帰ってきた彼らを見れば一目瞭然だ。
 『第三の封印テアテラ』の確保に成功したものの、核は海へと叩き落された。
 そこに立った罪の火柱を、人々は確かに見たのだろう。
 姿を見せた『血の伯爵夫人』エリザベート・バートリーもこのまま舞台から完全に去るとは思えず、彼女の歌劇をその滅びにて終わらせる必要がある。
 同様に『陽炎の軍勢』の謀略も叩き潰さねばならない。
 この戦いは終わったが、まだ戦いが終わっている訳ではないのだ。
 だが───
「‥‥え?」
 SINN達は、誰もがそのことを信じられずにいた。
 世界各地で、『黒い霧』が生じているのだと言う。
 『黒い霧』は可視化したキニス、つまり、人々の負の感情が一気に高まったからこそ、突如発生した事態だろう。
 人々は、核の発射も人ならざる存在も唐突に言われて信じていなかった。
 しかし、太平洋に立った巨大なキノコ雲という現実を人々は見てしまったのだ。

 あれは、真実だったのか。

 疑念が不安となり、それは恐ろしい勢いで高まり、『黒い霧』に到るほどのキニスを生んだ。
 ルークス市国の根回しも、ネットの世界にはその手が完全に行き渡らない。
 戦いは、終わった。
 けれど、電脳世界でその動画は恐ろしい回数で再生され、その言葉が真実かどうかの論議が飛び交っている。
 人々は、確信はなくとも知ってしまったのだ。

 楽園喪失。
 表社会における人類の守護者、アメリカ合衆国の国際的地位が、その日、地に堕ちた。

MVP
テムジン・バートル (sa5945
♂ 人間 パラディン 水
狼牙 隼人 (sa8584
♂ 人間 パラディン 風
ハーケン・カイザー (sc1052
♂ 人間 ハンドラー 風
鷹羽 叶望 (sd3665
♂ 人間 エクソシスト 地
ミラベル・ロロット (si6100
♀ 人間 ハンドラー 風
シャーロット・エルフィン (si6767
♀ 人間 ハンドラー 水
ブリギッタ・ブライトナー (si7746
♀ 人間 パラディン 火
ウィリディシア・クレール (sj3049
♀ 人間 エクソシスト 地
アンナリーナ・バーリフェルト (sp9596
♀ 獣人 クレスニク 風
ヒメコ・フェリーチェ (sq1409
♀ 獣人 クレスニク 風

