【AS08】異端王ベリアル

担当マスター:楽市
開始15/01/29 22:00 タイプ全イベ オプションお任せオプション
状況 SLvC 参加/募集90/― 人
料金600 Rex 分類事件
舞台国中国 難易度難しい

◆周辺地図
   

オープニング
●雨の中の――
「よく、降るね」
 そう、小さく呟いたのは、紅グループ総帥の紅 玄暁だった。
 しかしそれは所詮かりそめの名。彼を真に呼ぶならば、魔王ベリアル(sz0016)。それが正しい。
 古びた木製の椅子に座り、そこに降り続ける雨を見る彼の顔には、変わらず、微笑みが刻まれている。
 雨の音は遠く、しかし彼の耳にも届いていた。
 千年を超える願いを成就せんがための、それは、ベリアルにとっての福音であった。
「気分ガヨサソウダネ?」
 背後から、黒い大蛇をその身に巻きつかせて、【陽炎の懐】サマエルは、ベリアルに語りかける。
「‥‥これだけの高揚はいつ以来だろうか。懐かしいとは感じる程度に、久しぶりだよ」
 腹心の方を振り向かずに、ベリアルは答えた。
 雨の音が続いている。それは、外から聞こえてくるものではない。
 彼らがいる部屋に設置されたモニターに映し出されたものであった。
 そこには、東南アジアが映っている。台湾が映っている。韓国も映っている。
 映っている景色の全てに、雨が降っていた。
 あるいは、この映像では見えずとも、しかし映っている範囲の中でディアボルスが聖水に溶けているのかもしれない。
「――全て、流れてしまえばいい」
 小さく、ベリアルは呟いた。
 ゥゥ――ン‥‥‥‥
 小さく、本当に小さく、音が響いたのはそんな彼の背後からであった。
 薄暗い空間の中に、微かな光が漏れている。その光は一般人には視認できない、魔力の光であった。
「調子ハヨサソウダネ――ベリアル様」
「ああ、きわめて快調だよ。実験の結果は、そこに映っている通りさ」
 ベリアルが、そのときようやく背後に振り返った。
 目に映る、巨大なる影。魔力光に包まれたそれこそは、彼が世界を制するための切り札。最後の楽園。禁断の果実。
「感謝しているよ、サマエル。君が私をここまで連れてきてくれた」
「ボクハキッカケヲ与エタダケダヨ」
「‥‥そう、そのきっかけこそが、私にとっての全ての始まりだった。そうだろう、悪魔王の欠片」
 サマエルは身をくねらせて、何も答えず、代わりに話を変えてきた。
「ソウイエバサ、報告ガアッタヨ」
「何だい、サマエル」
「東京ニ、【生命ノ樹】ガ現レタッテ」
「――ハハ、なるほど」
 ベリアルの笑みが、深まった。
「そうか。このタイミングで、なんだね。‥‥フフ、神はよほど、人々に試練を与えるのが好きらしい」
「狂月ハドウ動クカナ?」
「考えるだけ無駄だよ、サマエル。アレは異端。人としての異端であった私には分かる。あの連中は悪魔であり、悪魔ではないからね」
「デモ、SINNハ動クシカナイヨネ。狂月ガ悪魔ナノハ間違イナイシ」
「さて、どうなるかな」
 腕を組み、足を組み、ベリアルはモニターへと視線を戻す。
 彼の背後で、彼が作り上げた最高傑作が、今も低く、光と音を漏らしていた。

●彼女の興味
「は〜ぁ、退屈ぅ〜」
 上海。紅グループ本社ビル。
 すでにルークス教の勢力が撤退し、上海支部の転移装置も失われて久しいこの都市も、今や黒い霧に包まれて、外を歩く人の姿はほとんど見られなくなっていた。
 ここは、本社ビル内の、彼女に与えられた研究室。
 つい先日、SINNと戦闘を繰り広げた彼女の自慢の2体の魔創も、今はこの場に安置されている。
「べっちゃ〜ん、レっちゃ〜ん、元気してる〜?」
 と、横並びに直立している、今は動いていない魔創のゴーレムに呼びかけるも、そこに返事はない。
「『‥‥‥‥ム』、の一言もなしかぁ、ま、そ〜だよねぇ」
 ベルフェゴールは座っている椅子を浮かせると、浮遊したまま小柄なほうの魔創に近付いていった。
「レっちゃんはさ〜、ほ〜んと、生意気だったよね〜。ガキなのにね〜」
 と、かつての主の姿を模した魔創の頭を乱暴に叩く。
「こ〜やって〜、頭殴られたこと〜、何回あったっけ〜」
 何度も、何度もその頭を叩き、殴りつけるうち、彼女はその行為に興味を失って、魔創から離れていった。
「あ〜ぁ、つまんなぁ〜い」
 今度は、目に付いたのは大柄な魔創。喋らないそれを見上げて、彼女はおもむろに歌い始めた。
「デ〜カブツ、デカブツ〜、デ〜カ〜ブ〜ツ〜♪」
 その歌に意味はない。単なる、退屈しのぎでしかない。
「ホントに退屈だよぉ〜、もぉ〜。レっちゃんたちはこ〜なってもつまんないね〜。ぶ〜」
 唇を尖らせて、彼女はその場から転移する。
 自分から動くのは面倒くさいが、退屈はさらに嫌いなのがベルフェゴールという悪魔であった。
 主がいなくなった研究室で、2体の魔創は文句も言わず、何も語らず、ただただそこに立ち尽くす。
 再び、殺し尽くせと命令されるそのときまで、魔王とその腹心を模したゴーレムは、何も言わず、何も言えず、立ち尽くしているのだった。

●開戦を前に
「やはり、制御システムは上海にあったようです」
 ルークス大聖堂地下。そこに集まったSINN達に、聖戦機関の職員は告げた。
「また、まだ報告書は出来上がっていませんが、上海の偵察と調査の結果、上海における敵の布陣もある程度明らかになりました」
 彼が告げると、作戦室の大型モニターに上海を上空から映した写真が映し出される。
 その写真の中心には、紅グループの本社ビルがあった。
「敵はどうやら、3つの防衛ラインを敷いているようです。外に1つ、中に2つ。そして本社ビル地下に、制御システムがあるものと推測されます」
 その写真に重なるように電子文字が浮き出て、3つのラインをそこに描いた。
「また、これはすでに確認されている情報ですが、中国東部を中心として、気象上ではあり得ない形で生成された黒雲が広がりつつあるようです。
 これもおそらくは、魔王ベリアルの『プロジェクト・アーク』によるものでしょう。この雨による大規模水害が、各地で発生しています。
 事態は、すでに切迫しています」
 SINN達の間にざわめきが走る。
 欧州にあるこの場はまだ安全ではあれど、それも時間の問題なのだ。
 南極のときとは違う、目に見える滅びが今、東から迫りつつある。
「『プロジェクト・アーク』を止めなければなりません。それも、早急に。
 敵は、すでに布陣を終えています。その動きは迅速です。こちらの動きを読んでいるのでしょう。
 しかし我々も、彼らの手のひらの上で踊るばかりではないということを、教えてあげてください」
 職員の言葉に、SINN達は力強く、うなずいた。

■PL情報
・連動シナリオより、敵側にベルフェゴールが関与していることが判明しています。
・連動シナリオより、敵側に強力な魔創が2体存在していることが判明しています。
・企画イベントより、敵側の戦力を削ることに成功しました。
・企画イベントより、敵側の主要戦力である「シン」を1体撃退することに成功しました。
・企画イベントより、敵側の残る「シン」の真名に関するヒントが明かされました。
・企画イベントより、『奇跡の薬』の効能が『聖水に対する耐性を身につける』ものだとと推測されました。
・企画イベントより、敵側の「王 壱紅」が半魔でありながら忘却オーラを纏うことが判明しました。

◆登場NPC

 ベリアル(sz0016)・♂・?歳・?・?・?

◆マスターより

こんにちは、楽市です。
これは全体イベント「【AS08】EastEnd」のメインシナリオです。
全体イベントシナリオは、没ありプレイングとして処理され、MVP(物語に重要な貢献をした者)を中心として物語が描かれます。
選択肢をプレイング第1行で【ア】のように記入し、次行より本文を続けて下さい。(複数選択肢不可)
このシナリオは01月29日午前から24時間程度の状況の物語となります。
企画イベント「極東轟嵐」の結果が出た後という扱いになり、その結果に関する影響は出発時に反映されます。
なお、厳戒態勢ということでセキュリティレベルはC扱いとなります。

ア:制御システムを目指す
 関連NPC:ベリアル(sz0016)
 『プロジェクト・アーク』の中枢を担う制御システムである魔法装置を目指します。
 リプレイはこの選択肢の参加者がシステムのある部屋に到着したところから開始されます。車両は乗り込めません。
 痕跡:赤い布切れ
イ:第1防衛ライン突破
 本社ビル外縁に設置された第1防衛ラインを突破します。ここで敗北した場合、残った敵は「ア」への増援となります。
 リプレイはこの選択肢の参加者が第1防衛ラインに到着したところから始まります。
 ここには黒い翼を持った人型の魔神に率いられた上級魔神が陣取っているようです。
 痕跡:黒い羽根、羽毛、獣毛×2、特になし
ウ:第2防衛ライン突破
 本社ビル地上階に設置された第2防衛ラインを突破します。ここで敗北した場合、残った敵は「ア」への増援となります。
 リプレイはこの選択肢の参加者が第2防衛ラインに到着したところから始まります。車両は乗り込めません。
 ここには王 壱紅に率いられた半魔の軍勢が陣取っているようです。
 痕跡:悪しき気配、特になし、特になし、特になし
エ:第3防衛ライン突破
 本社ビル地下階に設置された第3防衛ラインを突破します。ここで敗北した場合、残った敵は「ア」への増援となります。
 リプレイはこの選択肢の参加者が第3防衛ラインに到着したところから始まります。車両は乗り込めません。
 ここには幹部魔将ベルフェゴールと、彼女が造り出した2体の魔創ゴーレムが陣取っているようです。
 痕跡:ピザのにおい、大きな足跡、小さな足跡
オ:その他の行動
 どの選択肢にも該当しない行動はこちらとなります。
 内容で判断させていただきますので、他選択肢に割り振られたり、採用率そのものが低い場合がありますのでご了承ください。

