【AA】未来、過去、そして未来へ

担当マスター:北野旅人
開始16/06/27 22:00 タイプグランド オプションお任せオプション
状況 SLvD 参加/募集71/0 人
料金 分類事件
舞台国ルークス 難易度難しい

◆周辺地図
   

オープニング
●いよいよ、戦いの場へ
 聖戦機関長マリア・アンジェリーニ(sz0003)が、SINNや元SINNに召還状を送付して、数日が経った。
 『その身を以て死地へ赴いてくれる者』という名目だったが、聖戦機関に、大規模戦闘を予見させる緊張感は漂っておらず、多くのSINNは首をかしげていた。
 しかし、ついにマリア本人より、声がかかる。
「だいぶ集まってくれたわね。そろそろいいかしら‥‥みんな、ついてきて」

 SINNがまず案内されたのは、ルークス市国の丘の遺跡。そこに待ち受けていたのは、エンリコ・アルベルティ(sz0002)。
 やはり、エンリコが悪の権化だったのか――という一部のぼやきには耳も貸さず、エンリコは、そのまま皆を、転移装置へと案内した。そう、行き先は、『死者の間』。

●死地、その意味とは
 重苦しい、石造りの空間。果てなく続く螺旋階段――そこは、『生と死の狭間、あらゆる死者の通過点』と呼ばれる、よくよく考えれば、いまだ未解明の場所であった。
 かつてSINNは、ここで何度も【試練】に臨んだ。殉教者(聖なる死者)の魂を解放し、聖霊力を高め、世界を救うために。実際その力が、あの黙示の決戦を勝ち抜くのに不可欠だったのだ。
「だから、もう君たちがここへ来て、試練に臨む必要はないんだよ」
 空間から声がした。『姿無き賢者』。考えてみれば彼もまた、いまだに謎な存在である。
「そんな‥‥話が違います! じゃあなんで、私たちを呼んだのですか?」
 マリアは思わず声を荒げた。
「そうだね‥‥その点は、エンリコ、君から説明してもらえるだろうか」
 賢者の声に、エンリコはうなずいた。そして語った。
「ここに来てもらった目的は、聖霊力を解放するためではありません。単純に、魂を救済してもらうためです。たしかにルシファーは討たれ、世界のキニスは祓われ、ディアボルスは消滅しました。しかし、それで全ての『無念』が解放されたわけではありません。ここにはまだまだ、無数の殉教者が囚われたままなのです」
「世界の平和を感じ取り、大部分は、無念晴れしと天へ帰っていったのだがね‥‥あまりに深く、大きな無念は、そう簡単にはここを出ていってくれないのだよ」
 賢者は淡々と語った。どこか物悲しい調子でもあったが。
「ここは、生と死の狭間です。死者の無念が長く残留することで、なにか『よからぬ事態』が起こらないとも限りません。たとえば魔界との接点にされるとか‥‥それが取り越し苦労だとしても、なお、意味がないわけではありません。死者を正しく天に帰すのは、神の下僕として正しき行ないですから。ですが、そのために命を懸けて頂くのは‥‥」
 エンリコは目を細める――死者の無念を晴らすために、新たな死者を生んでは本末転倒だ、と考えているのだろう。
「試練に臨む必要はない、とは、そういう意味だよ。これのために、命を懸けるかどうかは、君たち自身に委ねよう。ちなみに、今回救うべきは、『隠者ピエール』‥‥そして、倒すべき相手は」
 賢者がそう言うと、エンリコは、即座に後を継いで言った。
「ベレト、グラシャラボラス、アバドン、バアルなのです」

●暗黒の試練
 螺旋の階段を上り、巨大な鉄扉をくぐると、そこはモノクロームな試練の世界――死者の無念が作り出した空間。
 隠者ピエール。歴史書では諸説いわれているが、姿無き賢者によると、卓越したエクソシストであったという。彼は『暗黒時代』といわれる11世紀に、ディアボルス軍との一大戦争『十字軍決戦』に、多くのルークス教有志を率いて挑み、そして破れたのだそうだ。
 SINNの周りには、モノクロームの、多くの兵士がいた。誰もが、よく訓練された兵士に見えた――しかし、魔将の前には、赤子同然であったろう。
「虫ケラ、まごう事なき純然たるゴミ虫ども! アリンコが百万匹群れようとも、我輩の足の小指一つ傷つけられぬわ!」
 この世界では真っ黒に見えるが、あれはバッタ顔の魔将・アバドンだろう。その剣が振るわれるたび、悲鳴があがる。
「バァァァァアァァァァルゥゥゥゥ!」
 あの3つ首のシルエットは、猫と蛙の首を持つ黄金魔将・バアルか。猛然と矛を振るっている。
「喰ラウ喰ラウ喰ラウウウウ!」
 巨大な、胴長のシルエットが暴れていた。全長は10メートル以上もあろうかという、巨蛇とも巨竜ともつかぬあれは『昔のベレト』だ。手下に殺され、成り代わられる前の。
「ピエール、恐るるに足らず、ですね。ある程度のディアボルスなら打ち倒せるかもしれませんが、我ら魔将の前には、この程度の兵士、何の役にも立ちませんよ?」
 いやらしく語るのは、黒鳥の如きマントを纏う優男。だが頭には、なにやら角が生えている。あれもまた『転生前』のグラシャラボラスなのだ。
「そ、そんな‥‥銀の武器や魔法の武器、魔法を使える者ばかり集めたというのに‥‥」
 絶望的な声を出したのは、SINN以外で唯一、フルカラーで存在する僧侶であった。彼こそ殉教者、ピエールなのだろう。
「残念でしたねえ。貴方はきっと、無能な人間をそそのかして死地に追いやった、愚かな僧として後世に語り継がれるのでしょうねえ」
 グラシャラボラスは舌なめずりして言った。
「無念なり‥‥悪魔の支配域を解放するため、せっかく名乗り上げてくれた有志の仲間を、こんな屈辱の中で無駄死にさせ、無能者として後世に伝えさせるなど‥‥私は‥‥私は!」
 ピエールはルークスに救いを求めた。その祈りはきっと、生前もなされ、そしてこの永劫の間でも、無限に繰り返されてきたのだろう――だが、その祈りは無駄ではなかった。ついに、神の使徒を呼び寄せることになったのだから。
「!? あなたがたは?」
 ピエールは、いつの間にかそこにいたSINNたちに気づいた。

●無事を信じて
 ――マリアはその頃、聖戦機関の地下で、忙しく駆け回っていた。
「このテーブルクロス、裏返しになってますよ」
 アリア・アンジェリーニ(sz0004)の指摘に、マリアは「ああっ」をうめいて、すっ転ぶ。
「いたた‥‥もうっ」
「もうっ、じゃありません。そんなに慌ててどうしたのですか?」
「これは‥‥SINNのみんなの、戦勝会なの」
 マリアは力強く言い、続ける。
「わかってるわ、戦いはまだ終わってない‥‥けど、必ずみんな、生きて帰ってくる。そしたら、今までみんながしてくれてたように、私が『おかえりなさいの会』を開くの。そして、みんながこの1年、どうしてたのか、今どうしてるのかを、聞かせてもらうのよ」
「『SINNの同窓会』ですね。ええ、聞きたいですわ、皆のこと」
 アリアはこくりとうなずくと、準備を手伝い始めた。いや、他の、戦いには赴かなかったSINNたちも。
 彼らは、必ず無事に、務めを終えて帰ってくる。そしたら、ここで、皆で打ち上げをし、そして語らうのだ。夜が更けるまで、いや、朝が来るまでだって――

◆登場NPC

 エンリコ・アルベルティ(sz0002)・♂・45歳・エクソシスト・地・聖職者
 マリア・アンジェリーニ(sz0003)・♀・15歳?・エクソシスト・地・聖職者
 アリア・アンジェリーニ(sz0004)・♀・15歳?・?・風・?

