平和の群像 ―東京での聖夜―

担当マスター:天宮信
開始15/04/03 22:00 タイプショート オプションお任せオプションフレンドオプションEXオプション
状況 SLvA 参加/募集7/8(+4) 人
料金1500 分類日常
舞台国日本 難易度易しい

◆周辺地図
参加者一覧
陸奥 政宗(sa0958)P火 須経 蘭華(sb0118)E地 ビート・バイン(sf5101)P火 村正 刀(sf6896)A火
真幌羽 鈴鹿(sh5555)H火 詩馬 光之助(si7745)P風 茂呂亜亭 萌(so4078)A風 鷺沼 妙子(sp1602)P地
来海 朽葉(sp4469)H水 ラチェット・トーン(sp6693)K風 ゴスタ・ユオン(sp9246)K火
オープニング
 2015年の3月に行われた世界の命運を決める決戦から9ヶ月後のクリスマスイヴ。
 家族で過ごす者、恋人同士または夫婦同士で過ごす者、友人達と騒ぎながら過ごす者、そして1人寂しく過ごす者‥‥。
 世界が平和になってから初めての聖夜に、用事等様々な理由で東京都内にいたSINN達もそれぞれ思いを馳せる。
 都内なら誰かを誘って遊びに行ける場所は多い。折角訪れた聖夜、大切な人と共に過ごすのもいいだろう。
 さて、この聖夜という日をどう過ごそうか。

●この人達は全く変わりません
 秋葉原の何処かにて。
「諸君! 元来クリスマスとはルークスの降誕を祝うルークス教圏の厳かな宗教儀式である!! だが! その神聖な筈の日に! 何を勘違いしたか、アベック共が恋愛ごっこをやらかす風習が蔓延しておる!! 嘆かわしい! 実に嘆かわしい!! 与えねばなるまい、アベック共に天罰を!!」
『ジーク嫉妬! ハイル嫉妬!』
 平和になったにも関わらず今日も非常に暑苦しい嫉妬に狂ったジェラシー派の方々。

 別の場所では、
「今までの数々のご支援誠に感謝します」
「いえ、これも皆、全て貴方達のしっとを愛する心故‥‥」
 嫉衛門が十二嫉妬のNo5と親しげに談笑を交わしていた。
「それでは偉大なる嫉妬の神の名の下、我々【ネオ・エンヴィー派】はアベック一掃に邁進致しましょう!」
「判りました。それでは我々十二嫉妬は此度、貴方達と行動を共に致します。共にアベック共に制裁を!」
 目の部分に炎の縁取りと額に【ネオ嫉妬】と書かれたマスクを着用する嫉衛門の言葉にNo5が同調。
『ジーク・嫉妬!』


●PL情報
・ツギモト
 44マグナムのカスタム銃の愛銃「410マグナム」を手に、しっと組織「ジェラシー派」を率いる隊長で銃の名手。
 常に額に「しっと」と書かれたマスクを着用し素顔は不明。
 アベック撲滅を掲げしっとの掟なるものには非常に忠実。

・嫉衛門
 嘗て異端組織の嫉妬教団に雇われていた古風な男で剣の達人。
 その後、嫉妬教団から離れ修行の旅の果て、十二嫉妬の援助の下にネオ・エンヴィー派を組織する。
 リア充と強き者を斬る事に喜びを持つ性格で、愛刀「斬充剣・嫉妬」を持つ。

・ネオ・エンヴィー派
 嫉衛門が新たに立ち上げた嫉妬組織で団員は主にジェラシー派よりの元嫉妬教団の一般団員で構成されている。
 組織の規模は嫉妬教団とは比較にならない程小さいが、ジェラシー派の半数近い団員がいる。
 尚、彼等は異端とは完全に無関係である。

・十二嫉妬
 嫉妬のカリスマといわれるプロフェッサー・嫉妬をリーダーとし世界中で嫉妬活動を行う組織。

 構成員:
 No2:最古参の1人。大柄な男で細かい事は気にしないスキンヘッドのパワフルな漢。現在、彼女がいるらしい?
 No5:最古参の1人。端整な身体付きの男で冷静な剣士。十二嫉妬としてしっとの民を導く事が己の役割と判断している。
 No12:No1の姪っ子でシトセーヌ三世を自称する女王様気質の20代前半の美女。戦闘時は派手なボンテージファッションだが、二重人格者で多くの視線を向けられると弱気で恥ずかしがり屋になる。


●日付
 2015年12月24日〜2015年12月25日。


●補足
 今回は東京で聖夜を過ごします。
 恋人や夫婦、家族等で平穏に過ごす場合は秋葉原近郊以外の都内が舞台となります。(行き先は指定してください)
 しっとの方々と関わりたい場合は秋葉原近郊での行動になります。

 以下も選択肢から選択し好きに行動してください。
 どの選択肢を選んだかはプレイングで確認を行いますので、選択肢はプレイングに記載しなくてもいいです。(Aは複数選択可能)
A:誰かと平穏に過ごす(行き先指定必須)
 ・食事をする
 ・ショッピングを行う
 ・デートする
B:嫉妬な方々に関わる
 ・ミハイルと共にカップル達を護るべく行動する
 ・秋葉原にて囮となる(デートも可)
 ・しっと組織の内部に潜り込み妨害を試みる(但しSINNとばれないようにする工夫が必要)
 ・寧ろしっと組織に加担する
C:その他