リプレイ
●第1防衛線:悪鬼の有様
 中国、上海。
 世界都市に位置づけられているこの街も、今はそこら中に黒い霧が漂って、人の姿はどこにも見られなかった。
 閑散とした雰囲気はどこも変わらない。
 世界に冠たる紅グループの本社ビル周辺も。
 倒れたバイクや、キーが差し込まれたまま乗り捨てられた自家用車などが、そのまま放置されているような有様だ。
 ただ、だからこそ、ビルの外縁部では、今まさに生死をかけたやり取りが繰り広げられている。
「皆さん、ここは私に任せて、振り返らず走り抜けて下さい!」
 ビル内へと投入するSINN達へと檄を飛ばし、ウルセーヌ・モローアッチ(sp5281)がマントを大きく翻した。
 黒翼を持った巨大な狼が、空から彼へと喰いつこうと牙を剥く。
 その牙を、彼が操る戦士型のパペットが受け止め、飛行進路を大きく逸らした。
 だがパペットと、そしてウルセーヌの死角を突いて、黒馬にまたがった獅子の頭を持つ魔神アロケルが襲来せんとする。
「させませんよ!」
 佐藤 一郎 (sb2526)がパペットを盾にしてアロケルの奇襲を阻んだ。
 パペットはアロケルの身に触れて凍結させようとするが、しかし魔神の体は凍らない。高い抵抗力に阻まれたのだ。
「‥‥‥‥チッ」
 だが己も切り込めず、アロケルは黒馬を操って後方へと退いていく。
 ヒラリと、地面へと舞い落ちるのは黒い羽。狼の姿をした魔神、マルコシアスのものだ。
 羽根が落ちるのを機に、場には沈黙が下りた。
 SINN達の前に立ちはだかるのは、マルコシアス、アロケル、そして他2体のディアボルス。全てが上級の魔神達である。
「よっしゃ、ブッコミかけるぜ!」
「応よ、SINNの心意気、見せてやらぁ!」
 轟 弾護(sa0018)と朔真 紅虎(si9669)が、魔神の群れを睨みつける。
「どこまでやれるかわかりませんが‥‥」
 レイジ・イカルガ(sh2614)が、声に不安を滲ませながらも聖なる印を切って、皆を祝福。祈りを捧げる。
「アハハハハハハ! ちまちまとやっちゃってさぁ!」
 哄笑を響かせ、黒い翼を広げるのは、シンと呼ばれる人の姿をした魔神――かつて、星一族と呼ばれた者の最後の一人の成れの果てだった。
「‥‥大笑いしてくれちゃって」
 シンの下卑た笑いに、ティファニー・エヴァーツ(sa1133)が逆に苦笑する。
「笑わせておけばいい‥‥。その笑みも、すぐに凍りつく」
 癒槻 サルヴァトーレ(sc5529)はティファニーの苛立ちを壊そうとするかのように、スレッジハンマーを担ぎ上げた。
 膠着状態。それはSINN達にとって緊張を高める時間であると共に、戦闘の前段階を終了させるための隙間。
 ――しかし敵は、待ってはくれなかった。
 それは、エティエンヌ・マティユ(sj6626)が今まさに持ち込んできたCROSSにローレムを施そうとしていた瞬間であった。
 いきなり、津波が押し寄せてきたのだ。
「‥‥う、わァ!?」
 突然の大海嘯に、マリク・マグノリア(sp3854)は思わず身構えてしまった。
 しかし物理的な衝撃が彼らの身体を打つことはなかった。それは、悪魔の能力が見せた、巨大な幻影であったのだ。
「幻‥‥」
 幻影が過ぎ去ったあとで、マリクは顔を上げる。
 ダメージはなかった。しかし、身体に力が入らない。ふわりとした、熱にも似た浮遊感。不安感が、身体を取り巻いていた。
「クク、ハハハ!」
 幻影を生み出した者が笑っていた。それは、銀の髪の天使の如き悪魔、魔神クロケルであった。
 フワリと、浮遊する黒馬がSINN達の前に現れる。そこにまたがる獅子頭の魔神が、息を吸い込むような動きを見せた。
 いけない、誰かが思った。
 しかしそれは、轟く咆哮を止める行動に繋げることはできなかった。
「こ、れは‥‥!」
 マリクが、音を失った世界に困惑する。アロケルの咆哮は、多くのSINN達の聴覚を一時的に麻痺させていた。
「殺せェェェェェェ!」
 シンが手にした邪剣を掲げ、命じると、率いられる他三体の魔神が一斉にSINNへと攻め込んだ。
 そしてSINN自身、汚い笑い声を上げて、突っ込んでくる。
「来るというのならば!」
「‥‥ブチのめしてやる――変身!」
 シグルフリート・ウォールター(sp9359)とアーク・カイザー(sq0753)、二人のクレスニクがシンを迎え撃つ。
 揃って猛禽の獣人、飛翔し、魔神へと迫っていった。
「アハハーハハ!」
 笑い声は止まらなかった。
 シンは、空中でも鋭く動き、聴覚を失ってバランスを欠いたクレスニクの攻撃を容易く避ける。
 戦局は確実に、魔神側に傾きつつあった。

●第2防衛線:魔人の戦場
 本社ビル地上階。
 正門から入ってすぐのその場所は、広いエントランスになっていた。
「敵が動く前に‥‥!」
 アルカ・カナン(sf2426)の祈りによって、閃きが走ると共に辺りは世界から隔絶する。
「まだ、動いてはいないようだけどね」
 アルカと共に戦いに加わっているウェスタ・イェルワジ(sg1931)が、天使の環を輝かせ、仲間達に治癒の魔法を宿らせた。
 敵陣にあるのは、ベリアルと契約した魔王の眷属たる王 壱紅。そして、武装した兵士の軍勢だが、まともな人間はきっと一人もいないのだろう。
 決戦の場である。敵が精鋭を揃えていないワケがなかった。
「出鼻を挫くのですよ!」
「わかったっす!」
 かつて、同じく半魔の軍勢を相手にしたときにそうしたように、獣化したヒメコ・フェリーチェ(sq1409)と志島 陽平(sa0038)が、一気呵成に飛び出した。
 半魔の部隊が獣や武器を構える前に、陽平は強く握りこんだナックルの力を解放する。
 放たれた光の拳が、半魔数人をブチ抜いて、見事に炸裂。そこへヒメコが敵陣真っ只中に転移、腹の底からの咆哮を響かせた。
 仲間との距離を計った上での位置取りだ。その効果が他のSINNに及ぶことはなかった。
 そしてヒメコは再び転移によって消えて、陽平が咆哮をそこに重ねた。
「チャンスっすよ!」
 ダメ押しに魔力を伴ったブレスを浴びせかけ、彼は仲間に告げる。
 実質的に、これが開戦の合図となった。
「来るぞ、迎え撃て」
 壱紅が静かに指示を出し、場はいよいよ交戦状態へと入っていく。
「んーっと、みんな吹き飛ばしちゃえばいいわよね」
 イノシシの獣人となった千種 蜜(sp9590)が、爆音と共に放ったのは重力波のブレス。
 それは敵兵数人を巻き込み、強烈な重圧で転倒させる。
「ぐくっ!」
 転んでしまった半魔の兵士が、慌てて立ち上がろうとする。
 しかしその背後にはすでに、魔法によって姿を透明化させていたアンリ・ラファイエット(sp6723)が迫っていた。
「――ま、悪魔よりはやりやすそうかね」
 思い切り蹴り上げ、敵が仰け反ったところへ、乱打。連撃。体勢が整っていない半魔は、傷こそ再生していくが、意識は寸断されそうになっていた。
「おの‥‥、れェ‥‥」
 半魔が、アンリを憎々しげに睨みつける。その手に持っているのは重剣。
 その半魔は筋力を倍増させて、敵を叩き切る戦法を得意としていた。
「‥‥異端に死を」
 だがライフル弾が、柄を握る半魔の手を貫いた。
 有栖川 彼方(sp2815)の援護射撃。それは幾度も続き、半魔の身体に穴を穿っていく。
 初手の咆哮が効いている。敵は未だ足並みも揃っておらず、こちらに対応し切れていない。
「頭を叩く」
「俺もついていくよ!」
 リディヤ・ジュラフスカヤ(sd9570)が、敵陣の真ん中を突っ込んでいった。
 アビス・フォルイン(sa0959)がそれに続いて、一路、壱紅を目指す。
「英断だ」
 壱紅は長剣を手に、二人と向き合った。
「てめぇにムカついててね、一発入れさせてもらう!」
「素直にそれを肯定すると思うかね」
 壱紅は、アビスの拳を長剣で受け止めた。洗練された剣技であった。
 しかし次の瞬間には、リディヤが彼の死角に回り込んでいた。こと、瞬間的な速度に於いて、風の力を宿すパラディンに並べる者はいない。
「‥‥厄介な」
 壱紅が目線だけでリディヤを捉える。しかし身体はついてこれそうにない。
 リディヤが至近距離でライフルを構える。射線はアビスに重ならないように、狙いをつけて、そして壱紅の向こう側に、壱紅がいた。
 ――これは。
 目を見張る。見間違いではあり得ない。それは確かに、今まさに弾丸をブチ込もうとしている壱紅であった。
「クク‥‥」
 目の前の壱紅が笑うのが聞こえた。瞬間に、リディヤもアビスも悟った。
 罠だ。
「全て忘れてしまうがいい」
 言ったのは、物陰から姿を現した壱紅。本物の魔王の眷属であった。
 リディヤ達が相手取っていたのは影武者。サマエルと契約し、変身の能力を持った半魔であった。
 誰も、壱紅の出現に対応できずにいる。一瞬、その隙に、彼は魔王より授かりし力を解き放たんとする。
 それは、魔王が作り上げる魔界と同質の結界を生み出す、魔人の領域。
 一度展開されれば、記憶をいいようにいじくりまわされてしまう。必殺の領域である。
「やらせなーい!」
 だが響く、少女の声。
 先に展開したのは、柴神 壱子(sa5546)の心の領域。
 それは壱紅の魔人の力を抑え込み、彼が見ていた戦いの決着を打ち崩す。
「むゥ‥‥!」
 声に現れる、小さな狼狽。壱子は壱紅を指差した。
「GO! ゴンスケ! 一発食らわしちゃれー!」
 彼女の操る柴犬型のパペットが、壱紅の肉体に思い切り体当たりをする。衝撃に数mも飛ばされて、壱紅は舌を打った。
 壱紅をぶっ飛ばす。
 それは、この場にいる全てのSINNが抱く思いであった。

●第3防衛線:語らぬモノ
 紅グループ本社ビル地下階。
 辿り着いたそこは、おそらくは実験場か何かなのだろう、殺風景な、広いだけの空間だった。
 だからこそ、SINN達の目には佇む二つの魔創が目立って映った。
「不気味だね。それに、悪趣味だ‥‥」
 魔王とその腹心を模した二体のゴーレムを前に、アルベルト・ルードヴィッヒ(sa0074)は嫌悪感を隠さなかった。
 彼が施す祝福をその身に受けて、ジェローム・モローアッチ(sc1464)はこの場にいてもおかしくない影を探す。
「‥‥ベルフェゴールは、いないようだね」
「いるわけないと思うよ。悪魔だからね、あくどいに決まってるよ。それこそコーラ飲んだらげっぷが出るくらいに当たり前のことだよね」
 持ち込んできたノートPCを開き、ニア・ルーラ(sa1439)が言う。
 確かにその通りだと、数人が頷いた。
 直後に、硬いものが重々しく軋む音。
 ベヒモスを模した魔創――B型が動きはじめた音だった。
 ベルフェゴールはこの空間の様子をどこかで観察している。魔創が起動したタイミングから見て、それは間違いないようだ。
「敵が動きマスネ! こっちも行きマスヨ、準備はOKデスカ!」
 軍服姿のジェーン・ミフネ(sk6098)がハリセンを高く掲げて皆に問う。
 応と答える者がいれば、いきなり駆け出す者もいた。
「この超絶美形パラディン、ビート様が一番槍をいただくぜェェェ!」
 叫び、突っ込んだビート・バイン(sf5101)が、魔創B型の巨体にハンマーを叩き付ける。
 甲高い衝突音。戦いのゴングが、打ち鳴らされた。
「あの程度の動きだったら‥‥!」
 魔創B型の重苦しい動きを見て、雫石 結氷(sp9763)が拳銃と吹雪のブレスを立て続けにブチ当てた。
 しかし弾丸は分厚い装甲に弾かれて、吹雪はあまり通じていないように見える。
 魔創B型。その装甲は、ベルフェゴールが作成した魔神の肉体にも等しい力を備えていた。
「‥‥硬すぎる!」
「結氷、近付きすぎだ!」
 兄である雫石 雪凪(sp8252)から叱責が飛ぶ。
 だが遅かった。もう片方、レヴィアタンの姿を模した魔創L型がその動きを高速化させて、突撃してきたのだ。
「危ない!」
 結氷を庇い、雪凪がL型の拳を受けた。細腕から繰り出されたとは思えない、凄まじい威力。
 雪凪の身体が、弾けるように吹き飛んだ。
「いけません!」
 駆けつけたカサンドラー・ウイグル(sf5053)が、癒しの術によって傷を直ちに塞いだ。
 もし、連続で攻撃を受けていれば、それだけで命の危険に達する破壊力であった。
「――ひとつ、溜めさせてもらうぜ、これがな!」
 魔創L型へ、ハーケン・カイザー(sc1052)が斬り込んだ。
 日本刀に似た曲刀を一閃。しかし、手応えは硬く、刃はほとんど通らない。
「もう一丁!」
 さらにもう一撃。今度は、指にはめた指輪の効果を注ぎ、打ちつけた刃は、一度目よりも深く魔創の表皮を裂いていた。
「手応えあり、だな、これが」
 L型の拳が飛んでくる前に、ハーケンは後退。今確かめた事実を、皆へと告げる。
「魔神の身体を何とかする方法で、あいつらの装甲も何とかできるぜ、これがな!」
 ハーケンが使った指輪は、魔神が持つ頑強さを中和する効果を持つ。それが通じるかどうかの確認であった。
「そうと分かりゃあ、コイツでどうだァァァァ!」
 ビートが、ハンマーに魔力を宿し、ハーケンが使ったものと同じ指輪を用いて、魔創B型を滅多打ちにする。
 二度ほどその威力は完全に相殺されたが、しかし魔創の表面に凹凸が生じ、一部には小さく亀裂が走った。
 炸裂した火の魔力は、威力こそ魔神装甲によって軽減されたが、しかし、亀裂をより深めるだけの効果は発揮できていた。
 魔創B型が動くたび、キシリと、亀裂から軋む音が響いていた。
「畳み掛けるんデース!」
 ジェーンの号令。
 SINN達が、魔創B型へと攻撃を集中させんとする。
 その様子を眺めながら、ニアは、すぐに視線をパソコンのモニターに戻して、キーを叩いた。
「この空間のどこかにあるはずなんだけどなぁ‥‥」
 彼女が探しているのは、戦いの様子をモニタリングするための機器。
 ベルフェゴールが別室でこの戦いを眺めているならば、それは絶対、あるはずなのだ。
 戦闘が始まって、まだ束の間。
 未だベルフェゴールの目は、発見できていなかった。