◆マスターより

お久しぶりです、北野旅人です。
このたびはSINNの期間限定復活シナリオにお越しくださり、誠にありがとうございます。
本グラシナは便宜上、部分的にPBW2.0のシステムを踏襲しておりますが、感覚としては、従来の全イベと同じつもりで参加して頂いて大丈夫です。
プレイング文字数上限は400字固定となります。また白紙等でない限り、ボツとはなりません。
下記の選択肢をプレイング第1行で【ア】のように記入すると、基本的な行動指針となります(省略可・複数選択可)。
状況により、選択肢以外の行動をとる場合もあります。また、プレイングで辞退しない限りは、『SINNの同窓会』にも参加します。
プレイングですが、端的な箇条書きでもいいので「今なにをしているか」を書いて頂けると、同窓会執筆の大きな参考になります。

ア:ベレトと優先的に戦う
イ:グラシャラボラスと優先的に戦う
ウ:アバドンと優先的に戦う
エ:バアルと優先的に戦う
オ:仲間の支援やピエール・他の兵士保護を優先
カ:死者の間には赴かず、SINNの同窓会の準備&本番に参加

では、今回の戦いについて、補足やおさらいです。
死者の間は、殉教者の魂が作りだしたバーチャルな世界です。世界はモノクロームに見え、殉教者と仲間だけはフルカラーで見え、倒すべき敵は濃い黒で見えます。
兵士たちは、SINNの事を正しく認識せず、語りかけや誘導はほぼ意味をなしません。ピエールとは普通に意思疎通できます。
かつてここでは、特殊なタリスマンを装備する必要がありましたが、今回は何らかの影響により、タリスマンは不要なようです。
場所は平原。四魔将のほか、何種類かの中級・上級ディアボルスも取り囲んでいます。
遥か昔の出来事なので、魔将達はあなたがたと面識はありません。因縁について語りかけても通じないのでご注意ください。また、21世紀の魔将と同じ能力とは限りません。

以上です。かつてのSINNなら絶望的なこの状況でも、今のSINNなら打開してくれると、マリアもアリアも信じています。
それでは、みなさんのご参加を、「おかえりなさい」を、お待ちしております。

リプレイ
●vsベレト:のたうつ魔将
 暗黒の地に降り立った数十名のSINN。周囲には、守るべき同胞がおり、救うべき殉教者がおり、そしてその周囲には、悪魔と、悪魔と、悪魔達と、魔将達がいた。
 そのなかでもひときわ。異様で巨大な存在。うねるそれは蛇か竜か、ベレトよ。
「ま‥‥魔将が、たくさん‥‥ひえぇー‥‥いやでも、やるしかないです‥‥よね」
 アメリア・ロックハート(sh1732)。おどおどした、とても戦いになど向いてなさそうな少女は、しかし、かつてより揺らぎのない声で、そうつぶやいた。
「もちろんですー。このベレトは、私の知るベレトと違うのは分かってますけど‥‥ピエールさんを救う為に、倒すべき敵なのは変わりませんー」
 メイリア・フォーサイス(sa1823)、いやメイリア・ブノワは、その名を与えてくれた愛する者のためにも、サンラファエルを成就させ、この暗き場を、明るく照らす。
「やれやれだねー。平和になっちゃって、エクソシストなんてもう時代遅れかなって思ってたけど、研鑽しといてよかったな」
 アルベルト・ルードヴィッヒ(sa0074)。平時でも、あの激戦のときでも変わらぬその鷹揚な態度で、皆を祝福する。ベネディクタで、ディアボルレジスティで。
「状況は理解しました 少々ブランクがありますが、全力でやらせて頂きます」
 望月 天音(sf6090)。見た目は冷厳、中身は温厚。だがもちろん、悪魔に対する慈悲などない。
「最初から全力で行きます!」
 水の魔力を活かすパラディンとして、持てる力の全てを注ぐべく、天音は疾った。その正確無比な、凍てつく拳が、巨大なベレトの顎を捉える。
「グオオオオ!」
 ベレトが叫んだ。その首がのけぞった。誰の目にも、確かな手応えが感じられた。
「あたしもボリビアでは大分お世話になったから、ベレトにはきっちりお礼をしなきゃね」
 ナタク・ルシフェラーゼ(sa2677)はいつの間にか、ベレトの横脇にいた。風のパラディンは、その腕に鋼帯の乾坤圏を巻きつけ、高速で胴を連打したのだ。
 だが。手応えは、どこかおかしい。
「‥‥鱗?」
 そう、鱗だ。こいつの鱗は魔力を宿しており、ときおり攻撃を弾いてしまうようなのだ。
「ま、いっか。みんなで殴ればいいしね‥‥おおっと!」
 ナタクは顔色も変えず、反撃の尾をメタスタシスで回避、そしてすぐさま攻勢へ転じる。ダメージを与えようが与えまいが、つかず離れず押し込むつもりだ。
「こいつは一筋縄じゃいかなそうだな。ま、最近平和ボケしてきそうだったし、軽く運動してくるとすっか。アメリア、任せたぜ!」
「はいっ! 援護は任せてくださいー!」
 夫のカミーユ・ランベール(sf0920)が翼を広げて宙を飛び、上方から重力波を叩きつける。顔をあげたベレトの、その首筋に、アメリアの魔吹雪が浴びせつけられる。
 飛び交う若夫婦――それに、ニヒルな笑みを向けたのは、アントーニオ・インザーギ(sa5938)。
「お盛んなことだな。ま、俺もいろいろ鬱憤が溜まってるんだ。暴れさせてもらおう‥‥けど、まず肩を温めさせてくれよ」
 アントーニオは、禍祓之太刀に、神聖なるCROSS、雲の化石、アポロのネジを取り出して、錬金を始めた――【魔神な身体】を弱める軍刀に、浄化や高さ、上昇の素材を用いて、いったい何をするというのか?
「早くしねーと終わっちまうぞアントン。んじゃ、銀河系最強パラディン(自称)が一肌脱ぎますか♪」
 狼牙 隼人(sa8584)、余裕の表情で今、準備を終えて、戦闘へ赴く。その絶大な実力は、歴戦でも大決戦でも実証済みだ。ついに真打が、ベレトに致命打を与えるべく牙を剥いた!
 ‥‥と、そう単純にはいかないのだった。