 尚、十二嫉妬の3人には魔法の素養があります。Bに参加する方々は魔法の使用には注意してください。


●注意事項
・年齢制限行動や合意の無い恋愛行動にはお応えできません。
・アイテムのプレゼントをプレイングに書かれてもお応えできません。
・初夜や入籍後であっても性交渉に関して明確な描写を行いません。(描写は少年誌レベルまでとなります)
・東京以外での出来事についても描写を行いませんので、ご了承ください。
・他シナリオにおいてクリスマスを別に過ごされている方は、それらに矛盾ない行動が前提となる為、大幅に行動が制限されます。また、他シナリオのプレイングの時間軸を前提としてプレイングをされてもお応え出来ません。(リプレイでの整合性も踏まえれば、25日のかなり遅い時間の動きが辛うじて出来る程度で、選択肢もAかCとなるでしょう)

◆登場NPC

 ミハイル・カウフマン(sz0041)・♂・54歳・パラディン・地・信者

◆マスターより

何時もお世話になっております。
天宮 信です。

後日談シナリオでは2016年3月14日までの間の物語が描かれますが、今回は2015年12月24日のデートメイン(強調)のシナリオです。
その為、選択肢A以外は描写量が少なくなる可能性があります。
しっとな方々に邪魔されたくない方(A希望の方)は行き先を指定してください。
また、他の聖夜シナリオに参加している方もAになります。
但し、No2に関してはお相手の方が望んだ場合、別所でデートや挙式を挙げることもできます。
尚、Bについては「彼等の対応に慣れているから」という理由で警察関係者から応援要請が来たという形となります。

それでは皆様のご参加、お待ちしております。

注意:
選択肢Bはコメディ要素が強いです。
その為、防衛側や囮側は実際の能力値よりも判定面で優遇されます。(但しシリアスバトル希望の場合はその限りではありません)
逆にしっとに加担した場合、やられ役になる可能性もあります。
リプレイ
●平和になって
 世界の命運を決める決戦から早9か月が経過した12月24日。
 世間一般的にクリスマス・イヴと呼ばれ恋人同士、家族同士、あるいは友人同士等でそれぞれの絆を確かめ深める日だ。

 この日、来海 朽葉(sp4469)はとある人物を訪ねていた。
「お、妙子生きてたか」
 その人物――鷺沼 妙子(sp1602)の顔を一目見て、開口一番に朽葉は何気に失礼なことを口走る。
「うわ、随分な挨拶じゃん、それとも心配させたかな?」
 再会一番に向けられた言葉にむすっとしたのも束の間、少しだけ罰が悪そうな苦笑いを浮かべながら問い掛ける。多少は自覚があるらしい。
「ぶっちゃけどっかで魂抜けててもおかしかねぇな、とは。‥‥まぁ生きてんならいいけどな」
 妙子の問い掛けに此方も苦笑しながら答える朽葉。だが、軽い口調とは裏腹に彼が妙子のことを心配していたのは事実だし、だからこそこうして元気な姿を見れて内心少しだけホッとしていた。
 何しろ、あの戦いが終わり悪魔も異端もいなくなった。今は残存勢力を探索していても自分へ任務として回って来ることも無くなった。
 神を信仰しSINNとして生き戦ってきた妙子にとって、悪魔達との戦いはある意味で生き甲斐であり存在理由でもあった為、それらから解放されたことで彼女がどうにかなってしまうのではないか、生き甲斐も無い死者の様な生活を送っていないかと朽葉は思っていた。
 朽葉がそのことについて指摘すると、妙子もドキリと少しだけ驚いた様な表情をする。彼女もSINNとして呼ばれることも無くなり、ここ数か月間、『自分』として生きていなかったのかも知れないと自覚していたからだ。
「パラディンの公のお仕事? そんなのあたしには無理だよ」
 朽葉からそれならパラディンを続ければ、と問われた妙子だが首を横に振る。
 あの決戦以降、SINNとしての任務の日々がある訳ではなく、聖職としてのパラディンが自分に務まるとは妙子にはどうしても思えなかった。
「あー‥‥カメラ買いに行くんだよな」
「うん。写真とか好きだったよね。あたし、カメラを見てみたい。でもお店は詳しくないんだ、朽葉が連れてってよ」
 朽葉の言葉に妙子が頷く。
「電化製品なら、秋葉原が一番いいんだが‥‥今いくと面倒事に巻き込まれそうだしな‥‥新宿の方にでも行ってみっか? そっちなら家電量販店集まってっし」
 この時期の秋葉原では嫉妬を叫ぶ連中が跋扈して暴れ回るという話は彼も知っている様だ。カップルではない彼等だが男女2人で出歩いているのを見られたら勘違いして襲われかねない。
「任せる」
 異端と関係ない面倒事は出来る限り避けたいのは妙子も同じなので素直に頷くのだった。