●中枢制御室:背徳の神像
 紅グループ本社ビル地下階・最下層。
 辿り着いた底たるそこは、まるで宇宙のようだった。
 一寸先も見通せない闇。その果てにちらつき、瞬くような無数の小さな光。
「ここは‥‥」
 ミリーナ・フェリーニ(sa0081)が、闇の中を何とか見通そうとする。
 だが優れた彼女の視力でも、来たばかりの今は目が慣れておらず、ほとんど見通せなかった。
 だが気配がする。視覚と聴覚が、闇の向こうに揺らめくものを彼女に知覚させた。
「何か、いる」
「もちろん、いるとも」
 小さな呟きでしかなかったはずなのに、闇の向こうから返答があった。
 闇がかすかに晴れる。全体が薄ぼんやりと、光と帯びた。
「な‥‥?」
 するとそこに浮かび上がったものに、SINN達は驚き、身構え、警戒する。
「神の姿だ」
 短く言ったのは、ミリーナに声を返した者。
 この場の主であり、魔王の一柱、【陽炎の頂】――仙級ディアボルス、ベリアルであった。
 流れる銀の髪、その頭上に淡く輝く鮮血色の天使の環。同じ色の三対六枚の翼を今は閉じて、魔王は薄く笑っていた。
 微笑と呼ぶには、それは歪みきった笑みだった。
 彼が神の姿と呼んだのは、ベリアルの背後にあるものだった。
 巨大な像である。
 大きさはどれほどでろうか。薄闇のせいで目測でも計るのが難しい。
 だが少なくとも、優に10mは超えている。いや、それどころではないかもしれなかった。
 色は、おそらく赤。ベリアルの翼と同じ色をした、ベリアルと同じ姿の像だった。
「この世界が全て洗い流され、清められた後、残された者達はこれを神と崇めることとなる」
「ベリアル‥‥、まさか、これは‥‥」
 像を見上げ、最初に口を開いたのは、ユビキタス・トリニティス(sa1273)だった。
 彼の、その声の余裕のなさに、ベリアルは笑みを深める。
「やはりハンドラーは、分かるようだね。流石だよ」
 賞賛を口にする魔王に、ユビキタスの顔は強張っていくばかりだった。
「どういう、こと‥‥」
「簡単な話です」
 問うミリーナに、ユビキタスは若干声を震わせて答えた。

「あの像こそが、大雨を発生させている魔法装置です」

 その言葉に、SINN達の何割かが絶句した。
 目標として見るならば、これだけ大きければ分かりやすいとは思うが、しかしベリアルは何を考えてこんなものを作ったのか、ほとんどの者は全く理解できずにいた。
 宿敵の視線を一身に集めながら、ベリアルの翼が、緩く開こうとする。
 ――刹那であった。
「させない!」
 ミリーナが発砲する。
 弾丸は、ベリアルが右手に握る長大な剣に弾かれた。
「なかなかに鋭い」
 ベリアルは楽しげだった。
 今、ミリーナを含めた数名がカルマの力を展開しなければ、SINN達はベリアルが行使した全知界の創世に巻き込まれ、無力化されていただろう。
 膨れ上がる殺気は、SINNからベリアルへと向けられたもの。
 今、この瞬間にすでに緊張は限界まで高まりつつあった。
 魔王はそれを涼やかな笑みで受け流すと、片手で剣を持ち上げてゆっくりと翼を開いていく。
「語らいにも飽きた。‥‥さぁ、雌雄を決しよう」
「問答無用。魔王ベリアル、その首を頂戴する!」
 鋭い光を宿す剣を手に、陸奥 政宗(sa0958)がまずは魔王へと突っ込んだ。
「邪魔させてもらうよ!」
 政宗から少しずれた方向より、クリシュナ・アシュレイ(sa0267)が自動拳銃を構え、発砲する。
 牽制なのだろう。射撃によって行動を阻害しようというクリシュナの意図が見て取れる。
 その上で、ベリアルは笑みを崩さない。
「言っておくけれど――」
 魔王は呟き、政宗の一閃をかすかに身を退いてかわすと、剣でクリシュナの弾丸を軽く弾き、体勢を崩した政宗の腹へ蹴り上げたつま先をめり込ませた。
「私は、そこそこ強いから、気をつけるといい」



「‥‥始まったな」
 鷹羽 叶望(sd3665)が成就した祝福の魔法が、玖月 水織(sh0007)をはじめとした数名に施される。
 水織は無言だった。戦いに興じる魔王の姿を、厳しい眼差しで見つめていた。
「そこです!」
 スィニエーク・マリートヴァ(sj4641)が、ベリアルの死角へと矢を放つ。
 だがあろうことか、魔王はそれを軽く手で掴み取ると、ちらりと彼女の方を見た。
「こちらですよ!」
 と、スィニエークと連携して、ダンテ・エイナウディ(sk2704)が槍を振るう。
 その穂先は、だが魔王の剣に弾かれた。彼はダンテのことを、見てもいない。
「最後だからと踊るにしても、もう少し盛り上げてくれないか。退屈は、いつだって忌まわしい」
 魔王の口ぶりには、多大な余裕が伺えた。
 戦場となっている場所から外れて、神像の足元、グネリと蠢く者がいる。
「楽シソウダネ、ベリアル様ハ」
 黒い蛇に絡みつく赤い布、白い仮面。【陽炎の懐】サマエルであった。
 魔王とSINNの戦いを、赤い蛇の悪魔はただ観察していた。そこへ――
「あなたはあの輪の中に入らないのですかな」
 ダニエル・ダントン(sa2712)が、声をかけた。
 そしてこちらに仮面を向けるサマエルへ、彼は一礼し、ロングソードを鞘から抜いて、
「お暇でしたら、是非ともお相手をしていただきたく、ムッシュ」
 隙なく、剣を構えるのだった。

●第1防衛線:復活の光
「自ら其方に堕ちた者など‥‥」
 上月 累(sq2012)が弓でシンを狙う。
 だが黒翼の悪魔はそれを難なくかわし、地面と水平に滑空。邪剣が累を狙う。
「人じゃ勝てないよ、人じゃさァァァァァ!」
 叫びに滲む狂気。だがそれも聴覚を失っている彼には届かない。
 届くとすれば、刃に斬られた痛みだけだろう。
 ビルの正門前にはマルコシアスの姿があった。
 狼の魔神はグォウと大きく唸りをあげて、開いたその口の奥にチラリと火の粉が舞っている。
「火を‥‥! 危ない!」
 戦っていたのは、セイディ・ゲランフェル(sp8658)とアスラン・ノヴァク(sq1286)であった。
 狼のアギトがアスランの方に向いていることを察知したセイディが、彼の前に立つ。そして噴き出した灼熱の吐息は、二人ごと広域を巻き込み、多くのSINNを焼いていた。
「抗うだけ無駄だと分からぬか、矮小なる者共!」
「そんな簡単に、諦めないわよ!」
「‥‥守って、みせます!」
 ようやく、聴覚を取り戻し、アロケルに抵抗しているのはアリス・フリュクレフ(sq1159)と、オズウェル・クローチェ(sq1494)。二人のクレスニクだった。
 接近戦では、二人の方に分があった。獣の運動能力は、明らかに魔神のそれを超えている。しかし――
「クハハハハハ!」
「――何、これ」
 獅子の瞳が妖しく輝く。
 魔眼を直視してしまったアリスは、いきなり視界が真っ暗になったことに驚き、身を硬直させた。
 アロケルの魔眼によって、視力を奪われてしまったのだ。
「懐ががら空きだぞ、小娘!」
 魔神の握る槍が動きを止めたアリスの胸を狙った。
「アリス‥‥!」
 オズウェルが彼女の盾となって身を呈し――その胸を、槍の穂先が貫いていた。

「クロケェェェェェル!」
 シンが、クロケルを呼べば、天使の姿をした魔神が再び津波の幻影を発生させて、SINN達から抗う力を削っていく。
 そしてアロケルの咆哮だ。SINN達の耳は一切の音を失って、違和感ばかりが、彼らの心を乱した。
「‥‥いけない、この状況!」
 指揮に優れるティファニーから見て、明らかに危うい状況だった。
 音が聞こえなくなることは、戦場に於いてはかなり厳しいハンデだ。目は見えても、感じ取れるものはそれこそ半分ほどにまで落ち込むだろう。
 加えて――
「外さない‥‥!」
 ローウェル 一三(so2674)が生み出した猛烈な吹雪を、空中にいるシンはまともに浴びた。
 彼女が黒翼の魔神に向けて放った吹雪はこれでニ発目。
 いかに上級の魔神といえど、魔法を極めたエンジェリングの一撃、通らぬはずはないと、一三は思ってはいたが、
「冷たくない、痛くない、無駄、無駄なんだよォ!」
 シンの体はすでに、吹雪に完全な適応を果たしていた。
 それは魔王が持つものと同じ、進化の力である。
「この野郎!」
 一三をカバーすべく、相模 仁(sp6375)がシンへと飛び掛るも、魔神はそれを回避して、逆に邪剣が彼の身を切り裂いていた。
 ――強い。
 星一族より転生し、悪魔となった者。その力は、間違いなく幹部魔将に匹敵する。
 そして再び噴き上がった火柱は、マルコシアスの吐く炎。
「‥‥巻き返せない!」
 痛感する。敵が初手に使ってきた津波の幻影。あれが、余りにも痛かった。
 まだ、こちらが散開する前、ほとんどのSINNが動き出す直前にやられたのが大きい。
 そう。屋外での戦闘ではあるが、戦場となっている範囲はさほど広くはなかった。敵がそのように誘導したい結果だ。
 幻影も、咆哮も、炎も、全てがその範囲内で行使されている。
 敵はこの戦術を、間断なく徹底してくることだろう。この期に及べば、誰にだって分かる話ではあった。
 起死回生の一手が必要であった。
 もはや趨勢が決しつつあるこの状況を丸ごとひっくり返す、強烈な一手が――
 それをもたらしたのが、オズウェルだった。
「僕が‥‥、できることを‥‥」
 槍に貫かれて、喉の奥からこみ上げてくる血の味は不快だった。
 しかしそれ如きでは、彼の命を断つことも、彼の心を折ることもできはしない。
 オズウェルが、血を吐きながら息を吸う。
 そしてアロケルの槍をしっかりと掴んで、彼は魔法を成就した。