●vsグラシャラボラス:ゆらぐ魔将
 覚えているか、下世話な笑い声を上げ、人々を、SINNを蹂躙した魔将を。黒く、いかめしく、禍々しい面と鎧を見せつけた強敵を。
 かの魔将の名を冠する存在が、目の前にいる。奴よりは細身で、まだ人間らしく、慇懃だ。それなのになぜだ、人をいらつかせる点においては、目の前の紳士も、引けをとらなかった。
「クク‥‥いるぜいるぜ、ゴミがワンサカァ! 久々の大掃除だ‥‥愉しむしかねェよなァオイ!」
 鷹宮 奏一朗(sp8529)は、それをも嗤い飛ばす。人の姿をしていながら、人とはいえぬもの、クレスニク。怯える理由など、奏一朗にあるはずもなし。
「久しぶりの招集で何かと思えば、最後の後始末って奴か。OK、仕事は最後まで全うするのがプロってもんだ。俺の冒険者の引退試合に相応しいミッションだぜ、これがな」
 ハーケン・カイザー(sc1052)。彼もまた違った意味で、飄々としていた。
「この剣をもう一度振るうことになるとはな。いいじゃねぇか。あの時拾ったこの命。聖戦の英雄として、ラグランジュの名にかけて。最後の騎士道、花で飾らせてもらうぜ!」
 ギィ・ラグランジュ(sf9609)。この偉丈夫も揺るがない。騎士として、名を背負う者として。ひるみを見せるわけにはいかぬ。
「やれやれ、グラシャラボラスとはまたずいぶん懐かしいのがきたもんだな。久しぶりに熱い戦いができそうだぜ」
 ジョニー・ジョーンズ(sa2517)。もはやその血は滾り、小さくシャドーボクシングを始めている。おびえる? ひるむ? まさか、こんなチャンスでなぜ。
「現実の戦いでは、まみえる機会の無かった相手ですが、殉教者の無念を晴らす為にも、臆する訳にはいきません。預けてきた娘が待っているんです、絶対に勝って帰ります!」
 ナイ・ルーラ(sb0124)。とりわけ細いこの男でさえ、眼鏡の奥の眼光鋭し。神の使徒であり、世界チャンピオンでもある。そして家族がいる。小柄な背中に、どれだけのものを背負うのか。
「おやおや、多少は腕の立ちそうな連中がやってきたようですねえ。困ったものです‥‥せっかくご馳走が増えたのに、ベレトさんやバアルさんらに分けなきゃいけないじゃありませんか?」
 グラシャラボラスは、ゆらりと大剣を構えた。身長を超えるほどの巨大剣を、棒切れかなにかのようにゆらゆらと。
「よろしい、ならば戦争だ」
 アシェン・カイザー(sd3874)は、神に仕えるシスターとしてはいささか不適格な構えをとった。端的にいうと、中指をおったてた。そして不敵にも不遜にも、そのままベネディクタを成就して、仲間を祝福してしまった。
「この身に宿る怒りの炎を呼び起こすのは、本当に‥‥心から、嬉しく思いますよ!」
 先陣を切ったのは、やはりこの男、アドリアン・メルクーシン(sb5618)。二丁拳銃を思い切り突き出したまま、大胆に足を駆ったが――
「すみませんがね、まずはお手並み拝見をよろしく」
 グラシャラボラスは手をぞんざいに振って、周囲の悪魔をけしかけてきた。あれはマンティコアか、あちらはグリマルキンか――だが、アドリアンは動じず、新手に銃口を向けひたすら放つのみ。
「歓喜のように燃え盛る‥‥この怒りは、悪を滅し、自らを浄化する炎。我が魂よ震えよ、蒼き炎となって燃え上がれ‥‥滅すべき悪は、目前」
「そう、目前♪」
 その声は、グラシャラボラスの真後ろからした。愕然と振り返る魔将。
「おいしそうな優男と聞いて‥‥こっち見てくださらなきゃイヤですわ♪」
 媛 瑞玉(sd3404)。メタスタシスで背後に転移した彼女は、三武一体の聖宝剣を真一文字に振り下ろした。魔神の身体を破るこの剣、そしてこのタイミング、かわせる者などいるはずなし!
 ‥‥の、はずが。
「!?」
 愕然としたのは瑞玉のほうだった。まさに紙一重で、必中の剣がかわされたのだから。
「なかなかやりますね――」
「まだ!」
 魔将にみなまで言わせず、瑞玉は光を放つ星十字のナックルで凄まじい連打を繰り出した。言わせるものか、と。あらかじめヴォーロで加速している瑞玉の手数は、たしかにグラシャラボラスを黙らせる。
「くっ、この‥‥っ」
 後退しながら凌ごうとする魔将。
「おっ、押してるか!?」
 霧生 亜理沙(sb6207)が拳を握りそれを見守る。しかし。
「いや、まだだね」
 酒匂 博信(sh4156)は、いかめしく目を細めて否定した。瑞玉のあのラッシュは、上位の魔将でも歴戦のSINNでも、まず凌げないほどのもののはずだ。しかし、よく見れば、グラシャラボラスは半分程度をさばいているように見えるではないか。
「厄介な‥‥!」
 たまらず、魔将が飛んだ。見上げる瑞玉。転移で追う手もあるが、ここは『見』を決め込む。
「不自然なまでの身のこなし‥‥当てれば手応えは悪くないんですけど」
 瑞玉は自身の拳を見つめる。相当、いいパンチを当てたはずだ。しかし魔将に、大きなダメージが見られないのはなぜだ。
「さがってろよ、セイワ‥‥絶対に前線に出るな! 後ろにいろ! 危ないと思ったら俺を楯にしろ!」
 東雲 凪(sb4946)が声を荒げたのは、栄相 セイワ(sa0577)の身を案じた、のはもちろんだが、想定外の危険を察知したためでもあった。
(現代で何度も戦ったはずのグラシャラボラス‥‥だが、聞いていた能力を超える? 仲間のこの緊張感でわかる、あんな危険なヤツに、セイワを向かわせるわけにはいかない!)
 凪の焦燥――そしてその空気は、亜理沙も敏感に感じ取っていた。
「うわぁ‥‥難易度最悪じゃねーか。なんで私こんな所戻ってきちまったかなぁ‥‥」
 膝が震える‥‥ほんと、何で戻ってきたんだろう。なんて思ってみるけど答えはわかってるんだよなぁ‥‥亜理沙は身をかがめ、自身の膝小僧を、ぎゅっと握りこむ。
(一年前の戦い。そしてその前も、戦ってる奴らがいた。そいつらの心配するくせに、傍にいることができなかった。ただ偽善者だった私。それが悔しかったんだ‥‥)
「震えているのか、小娘?」
 ふいに冷厳な声がして、亜理沙は振り向く。そこには愛車のロードバイク・陸王にまたがり、クロスボウを肩に担いだディミトリエ・シルヴェストリ(sb9264)の姿があった。
「だっ、誰が小娘だよ!?」
「‥‥グラシャラボラスは、タフだったな。本当にしぶとい奴だった。あんなに手を焼かせる悪魔は、初めてだったぞ。思えば苦戦を強いられた。私達も若かったからな」
 ディミトリエは静かに言った。亜理沙のほうを見もせずに。
「あいつはそれよりも強いらしい。だが此処に居るのは、正真正銘の精鋭だ。聖戦を戦い抜き、悪魔王を倒した真の精鋭。歴戦のSINNの力を侮るなかれだ」
 そうだ、と亜理沙も思う。別にひとりってワケじゃねーんだ、と。
(だから‥‥膝の震えは‥‥ない!)
「これは武者震いだ! さぁいくぜ皆! さっさと帰って飯だ飯!」
 亜理沙はアーメーンを唱えた。おおルークスよ、猛き彼女に力を。
「そうだ、その調子だ、これがな」
 言ったのはハーケン。すでに油断なくパペット軍団を展開させ、仲間と息を合わせて魔将に挑みかかるつもりであった。
 そんなSINNの様子を、グラシャラボラスは中空から見下ろす。
「やれやれ、少しはやるようですねえ‥‥数で挑まれてはかなわない、さあ、お行きなさい下僕達よ」
 クスクス笑いながら、魔将は手を振った。取り巻きのディアボルスどもが、ゆらり、とSINNへ牙を剥く。
「ちょうどいい、クックック。まずはザコを蹴散らして、むしろ戦力を殺いでやりましょう」
 須経 蘭華(sb0118)は余裕の笑みを浮かべ、皆にうなずきかけると。
「旧型チャラ魔が自分のアホさに気づく前に、こっちのペースを維持し続けますか」
「クク‥‥メインディッシュを喰う前に、前菜を片付けろッてかよ」
 奏一朗が吠えた。アルゲント。狼男が中指を立て挑発する。
 そして、聖と魔がぶつかる刻。