●平和になっても‥‥
「はぁ、あいつら‥‥あの方たち、また暴れているんですか」
 村正 刀(sf6896)が溜息交じりに呟く。
 『あの方たち』とは勿論、現在進行形でアベック達に対してジーク・嫉妬を叫ぶ連中のことだ。
 嫉妬教団が壊滅してからは彼等についての情報は入って来なかったが、彼等は活動していなかった訳では無い。
 今までは嫉妬教団が異端組織と目されていたから関わって来ただけで、本来、彼等への対応はSINNの仕事では無いのだ。だから嫉妬教団が壊滅した後は音沙汰が無かったに過ぎない。
 今回特別要請が掛かったのは魔法才能者がおり、魔法アイテムが多用されている為にそれらの回収をする必要があるからだ。。
「まだ式まで時間がありますし、ミハイルさんの応援をすると共に、実は従姉妹だったと判明した萌さんと『真・地獄姉妹』を組んで、鎮圧に向かいましょう」
「む、よろしく頼む」
 刀の力強い言葉にミハイル・カウフマン(sz0041)も頷きで答える。‥‥何か不穏当な単語もありましたが気にしない方がいいですね、はい。
「えー、落語には想いもよらない再会の話が多々ありますが、SINNに限って言えば、『私はお前の生き別れてた兄だ!!』『はぁ、昨日は生き別れてた父と会って、明日は生き別れのペットと会う予定なんですが』と、感動もへったくれもありません」
 そんな刀と実は従姉妹で更には『真・地獄姉妹』を結成した茂呂亜亭 萌(so4078)は第一声から何やら問題発言をしていた。
 確かにSINNでは何故か『生き別れた家族と同じSINNとして再会する』ケースが多い気がしないでもないが‥‥。
「つーか、以前から一緒に仕事してた顔見知りが実は血縁だったなんて、落語にもならねぇよ」
 特に彼女の場合、生き別れた兄だけでなく今まで共に戦ってきた刀が従姉妹、真幌羽 鈴鹿(sh5555)が叔母と判明した訳で、そう言いたくなるのも仕方ないかも知れない。
 因みに刀が言う『式』とは鈴鹿の結婚式のことで、萌も参列するつもりでいる。とはいえ、挙式は25日とまだ時間がある為、萌も刀と共にしっとの民鎮圧に来たのだ。
 実際には、
「あー、ひんぬー同盟の仲間も嫁ぐかー。こちとら地に足をつけて芸道に精進しているんで、浮いた話一つ無いんですけどねぇ」
 と呟きつつも祝電で『馬鹿め』と打っておこうと固く決意をしていたところにミハイルから今回の応援要請が来たから、憂さ晴らしをしようというのが本音だったが。
「‥‥そうか、奴はまだ、嫉妬と共にあるのでござるな」
 過去の戦いにて因縁のある嫉衛門が数か月前に行われた嫉妬イベントで確認されたという情報から、彼が今だに嫉妬の道を歩んでいることに複雑な思いに駆られる詩馬 光之助(si7745)。
「わはははははははははっ。超絶美形パラディン、ビート・バイン参上!! さあ、俺が来たから、もう安心! ふっ、嫉妬教団が壊滅してからは、立ち会う機会も無かったが、必ず現れると信じていたぜ! さーて、最後までクライマックスで行くぜ!!」
 そしてもう1人。
 ビート・バイン(sf5101)も支部の地下にある作戦室に到着すると同時に事情を聞き、運命の宿敵(と書いて『友』と読む)との再会に期待を馳せる。
「む、よく来てくれた」
 過去の嫉妬の聖戦において相手の司令官と熱き戦いを繰り広げてきたビートの到着にミハイルも期待を寄せている様だ。
「平和を乱す輩がいる限りはたとえ悪魔の脅威が消えても己の行く道に終わりはない。男は独り(ぼっち)で道を行く、そんな俺、最高」
 ミハイルの歓迎の言葉に己に酔うビートはそう返す。既に宿敵との戦いに備えての準備は万端だ。(爆)
「‥‥さて、しっと団とやらを退治すればいいのだな? まったく、困ったものだ」
 大人びた口調で溜息を吐くラチェット・トーン(sp6693)。彼から見たら、しっとの民達はただの傍迷惑な集団にしか見えない。
「ジーク・嫉妬って楽しそうだよな。俺、今回、しっと教団と会えてすげぇ嬉しい! な、ラチェット!」
 だが彼の友人であるゴスタ・ユオン(sp9246)はそうは思っていない。
 寧ろ楽しそうな集団という認識を持っている様で、そんな彼等と会える機会だと聞いてテンションの低いラチェットとは対照的にゴスタのテンションはかなり高かった。
「いや、出来れば会いたく無い類の相手だな。獣人形態になれないのが少々不安だが、まあ、何とかなるだろう」
 ゴスタからの問にラチェットは眼鏡をクイッと上げながら淡々と答える。
 話に聞く限り、しっとの民の多くは特に戦闘技能も持たない一般人。獣人形態にはなれないが一般人が相手ならば問題無いとラチェットは考えている様だ。

 その頃、遠く離れた地では。
「まったく、あの魔神との決戦はなんだったのかと言いたい」
 嫉妬聖戦の報を聞き、陸奥 政宗(sa0958)が愚痴を漏らす。
 そもそも嫉妬の聖戦に関しては悪魔とか異端とかは関係無いですし。強き嫉妬の心を持つ者がそこにある限り、彼等の戦いに終わらないのだから。
「まあ、何度でも叩きのめしてみせるさ」
 そう言ってチラリと準備していたヒーローアーマーその他諸々に視線を向ける。
 それは彼の嫉妬聖戦における正装であり戦闘服。それによって彼はしっとの民を打ち砕く怪傑スバットとしてしっとの民達から恐れられる存在へと変身するのだ。
「あ、今いきます!」
 とはいえ彼は現在、日本から遠く離れた地で別の用事に参加中の身。
 其方での用事が終わり彼が東京へと出向ける様になるのはまだまだ相当に先のことだった。