 戦場が一定の範囲に限られていたからこそ、その光は場にいる全ての仲間を癒した。
 ユーミル。
 クレスニクが扱える、己の生命力を癒しの力に変えて放出する魔法である。
 それは傷を癒し、悪しき影響を拭い去り、活力をもたらす。
「なんだ、なんだよォォォォォ!」
 余りに不快な光に、シンが絶叫する。
「ガキが!」
 ほとんどの生命力を搾り尽くし、意識を失ったオズウェルをアロケルが狙った。
「させないわ!」
 間一髪、ティファニーの吹雪が魔神を横から叩きつけると、アリスがオズウェルを抱えあげた。
 オズウェルは生きていた。戦闘が始まる前、アリスが浴びせた不死の力をもたらす血によって、一命を取り留めていたのだ。
「よかった‥‥!」
 傷のついた手のひらで、彼女は、オズウェルの頬を静かに撫でた。
 彼がもたらした癒しの光は、SINN達の反撃ののろしとなる。
「――人間が!」
 口汚く言うクロケルが、みたび、津波の幻影を生み出そうとした。
 しかしその眼前に、彼はいきなり現れた。
「させるかよ!」
 転移し、現れたのは竜造寺 巌(si7760)。すでにそのとき、振りかぶった拳には炎の魔力が宿っていて、
「おおおおお!」
 放った拳が爆ぜて、クロケルが大きくその身を仰け反らせる。
 そして背後、
「やれぇ、歩夢!」
「――壊れなよ」
 鷹羽 歩夢(sj1664)の拳には魔力の光。数打てば、強靭な魔神といえど堪えきれる道理はない。
 傷ついたクロケルの肉体は、最後には巌の二度目のエルプティによって、粉砕される。
 速攻であった。
「おまえらアアアアアアアアアアアア!」
 その叫びは、シンがあげたものだった。

●第3防衛線:今、本当の眠りを
 爆音と金属音、時々混じる悲鳴と気合の声が、戦場を彩る音の全てであった。
 烏ツ木 保介(sd0147)が機嫌悪そうに舌を打った。やはり探しても、あの怠惰な魔将の姿はない。
「モニタリングに徹しているのか、コソコソ隠れまわっているのか、どちらもありそうだな」
 ジェネレイド・キング(se9786)の言葉は、保介も同意できるものだった。
 彼らは二体の魔創へと目を移した。
 巨体を誇る魔創B型。それが、SINN達から集中攻撃を受けていた。
「硬すぎるぜ、これがな!」
 ハーケンが刃を打ち付けてもそれは表面で弾かれて、全く通じない。
「関節の付け根ならば!」
 ダニエル・マッケラン(so1035)が、アサルトライフルで狙いをつけて関節部分を撃つ。
 それは、常識的に考えれば装甲は薄く、壊れやすいはず。
 だというのに火花が小さく散るのみでそこには凹み一つ残らなかった。
「‥‥どれだけ頑強だと?」
 信じられない思いで呟いた。
 今、魔創B型の強度は内部に帯びた魔法的機関の働きによって著しく向上していた。
 本物のベヒモスの能力を模したそれを、製造者であるベルフェゴールは「鉄鬼の盾」と呼んでいる。
「こォっのやらァ!」
 ビートが、ハンマーでB型を叩こうとする。
 だがいつ飛び込んできたのか、すでに彼の眼前に小柄な魔創L型が迫っていた。
「ぐッ‥‥!?」
 放たれた拳が、ビートの身体をくの字に折った。
 それはL型のみが持つ機能。拳の部分に魔力を集中させて威力を増大させる、「鉄鬼の矛」とでも呼ぶべきものであった。
「クソ! こっちだ、こっちを向きやがれ!」
 カミーユ・ランベール(sf0920)が自ら前に出てL型を引き付けようとする。
 だが相手は魔創。
 ディアボルスとは違って精気感知を持たないゴーレムは、エンジェリングと他の生物を全く区別しない。
「ベルフェゴール‥‥、どこにもいないです‥‥」
 彼と共に参戦したアメリア・ロックハート(sh1732)が背に光の翼を宿らせ、この空間内を飛び回るも、やはり魔将はどこにもいなかった。
 たった二体の魔創。
 しかし、魔王と魔将を模したそれは、確かに最終魔創と呼ばれるだけの力を備えていた。
 攻のL型、防のB型。
 どちらが優れているとも言えない、共に強敵としか呼びようがないレベルである。
「傷を負った者は後方へ、今はまだ無理をするときじゃない! 集まって、サナティを施せる範囲へ!」
 指示を飛ばすのは、アルフォンス・ヴィヴィエ(sf9647)だった。
 神へと勝利を求める祈りを捧げながら、彼は状況を吟味する。
 敵の魔創は確かに強い。それは、魔将と肩を並べるほどだ。
 だが物量、総戦力の部分で、こちらに分があるのは明白。
 継戦能力こそが、この戦いの鍵となるだろう。
「行こう、シャム!」
 アルフォンスの頭上を、ラティエラ・テンタシオン(sb6570)と獅子の姿に変じた聖獣が飛んで過ぎていった。
 自ら、敵へと迫った彼女は、あえて自身を魔創B型の眼前に晒し、注意を引こうとする。
 魔創は、所詮、どこまでいっても人工物でしかない。
 生物のように柔軟な対応ができないという点については、与し易い相手ではあるのかもしれない。
 そうやって、B型がラティエラと聖獣に撹乱されている間に、「鉄鬼の盾」の効果が薄れ、B型の強度が従来のものへと戻った。見た目で、それは分かりはしないが。
 そしてまたB型の脇をすり抜けて、その奥に位置どっていたL型へ迫る者がいる。
「‥‥スゥ――」
 目の前の敵を倒す。そのために、踏み込んだ鷺沼 妙子(sp1602)が、大上段より、日本刀を振り下ろした。
 刃が魔創の表面を叩くと共に、炸裂音。重力波を伴った一撃が、L型の矮躯を深くまで一気に切り裂く。
 だがL型の拳が妙子の身に突き刺さる。
 L型が持つ「矛」も、すでに効果を終えていたが、それでも一撃の重さは人が素の状態で生み出せる威力をはるかに超えていた。
「タエ‥‥!」
 地面を転がされた妙子へ、児玉 初音(sp1503)が駆け寄って癒しを施す。
 全身を苛む痛みがスゥと引いていくのを、妙子は感じていた。
「‥‥痛かったけど、手応えはあったよ」
 彼女は笑う。
 それは誰の目から見ても明らかな、強烈な一撃だった。
 機能不全に陥る寸前まで、L型を追い込んだ一閃。それだけでも、勝負は見えたと言ってしまえるだけのダメージを確かに与えてはいた。
 しかし――そう簡単に終わらないからこその、最終魔創である。
 二体の魔創が同時に内部に蓄積された魔力を開放する。
 それは、原理でいえばエンジェリングの癒しによってパペットの損傷が修復されるのと似ていた。
 魔創が被ったダメージが、速やかに自己修復されていく。
 それを目の当たりにしたレティシア・モローアッチ(sa0070)が、ゴクリと息を呑んだ。
「なんて、技術力‥‥、凄まじいわ」
 一研究者として、一錬金術師として、錬金術の粋を集めたこの魔創は、まさに垂涎の的であった。
「だからこそ、張り合いも出てくるものよ」
 レティシアがパチンと指を鳴らす。
 彼女の操るガンシップ型パペットが上空から二体の魔創に向かって弾丸を吐いた。
 それは魔創の装甲を貫き、食い込みはするものの、大きなダメージには繋がらない。
 ギギギと、関節を軋ませて動き始める魔創二体。
 再び、「鉄鬼の矛」と「鉄鬼の盾」を行使して、SINNを狙おうとする。その、瞬間に――
 バチリと、小さく何かが爆ぜた。それは突然のこと。何が起きたのか、理解していたのはきっと、レティシアだけだろう。
「上手く、いったみたいね‥‥」
 安堵のため息。
「何、したんだよ、姫さん?」
 レティシアの護衛役を務めるラルフ・フェアウェイ(sg4313)が問うと、彼女は「邪魔してやったのよ」、と、答えた。
 たとえ技術力で上回ることはできなくとも、それを阻害するだけの技術はある。
 邪魔をして、機能不全に陥らせるくらいは、できるのだ。
「フハハハ、いいザマじゃないか!」
 動きがあからさまにぎこちなくなった魔創を見て、ジェネレイドが心からおかしそうに笑う。
 彼が操るパペットが、二体の魔創それぞれに、錬成された金属板を差し込んだ。
 それは直ちに効果を発揮する。
 二体の魔創。それらが誇る一切の防御機能が、失せた。
「――好機!」
 妙子が走る。狙いは再びのL型。
 大地の魔力を日本刀に走らせて、彼女の一閃がL型の片腕を切り落とした。
 されど魔創も未だ動きを止めずに、残った腕と足とで、妙子へ反撃を行なう。
 それは殺し合いだった。
 少女と、少女の姿をした鉄像の、真っ向勝負。
 有利なのは、攻撃力では魔創。防御力でも魔創。けれど――魔創B型はそこに立ち尽くしている。
「タエ、頑張って!」
 初音の存在。その癒しの魔法が妙子の傷を塞ぎ、活力を与えて、刃はついに魔創の首へと届いた。
 嗚呼――結局ここでも、海魔の王が負けた理由は同じだった。
 頭部を失って、L型は完全に機能を停止させた。
 独りだったから、隣に誰もいなかったから、それは負けたのだった。
 そしてB型は立ったまま、動かないでいる。
 壁として、Lが頼りも遥かに多くの攻撃を受けてきたその巨体は、すでにどこかに故障を抱えていたのかもしれない。
「壊そう」
 アルフォンスが指示を出し、SINN達は立ちんぼになっている魔創B型に攻撃を集中させた。
 それは大した時間もかからずに破壊されて、残骸が、かすかな煙を上げて転がった。
「‥‥終わった、の?」
 と、保介に声をかけたのは、アンナリーナ・バーリフェルト(sp9596)だった。
 戦いには加わらず、ベルフェゴールを探していた彼女は、しかし発見できずに戻ってきたのだ。
「ああ、終わった‥‥」
 保介が、半ばベルフェゴールの探索を諦めて、レティシアの方を向いて、そこにベルフェゴールがいた。
「よくもやってくれたわね〜」
 魔性は転移し、現れた。
 その視線は、レティシアへと向けられている。
 ベルフェゴールはずっと別室からモニタリングを行なっていた。カメラはそもそも、魔創に内蔵されていたのだ。
 自らの最高傑作が破壊されるきっかけを作ったのは、レティシア。いかに怠惰であろうとも、研究者としての怒りは、激しいものだった。
「死んじゃえ〜」
 と、彼女の座る椅子の肘掛から、魔力の光が放たれようとする。
「姫さん!」
 誰よりも早く、ラルフが反応した。
 彼は思い切りレティシアを突き飛ばすと、魔力の光線を自分が代わりに受けた。
「‥‥もぉ〜!」
「ベルフェゴォォォォォォル!」
 怒り、叫ぶ保介。だがベルフェゴールの姿はすでに消えていた。転移した。逃げたのだ。
 彼はそのとき、なんとなく気づいた。ベルフェゴールがこの場に現れなかった理由は逃げるため。追われないためだ、と。
 エクソシストには、追跡に優れた魔法がある。そういったものを警戒し、恐れていたのだろう。
 それは、病的なまでの用心っぷりである。
 ただそれでも、ベルフェゴールの今の行動は、明らかな悪手であった。
 何故ならば――
「ラルフ、大丈夫? ラルフ‥‥!」
 倒れたレティシアが駆け寄ると、彼は笑っていた。
「ヘヘ、印、つけてやったぜ‥‥」
 何故ならば、ラルフ自身も、追跡の魔法を使うことができたのだから。
 ベルフェゴールへの追撃が始まる。