参加者一覧
志島 陽平(sa0038)K地 レティシア・モローアッチ(sa0070)H水 アルベルト・ルードヴィッヒ(sa0074)E火 クローディア・エヴァーツ(sa0076)E水
ミリーナ・フェリーニ(sa0081)P火 煌 宵蓮(sa0253)P水 クリシュナ・アシュレイ(sa0267)P水 ガブリエル・オリヴェイラ(sa0293)H地
栄相 サイワ(sa0543)E地 栄相 セイワ(sa0577)A風 陸奥 政宗(sa0958)P火 アビス・フォルイン(sa0959)E水
ティファニー・エヴァーツ(sa1133)A水 ユビキタス・トリニティス(sa1273)H風 ニア・ルーラ(sa1439)H水 メイリア・フォーサイス(sa1823)A風
ジョニー・ジョーンズ(sa2517)P火 ナタク・ルシフェラーゼ(sa2677)P風 ダニエル・ダントン(sa2712)P地 アーサー・ラヴレス(sa4830)P火
柴神 壱子(sa5546)H風 アントーニオ・インザーギ(sa5938)H風 テムジン・バートル(sa5945)P水 バイオレット・エアレイダー(sa7966)P火
狼牙 隼人(sa8584)P風 御剣 龍兵(sa8659)P風 ジェラール・テステュ(sa8825)E火 須経 蘭華(sb0118)E地
ナイ・ルーラ(sb0124)E地 ファミリア・サミオン(sb0511)P風 皆本 愛子(sb0512)H地 琴宮 涙湖(sb1982)A火
神代 翼(sb3007)A風 三輪山 珠里(sb3536)A風 イングリッド・シンドラー(sb3753)A風 東雲 凪(sb4946)P風
アドリアン・メルクーシン(sb5618)P火 ラティエラ・テンタシオン(sb6570)A地 ディミトリエ・シルヴェストリ(sb9264)P風 ハーケン・カイザー(sc1052)H風
ジェローム・モローアッチ(sc1464)A水 房陰 朧(sc2497)H風 セルゲイ・クルーツィス(sc4350)A風 カーク・ルッフォ(sc5283)E風
癒槻 サルヴァトーレ(sc5529)E風 烏ツ木 保介(sd0147)E風 郡上 浅葱(sd2624)A風 媛 瑞玉(sd3404)P風
鷹羽 叶望(sd3665)E地 イーノク・ボールドウィン(sd3868)A火 アシェン・カイザー(sd3874)E火 リュドミラ・マシェフスキー(sd4001)A地
東雲 燎(se4102)H火 カミーユ・ランベール(sf0920)A地 アルカ・カナン(sf2426)A火 ビート・バイン(sf5101)P火
村正 刀(sf6896)A火 十文字 翔子(sf7297)A風 神楽 マナ(sf8860)P地 ギィ・ラグランジュ(sf9609)P地
アルフォンス・ヴィヴィエ(sf9647)A地 リュールング・アマーリア(sg1023)H地 ラルフ・フェアウェイ(sg4313)E風 天道 一輝(sg8206)E火
ラミア・ドルゲ(sg8786)P風 赤城 圭(sg9025)P火 玖月 水織(sh0007)H水 アメリア・ロックハート(sh1732)A水
メーコ・カトウ(sh3828)K風 酒匂 博信(sh4156)P地 獅子皇 空(sh4595)E風 ダニエル・ベルトワーズ(sh5510)A水
真幌羽 鈴鹿(sh5555)H火 オルフェオ・エゼキエーレ(si1323)P地 御剣 四葉(si5949)E水 ミラベル・ロロット(si6100)H風
シオン・エゼキエーレ(si6186)H地 シャーロット・エルフィン(si6767)H水 ブリギッタ・ブライトナー(si7746)P火 ユリウス・ブライトナー(si7758)A火
ギルベルト・ブライトナー(si7759)H火 エルマ・グラナーテ(sj0377)E水 鷹羽 歩夢(sj1664)P水 サラディン・マイムーン(sj1666)P火
ウィリディシア・クレール(sj3049)E地 エティエンヌ・マティユ(sj6626)E地 マイア・イェルワジ(sj7576)A地 リュカ・フィオレンツィ(sk3006)P水
ジェーン・ミフネ(sk6098)E風 ガディン・ベルリアン(sk6269)P水 テオ・マリピエーロ(sk8101)E水 実和 真朋(sn6429)H水
九門 桔梗(sn6431)A火 トウマ・アンダーソン(sn7273)P地 九面 あずみ(sn7507)P水 ジュラルディン・ブルフォード(sn9010)H風
アンネリーゼ・ブライトナー(so1524)E火 ローウェル 一三(so2674)A水 茂呂亜亭 萌(so4078)A風 フリージア 李(so6182)E風
ノーラ・ローゼンハイン(so6720)H火 サラ・オブライエン(so7648)H水 御剣 キョウ(sp0401)P水 厳島 雪花(sp0998)E風
エテルナ・クロウカシス(sp1494)A風 鷺沼 妙子(sp1602)P地 有栖川 彼方(sp2815)P火 神楽坂 凛(sp3316)E風
マリク・マグノリア(sp3854)H水 ヴェルンハルト・ラヴィーネ(sp3868)E水 ブランシュ・ブランシャール(sp4332)A風 来海 朽葉(sp4469)H水
ラピア・ヴァージニス(sp4717)E水 碇矢 未来(sp5129)P火 ウルセーヌ・モローアッチ(sp5281)H地 荒井 流歌(sp5604)A水
ジョルジェ・フロレスク(sp6083)K火 ニーチェ・シュートラー(sp6098)K火 ルナール・シュヴァリエ(sp6369)K水 相模 仁(sp6375)K火
アンリ・ラファイエット(sp6723)K水 オリヴィエ・ベル(sp7597)K風 フェリシア・エドフェルト(sp7734)K火 スティナ・エーケンダール(sp7978)K地
雫石 雪凪(sp8252)K火 鷹宮 奏一朗(sp8529)K火 セイディ・ゲランフェル(sp8658)K水 シャムロック・クラナド(sp9296)K風
ユーチャリス・ミッドナイト(sp9432)K風 千種 蜜(sp9590)K地 アンナリーナ・バーリフェルト(sp9596)K風 ジル・ディンフェルダ(sp9610)K風
雫石 結氷(sp9763)K水 エスター・ゴア(sq0475)K風 イーゴリ・トルストイ(sq0700)K地 アーク・カイザー(sq0753)K火
アリス・フリュクレフ(sq1159)K水 アスラン・ノヴァク(sq1286)K地 上随 スウソ(sq1318)K風 ヒメコ・フェリーチェ(sq1409)K風
マルセル・ロン(sq1413)K水 オズウェル・クローチェ(sq1494)K水 上月 累(sq2012)K火 ラティーファ・アミン(sq2900)E水
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