●平和になっても全く変わらない方々
(最近音沙汰無いからてっきり自然消滅したかと思っていましたが‥‥ジェラシー派もエンヴィー派もしっかり健在でしたか)
 襲撃基地にて出立前のジーク・嫉妬を叫ぶジェラシー派の面々を眺めながら須経 蘭華(sb0118)ことブラックシスター――BSは少しだけ驚いた様に内心で呟く。
 まあ、音沙汰が無かったのは単純に彼等のしっとの戦いでSINNが任務として関与する必要が無くなったからであって、別にジェラシー派や十二嫉妬が消滅した訳では無い。
(まあ、ネオエンヴィー派になって向こうも昔の凶悪さは無いようですが迷惑なのは変わりないですよね)
 嫉衛門によって新たに組織されたというネオ・エンヴィー派はエンヴィー派、つまりは嫉妬教団の一般団員達がメインだという話だが、嫉妬教団は幹部勢は皆異端や悪魔だったが一般団員は何も知らずに嫉妬活動の為にスカウトされた一般人達で異端とは何も関係の無い組織らしい。
「よろしい、ならどんちゃん騒ぎです☆」
 悪魔や異端が関与しないのならば単純に楽しむだけと、蘭華は笑顔で呟く。
「BS殿、如何なされたか?」
 蘭華の呟きが聞こえたからか壇上で何時もの演説を行っていたジェラシー派隊長のツギモトが蘭華の方に振り返る。
「いえいえ、何でもありませんよ。あ、それとお久しぶりの再会ですし、士気向上の為にも差し入れの手作りお菓子を持って来ました。おいしいですよ♪ ‥‥私が作ったもんじゃ有りませんが」
「おお、これはありがたい! 皆の者! 我等がBS殿よりお菓子を頂いたぞ! 出撃前に食べて英気を養うのだ!」
『おおぉぉっ! ジーク・嫉妬! ハイル・嫉妬! ジーク・BS! ハイル・BS!』
 振り返ったツギモトに蘭華が手作りお菓子を手渡すと、ジェラシー派の方々は皆狂喜喝采。蘭華が最後にボソリと呟いた言葉は聞こえなかった模様。
「尚、嫉妬弁天様は諸般の都合でこられませんが、『頑張ってねー』と言うメッセージを預かっております」
「おぉ、ありがたき御言葉! さあ、今宵も我等がしっとで不埒なアベック(の男)共を制裁するのだ!!」
『ジーク・嫉妬! ハイル・嫉妬!』

 そしてもう片方、ネオ・エンヴィー派の襲撃基地でも、
「皆の者! 此度もツギモト率いるジェラシー派もアベックへの制裁を行うべく参戦しよう! 数で劣るとはいえ、我等とてしっとの民として奴等に後れを取る訳にはいかぬ! 寧ろ我等こそが独身者達の希望、しっとの指標だと知らしめるべくアベック共へ制裁を行うのだ!」
『ジーク・嫉妬! ハイル・嫉妬!』
 嫉衛門の指揮の下、彼等しっとの民の士気は存分に上がっていた。
「あら、随分と楽しそうじゃない、No5?」
 そんな中、壇上の脇に併設されている控室にてNo12が楽しそうな笑みを浮かべるNo5に声を掛ける。
「判りますか? ふふ、最近は連絡することも少なくなってしまったNo2殿が今回の聖戦に参戦するかも知れぬと聞きましてね」
「あら、そうだったの。でもそれだけじゃ無いわよね?」
 声を掛けられたNo5が理由を述べるとNo12も納得したとばかりに応じる。が、それ以外にもあるだろうと勘ぐってもいる様だ。
「何でも明日、挙式を挙げるらしくそれの招待状と、更には奥方(候補)の方と来られるとか。奥方はSINNですので、おそらくは他の方々‥‥我が宿敵にも逢えるかもと思いましてね」
「ああ、そういうこと。確かにそれは楽しみね。SINNには世話になったし‥‥可愛い子も多いからね」
 No5の返答にNo12も楽しそうに舌舐めずりするのだった。

 その頃、No2の奥方(候補)の鈴鹿は来るべき日を前に物思いに耽っていた。
(あ奴らと『独身同盟』を築いておった妾も、ようやっと嫁に行けるというものである。ありがたや、ありがたや。『ひんぬー同盟』を組んでおる萌にはすまぬ事であるがの)
 友人達と共に築いていた同盟だったが自分を残して皆嫁ぎ、残された自分に焦りを覚えることもあったが、最後に残された自分もこうしてようやく運命の日を迎えることが出来た。
 もう1つの同盟仲間(笑)の萌に対しては少しだけ申し訳無いとは思っているが。
「No2殿、妾としては願わくば、あの者達にも式には参加して欲しいものである」
「ガハハ、そうだな。俺の様なしっとの民とて、良縁があれば鈴鹿殿の様な嫁と夫婦の契りが結べるのだ。それをあいつ等にも教えてやるべきだな!」
 鈴鹿としては夫となるNo2の関係者にも式に参加してもらいたい。無論、見せつけようという魂胆では無く、No2の言う通りの意味合いでだ。
「No2殿、いや旦那様、そろそろ参ろうか」
「そうだな」