●vs同胞の敵達:むらがる悪魔
 そう、すでに戦いは幕を開けており、被害は現在進行形で広がっているのだ。
 下級ディアボルスが相手であれば、集団で統率し殲滅できたかもしれぬ友軍も、いまやほとんど一方的に押され、蹂躙されている――琴宮 涙湖(sb1982)はせわしく飛び回りながら戦況を検分し、冷静にサナティを使い、被害者を減らすべく邁進する。
「まさか、もう一度こうやって魔法や技術を戦いのために使う日が来るとは思わなかったわ‥‥!」
「まったくすね。おかげですっかり体が鈍っての参戦ですよ。でも後顧の憂いを断つためっす、やることはやりますよ」
 羽原 春乃(sp3482)は光る拳で、足先で、げし、げしと悪魔を押し返さんとする。
「あの戦いで、全ての因果は解かれたと思っていましたが‥‥分かりました。なら戦うのみです!」
 種子島 カグヤ(sh3932)も、2本の刀をただただ振るうのみ。伝承されしその魔力は、悪魔に、吸い込まれるように入り込み、易々と切り裂く。
「いい加減に、解放されてもいいだろうに‥‥多少だが、手助けになればいい」
 上月 累(sq2012)のアルゲント。荒々しいオジロワシの姿になれど、その瞳の知性は、そのままに。
「あたしに、戦う力は無いけれど‥‥この癒す力が、皆の助けになるのは、分かってるから」
 三輪山 珠里(sb3536)も翼を広げ、宙に浮かぶ。そして涙湖と目配せする。「お互いの、やるべきこと」を確認しあうように。
「‥‥戦いは続く? ‥‥終わらせるの‥‥」
「そうだよ、終わらせるの!」
 サイワと栄相 セイワ(sa0577)の姉妹も目配せしあう。そしてサイワも翼を広げ、セイワはCROSSを手に、それを見送るのだ。
「もちろんいちこさんも頑張っちゃうよ! 救うべき人がいるかぎり!」
 柴神 壱子(sa5546)が目配せし、見送るは、自らが操るパペットたちだ。柴トナカイのクロが飛ぶ、赤スカーフのゴンスケがエクスカしば〜を咥える。そう、愛しき絆は柴ワンダフル! おおルークスよ右の柴をもふったら左の柴も差し出しておくれ!
「そう、救うべき人がいる限り‥‥求める声がある限り、いつでもこの身を投じよう。主よ、私達をお導き下さい‥‥!」
 ラティエラ・テンタシオン(sb6570)。愛の申し子たる娘が送り出すは、パペットではない、聖獣だ。ピスケスによる愛しき絆よ、シャムよ、護られし者にして護りし者のために、その白き翼を存分に拡げよ!
「皆の命‥‥そして、二人分の命が関わっているんだから、この戦い負けられないよ!」
 セイワが掌をかざす、上空から。ラファエルの加護か、激しい風が、魔物の群れに打ちつけられる。
 そうしたSINNの、現代の勇者の活躍を、過去の指導者ピエールは、茫然と見つめている。
「あ、あなたがたは‥‥神の使いなのですか?」
「そうよ。そしてあなたも、神の使いなのでしょう?」
 涙湖は空から声を注ぐ。
「同じ神のしもべなら、私達の話を聞いて。あなたには、兵士達を誘導してもらう必要があるの。たとえ神の思惑がどうあれ‥‥私の前で人が死ぬのは許せない!」
「そうだ、そんな痛みは、もうたくさんなんだ」
 神代 翼(sb3007)だ。涙湖の横で翼を広げると、ピエールに、強く訴えかける。
「あなたの行動は無駄じゃない。あなたの、そして彼らの勇気が俺達をここに導いたんだ! だから‥‥必ず救う!」
「‥‥わかった、あなたがたを信じましょう」
 ピエールはすぐに、SINNの指揮下へと入る。これで、兵士らも多少は、統率のとれた防御陣形を築けるはずだ。
「よし、あとは悪魔を蹴散らすだけだね。そーれ、しばわんだふる!」
 壱子がゴンスケをけしかける。見た目に似合わず、中級悪魔を圧倒する、まさに柴界の最強わんこ。その隙にエティエンヌ・マティユ(sj6626)は、protegeのCROSSにローレムを付与し、ピエールへと手渡す。
「どうか我々の内側へ。必ず守ってみせるから‥‥ね、マリクさん?」
 呼ばれたマリク・マグノリア(sp3854)は、「へい」というふうに首を曲げると。
「まあいつも通り、ヘコヘコやるだけですよ俺は‥‥おっと、なにか新手のおでましですねえ」
 マリクの強力なパペットたちが展開するも、悪魔はなおも四方から迫ってくる。守りきれるのか――いや。
「‥‥」
 オルフェオ・エゼキエーレ(si1323)。寡黙なパラディンがいま、ピエールのそばに立ち、ゆっくりと、本庄正宗・榊を構えた。

●vsアバドン:おされる魔将
 純白の、煌びやかな貴族服は、今は漆黒に染め上げられている。本人が熱弁するところの『高貴なバッタ顔』も、今は緑色には見えぬ。魔将・アバドン。
 それに対抗しいきり立つは、ドヤ顔のビート・バイン(sf5101)、こちらも本人が熱弁するところの――
「わはははははっ。超絶美形パラディン、ビート・パイン参上! さあ、俺が来たから、もう安心。さーて、そこのバッタもん。本当に気高く美しいのは誰なのか、ここで思い知らせてやるぜ!」
「我らは神と共にありだ! さあ悪魔共、お前の罪を数えろ! それすらも理解出来ぬなら地獄の底で悔いやがれ!」
 こちらはアーサー・ラヴレス(sa4830)、ヒーローなベルトを腰にナイスポーズを取る。キュピーン。もちろんビートも合わせてポーズを決め、そしてさらにゴスタ・ユオン(sp9246)もその後方でオリャアとポージングを決めた。
「衆愚! なんたる無粋なポーズか! 笑止千万、まさにゾウリムシの求愛ダンス! 致命的美的センスに開いた口が塞がらぬわ!」
 アバドンは腕組みしたまま挑発した(ひょっとしたら本気の意見かも)。
「はっ、そのオキレイなバッタ顔で笑ってられるのも今のうちだぜ」
 ビートはグラディウスを成就させた。輝きだす、不滅の三日月宗近、そして拳銃。ゴスタもアルゲントを成就させるや、振り返り、クレスニクの仲間にうなずきかける。
「よし、やってやろうぜ。ゴスタ。それと‥‥蜜。危なくなったら絶対俺が‥‥助けに行くからな」
 レイヴェンス・エーベルト(sq2046)はそう言うや、鋭く啼いて、鷹の姿に変身した。その鋭い眼光を受け、千種 蜜(sp9590)もゆっくりうなずくと、勇ましく唸ってニホンイノシシの顔へと変貌する。
 SINNは飛び出す。パラディンは主に、魔将のもとへ。クレスニクは周りのディアボルスを押さえるために。
「うおおおおおあ!」
 ゴスタの口から炎が撒き散らされる。中級ディアボルス程度ならしっかり焼けるその炎。いきり立ったグリフォンが爪を立ててきたが、アニムイグネの再生力がゴスタの勇猛を後押しする。
「こっちもよ!」
 蜜もカラパスで硬質化していた。ザコの反撃を気にもせず、口から重力波を飛ばし、圧倒する。
 レイヴェンスは蜜へ迫るグリマルキンに、純白の拳銃を向け、放っている。そんな様子を、陰ながら支えるは、セルゲイ・クルーツィス(sc4350)。
「なんだかんだ、けっこうやれてるじゃあないか」
 ‥‥セルゲイは後方上空に翼を広げて留まりながら、フルメンで援護したり、仲間の致命傷へ備えてサナティを準備したりしていた。
「基本的にか弱いからな、俺。勇猛なのはケモノやパラディンな皆さんにお願いするさ」