●中枢制御室:交わる心の錬金術
「ベリアルよ――」
 薄闇の決戦場、己を模した錬金の神像の下で、ベリアルはライラ・ルシュディー(sb2519)に問いかけられた。
「おまえは最後の答えを探しているらしいな。だがそれは果てのない探究になるに決まっている。悪魔となれば、それこそ永遠に疑問を持ち続けることになるだろう。その境涯に落とす事がサマエルの狙いだったのではないか?」
 ベリアルは彼女の放つ光の矢をその身に受けながら、しかし微笑みは崩さずに、
「だとしたら私はサマエルに感謝するよ。永劫に等しい思考の時間を私にくれたのだからね。ああ、私は今、幸福だ」
「愚か者め!」
「大いに結構。君達が思っているほど、愚者と賢者に違いがあるわけではないさ」
 魔法の直撃を受けても、魔王は涼しい顔をするばかりだった。
 だがそんな彼の表情を動かしたのは、ハルキュオネ・バジレア(sh3934)だ。
「全部、神様のおかげだよ〜」
「ほぉ‥‥、君はそう考えるのか」
 戦闘中である。しかしベリアルはハルキュオネに言葉は向けても刃は向けず、彼女の答えを待った。
「神様はね、ずっと見てるんだ。だから、私達がこうしていられるのも、神様のおかげだよ」
「そうか。‥‥だったら、最大限の敬意を持って、蹴落とすとしよう」
 それは会話のみの攻防であった。
 無邪気に笑うハルキュオネへ、ベリアルが告げる感謝と小さな毒を含んだ棘。
 両者は会話し、しかし言葉は交わらず、天使の娘は祈りを捧げ、悪魔の王は嘲り笑う。
 どこか超然とした空気を醸し出しながら、しかし戦っているのはやはり人間であり、魔王の刃が戦士の身を切り裂いた。
「傷は治しますから無理はしないでくださいねー」
 メイリア・フォーサイス(sa1823)が呼びかけ、政宗は小さく頭を下げると一度退いた。
 魔法で仲間の傷を癒し、メイリアはベリアルを見る。その視線に気づいた魔王もまた、彼女を見た。
「‥‥星一族を悪魔に変えた元凶は、貴方ですよねー?」
「彼らが望んだことだよ」
「全員ではなかったはずですー。その気が無い方もいると知った途端に切り捨てた貴方の罪が消える訳ではありませんー!」
「今さら、罪の一つが増えたところで、気に病むような繊細さはなくてね」
 メイリアが向ける怒りも、ベリアルには届かない。その様に、彼女は重ねて問う。
「もし全てを知ってしまったら、退屈になるのですよー。あなたはそれで満足なんですかー?」
「満足することなど、永劫、ないだろう。お嬢さん、君が思っている以上に、この世界はままならない。だからこそ、私は知りたいと願い、思う」
 語るベリアルへ向けて、クラリーチェ・ラグランジュ(se5708)が吹雪を放つ。
 極低温の魔力の奔流は彼を包み、凍てつかせた。
 しかしベリアルの笑みは崩れない。崩さない。
「この痛みにも、もう飽きた。‥‥今の世界には、もう飽きてしまったよ」
「そんなことで、世界を滅ぼすというのですか、あなたは! 人まで滅びたら、悪魔のあなたは困るのではありませんか?」
 クラリーチェの問いである。
 そして帰ってきた魔王からの答えは、彼の目的そのものでもあった。
「なくなってしまうならば、新たに作ればいいだけだよ」
 何を、という点について、その言葉を聞いた皆がすぐに察した。
「神がこの世界を作り、命を作ったというのならば、同じことをすればいい。そう、私は神になるのだからね」
「生命を、冒涜するのか‥‥!」
「その考えもまた、君達が君達として神に創られたがゆえの考え方だ」
 ベリアルが神像を背に、翼を広げて音もなく浮遊する。
「全ての基準も、善悪の価値観も、命の値段も、世界が変われば新たに作り直される。それを成すのが私だ」
「異端ごときが、戯言を!」
 アドリアン・メルクーシン(sb5618)の怒りは、しかし魔王には届かない。
「君達が囚われている全てのしがらみを、この私が洗い流し、清めよう」
 魔王の言葉に呼応するように、真紅の神像が淡い光を放ち始める。
 それは世界を洗い流す聖水の雨の発生装置。
 世界中より集められた莫大な数の錬金素材や、強い魔力を備えた伝承素材までをも燃料に、局所的な聖水の豪雨を発生させる。
「生き延びたければ、戦いたまえ。君達だけが、それを成せるのだからね」
 告げるベリアルの顔に浮かぶ笑みは、あくまで、穏やかだった。

 ――イヤな予感がする。
 玖月 絢紅(sh4500)が神像へと駆けだした理由は、そんな曖昧なものだった。
「あれはどう見てもヤバイねー」
 と、隣を走る日向 蒼伊(so6943)に言われ、絢紅は短く「そうね」とだけ返す。
「ドコヘ行クンダイ」
 だが二人の前に、サマエルが立ちはだかろうとしてきた。
「おっと、あんたの相手はこっちさ!」
 エステファニア・アランサバル(so2457)が、魔力を付与したライフルでサマエルへ攻撃。
 中身も怪しい体をくねらせ、サマエルは射撃攻撃を回避する。
「ムッシュ、よそ見はいけませんな」
 重ねるようにダントンの剣が、サマエルの身をかすめる。
 絡みついている黒蛇が身を伸ばして彼に迫った。その黒に触れた者に死の呪いを与える、恐るべき毒蛇だ。
 回避する。誰もがそうするだろう。しかし老練の剣士は、あえて腕を突き出し、そこに黒蛇を絡ませた。
「このまま、戦いが終わるまで縫い付けさせていただきますよ」
 ジュクリと、身体が悪しきものに冒される感覚を味わいながら、ダントンは黒蛇の身体にロングソードを突きたて、自らを犠牲にしてその動きを封じこんだ。
「こちらは私にお任せを。皆さんは、どうかサマエルの方を」
「本気カイ。ヤレヤレ、ヤリニクイナァ」
 声にも態度にも、一切動揺は表さず、サマエルは身体をグニャリとくねらせるのだった。

「ありがとう」
 と、彼女は言った。
「それは、どういう意味かな」
 ベリアルは剣を降ろし、シャーロット・エルフィン(si6767)に問いかける。
「シャ、シャーロットちゃん‥‥!」
 彼女の隣では、皆本 愛子(sb0512)が何やら慌てた様子を見せている。魔王に話しかけるとは思っていなかったのだろう。
 だがシャーロットはマイペースに、ベリアルへと言葉を続ける。
「ヘルメスさんが‥‥、錬金術を作ってくれたから、わたしはこの子たちと、友達になれて‥‥たくさんのひとを、守ることも、できたから‥‥」
 自分が操るパペットをなでて言うシャーロットに、ベリアルは「なるほど」と小さくうなずく。
「それで、君は私に何かお返しはいただけるのかな?」
「あなたの野望を、止めて、みせるの」
 激しくはない。しかし、強い力を宿したその言葉。愛子もまた、ベリアルを睨んで、
「あ、あたし達が止めて見せるんだよ!」
「やる気に満ちているということは素晴らしいね。できるかどうかは別にして、だが」
 ベリアルが剣を振り上げて二人へと向かう。
「隙あり!」
 だが迎え撃つのは、銃を構えたミリーナ。
 彼女の放った弾丸が、赤い翼を直撃する。
「‥‥小うるさいことだ」
 魔王が持つ完全適応の力は、すでにミリーナの弾丸に適応していた。もはやその弾丸は弾かれるのみだ。
 しかし、ミリーナはそれで構わなかった。邪魔をすることはできるのだから。
「いまのうちだよ、シャーロットちゃん!」
「うん‥‥、二人で‥‥」
 愛子とシャーロット、二人のハンドラーが素材を持ち寄って、一つの錬金術を成そうとする。
 それはシンクロアルケミー。
 たった一人では決して叶うことのない、SINNが扱うアルケミーの奥義の一端である。
 それがきっかけだった。

「なんだい、それは――」

 ベリアルが、大きく瞳を見開いたのだ。
 錬金術は、かつてヘルメスと呼ばれていた頃のベリアルが見出した、「神の手に寄らず、己の願いを叶える魔法」である。
 だがそこに、「他者との協力」などという概念はなかった。少なくとも、彼が人であった頃には。
 錬金術はヘルメスが作り上げた魔法体系である。
 だがその全てを、彼は修めているわけではない。
 ヘルメスの後に続く者達の手によって発展し、洗練されていった技術もまた、存在するのだ。
 シンクロアルケミーこそが、その一つであった。
「――いけない」
 ベリアルが、独り言のように呟いて、直感が働いていた。
 あの二人のアルケミーを完成させてはならない、と。
「邪魔はさせねぇ。だからよぉ、邪魔をさせてもらうぜ!」
 立ちはだかったのはジョニー・ジョーンズ(sa2517)であった。
 槍を構え、彼はベリアルを阻む壁に徹する。他のSINN達もまた、ベリアルの変化を感じ取り、二人のハンドラーを守るために――
「小賢しい‥‥!」
 ベリアルの声に初めて、苛立ちが混じった。
 時間が過ぎていく。十秒、二十秒、と。アルケミーは特に時間がかかる魔法だ。
 攻勢に出るベリアルの前に、SINN達は傷ついていく。癒しの魔法、薬、回復手段は次々消費されて、そして、その瞬間は訪れた。
 ベリアルが、SINN達を蹴散らして、愛子とシャーロットへと迫る。
 しかし愛子の連れた鬼瓦型のパペットが、ベリアルの剣を受け止め、阻んだ。

「できた――」
「解けて、消えるんだよ――!」

 二人の意志によって紡がれた素材は、形を持たず、一条の光となって瞬いた。
 光は神像を射抜いた。ベリアルが造り出した、世界規模に作用する強大な魔法装置。だが根本に使われている技術が錬金術であるならば、それを成立させているのはスレッド。意図の糸に他ならない。
 二人が作り上げたのは、糸を解くアイテムだった。
 時間は一瞬。
 しかしその効果は――絶大。
 真紅の神像が鳴動する。ベリアルは、瞬きもせずに己の願いの結晶を見上げて、神像の顔に一筋の亀裂が入るのを見た。
「‥‥‥‥ッ!」
 始原の異端者はそのとき、舌を打っていた。