●あの時以来の
「カメラって結構種類あるんだね」
(1人きりの女友達の他に、こういうの連れてってくれる人いないから新鮮だ)
 新宿のある家電量販店にて、妙子が自分の想像以上のカメラの種類に感嘆の声を上げる。そしてそれ以上に最も親しい友人以外とこうして出掛けていることへの
「まあ、用途によって使う物も変わってくるからな」
 少しだけ興味が湧いたのかカメラについてあれこれと質問をしてくる妙子に、丁寧に説明していく朽葉。
「朽葉もカメラ持ってるんだよね?」
 自分が選ぶものの参考にしようと考えたのか、目の前にいる朽葉もカメラを持っていたのを思い出し尋ねる妙子。
「俺が使ってんのは譲ってもらったもんだからな‥‥正直価格自体は結構な代物だから、その辺は置いとくとして、妙子はどんな時に使うつもりだ?」
 とはいえ、彼が叔父から譲り受けたカメラは一眼レフでかなり高価な代物。素人には少しばかり手が出し難い代物だと彼も理解しているので、それは候補から除外してまずは使用用途から選ぼうと提案する。
「水場持ってくなら防水効いたの、山登りとかなら小型で軽い奴の方がいいだろ? まぁ、アドバイスはしてやっから、最終は気に行った奴が一番いいんじゃねぇか?」
 とはいえ使うのは彼女なので、最終的に選ぶのは妙子自身に任せるつもりの様だ。やはり長く使う代物なのだから、当人が気に入った物が一番だと理解しているのだろう。
「そうだね。あたしが使うなら丈夫なやつだね」
 何処で何を撮るのかは特に決めていないが、機能性よりも耐久性の高い物がいいと妙子は判断し、朽葉のアドバイスも聞きながら最終的に1つのカメラを選択。
(何かを選んで買うなんて、いつ振りだろう)
 久しぶりに自分で選んで購入した物に高揚する自分を自覚する妙子。その高揚感は初めて弓を選んだ時以来のものだ。
「‥‥うし、せっかくだから、なんか撮りに行くか。お台場まで行きゃイルミネーションあんだろ。それ撮ってみんのもいいんじゃねぇか?」
「そうだね。行こうか」

●宿命
 何処かの2人が楽しくショッピングをしている頃、SINN達は秋葉原に現れた聖夜でいちゃつくアベック達を撲滅させんとする2つのしっと組織と激突していた。
「「今日という日を誤解している全てのアベック共に制裁を! ジーク・嫉妬!」」
『ジーク・嫉妬! ハイル・嫉妬!』
 ジェラシー派とネオ・エンヴィー派。
 派閥は全く違うのにその心底に根差すしっと魂は同じなのか、ツギモトと嫉衛門が互いに同調したかの様な宣言に共感し、秋葉原の一角にて熱狂的な空間が形成される。
「‥‥なんて傍迷惑な連中なんだ」
「あはは! ジーク・嫉妬! ジーク・嫉妬! 本当に楽しそうだな!」
 異様なマスクを被って熱狂する2つの異常集団を実際に間近で見て引きまくるラチェットとは対照的に、楽しそうな笑顔でゴスタはしっとの民の真似をする。
「‥‥気になるのだが。何故彼らは警察的なものに捕まらないんだ?」
 そして暴れ回るしっとの民の姿を見てラチェットはふと思ったことを口にする。
 別に彼等が警察関係者に捕まらない訳では無い。現に過去のしっとの聖戦においてはその多くが拿捕されている。
 だが、しっとイベントが来る度に拿捕されて減った数を上回る人数の団員が増えていっているだけだ。主に所属団員達のスカウトという地味な活動のおかげで。
 それだけ世のカップル達に嫉妬する独り身が多いのだろう。
「そんなに奴等に興味があるなら紛れ込んでみればいいんじゃないか?」
「紛れ込んで来ていいのか!? よし、行って来る! ジーク・嫉妬!」
 考え込むラチェットの隣にいるゴスタを見かねたのかビートが助言すると、すっごく嬉しそうな笑顔で腕を振り上げながらゴスタはネオ・エンヴィー派の方へと駆けて行く。
「‥‥おい、待て。何故ゴスタがそっちに行っている?!」
 思考の海に沈み周囲への注意が散漫になっていたラチェットではあったが、流石に友人が嬉々としてしっとの民に加わるのを見てツッコミを入れる。
 そりゃ、彼等を鎮圧する為に来たのに、逆に加勢していたらツッコミの1つも入れたくなるだろう。
「おや、君も我々の仲間になりに来たのですか?」
「君も仲間になりたいならこれをどうぞ」
「おお、これは嬉しい!」
 先頭で指揮を執るNo5を見て其方に混ざろうとするゴスタの姿を見て、団員志願者と判断した1人のネオ・エンヴィー派の団員が額に【ネオ嫉妬】と書かれたマスクを渡すと言葉は判らないものの喜びながらゴスタはマスクを被る。
「ジーク・嫉妬! ジーク・嫉妬!」
『ジーク・嫉妬! ハイル・嫉妬!』
「はぁ‥‥」
 完全にしっとの民の中に混ざり込んでジーク嫉妬を叫ぶ友人の姿を見たラチェットは溜息を吐く。取り敢えず、他のしっとの民同様に彼も倒す必要があると判ったからだろう。
 既に鎮圧すべく向かったミハイルに続く形でしっとの民の暴挙を止めるべく突撃を開始する。
「よう、相変わらずで安心したぜ、No5!」
「おぉ、これは我が宿敵! 壮健そうで何よりですよ」
 ゴスタ達の会話からビートもNo5を発見した様で笑顔で駆け寄ると、その姿に同じくNo5も宿敵との再会を喜ぶ。
「とある最終決戦を生き残った後、自分でパインサラダを作って一人で食べた、この孤高でグルメな俺に勝てるかな!?」
「ふふ、私とて前回の聖戦時には1人寂しく鍋をつついておりましたよ。そんな私に勝てますか!?」
 何かどちらも聞くだけで涙が出て来そうな言葉が飛び交うが、もはや言葉で語らずとも互いに以心伝心出来るとばかりにビートとNo5は武器を身構えると共にそれぞれがそれぞれで美しいと思うポージングを開始した。