「やっぱ、たまには身体も動かさねぇとな。うっし、久々に暴れてくっか」
 来海 朽葉(sp4469)の言に、ジュラルディン・ブルフォード(sn9010)は無言でうなずく。2人はそう、ハンドラー。その操るパペットは、仲間を包囲せんと迫るディアボルスへの牽制となる。
「ま、露払いする奴も必要だろ」
「ああ、邪魔者は排除あるのみだ」
 朽葉と共に、ジュラルディンはせわしく魔法の糸を繰る。黒い蝿のゴルベーザが威嚇し、ゾンビなドラゴンのリュディアが火を吹く。迫ったインクブスには、恐るべき甲冑騎士ジョージが、腐土奈落のサーベルで斬りつけるのだ。
 その冷静な操作に、朽葉はヒュウと感心する――しかし、ジュラルディンは、ザコを相手しておきながら、その心の瞳はボスを見据えていたのだ。
(アバドン‥‥)

「行くぜ、行くぜ、行くぜぇ!」
 ビートのラッシュに、アバドンは押され下がる。すかさずアーサーが極光のグングニルを突き出す。かろうじて身をひねる魔将。
「どうした、こんなものか?」
「虫ケラの分際で‥‥くぬっ」
 そのこめかみを、銃弾がかすめる。鷹羽 歩夢(sj1664)の弾だ。パラディンだが、援護射撃にM4hのアサルトライフルを構えた彼女は、冷静に、魔将を追い詰めるべく戦況を見据えていた。
「仕切りなおしである!」
 アバドンが真上に飛んだ。歩夢はすかさず銃を持ち上げ、スコープごしに、その漆黒の悪魔をターゲッティングすると。
「そう来ると思ってた‥‥いける?」
「もちろん」
 アーサーは答えると、金属製の鳥のような乗り物にまたがった。

●vsバアル:黄金の城は不落
「現代でも僕たちを苦しめた、動く鉄塊と言うべきバアル‥‥」
 ミリーナ・フェリーニ(sa0081)は、どっしり構えるバアルを見据える。
「‥‥‥‥」
 黄金の鎧は、カエルと猫の顔は、いまや黒く染まっている。
「んー、ひっさびさに呼ばれたと思ったらあんなのと戦うの? まあ、暇してたからいいケドね。義兄さんも身体動かさないと運動不足で毛艶悪くなっちゃうしね」
 オリヴィエ・ベル(sp7597)はのほほんとそう言う。アンリ・ラファイエット(sp6723)はこれみよがしにシッポを「もさぁ」とさせる余裕っぷり。
 ところが。
「ゲーロゲロゲロゲーロゲロ!」
「フンギャラオオオオウ!」
「バァァァァアァァァァルゥゥゥゥ!」
 バアルが両足を広げ、両手を、その矛と槌を高く掲げた途端、ミリーナに、オリヴィエに、アンリに、痛烈な落雷が襲った!
「うああああ!?」
「あだだだだ!」
「ちょっタンマ‥‥」
 悶える三者。ティファニー・エヴァーツ(sa1133)はあわててサナティを成就、仲間を癒すが。
「ちょっと、強いじゃないのよ! ‥‥そりゃそうか、さんざん苦戦した相手だものね」
「ああ、あいつはヤバいぞ。で、それを丸投げするようで悪いが、しばらく惹き付けててくれ」
 言ったダニエル・マッケラン(so1035)は、すぅ、と姿を消した――特別な迷彩スーツを発揮させたうえ、メタスタシスで退避したのだ。
「ちょっと!? ああもう、なんであんな強敵相手に‥‥!」
 ティファニーも距離を取る。戦闘派のエンジェリングではないし、癒し手が先にやられるわけにはいかないから当然だが、それにつけても、バアルに対する人数の少なさよ。
「ちょっと待ってて‥‥ん!?」
 鷺沼 妙子(sp1602)も、静かに意識を集中させ、魔法を準備していたが、いきなり目前にバアルが出現したので、思わず目を見開く。
「このっ‥‥!」
 竜殺しのデュランダルで、思わず斬り上げる。手応えはあった――しかし。
「うぐっ!?」
 同時に、その身に落雷が落ちる。まさか、打撃に対する自動反撃の魔力が?
「こいつ、現代のより‥‥ヤバイかも!」
 妙子は攻めあぐね、タタンと後ろへ下がる。が、バアルはなおも肉薄し、強烈な槌を振り回してくる。
 オリヴィエが、アンリが援護に入り、ミリーナが射撃でその動きを止めんとする。が、彼ら彼女らにも、図ったように落雷が落ち、うめきをあげさせる。
「ああもう! ちょっとひどすぎない!?」
 ティファニーは何度も何度もサナティを繰り返す。死なせないため、そうするしかない、しかし‥‥
「ああもう、誰か助けにきて!」