●第1防衛線:星は落ちて
 マルコシアスのその声は、遠吠えにも聞こえるものだった。
 しかし直後より、翼を持った狼は動きの速度が倍加する。悪魔魔法であった。
「――その選択、後悔させてやるぞ!」
 空へと舞う狼を、アスランが追った。
 彼はクレスニク。翼を広げ空を駆ける彼は、今、獣化により手数こそマルコシアスに譲るものの、動きの鋭さはマルコシアスにもひけをとらない。
「空は、わが領域!」
 飛行速度では敵に譲っても、その身のこなしは互角。ならば、身体小さな彼の方が、小回りは利く。
 アスランはマルコシアスの背面に回ると、その翼を両手で思い切り掴み、狼の飛行を阻害した。
 下を見れば、心配そうに自分を見上げているセイディの顔が見える。
「落ちろ、駄犬」
 冷たく言って、彼はマルコシアスの背に乗って、そのまま墜落させる。
 よほど慌てたのか、狼はまるで見当違いの咆哮に三度目の炎を吐いた。
「討つぞ!」
 地に墜ち、身動きが取れないでいる狼の魔神へ、サルヴァトーレ達が突っ込んでいった。
「僕の魔法も、どうぞ」
 アスランへ、ヨシア・アジール(sc3352)がマギアを施す。
「一応、やけどね‥‥」
 さらに郡上 浅葱(sd2624)がサナティのチャージを付与すれば、もはや負ける理由はどこにも見つからない。
 マルコシアスは大した抗戦もできないまま、やがて浄化の一撃を受け、沈むのだった。
「こんな、馬鹿なことが‥‥!」
「実際に起きてるから困っちゃうわよねぇん♪」
 同胞を立て続けに滅ぼされてたじろぐアロケルへ、ニーチェ・シュートラー(sp6098)が笑いかけて、そして繰り出すのは蹴りの連打。
 魔力を伴ったその一撃は、彼女が帯びた装備の効果によって破壊力を高められ、魔神の肉体を確実に痛めつけていった。
「や、やってられるかァ!」
 もはや戦意を喪失し、アロケルはその場から逃げ出そうとする。
 しかしその無様な逃走も、レオン・ブラットショー(sn7285)のかざしたCROSSによって阻まれた。
「――神の憤怒は之にて全うせらるるなり!」
 爆ぜる純白の炎は、すでに傷を負っていたアロケルを包み込み、そして霧散化を許さずに焼き尽くす。
 炎が晴れれば、そこには悪魔の姿は跡形もなかった。
「なんでだよ‥‥、なんで!」
 シンが、身を震わせていた。このような状況を、彼は全く想定していなかった。
 レオンがCROSSを握り、シンへと問う。
「人が、駆逐されるだけの存在だと思っているんですか? 神にでもなったつもりですか? そもそも、人がいなくなったら、あなた達はどうするんです」
 ベリアルの計画自体に、彼は疑問を抱いていた。憤ってもいた。
「ハ、ハ、ハハ! 人が、いなくなったら? 人の代わりになるものを作ればいいだろォ!」
 奇声にも近い、シンの返答。言っている内容が突飛過ぎて、理解が及ばない。
 しかしそれこそがベリアルの成さんとしていることなのだと、知っているのはこの場ではシンのみだった。
「元気そうで何よりだったけどよ、決着をつけようぜ、廉貞!」
「その名で、呼ぶなぁ!」
 かつて人であった頃のシンを知るゴスタ・ユオン(sp9246)が、シンへと殴りかかる。
 密着した状態からの一撃。進化とも呼べる超速の適応能力を持つシンに、通じるのは一発目のみ。しかしゴスタの狙いはそこではない。
「人型で助かったぜ!」
 本命は鎖分銅。それを彼は、シンの片腕に絡みつかせ、動きを阻む。
 敵の意識がゴスタに集中している。それを見て取ったミラベル・ロロット(si6100)が、操るガンシップ型のパペットで、がら空きの背中に銃弾を叩き込んだ。
「‥‥初めての錬金だけれど」
 と、幾分不安げに彼女は言う。そのパペットには、シンの適応能力を阻害するアルケミー製の弾丸が仕込まれていた。
 しかし――
「ムカつくなぁ、おまえらさァァァ!」
 弾丸を立て続けに浴びながらも、シンにさしたるダメージも与えたようには見られなかった。適応したのだ。
 失敗。ミラベルが、小さく唇を噛む。
 ゴスタの鎖を振り切って、癇癪を起こしたシンが飛翔し、パペットを邪剣で切り裂く。
「元気そうじゃねぇか妬み屋、死ね」
 と、宙に浮いていい的になっているシンをほぼ真下からエルマ・グラナーテ(sj0377)が狙って拳銃を撃ち放つ。
「効かないんだよォォォォォ!」
 一発目、通ったのはその一撃のみ。
 しかしシンの意識は今度は彼女へと向き、刃が、彼女の身を掠めた。
 途端、エルマの身体に不快なものが走る。呪い。それが、彼女を冒していた。
「ハ、ハッハ! 黙って見てろよぉ、もう何もできないんだから!」
 シンが笑う。彼が持つ邪剣ティルヴィングが与えるのは失敗の呪い。あらゆる行動が成功しなくなる、恐るべきものだった。
 もはやエルマは恐るるに足らず。
 そう判断し、シンは別の標的を探そうとする。その慢心が、彼にとっては命取りだった。
「簡単に人を見捨てるなよ、蛍雪」
「‥‥‥‥ッッッ!!?」
 背後からかけられた声に、シンは劇的にも過ぎる反応を見せた。
 振り向く。刹那、伸び来た光の荊が彼の身を縛り上げた。
「‥‥合ってたんだな」
 エルマだった。額を囲うように刻まれた聖痕。成就した魔法が、シンを捉えていた。
「な、なんで、おまえ‥‥! 呪いは‥‥!」
「そんなものは僕の前には意味をなさないよ」
 ジェラール・テステュ(sa8825)が、つまらなさげに言う。
 エルマを蝕んでいた邪剣の呪い。それは、ジェラールの解呪の魔法によって、無に帰していた。
 そしてエルマが口にしたのは、まさしく廉貞と呼ばれたシンの人であった頃の本名。つまりは、真名であった。
「こ、殺して‥‥や、る!」
 シンは、邪剣を構える。呪いが解かれようとも、自分が負けたわけではない。
 この体は無敵だ。強いのだ。あらゆる傷を治し、あらゆる環境に適応できる。だから、この体があれば――
 思っていたシンの肩に、魔力を伴った銃弾が穴を穿った。
「は、ぁ‥‥?」
 エルマの銃弾。それは、先ほど適応したはずのものだった。
 激痛に、シンが身をよじる。傷が再生しない。
「妬み屋、あんたの能力は全部封じたぜ」
 無情な宣告であった。エルマが伸ばした光の荊が、シンの能力を完全に抑え込んだのだ。
「う‥‥、ああああああああああああああああああああああああ!」
 誇っていた己の力を全て剥奪されて、シンは狂乱する。
 滅茶苦茶に邪剣を振り回すその様を目の当たりにして、御剣 キョウ(sp0401)が小さく呟く。
「‥‥見ているか。ついにここまで来たぞ。今こそ、君から継いだ炎を持って全ての星を空へ還し決着をつける!」
 キョウの渾身の一撃。そこから始まる、炎の如き光に身を包んでの連撃が、シンを容赦なく打ち据えた。
「あ、ァァ‥‥」
 吹き飛び、邪剣を手から離して、地面に這い蹲るシン。
 それを、場の全てのSINNが取り囲む。
「ぼ、僕は‥‥、僕は‥‥!」
 嘆くが、涙は流れない。その身はすでに悪魔。心臓もなく、血の一滴も傷口からはこぼれずに――
 嗚呼、どうして、こんなに違ってしまったのだろう。
 罪と呼ばれた者。星の名を冠した者。
 シンは今こそ、裁かれた。同じ名を持つ者達に、聖なる純潔と呼ばれるSINN達に。
 こうして――最後の星が、墜ちた。

●第2防衛線:心なきもの
「私の娘は、よい友達を得たようだ」
「‥‥あァ?」
 笑みを零すこともなく、ポツリと呟いた壱紅に、狼牙 隼人(sa8584)が凄みを利かせた。
「自分から踏み躙ったくせにこんな時だけ娘ってさ‥‥」
 壱子も、普段は見せない強い怒りを、その表情や声ににじませて、壱紅を見据えている。
 パペットによって一発、ブン殴りはしたものの、その傷もまもなく再生によって消え失せた。
「君達が、娘のためと嘯くのであれば、言葉よりも行動で示してみたまえ」
 壱紅が剣を構え直す。
 周囲でも、戦いは続いていた。先手こそ取れたものの、敵も精鋭である。
「ふぅん!」
 筋力を高めての重剣の一閃。半魔の攻撃を、陽平はなんとか受け止めるものの、無傷ではいられない。
「‥‥くぅ〜、重てぇっす」
「そのままァ!」
 と、別の半魔が陽平に魔法を使用せんとする。
「ちょっと待ったァ!」
 だがエスター・ゴア(sq0475)が飛び込んできて、手にした射出器より対人用のネットを放ち、半魔を絡め取る。
「小娘‥‥!」
 手にした槍を燃え上がらせて、別の半魔が彼女へと悪魔魔法を成就した。
「効かなーい!」
 だがすでに、エスターは成就していた。悪魔魔法を吸収し、その魔力を己のものとする魔法を。
「そこを突け!」
 指示を飛ばす、イーゴリ・トルストイ(sq0700)。突っ込んだエスターが、半魔へと華麗なとび蹴りをお見舞いした。
「く‥‥」
 再生能力によって傷は癒えていく。こんな攻撃、物の数ではない、と。
 だが、それでも彼らはまだ人の身で、人の精神性を持っていて、そのクセ、人を越えたというつまらない油断が心に染み付いているから――
 対人戦闘で、最も恐るべき攻撃とは、一体なんだろうか。
 一撃で死に至る、強烈な攻撃か?
 非常に避けにくい、超高速の攻撃か?
 答えは否である。
 それらは、分かっていれば対策できる。分かっていればどうにかなる。
 ならば最も恐るべき攻撃とは――
「‥‥隙だらけだ」
 気がつけば、半魔の喉元が掻っ切られていた。
 血が噴き出す。それは、致命傷ではないが、しかし、何より同様が、半魔の動きを強張らせた。
 対人戦闘に於いて、最も恐るべき攻撃。
 それは奇襲。暗殺。
 気づくことのできない攻撃に他ならない。
 暗器の扱いを極めた煌 宵蓮(sa0253)からすれば、半端に力を得た半魔など、物の数ではなかった。
 自分単体では仕留めきれないとしても、仲間の攻撃を誘うきっかけを作るのは容易い。
「その首、貰い受ける」
 宵蓮の呟きに気づくものはなく、彼はただ獲物を振るう。己の身を一振りの刃として。
 SINN達は相応に傷を負いながらも、長い時間をかけることなく、半魔の群れを制することに成功するのだった。

「てめぇに、人の親を名乗る資格はねぇよ」
「それは資格が必要なことなのかね?」
 隼人の言葉を、壱紅は笑わず返す。
 その間にも、隼人の拳は壱紅に受け止められ、壱紅の刃は壱子のパペットが身を挺して防いでいた。
「そんなことを言う人だから、許せないんだよ!」
「そうかね。だが、それがどうかしたのかね」
 壱子の怒りもサラリと受け流して、壱紅は長剣を構え直す。
 元々、相応に高い技量を持っていたのだろう。その腕前は隼人と互角の立ち回りを演じるほどであった。
 彼やパペットの攻撃は、壱紅にも幾つも届いていたが、さすがの半魔、それも全て即座に再生して消えていく。
「徒労を重ねて、何か利益はあるのか?」
「あ?」
「あの娘の存在は、我々にとっては利ではなく損を生んだ。結局のところ、な。親としての情、血の繋がり、それらが一体、何に繋がるというのかね。損という結論があるのだから、私にとってそれは必要のないもの。あってもなくても、大して差はなかったものでしかないのだよ」
 壱紅は語る。
 隼人や壱子、アビスらが見せる怒りに辟易しているような顔をして、
「我が主が作るであろう世界に、そんなウェットな感情は必要ない。完全なる理、完全なる循環によって成立する、揺らぐことのない世界。それだけがあればいい。人など不要。人など邪魔。だから、君達もここで死ね」
 壱紅の殺気が増す。その表情は、何も変わっていないというのに。
 しかし次に口を開いたのは、彼でもなければ、隼人でもなく――
「てめぇが死ねよ」
 いつからそこにいたのか。
 声と共に、ルナール・シュヴァリエ(sp6369)が壱紅の眼前に姿を現した。
 壱紅の反応を見る前に、すでにルナールは構えた拳銃を発砲していた。立て続けに三度。
 毒血が塗りたくられた弾丸が、魔王眷属の身を貫いた。
 激痛。顔を歪ませて、壱紅が数歩退く。
 そして彼は、眉をしかめた。
「‥‥再生が、始まらない?」
 SINNの魔法に再生封じの法があるのだと気づき、舌を打った。結局は彼もまた、半魔であるという事実に対する甘えはあったのだ。
「アビス、ルナール、頼むぜ!」
「分かってるよ」
「持ってけよ、くらわしてやれ」
 隼人へ、アビスが祝福を、ルナールが再生封じの毒血を、彼へと施し、与えて、