「随分と数が多い様だな」
「ジ、ジーク・嫉妬ーーー!?」
 同じ頃、ネオ・エンヴィー派の嫉衛門の所へ行こうと、道中のアベック達を襲わんとするしっとの民を手に持つ野太刀[影打]で打ちのめしながら進む光之助。
 野太刀[影打]は模造刀を改良したモデルの為、ここ日本でもパラディンの光之助ならば持ち込める。あ、勿論、相手は一般人ですので峰打ちで昏倒させているだけで殺したりとかはしていない。
「嫉衛門は何処だ!」
「む、お主は‥‥」
 やはり時期が彼等にとって最も重大な聖夜だからかしっとの民の数は想像以上に多い。
 だが彼等もまた再会する定めにあったのだろう。光之助の咆哮に「ネオ嫉妬」と書かれたマスクを被った古風の男が反応した。
「‥‥嫉衛門、久しいな」
「うむ、此処にお主がいるということは‥‥」
 互いの多くの言葉は語らない。
 それが挨拶だとばかりに彼等は互いの得物を閃かせ激突した。

「この勢力‥‥とても新興勢力とは思えませんね」
 ネオ・エンヴィー派の想像以上の数と団結力にツギモトと共にジェラシー派を率いて来た蘭華が驚きの声を上げる。
 数ではまだ此方が上回っているが、それでも決して油断出来ない。
「あの嫉衛門が組織し、十二嫉妬が後ろ盾になっているとあらばこのぐらいは寧ろ当然かと思われます」
 蘭華の言葉に彼等のことを実によく知るツギモトが答える。しっと業界の2トップは顔を見せないが、それでもこれだけのしっと業界の有力者が揃っているのだから、確かに当然かも知れない。
「そうですか。‥‥あれは」
 おそらくは自分も業界有力者の1人に数えられてるんだろうな、と思いつつ蘭華がネオ・エンヴィー派の方へと再度視線を向けると、彼女の視界の先には1辺6m四方の箱の様な物を乗せたトラックを発見する。
「あれはNo12さんですね。私もあの方と再戦して来ますので、此方の指揮はお任せしますね」
「判りました。BS殿もお気をつけください!」
 好敵手を発見し鞭を手に持つ蘭華を送り出すツギモト。蘭華がいない今、アベックとネオ・エンヴィー派を相手に指揮を執れるのは彼だけだからだ。
「あら、久し振りね」
「ええ、お久し振りです。よければここで決着付けましょう!」
 No12専用個室に入って来た蘭華に、No12が楽しそうな声を発するのに合わせ、蘭華は手に持つキニスイーターを鳴らす。
 ようやく巡って来たリベンジ、そして完全決着をつけるチャンスなのだから嫌がおうにも戦意は上がる。
「さあ、行きますよ!」
 宣言と共に蘭華の鞭が唸りを上げた。

 それから数分が経過し、SINNとジェラシー派、ネオ・エンヴィー派の三つ巴の争いが混戦模様になりかけた時、強大なしっとオーラ(しっとの民談)を纏いながら彼女達が降臨した!
 そう、嘗て幾度となくしっとの聖戦を更なる混沌へと叩き落とした恐怖にして地獄の姉妹が!
「てめえら! 仲間の門出が間近だってぇのにこんな所で何してやがるか!」
「ぎゃー!?」
「いやー!?」
 地獄姉妹の妹にして、真・地獄姉妹の片割れの刀は降臨と同時に手に持つ木刀で近くのしっとの民を殴打しに掛かる。というか、私怨とか私情とか混じってません?
「真・地獄姉妹の片割れとして参加しました」
(ま、私は腕っぷしには自信が無いんで、得意の話術を駆使してしっとの民を丸め込みつつ同士討ちを狙いますが)
 もう1人の片割れである萌は丁寧な口調だ。実際、彼女は武器も持たず身体能力も高くないと、本当に地獄姉妹なのかと周囲に疑問を抱かれても仕方がなかった。
 だが、萌は自身の今までの経験で培った得意の話術によって次々と周囲のしっとの民達を丸め込んでいき、別のしっとの民との同士討ちを誘発していく。
 純粋な物理攻撃に勤しむ刀よりもある意味でえげつない戦い方だ。
 尚、刀と萌は倒れたしっとの民を次々とロープで拘束し、支部に頼んで用意してもらったリアカーの荷台に無理矢理積み上げていく。
 その様はまるでこれからしっとの民を市場の市場に売りに出される仔牛が如き扱いだったが、彼女達は気にしない。多少、荒くとも彼女達には叔母の挙式に奴等を同行させるという使命があるのだから。

●道の先を見据えて
 店で結構時間が経っていたのか、2人がお台場に到着する頃には既に日が暮れて周囲にはイルミネーションが煌いていた。
「うわあ、綺麗だね」
 周囲に煌く輝きに妙子が目を輝かせる。
「折角だし撮ってみるか? 夜景モード選べばそれなりに撮れっし」
「ねえ、どうやって使うの‥‥ふんふん、よし」
「‥‥うぉっ!?」
 朽葉からカメラの使い方を聞いた妙子は、自分の一眼レフカメラを用意し出した朽葉の肩を抱き、煌くイルミネーションをバックに自分撮りの要領で撮影。
 最初の1枚の出来に不満があったのか何度かその体勢で撮影を行い、満足したのか朽葉を離す。
「お腹空かない?」
「そうだな。写真も撮り終わったし飯に行くか。この辺だと中華のバイキングの店があったな。そこでいいか?」
 少なからず好意を持つ異性に抱き付かれていた事実を誤魔化す様に朽葉も写真を撮る。
 朽葉が撮り終えたのを見た妙子が空腹を訴えるので、朽葉が提案するとそれでいいと妙子が頷く。
「今まで神様しか見てなかったんだから、他のもんにでも目ぇ向けてみりゃいいんじゃねぇの? 信者じゃねぇからよくわかんねぇけどさ。一直線すぎても、いつかぽっきり折れるだけだぞ? 目指すなら柳にしろ、柳に。」
 店へと向かう道すがら朽葉がそういうのを聞き、妙子は「少し考えてみる」とだけ応じるのだった。