●同窓会会場:仲間の帰りを信じて
 死者の間の苦闘を知ってか知らずか――聖戦機関の地下では今、その帰りを待つ者で溢れていた。
「あ、アリス! 無理はしないでくださいねっ! 重たい物とか持っちゃ駄目ですよ? あああああ‥‥」
 オズウェル・クローチェ(sq1494)が頭を抱えるその先で、アリス・フリュクレフ(sq1159)はぴょんぴょん跳びはねて飾りの曲がりを直している。
 仲間が心配なわけじゃない。だがいま、戦闘に向かうわけにもいかない事情もある。そんな1人が、アンナリーナ・バーリフェルト(sp9596)だ。
「ふふふ、ここに来るのも久しぶり。戦闘には参加できないけど、やっぱり関わりたいものね。みんなが無事に帰って来るように祈りながらパーティーの準備をしましょうか」
「僕もやはり、戦闘より料理をしたりした方が性に合ってますし‥‥逆に僕が行ったら迷惑になってしまいますからね。美味しい物をたくさん作って、皆さんの帰りを待ちましょう。ってアリス!?」
 オズウェルは、巨大な花瓶をエイコラ運ぶアリスを見つけてわたわたしていたり。
「ふはははは、いやー久しぶりのタダ飯の気配! 大丈夫、準備ぐらい僕にとっては朝飯前だよ、ちゃんと手伝うよ!」
 望月 白夜(sf5133)もヨッコラセッコラ駆け回り、つまみ食いのチャンスを探している――そんな様子を眺めながら、セイディ・ゲランフェル(sp8658)は、かすかな笑みを浮かべずにいられない。
「本当に、懐かしいですね、この空気‥‥帰ってくる人たちもまた、こうなのでしょうね」
「そうやなあ、うん‥‥」
 郡上 浅葱(sd2624)も、魔法で宙に浮かんで壁を飾りながら、その手を止め、遠い目をする。が、足元にアリアとマリアの姿を見かけ、そっと地に降りる。
「アリアさんもマリアさんも久しぶりやねぇ。元気やった?」
「ええ、おかげさまで」
 アリアはそっと頭を下げ、マリアは「もちろんよ」と笑ってみせると。
「本当なら、私も死者の間に行きたかったんだけど‥‥さすがにエンリコさんに止められちゃって」
「アハハハハ。僕も以前なら参加してたけど、あれから子供が生まれちゃったから、パパから待機命令を出されちゃったんだよね」
 ニア・ルーラ(sa1439)もそう言って笑う――そう、あれから1年以上。どうしても、戦うわけにはいかない以上を抱えたSINNは多かった。そして彼らの多くはいま、ここで、仲間の帰りを待っているのだ。
「いきなり言われたってなァ‥‥昔みたいに、ムチャばかりはできやしないさ」
 ルナール・シュヴァリエ(sp6369)もそう言って肩をすくめ、なにげなくタバコを探って、すぐに『そんなものはない』ことに気づき、唇をとがらす。
 と、そこへアンナリーナがやってきた。ルナールの子を宿す、クレスニクの娘が。
「仲間を信じて待つのも楽じゃないわね‥‥でも、もともと対悪魔とは相性良いとは言えないし‥‥何より、初期に激しい運動はご法度だからねー」
 そう言っておなかを撫でるアンナリーナに、ルナールは「あァ」と覇気なく答える。
「不思議よね、去年まであんなに大変で動き回っていたのに、今はこうして穏やかにここに居る‥‥一年半前にはまったく考えられなかった。感慨深いわ‥‥ね? ルナールもそう思うでしょ?」
「あァ」
 ルナールは覇気なく答えた――だがそれは、投げやりとは違った。
(オイラにはもう、戦う理由なんかねぇし‥‥それに、生きる理由は見つけちまった。タバコまでやめて‥‥なにかあると胸元に手が伸びるんだけどなァ‥‥)
 だが、それは禁煙がつらいからではない、単なる習慣だ。クセだ。たぶん、アンナリーナが出産しても――禁煙を解くことはないんじゃなかろうか、とルナールはぼんやり思った。
「私はできれば、みんなと戦いたかったけどねー‥‥激しい運動するとオズウェルに怒られちゃうものね。でも、ふふ、この子がいるから寂しくないわ☆」
 アリスも、アンナリーナと同じように、自分のおなかを撫でる。
「そうよ、今は応援と準備と‥‥あとは掃除とかを頑張るのみなのよー」
 クローディア・エヴァーツ(sa0076)は、せっせとテーブルを拭きまくる。姉の無事を、勝利を祈りながら。
 と、そこへ志島 陽平(sa0038)が飛び込んできた。
「遅くなったっス!」
「あっ、陽平!」
 ヒメコ・フェリーチェ(sq1409)が、ぱぁと顔を明るくさせる。陽平は照れたように頭をかくと。
「へへっ、お待たせしましたっス。っと、準備の方はまだまだありそうスね、手伝うっスよ」
「ええ、それならお料理手伝ってもらうのです。ヒメコ最近だいぶ上手になってきたっておばあちゃんに褒められたのです!」
「ほう‥‥? それは楽しみだな」
 ギラリ、と眼鏡を輝かせ割り込んだのは、鷹羽 叶望(sd3665)。料理の鉄人(と書いてバカと読む)だ。
「いいかみんな、せっかくの同窓会で‥‥そして、戦勝会だ。旨い酒と旨い料理を用意して迎えてやりたいからな。全力で料理に当たってもらうぞ」
「合点承知なんだよっ。久しぶりに仲間が集まるんだから、頑張って美味しいもの作らないと!」
 皆本 愛子(sb0512)も腕をまくる。月島 悠(sa1735)も「待ってました!」と駆け寄ると。
「マリアちゃん、アリアちゃん、ボクも料理の準備手伝ってくるね! ふっふー、どんな料理作ろうかな? 何食べたい?」
「ふふっ‥‥でも、えっと、まだ皆さんが、戦ってると思うと‥‥」
 マリアが口ごもる。しかし、叶望は「チッチッチッ」と指を振ると。
「むろん皆、死者の間に行った者たちが気にならない‥‥というわけでは、ない。でも、1人残らず無事に帰ってくるって信じているからな。だってみんな、あの戦いを一緒に戦い抜いた仲間だから。だから俺は、みんなを信じて準備に全力だ!」
「おーなんかカッコいいわね☆ さあ、張り切って美味しいもの作りましょう、オズウェル!」
 アリスもエプロンを着用、しようとしてうまくいかなかったのでオズウェルに手伝ってもらう。
「さて、何を作りましょうか。市国周辺、イタリアらしく行きましょうか? ちょっと時間を掛けてアクアパッツァも良いですよね。美味しいお魚が手に入るといいのですが‥‥まずは買い出しですね」
「いってきまーす☆」
「ってあぁぁっ! アリス、だからそんなに走り回っちゃ駄目ですって!」
 ――オズウェルはなんだか忙しそうだ。
「‥‥ま、彼はうっちゃっといて、私たちは厨房へ――」
「ってアンナリーナはやめとけよ‥‥今まで焦がした料理の数、覚えてるかアンタ‥‥料理は専門家に任せて配膳とかやれ、オイラも手伝うから」
 ルナールが肩を掴むが、アンナリーナは首をかしげ。
「えーっと‥‥いちいち数えてないけど、大丈夫よっ! 失敗は三回に一回まで減ったんだから、頑張るわよー!」
「やめろってェ!」

 その頃マユリ・バルギース(sp0231)は、重そうなケースを運ぶマリアとアリアに声をかけていた。
「んー、白と黒の双子姫さん、重そうね、手伝うわよ」
「ありがとうございます。まだたくさんありまして」
 アリアはかすかに笑う。
「それなら‥‥ゴトウ! ナカノ! マエダ!」
 マユリがパペットらを繰り出すと、ニアもテスラとかバアちゃんとかパンダとかいろいろなパペットを手伝いに回し。
「運搬ならパペットに任せろってね。ま、皆なら大丈夫だよ。あの時だって、祝勝会のついでで世界を救ったんだ。今回だって、同窓会の余興で殉教者の無念を晴らしてくるよ☆ SINNを殺すにゃ悪魔はいらぬ、闇鍋パーティー開けばいいってね☆」
「ん、闇は禁止!」
 マユリはニアに釘を刺しつつ――それにしても、飲料ケースが多すぎるな、と首をかしげる。
「いったいどれだけ用意したのよ‥‥」
「あ、それ私が手配しました。お酒の用意は欠かせませんね、良いお酒を集めてこなければいけません。自分の分もですよ」
 と、言い出したのはリーリヤ・パルフョーノフ(so2515)で。マリアはおそるおそる、ケースを覗きこみ。
「こんな量のお酒‥‥何?」
「これはロシアのウォッカで、こっちはポーランドのウォッカで、こっちはスウェーデンの‥‥」
「アハハハハ、SINNを殺すにゃロシア人を呼べばいいってね☆」
 ニアは『ぽん』と膝を叩いた――その頃SINNは、ロシアでも暗躍する魔将と、殺すか殺されるかの任務をおこなっていた。

●vs同胞の敵達:聖と魔のパワーバランス
 『ぽん』、とリリクブスの首が飛んだ。カグヤの刀が、漆黒の幼女のキニスを断ち切ったのだ。
 群がるディアボルス。四方八方から迫る脅威。対するSINNの人数は少なく、守るべき兵士の人数はあまりに多い。
「兵士達、戦っている。でもピエールさんにしかはやな達の姿、わからない。だから、影ながら手助け」
 美月 はやな(sp9368)も、貴重な戦力の1人。キツネの姿で吹雪を吐き、少しでも、悪魔を寄せつけぬようにと。
「まったくもう、忙しいんだから‥‥りすりすパワー!」
 上随 スウソ(sq1318)は黒リス姿だ。こちらは稲妻を吹き出し、悪魔を威嚇する。
「む‥‥いったん、退がろう」
 累は仲間に呼びかける。その上空に、別の仲間を見つけたから。

 エンジェリング以外にも、空を飛ぶ者はいた――南郷 龍馬(sq3216)。彼が操るは、試作型ヴィマーナ。金属製の鳥。それがディアボルスの群れの、上空へとさしかかると。
「そろそろいいぞ」
 操縦者のその声を受け、後部座席のラミア・ドルゲ(sg8786)は、聖水手榴弾を次々と投下し始めた。
「聖水の絨毯爆撃を、こんな時代に行うなんて‥‥」
 ラミアはなんともいえぬ顔になる。龍馬も苦笑する。
「結婚した時に、二人で空を飛ぼうと約束していたが、こんな形で実行するとは思わなかったな」
「こ、これは‥‥ノーカウントで。次またお願いします」
 ラミアがおずおずと言うと、龍馬は、そうだな、とうなずいて。
「じゃあ、こんな飛行はさっさと打ち切ろう。家族で青い空を飛ぶ約束を果たす為にも、ここで堕ちる訳にはいかんのだ」