「壱紅ーーーーーーーーーーーーーッッ!」

 咆哮と共に、隼人は壱紅の背後へと転移した。
「な、に!?」
「もう、てめぇとグチャグチャ言い合うつもりはねぇ。‥‥倒れろォォォォ!」
 手にした聖剣が閃いて、壱紅の身を深く切り裂く。
「馬鹿な‥‥! ば、馬鹿馬鹿しい! 何故、そこまでの怒りを‥‥!」
 傷を癒せず、血を噴きながら、壱紅は後退。無表情だったその顔に表れる、確かな狼狽の色。
 分からなかった。
 自分の娘は異端。半魔である。ルークス教に属する者にとっては、罰する対象ではないか。
 なのに何故怒る。そんな個人的な感情を、戦う理由にするというのか、と。
 馬鹿らしい。
 馬鹿馬鹿しい。
 愚かの極みではないか。
「友達だからだよ!」
 壱子の叫び。パペットのゴンスケが壱紅の足に喰らいついて、後退を阻む。
 隼人の身体が風を纏った。加速。そして、連撃。
 悲鳴を上げるヒマすら与えるつもりはなかった。
「何故、だ‥‥!」
 癒えない傷を刻まれて、壱紅の口から漏れるのは、理解を超えた事象への疑問。不可解への響き。
「てめぇがわかる必要なんか、ねぇんだよ!」
 隼人、聖剣に魔力を注いで力を解放。斬りつけられた壱紅の時間が、停止する。
「壱紅、てめぇはこれだけ理解してれば充分さ」
 そして切っ先が、彼の心臓を音もなく貫いた。
「――てめぇはここで終わり、ってことだけをな」
 刃を引くと同時に、時間停止の効果が終わる。
 壱紅は糸が切れた人形のようにくず落ちて、そのまま、再び動くことはなかった。
 魔王の眷属は間違いなく、息絶えていた。
「家族に焦がれたあいつの想い‥‥、その身に刻んで地獄へ堕ちろや‥‥」
「‥‥やったな」
 アビスが、隼人の背中を叩いてねぎらう。
 一つの戦いと一つの因縁が、ここに、決着を見たのだった。

●第3防衛線:賢者死すべし
 一口に幹部魔将といっても、タイプは様々で、個性も様々だ。
 【巨木の腕】のように、自身が最前線へ踏み込む者もいる。
 【白魔の腕】のように、組織の歯車に徹しようとする者もいる。
 その観点でいうのであれば、ベルフェゴールは自身も言っているとおり、頭脳労働だけをしていたいタイプである。
 あくまでも裏方に徹し、自分は表に出ない。
 自分はずっと安全圏にいて、自分がしたいことだけをしていたい。
 それができるのであればどこに属してもいい。誰が上司でもいい。
 そんな生粋の怠け者が、ベルフェゴールという魔将の在り方であった。
 だから――
「う、うぅ〜‥‥」
 だから逃げ続けている今という状況は、彼女にとって苦痛以外の何物でもないのだ。
 転移の魔法は、全て使いきった。
 その数、16回。一度の転移で稼げるのは3000m。
 およそ50km移動して、辿り着いた先は上海郊外に立つビルの一室だった。
 ここが、彼女の緊急避難場所として用意していた部屋である。
 もしものとき、万が一、最悪の場合を想定して、ベルフェゴールが個人的に用意していた隠れ場所だ。
「あ、あぅぅ〜‥‥」
 情けない声は尾を引いて、部屋の中に消えていく。
 家具はほとんどなく、業務用の金属机とパソコンだけが置かれた部屋の片隅に、彼女は逃げた。
 キニスで椅子を作って飛んで逃げるコトだって出来ただろう。
 だがそれをしないのは、動転しきって、視野狭窄に陥っているからだ。
「‥‥う、うぅ、き、来てるよぉ〜」
 精気感知で感じる。近付いてくるSINNたちの気配。
 それが、彼女の心に強烈な恐怖を植えつけていた。
 追跡の魔法を恐れ、SINN達の前に出ないようにしていた。さっきのしかえしだって、あんな一瞬で魔法を使える隙なんて与えていなかったと思ったのに。
 誤算は、ラルフの存在。
 彼がまさに、追跡の魔法の使い手であった。
 ほとんど戦いに出ることのないベルフェゴールは、鉄火場の恐怖を知らない。いわば戦いの素人である。
 ゆえに今や、追い詰められた彼女が、普段の頭脳を発揮できるはずも、ないのだった。
 そして――
「み、見つけた‥‥」
 魔法で飛翔し、空から窓を通して、三輪山 珠里(sb3536)がベルフェゴールを発見した。
「ど、どうしてよぉ、何で、追ってこれるのよぉ〜‥‥!」
 悲鳴じみた声を挙げる魔将を、部屋に入った珠里は哀れだとは思わない。
 彼女にだけは、そんな情を持つことはできそうにない。
「ど、どうして‥‥?」
「何がよぉ〜」
「どうして、プレゼントなんて、言ったの‥‥?」
 それは、今はもう終わった戦いの話。だがどうしても、珠里は尋ねずにはいられないことだった。
「レヴィアタン、か、悲しむことくらい‥‥」
「知らないわよぉ〜。うぇ〜ん、そんなつまんない話ィ〜」
 泣きマネをするベルフェゴールの答えが、それ。珠里は一瞬絶句して、「そう‥‥」と、小さくうなづいた。
 当たり前すぎる答えだと、改めて認識する。相手は悪魔なのだから。
 珠里が俯いていると、ベルフェゴールは「ひぃ!」と声を挙げて、その場から逃げ出そうとする。
 だが向けられた背中に、銃弾は叩き込まれた。
 悲鳴は、まるで動物の鳴き声のようだった。
「よぉ」
 弾丸を込め直して、保介が軽く挨拶をした。
「囲むぞ!」
 と、次いで部屋に入ってきたジェネレイドの号令で、SINN達は速やかに倒れ伏しているベルフェゴールを取り囲んだ。
「退路は全て塞いだぞ、女狐め」
 腕を組み、彼はベルフェゴールを見下ろした。
 追い詰めた。それを実感する。
 転移で稼いだ距離はたったの45km。それは、車に乗って移動すればさして時間もかけずに移動できるものだった。
 そして車は、ビルの外に幾らでもあった。乗り捨てられている車を足代わりとして、彼らはここまでやってきていた。
「い、いや‥‥、いやぁ‥‥、やだぁ〜、助けてよぉ、いやだぁ〜‥‥」
 弱々しい声で命乞いをするベルフェゴールは、或いは憐憫を誘う姿と見る者もいるのかもしれない。
 だが結末は決まっていて、もはやこの魔将に、進むべき道はない。
 誰かが彼女に「終わり」を告げた。
「い、や、ァ――」
 最期の声はつまらない悲鳴。
 聖なる光か白の炎が、霧と化したベルフェゴールを焼き尽くす。
 或いは、最も悪魔らしかった幹部魔将がついに滅びた。
 だがその結果に、感慨を持つ者は大してなく――皆それを粛々と受け入れるのみだった。

●中枢制御室:消える紅
 台湾。
 聖水の雨を降らせている分厚い黒雲が割れて、陽光が差し込んだ。
 その情報は、台湾の支部職員からルークス市国に送られて、そしてリアルタイムで上海にいるSINNにも届けられた。
 そして、上海。紅グループ本社ビル。
「カハハハハ! 追い込まれちまったみてェじゃねぇか、こりゃいけねぇや!」
 豪快な笑いを響かせ、ベリアルの現状をそう評するのはグラシャラボラス。
「魔結界とやらは使わねぇのか、サマエルさんよぉ」
 アサルトライフルを手に、ブルース・ゴールドバーグ(sp2273)が変身し、猛将の姿をとるサマエルへ尋ねる。
「クッカッカ! どうせ効きゃあしねぇんだったら、使うだけ無駄ってモンだぜクソがよォ!」
 完全にグラシャラボラスに成り切っているいるサマエルを、攻め立てるのは二人の女性だ。
「もう、十分でしょう。だから――あなたはここで終わりなさい」
 魔力を伴った薙刀を振り回し、ウィリディシア・クレール(sj3049)がそう言うと、
「黙れや小娘如きがよォ! まだまだ、これからだろう? そうだろう? 楽しく殺し合おうやァ!」
「ああもぉ、キンキンうるさいなぁ!」
 薙刀を無造作に弾き、重剣でこちらを叩き潰しに来た魔将を、竜造寺 こま(sj3153)が操るパペットが壁となって受け止めた。
 チラリと、魔将はダントンの方を見る。
 戦いが始まってすでにそれなりに時間が経っている。呪いを解く手段がない以上、あのパラディンは間もなく抗えない死を迎えるはず、なのだが――
「考えていることは分かりますよ。しかし、ムッシュが消えるまで、私は倒れるわけにはいかない‥‥」
 ダントンの言葉に、魔将は知った。
 すでに呪いは成就しているはずなのに、彼は某かの方法で、未だ延命を果たしているのだ、と。
「チィッ!」
 舌打ちを一つして、グラシャラボラスの姿からサマエルは赤い姿へと戻る。
「逃がさないわ」
 ウィリディシアの鞭が、サマエルの身体を絡め取る。
 クラリーチェや絢紅もいつでも魔法を成就できるよう、サマエルを凝視していた。
 周りをSINNに囲まれ、魔結界を使ったところで相手はそれを間違いなく無効化してくるだろう。
 キニスの黒蛇は、ダントンが完全に抑え込んでいる。
「アア、詰ミダネ」
 クネリと身をくねらせるサマエルへ、魔法、銃弾、剣林弾雨。攻撃が集中した。
「いい加減に消えな。ここはいつまでも、あんたみたいのがいていい場所じゃないんだよ」
 エステファニアが成就した浄化の炎がサマエルの身を包みこむ。
「ココマデダネ。‥‥後ハ任セタヨ、ルキフグス」
 それが最期の言葉。紅は、白の炎に焼き尽くされて、完全に消え去り滅びた。
「‥‥終わりました、な」
 ボロボロと崩れさるキニスの蛇から目を外し、ダントンはそのまま倒れた。
「ダニエルさん!」
 SINN達が駆け寄るも、すでにこのとき、自らが成就した奇跡によって保たれていた彼の命は、潰えていた。
「力技すぎよ、全く‥‥」
 駆け寄ったウィリディシアが、CROSSを握って詠唱を開始する。
 CROSSから溢れ出た光がダントンを照らし、死したその身に再び命を吹き込もうとした。
 ウィリディシアは、ふと、サマエルが滅びたその場を振り返る。
 無論、もはやそこに何もなく、薄闇の向こうに、闇が蟠っているのみ。
 終わったのね‥‥。
 魔王は未だ健在なれど、確かに今、一つの物語が終わったのだと、彼女は実感するのだった。

 ――滅びたか、サマエル。
 己の腹心の滅びを悟り、ベリアルは目を伏せる。
 黙祷、などというものではないが、感じるものが全くないわけでもなかった。
「ベリアル‥‥」
 魔王がまぶたを開くと、水織が、そこに立っていた。
「あなたの負けです。きっと」
「そうかもしれないね」
 水織もまたハンドラーである。
 巨大な魔法装置である悪徳の神像に何が起きたのか、なんとなくだが、彼女も理解していた。
「あなたの悲願は、成就しません」
「そうかもしれないね」
「あなたが神になることは、できません」
「ああ、そうかもしれない」
「あなたはそれでも歩むのですか」
「歩まざるを得ないね」
「どうして?」
「今まで歩んできたからさ」
 ピシリと、また小さく鳴る。
 紅の神に亀裂が入った音だ。
 パラパラと、剥がれた破片が落ちてきた。
 それは崩れて灰となり、緩やかな風に散っていく。
 愛子とシャーロットが成功させたシンクロアルケミーは、神像の構成にかすかな傷を付けた。
 その傷が今も、徐々に広がり続けているのだ。
「まさかたった二人にしてやられるとは思わなかったけれどね」
「当たり前です」
「何故、そう言いきれるんだい」
「誰にだってわかることです。だって――」
 水織が言う。
 ベリアル自身もきっと理解していない、彼の敗北の理由。