 尚、店に着く前に「最近食欲ないんだけどね」と呟いた妙子だったが、明らかに朽葉よりも食べていたのを追記しておく。

●それぞれの決着
「行くぜ、ラチェット! ジーク・嫉妬ー!」
「く‥‥」
 全身全霊を込めたゴスタの一撃にラチェットが苦悶の表情を浮かべる。
 すぐさま反撃に拳が唸りを上げるが、ゴスタはそれを左腕で受け止め背後に回ろうとする。
「させるか!」
「チッ!」
 背後に回られたら不利なのは明白。ラチェットが妨害すべく放った蹴りが掠り、ゴスタは一歩後退。
「楽しいなー!」
「それについては否定、しない!」
 マスクに隠れて判らないが、笑顔で攻撃を仕掛けて来るゴスタに同じく楽しそうな笑みを浮かべてラチェットが応じる。
 互いに全力でぶつかれる相手だからか終始楽しそうだ。とはいえ、どんな戦いも何れ終わりが訪れる。
 身体能力に勝るゴスタが徐々に押して行き、最後は背後を取りラチェットの両腕を掴むことで決着がつく。とはいえ、
「ま、ラチェットは大事なダチなんで、後は捕獲側に回らせてもらうな」
 とラチェットの腕を離し、マスクを脱ぎ捨てるゴスタ。
「‥‥まったく、満足したか?」
「したした! いやー、楽しかったー!」
 ゴスタの突然の裏切りによって、それまで2人の戦いを観戦していたしっとの民達が絶叫を上げるのだった。

「はぁっ!」
「ぐはぁ!」
 熾烈な激突の果て、傷付きながらも嫉衛門を斬り伏せた光之助。
「く‥‥修行を経て更に鋭さを増した俺の剣が‥‥」
「‥‥俺は、お前と剣を交えてから、修行を積み強大な力と‥‥伴侶を得た」
 立ち上がる力も残っておらず片膝を着く嫉衛門に光之助が過去の戦いの後、自分がどういう道を歩んだか簡潔に伝える。
「何とっ!?」
 「見よ、この指輪を!」とばかりに左手の薬指に輝く指輪を見せる光之助に嫉衛門が驚きの声を上げる。
「俺はあれから愛する者を見つけ、妻とし、二人で新しい道を歩んでいる。そして気づいたんだ。今まで剣ひとつに生きてきたが、護る者がいる事で、俺は更に強くなれたことに‥‥」
 光之助の独白に嫉衛門が黙って聞く。
「お前ももう嫉妬だけに拘るな。他人をいつまでも羨むだけでなく、お前も見つけるのだ。愛しい者を。そして、お前が今度は羨まれる者になれ、嫉衛門! そして護る者の強さをお前が得た時、また勝負をしよう」
「ぬぅ‥‥」
 「まあ、その時も拙者が勝つでござるがな」と笑う光之助に眩しいものを感じるのか直視出来ない様子の嫉衛門。
「さて‥‥立てるか? 久しぶりの再会なのだ。二人で酒を呑むのも悪くなかろう、と思ったが、どうやら先客がいる様でござるな。それでは嫉衛門、縁があったらまた逢おうでござる」
 手を差し伸べようとした光之助だが視界に此方へと来る刀の姿を確認し、苦笑を浮かべると同時にその場を後にする。まだ戦いは終わっていないのだ。
「お主は‥‥」
 光之助が立ち去った後に嫉衛門も刀に気付いたのか其方へと視線を向ける。
「あの、今日は他の方々の目がありますので、後日、二人だけでお会いできませんか? その剣の冴えとストイックさをお慕いしていました」
 突然の刀からの告白に嫉衛門は目を見開くのだった。

「ははははははっ、こんな事を言ったらミハイルに怒られるが、やはりお前との勝負は最高だぜ!!」
「ふふ、それは此方の台詞です! 私の魂をこれ程燃やしてくれるのは貴方ぐらいですよ!」
 美しいポージングに拘りながらの攻撃に拘るビートとNo5。当然、受けも回避も度外視の戦いに2人は徐々に傷付いていく。
「だが、そろそろ決着をつけなければな! 喰らえ、この超回転と超速度での突撃を取り入れた俺の新必殺技を!!」
「此方も攻撃の回転速度を最大限に上げた剣撃でお相手しましょう!」
 そして互いに会えなかった間に開発したという必殺技を発動し、互いを攻撃しながら相手の方向へと駆け抜ける。
「く‥‥」
「ふふ、見事ですよ‥‥」
 腕から血が吹き出し膝を着くビートの背後でNo5は笑みを浮かべながら倒れたのだった。