 空からの援護は彼らだけではない。神代 翼もまた、戦うエンジェリングとして、鋭く飛び回り、強烈なフルメンを繰り出し悪魔を焦がし尽くしていた。
「ただ守るだけじゃない、少しでも多くの悪魔を殲滅するんだ。ピエールさんと彼のもとに集まった兵士達の勇気を無駄にしない事、それが彼の無念を晴らす方法だろうから」
「そうだな‥‥よし、ディアボルスよ、こっちへ来い! 倒すべきは私だぞ!」
 ラティエラは腕を、翼を、そしてマントを大きく広げ、自身の姿をまざまざと主張した。聖戦のマント。知性の低い悪魔が、いやそれに限らず空中の悪魔が、格好の標的であるラティエラへと邁進してくる。
「シャム!」
 悪魔の牙を、爪を受けながら、ラティエラは聖獣シムルに呼びかける。シャムも主を守らんと必死にグリマルキンへ爪を立てる。
 ラティエラは、厄介な空のディアボルスを可能な限り退きつけんというのだ。一見するとあまりに危険な行為――しかし、サンウリエルと、そしてシャムシエルの環が、ラティエラに堅固な護りを与えている。それに、仲間もいる。
「絶対に‥‥死なせないから‥‥!」
 珠里も、果敢に悪魔をおびき寄せながら、ラティエラや仲間、そして兵士へのサナティを繰り返している。余力はまだある、そしてかつてはなかった、この勇気も。
 いっぽう、ピエールに迫る地上の悪魔は、オルフェオがしっかりと護衛していた。
「どうかじっとしていて下さい、我々を信じて」
 オルフェオは静かにそう言いながら、目にも留まらぬ速さで名刀を煌かせていた。ディフェンシオ。遠距離からの攻撃を、余さず切り落とす妙技。
「さあ、とっとと片付けちまいましょう」
 マリクが鞭を巻きつけたブラックハグを、エティエンヌのメギドが葬り去る。
「大丈夫‥‥援護には、慣れているから‥‥」
 サイワがローレムでラミアを牽制している隙に、春乃が背後から超高速打撃でそれを霧散化。
「私たちには未来があるのです、だからこそ未練を残す過去とは此処で決別です!」
 カグヤが魔神・キメエリスを一刀両断した――その勇姿よ、皆の強さよ。ピエールは目を見開き、乾いた声でうめく。
「なんという力‥‥あなたがたは一体‥‥?」
「先ほど申し上げたとおり、あなたと変わらぬ、神のしもべです」
 オルフェオは背を向けたまま言うと、そのままふわりと、足を地から離した。地上はもう、大丈夫。ラティエラや翼に加勢し、この戦域から、戦いを無くすために。
「よーし、残りはゴンスケがガンガンやるよ!」
 壱子の猛柴たちがキリッと再展開するなか、涙湖が一度、地へと降りてきて。
「大丈夫かしら、ピエールさん?」
「あ、ああ‥‥あなたたちのおかげで。しかし、あの‥‥勝てるのでしょうか」
 ピエールは魔将達を見据えていた。涙湖は「もちろん」と即座にうなずいてみせた。
「一度倒した相手だしね、とっくの昔に」

●vsアバドン:華麗なのは
 蜜が必死に押さえ込むフルカスを、レイヴェンスが銃撃し、そしてゴスタのサーベルが刺し込まれる。魔神といえど、SINNが力を合わせれば、そう難もなく殲滅できる。
 その様子を、アバドンは憎々しげに見下ろしていた。
「ええい、低能どもが! あれしきのオケラ数匹も潰せないとは!」
 そう、疲弊させるにも、効率が悪い。アバドンは決意する。自ら陣頭に立って連携するしかないと。
 ところで。セルゲイは、宙に浮くアバドンを見やりながら、このあっけない展開に不可思議なものを感じていた。
「おかしいな‥‥バーチャル世界とはいえ相手は現役バリバリの頃の魔将なんだろ? いや、ベレトとかは強いっぽいけど、アバドンて‥‥もっと厄介じゃなかったか?」
「そうだな」
 ジュラルディンも感じていた。冷静に見回せば、あのアバドンが、一番大したことのない魔将のように感じられる。
 ――その理由は、歴戦のSINNならばわかるかもしれない。今回、彼らの誰も、魔結界を展開していないのだ。魔将の魔将たるその能力を、なぜ使わないのか、あるいは使えないのかは不明だが(あるいは賢者や、ルークスならばお見通しだろうか‥‥いや、ルシファーならば、というべきか)、それがために、どちらかといえば純粋なパワーゲームの戦闘が続いていた。
 アバドン単体で見てみよう。奴は自己増殖めいた能力を有していたはずだが、今回はそれを行わず、純粋に魔剣と、おのが機動力で戦いを仕掛けていたのだ。他にも優れた防御能力があるのだが、今回はそれを活かすこともなく、冴えない戦いを強いられているようだ。
 さて、そのアバドンが、急降下してきた。
「ありがたく味わうがいい!」
 その鋭い突撃を朽葉はかわせず、まともに喰らってふっとばされる。
「ぐあっ、なにか気味の悪い痛みだなこりゃ‥‥」
 地に伏した朽葉を深追いせず、アバドンは剣をクルリと回してアーサーを狙おうとして――いない。
「ここだ!」
 ヴィマーナによる転移で真上へ。そこから落下しざま、極光のグングニルを突き立てた!
「ぬぐっ‥‥虫ケラめ‥‥」
「おっと逃げるな」
 ジュラルディンのパペットたちが、その周囲から群がる。それはアバドンの退避と、他の悪魔の援護を遠ざける。
「悪いけど、このまま死んでもらう」
 歩夢もリフレクトショットEXで死角から銃弾を注ぎ続ける。それはアバドンをのけぞらせ、そして悪魔を霧散化させる。
「バカな‥‥虫ケラごときが、なぜこんな‥‥」
「そのバッタ面より、俺の鉄巨人聖面のがカッコいいからさ」
 ビートはそう言いながら、不滅の『邪悪を絶つ刃』を振り上げた。そしてそれが振り下ろされ、同時になにかのエフェクトのようにエルプティが炸裂したとき、アバドンは、アバドンだった黒き塊は、ザラザラとその身を崩壊させていった。
「あっけない最後だな、アバドン」
 ジュラルディンはその儚き姿を見ながら、そうごちた。そして、誰に言うでもなく。
「‥‥今度こそ永劫の眠りにつくがいい。記憶の残滓として、ここで繰り返し生き、死ぬ必要はない」
 そう、ここで再び滅びたにせよ。記憶というかたちでなら、彼らはある種、永久にSINNの中に存在し続けるのだから。