「ずっと、あなたは一人だったじゃないですか」

 その言葉は、スッとベリアルの意識に入りこみ、抵抗もなく腑に落ちたような気がした。
「なるほど‥‥」
「一人より、二人の方が強いに決まっています」
 当たり前で、当たり前すぎる。当たり前のこと。
 しかし人を脱し、魔と化して、その頂に立ったベリアルには、思いもよらないことだった。
 ベリアルの周りを、SINNが囲んでいた。
 それを魔王は知りながら、なお、水織との会話に興じる。
「何を求めていたんですか」
「何かを」
「どうして求めていたんですか」
「どうしてだろう」
「誰かに、助けてもらえばよかったのに」
「不器用なんだよ、私は」
「‥‥‥‥」
 水織の手には、小さな、銀色の花があった。
 それは彼女が錬成したもの。
 本当は投げて使いたかったが、出来上がったものはあまりにもぜい弱で、投げればたちまち砕けるだろうことは分かっていた。
「錬金術は、あまりにも不安定だ」
 銀色の花を目にして、ベリアルが語る。
「広い可能性を持つ技法だけれど、それは可能性を持ちすぎる。そして、思い通りにいかな過ぎる。だから私は、別の方法を模索せざるを得なかった」
「でも、あなたは自分が新たな神となるために、錬金術を使った」
「それが最も確実だと思ったからだよ」
 語って、己の矛盾に、彼は己を笑った。
 ジリ、ジリと、周囲のSINNが、彼との距離を詰めはじめている。
「まだ、続けるのですか」
 水織が問う。
「まだ、続けるとも」
 ベリアルが答える。
「――させない」
 水織が、手の中の花を握り潰した。
 それは光に解けて、握った彼女の手に絡みつく。
 ベリアルは笑みを深めると、その剣で、彼女の胸を貫いていた。
 痛みよりも哀しみを、彼女は感じて、ベリアルの左胸、真っ赤な印が刻まれたそこへ光る手を触れさせる。

「今です!」

 叫び、ベリアルの腕の中、血に濡れて倒れる水織。
 ベリアルの身体は淡い光に包まれて、水織のアルケミーの効果によって、その身はたった数秒間、魔王としての力を失う。
「魔王ベリアルゥ!」
「異端の祖。もはやその身、滅びる以外の道はないと知れ!」
 駆け、そして仕掛けるのはジョニーとアドリアン。
 二人を先頭に、全てのSINN達が魔王へと怒りと敵意と武器と魔法を、向けている。
 刃に刻まれ、拳に打たれ、銃弾に身を穿たれて、ベリアルの顔には笑みが浮かぶ。
 ――数千年を彷徨った。
 ルークス・クライストと共に魔王へと立ち向かい、彼の死を以て人の世と袂を分かち、魔となり、軍勢を率いて、それでも、たった一人。
 何故なのだろうと問い続けた。
 何かをずっと探し続けた。
 答えのない問い。永遠に解けない謎。
 当たり前だ。答えなんて最初から、知っていたのだから。
「嗚呼、ルークス――」
 唇から漏れたのは、生涯唯一、友と呼んだ男の名。
 彼が死んで、もはや彼はどこにもいないのだと、諦めてしまったがゆえの――
 だがどうだ。彼はここにいるじゃないか。
 SINNと呼ばれる者達が見せる、苛烈なる厳しさも、人を包む優しさも、戦いに臨む勇猛さも、全てがかつて、ベリアルが人であった頃、ルークスの中に見たものだ。
 彼ら一人一人が、ルークスの後継者なのだと、ベリアルは思い知る。
 そして全力で抗う。魔王であることをやめた彼は、SINNから受ける全ての攻撃を受け入れながら、武器を振るい、傷つくことも厭わずに戦った。
 深紅の翼が手折られて、天使の環が砕け散る。たった数秒。彼が魔王でなくなった、その短い時間のうちに。
 水織のアルケミーの効果が終わり、身を包む光が消えた。
 同時だった。神像の亀裂が広がって、その顔が二つに割れたのは。
 ベリアルが身を傾けて、膝を突く。
 そして見上げるその格好は、神に許しを請う姿のようにも見えた。
「君達が、羨ましいよ‥‥」
 人であることをやめて、ルークス・クライストとのつながりを完全に絶ってしまった異端の男は、今の気持ちを素直に呟いた。
「どうして、悪魔になってまで‥‥!」
 いたたまれずに、メイリアが叫んでしまう。
 だがベリアルは答えずに――代わりに彼が答えた。

「ムカついてたんだよね、ベリアル様」

「‥‥‥‥な!?」
 いつからいたのか。
 いつの間にいたのか。
 ベリアルの背後に、その少年は立っていた。
 薄暗い闇がよく似合う、赤い瞳の少年――カリス(sz0009)。
「早かったね、カリス」
「まぁ、サマエル様が倒れちゃったからね。すぐにルキフグス様が教えてくれたよ」
「そうか‥‥」
 絶句しているSINN達へ、カリスが向けるのはベリアルよりもなお露骨な嘲りの笑みだった。
「やられちゃったんだね」
「ああ、彼らは強かったよ。残念ながら、私は神の敵対者にはなれなかった」
「じゃあ、僕がなるしかないね。ところで、もういい?」
 短く問われて、ベリアルは「そうだね」と肯定する。
「あとは、君へと託すとしよう。後輩」
「うん、分かってるよ、先輩。だから、あなたの名前を教えてよ」
「そうだね。私が君に告げる名は――」
 このやり取りは何なのか。
 一体何が起きているのか。
 理解できている者はいなかった。
 魔王の凶刃に倒れ、意識も判然としない水織の目がうっすら開き、彼女はベリアルの姿を見る。
 笑っていた。
 自らが敗北したのに、彼は変わらない微笑みをそこに浮かべて――なんだか、寂しそうだった。
 水織の視界が、滲んで歪む。
「さようなら」
 カリスが言う。
「さようなら」
 ベリアルが言う。
 そしてカリスに名を告げた魔王ベリアルの姿は、真っ黒い影のように滲んで、掲げたカリスの掌に吸い込まれるようにして消えていった。
「カリス‥‥! おまえ、何をしやがった!」
 ベリアルが消え去った直後、ジョニーが悪魔王の眷属を問い詰めた。
 カリスはクスクス笑って、手を握り締める。
「ベリアル様はね、友達想いな人だったのさ。だから、神と敵対しようとした。僕は、好きだったよ、あの人のこと」
「何をしたと聞いてるんだよ、こっちは!」
「教える義理がどこにあるのさ。分からないなら、精々迷って考えて、挙句に間違ってしまえばいいよ。ベリアル様みたいにね。アハハハハハハハ!」
 自ら好意を示したと思ったら、高らかに笑ってあざけって、ころころと態度を変えるカリスの様子に、ついていけている者はいなかった。
 ただ戦意、敵意を、SINN達はカリスへ向ける。
 カリスの笑みが止まった。
「‥‥悪いけど、逃げるよ。僕は敵対者にならなくちゃいけないんだ」
「その前に――!」
 絢紅が、サンクトゥアリィをもってカリスを異空間に隔離しようとした。
 しかしそのとき、彼は既にいなかった。
 転移のアイテムか、それとも時間の凍結か、方法は定かではない。
 逃がした。その事実だけは確定しているだろうが。
 そうして、場に訪れたのは無明の静寂。
 闇の中に瞬いていた星のような輝きも、今は完全に消えていた。きっと、魔法装置の機構の一つだったのだろう。
 神像は割れて、それは、【陽炎の軍勢】の壊滅を象徴しているかのようであった。
 のちに、台湾や東南アジアから情報が届く。
 降り続いていた雨が弱まり、陽光が差し込んできた、と。
 朗報であった。
 SINN達の働きによって、『プロジェクト・アーク』を打破することに成功したのだ。
 ただ――何故だろう、手放しに喜べるSINNは、そう多くはなかった。
 魔王ベリアル。
 かつてヘルメスと呼ばれ、ユダとも呼ばれた、錬金術の祖にして、最初の異端。
 その死は、まるで彼の生き様のように、解けない謎をSINNに残していったのだった。

MVP
レティシア・モローアッチ (sa0070
♀ 人間 ハンドラー 水
狼牙 隼人 (sa8584
♂ 人間 パラディン 風
皆本 愛子 (sb0512
♀ 人間 ハンドラー 地
玖月 水織 (sh0007
♀ 人間 ハンドラー 水
オズウェル・クローチェ (sq1494
♂ 獣人 クレスニク 水

参加者一覧
轟 弾護(sa0018)H風 志島 陽平(sa0038)K地 レティシア・モローアッチ(sa0070)H水 アルベルト・ルードヴィッヒ(sa0074)E火
ミリーナ・フェリーニ(sa0081)P火 煌 宵蓮(sa0253)P水 クリシュナ・アシュレイ(sa0267)P水 陸奥 政宗(sa0958)P火
アビス・フォルイン(sa0959)E水 ティファニー・エヴァーツ(sa1133)A水 ユビキタス・トリニティス(sa1273)H風 ニア・ルーラ(sa1439)H水
メイリア・フォーサイス(sa1823)A風 ジョニー・ジョーンズ(sa2517)P火 ダニエル・ダントン(sa2712)P地 柴神 壱子(sa5546)H風
狼牙 隼人(sa8584)P風 ジェラール・テステュ(sa8825)E火 皆本 愛子(sb0512)H地 ライラ・ルシュディー(sb2519)A地
佐藤 一郎 (sb2526)H水 三輪山 珠里(sb3536)A風 アドリアン・メルクーシン(sb5618)P火 ラティエラ・テンタシオン(sb6570)A地
ハーケン・カイザー(sc1052)H風 ジェローム・モローアッチ(sc1464)A水 ヨシア・アジール(sc3352)E風 癒槻 サルヴァトーレ(sc5529)E風
烏ツ木 保介(sd0147)E風 郡上 浅葱(sd2624)A風 鷹羽 叶望(sd3665)E地 リディヤ・ジュラフスカヤ(sd9570)P風
クラリーチェ・ラグランジュ(se5708)A水 ジェネレイド・キング(se9786)H地 カミーユ・ランベール(sf0920)A地 アルカ・カナン(sf2426)A火
カサンドラー・ウイグル(sf5053)A火 ビート・バイン(sf5101)P火 アルフォンス・ヴィヴィエ(sf9647)A地 ウェスタ・イェルワジ(sg1931)A風
ラルフ・フェアウェイ(sg4313)E風 玖月 水織(sh0007)H水 アメリア・ロックハート(sh1732)A水 レイジ・イカルガ(sh2614)E水
ハルキュオネ・バジレア(sh3934)A水 玖月 絢紅(sh4500)A火 ミラベル・ロロット(si6100)H風 シャーロット・エルフィン(si6767)H水
竜造寺 巌(si7760)P火 朔真 紅虎(si9669)P火 エルマ・グラナーテ(sj0377)E水 鷹羽 歩夢(sj1664)P水
ウィリディシア・クレール(sj3049)E地 竜造寺 こま(sj3153)H地 スィニエーク・マリートヴァ(sj4641)P風 エティエンヌ・マティユ(sj6626)E地
ダンテ・エイナウディ(sk2704)P水 リュカ・フィオレンツィ(sk3006)P水 ジェーン・ミフネ(sk6098)E風 レオン・ブラットショー(sn7285)E火
ダニエル・マッケラン(so1035)P地 エステファニア・アランサバル(so2457)E風 ローウェル 一三(so2674)A水 日向 蒼伊(so6943)E風
御剣 キョウ(sp0401)P水 児玉 初音(sp1503)A火 鷺沼 妙子(sp1602)P地 ブルース・ゴールドバーグ(sp2273)E火
有栖川 彼方(sp2815)P火 マリク・マグノリア(sp3854)H水 ウルセーヌ・モローアッチ(sp5281)H地 ニーチェ・シュートラー(sp6098)K火
ルナール・シュヴァリエ(sp6369)K水 相模 仁(sp6375)K火 アンリ・ラファイエット(sp6723)K水 雫石 雪凪(sp8252)K火
セイディ・ゲランフェル(sp8658)K水 ゴスタ・ユオン(sp9246)K火 シグルフリート・ウォールター(sp9359)K火 千種 蜜(sp9590)K地
アンナリーナ・バーリフェルト(sp9596)K風 雫石 結氷(sp9763)K水 エスター・ゴア(sq0475)K風 イーゴリ・トルストイ(sq0700)K地
アーク・カイザー(sq0753)K火 アリス・フリュクレフ(sq1159)K水 アスラン・ノヴァク(sq1286)K地 ヒメコ・フェリーチェ(sq1409)K風
オズウェル・クローチェ(sq1494)K水 上月 累(sq2012)K火
Back