「やはり強いですね‥‥」
「貴女も中々の腕前よ」
 幾度かの鞭同士の激突の余波を受け、全身傷だらけとなった蘭華に同じく負傷が激しいながらもNo12が楽しげに呟く。
 蘭華もSINNとして前線で戦い強くなったが、身のこなしに難があり狭い場所も相まって苦戦を強いられる蘭華に比べて未だ余裕がありそうだ。
「さ、貴女との戦いも楽しめたけどそろそろ終わりにしましょ」
「シトセーヌさん、語り合いましょう」
 止めを刺さんと鞭を鳴らすNo12の傍に何時の間にか近寄っていたのか萌が声を掛ける。
「何かしら?」
「先日ですね、[未来予想]とか言う占いを受けたんですよ」
 その声に反応を示したことから萌が語り始める。
「そしたら、あーた、あたしゃ十年後は芸の道では大成してるけど、独身、浮いた話無し、いけず後家キャラで人気が出ると予言されましてねぇ‥‥」
 噺家としての語りだからか少しずつ話に引き込まれるNo12。
「なのに毎度、毎度、結婚披露宴の司会の仕事が続いて、他人の結婚を祝う側で‥‥リア充のバケヤロー!!」
 その様子を思い描いたのかNo12も背筋がゾッとする。
『ジーク・嫉妬!』
「隙ありです!」
  気付けば2人で叫び、その背後で隙を伺っていた蘭華が禁断の最終兵器オロクン[ErosEros]で攻撃。
「しまっ!?」
「ちょっとー!?」
 だが蘭華の鞭は何故か萌に直撃し、彼女の和服を切り裂いて問答無用で下着を剥ぎ取ってしまう。
「あら、失敗しましたか。萌さん危ないので下がっていてください。それではもう一度!」
「言うの遅くありませんかねぇ!?」
「きゃあっ!?」
 露出した慎ましやかな胸元を必死で隠しツッコミを入れる萌を横目に蘭華がもう一度鞭を打てば、今度はNo12が可愛らしい悲鳴と共にボンデージの胸元を剥ぎ取られる。
「大丈夫ですか!?」
「ひ‥‥み、見ないでくださーい!」
 そして、No12の悲鳴が聞こえて来たので周囲のしっとの民が救援に駆け付けて幾多の視線に晒されたNo12は内向的な性格が表に出て来てしまい、咄嗟に胸元を隠して逃走するのだった。

「待たれい!」
 その後、聖戦が佳境に差し迫る頃、鈴鹿とNo2が登場。
 しっとの民達から親父の様に慕われるNo2と鈴鹿2人の必死の仲裁によって、蘭華の誘導でしっとの民同士の激突によって戦力が激減していたジェラシー派とネオ・エンヴィー派は休戦協定を結ぶこととなる。
 そして刀達に連行されたしっとの民達と共に、親父(No2)の門出を祝うべく挙式に参加することに承諾するのだった。決して2人が夫婦で結婚相談を引き受けるからというのに釣られた訳では無い‥‥と思いたい。

●遅れ過ぎたヒーロー
「待たせたな!」
 聖戦が終結した翌日、ここ秋葉原に1人の男が到着した。
 その名は怪傑スバット。しっとの民達が恐れる猛者の1人だった。
「む、誰も来ない?」
 だが待てども待てども誰も来ないことに疑問を抱いたスバットは周囲の人に事情を説明して、聖戦が昨日終わったのを知ってその場で崩れ落ちる。
「あれはスバットですか?」
「お、本当だ。おーい、どうしたんだ?」
 そこを運よく決着後、仲良く酒盛りして親交を深めたビートとNo5が通りかかる。
「じ、実は‥‥」
 2人の姿を確認した政宗が事情を説明したところ、
「ああ、聖戦は昨日で終わったが、これからNo2の挙式があるらしくてな。一緒に行かないか?」
「ええ、貴方も参加してくださるなら彼は喜ぶでしょうし、私からもお願いします」
「No2が!? それならば是非ともお祝いせねばなるまい!」
 そしてビート達から話を聞いた政宗は一緒に鈴鹿達の結婚式に参加するべく向かうのだった。

●新たなる人生に
「いよいよ、この日が訪れました。No2殿‥‥否、旦那様、不束者ではありますが、末永くよろしくお願いします」
「ガハハ、此方こそよろしく頼む!」
 式当日、着替える前に2人きりになった鈴鹿が三つ指突いて挨拶をすると、No2も頭を下げて挨拶をする。その際に照明の反射で煌くスキンヘッドが実に眩しい。
 その後、互いに着替えで別れた後、再び合流。
 昨日の聖戦での喧騒が夢か何かの様な厳かな雰囲気の中、鈴鹿とNo2の神前式(結婚式)が行われる。
「No2さん、凛々しいです!」
「鈴鹿さんも綺麗ですねぇ、こんちきしょー」
 黒羽二重の羽織に黒のしま柄の袴姿のNo2と共に歩く白無垢姿の鈴鹿に参列者達からも溜息が漏れる。そのぐらい、2人の格好は様になっていた。
「鈴鹿さん、おめでとうございます」
 ビート達と共に来た政宗もちゃんと正装に着替えて参列し祝福の言葉を送る。続けて他の者達も次々と祝辞の言葉を送る。しっとの民にとっては結婚式を迎える夫婦は攻撃対象外なのだ。
「先程も言いましたが、不束者ではありますが‥‥末永くよろしくお願いします」
 その日、一組の夫婦が誕生したのだった。

 その後は披露宴が開かれ、大柄牡丹の色打ち掛けにお色直しした新婦を中心にSINNもしっとの民も関係なく賑やかなお祭り騒ぎで過ごすのだった。

 結婚式の後、刀がマスクを外し精悍な青年の素顔を晒した嫉衛門と共にデートをしていたそうだが、それはまた別のお話。
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