●vsグラシャラボラス:先を見る者たち
 戦場にて、激しい咆哮がこだまする――誰だこの凶暴な声の持ち主は。悪魔か? 否、SINNだ。
「そンなんで俺を止められるかよォ!」
 奏一朗は猟犬の如き苛烈さで怪力を発揮し――いや、エゾオオカミたる彼に、猟犬は失礼か。
「グラシャラボラス。見た目こそ違えど、その真なる心根に違いは無い‥‥悪辣非道な、悪意の塊。それを排除するため、鋭さを増した神の剣は早々に折れはしない!」
 アドリアン。その両手から発せられる咆哮は、狂犬と呼んでも失礼にはあたるまい。
「魔将とのタイマンではあっさりやられるかもしれない。でも、中級ディアボルス程度なら‥‥かかってこい、1匹でも2匹でも3匹でも!」
 ナイがコンフェシオを唱える。聖なる光弾がザガンをのけぞらせ、そこへアシェンが、ボコボコとボコ殴るのだ。
「おっやるじゃねーか。そうだエクソシストなめんなよ!」
 亜理沙もいまや、震えてなどいない。己を信じ、メギドをかまし――たらなんか馬の悪魔に蹴られたので、チクショウと下がってナイに回復薬を渡したりなんかして。
「いいペースですね。そろそろあのグラなんとかも焦ってきてるでしょう」
 蘭華は乾坤圏を投げつつ、戦局を分析していた。けしかれられた悪魔どもは、ほとんど問題なく、SINNが返り討ちにしていた。そう、魔将はいたずらに、自軍の戦力を減らすはめになっているのだ。
 そしてグラシャラボラスも、すぐにそれに気づいた。
「この者ら‥‥油断ならぬ相手ということですか」
 マントをなびかせ、颯爽と前線へ戻る魔将。そのスマートな、洗練された所作。ジョニーはそれを眺めつつ、エルプティを成就しつつ。
「やはり、俺の記憶にあるグラシャラボラスとは違うな。いけすかねぇのは共通してるが、肉弾戦より小細工つかいそうな雰囲気してやがるぜ。ま、小細工使うならそれごとぶっとばしゃあいいだけだ! 俺はいつも通り全開でいかせてもらうぜ!」
 その、大振りのパンチよ。唸る拳はしかし、グラシャラボラスがあっさりと身をひねってかわし、強烈な一閃をジョニーに叩きつけた。吹っ飛ぶジョニー。だがその身の下から這い出るかのように、加速した瑞玉が入れ替わり前に立つ!
「また貴女か、なかなかやるようですが‥‥うっ?」
 しかし。瑞玉の手数はフェイント。背後から斬りつけたのは、博信。メタスタシスでの奇襲、ヴォーロの加速、グラビィタの衝撃、そしてさらに、百八式の日本刀による妨害!
「な、何をしたのです‥‥?」
「このまま押し切らせてもらうよ」
 博信はカウンターを気にせず、やたらめったと斬りかかる。瑞玉も付かず離れずのちまちました攻撃を繰り出す。前から後ろからの高速戦闘。
「くっ、これは読み切れませんね‥‥!」
 グラシャラボラス、さばき切れず、被弾が増え続ける。思わず見上げる上方、一時撤退――いや、そこにはハーケンのガンシップや戦車のパペットが進路を塞ぐ!
 さらに。跳びかかった奏一朗が、グラシャラボラスの顔に飛び蹴りを――と、これはかわされる。
「なかなかの連携じゃないですか」
 小馬鹿にしたように、魔将は言う。だが、その声音に余裕はない。
「家には最高にイカした天使達(嫁と子)が待ッてンだ、テメェなンぞに負けるワケねェたろうがァ!」
 奏一朗は再び跳躍する。瑞玉は張り付き、博信は挑みかかり、さらにジョニーもが肉薄する。ダメ押しにハーケンが隠聖の正宗を振りぬき、さすがのグラシャラボラスもよろめいたところへ――
「腕が鈍った、なんて言わせねぇ。磨き上げたこの技、とくと見やがれ‥‥獅子奮迅の戦いっていうのは、こういうのを言うんだよ!」
 ギィのフルスイング! グラビィタの破壊力を秘めた巨大剣が、華奢なグラシャラボラスの背をぶっ叩いた。
「ぐはっ‥‥」
 うめく魔将。だが、うめいたのはこいつだけではない。ギィも、仲間も、内心ではうめいている――いったいこいつはどれだけタフなんだ? と。
「大丈夫です、そのまま押し切れます!」
 蘭華が叫んだ。そうだ、押せる。いまやグラシャラボラスは、引き際を読み違え、逃げる隙も与えられぬまま、打撃を受け続け、受け続け、そして――
「これでもかよ!」
 ジョニーの強烈すぎるフック。魔将が腰を折る。強烈な手応え、ダメージは充分なはずだ。
「ぐっ‥‥おのれっ」
 だが魔将は、その悪魔じみた先見能力を駆使し、SINNの連携の一瞬の隙をついて、上空へと飛び上がった。同時に、自身の体を透明化させる。これではそうそう追い詰めることは――
「!?」
 が、グラシャラボラスは落下を余儀なくされた。
「先を見ることは誰にでもできる。逃げるなら真上なのはわかっていた」
 ディミトリエ。メタスタシスで転移したのは、魔将のいた場所の真上。グラシャラボラスの先読みにも限度があったか、この突然の出現はかわしきれず、ぶつかり、墜落、。さらにディミトリエのクロスボウを受け、傷の蓄積も危険域に。
 そして落ちるべき場所には。
「さあ、終わりにするよ」
 博信が日本刀を握り締め、空を見上げていた。いや彼だけではない、皆が、拳を、剣を、CROSSを、パペットを携えており――こうしてグラシャラボラスは、猛烈なラッシュによりその身を崩壊させ、そしてアシェンのメギドにより、浄化されるのだった。

「まだ、先を見ていたい事があるからな」
 ディミトリエはぽつりとごちた。その場で己を燃やし尽くすだけではなく、先を見据えること――それが、あらゆる力になりうることを、33歳の彼は今さらながらに実感し、そして、それが神の愛のようなものなのか、と、柄にもなく感慨にふけるのだった。

●vsベレト:強大なるその身体よ
 グラシャラボラスがSINNの猛攻を受け、その想定外の耐久力を見せつけようとしていた、その同時刻。
「ピエールさんよ、かのケツ顎を斃した最強パラディン様が来たからにゃ大船に乗った気で見てなって♪ オラァ! かかって来いや木偶の坊!」
 隼人は、魔王をも脅かす恐るべきラッシュを、ベレトの巨体に打ち込み始めた! ――隼人がいかな阿修羅的連打が可能か、もはや語るまい。その体力、魔法、伝承神器の組み合わせが何をもたらすかは、歴戦のSINNならば報告書をご覧のはずだろうから。
 だから。もしベレトが、あのマフィアのごとき姿のベレトであったり、あるいはこの程度の大きさの魔神であるならば、あっという間にその身を打ち砕かれても不思議ではなかった、のだが。
「オラララララララ‥‥ってなんだよチクショウ!?」
 隼人は手と足と剣戟を休め、カウンターの体当たりをバク転で華麗にかわしてみせる。鮮やかで一方的なコンビネーションだったが、しかし。
「殺スウウウウ!」
 ベレトは、たしかに、その身を傷つけていた。しかし、しかし。
「あんにゃろ、やべーぞ!?」
 隼人は、手をブンブン振って、首をかしげている。なにか、急に――
「腕が鈍ってるんじゃない? 大丈夫?」
「うっせナタク、笑ってないでやってみろって!」
 ナタクはそうした。彼女も風のパラディン、そのラッシュはお手の物だし、奴が魔的な鱗を有するのもわかっていた、のだが――
「‥‥これは」
 たしかに。打撃の無効化、その頻度が、徐々に増えている気がする!
 天音も同時に、拳を叩きつけまくっていた。だがやはり、その鱗に弾かれる率が上がっていく。やむなく短剣に切り替え、斬りつけると。
「‥‥通りますね、けっこう」
「うーん、拳闘に強いのか、あるいは‥‥同じような類の攻撃に、徐々に対応する身体なのかもしれないわね」
 レティシア・モローアッチ(sa0070)だ。観察を続け、仲間の情報を分析した結果、そう推測したのだ。
「しかも、異常な体力を有してるみたいね‥‥現代の魔将も、あんなにタフだったっけ‥‥?」
 レティシアの疑問にも、誰も答える者はおるまい。神は黙して語らず。そしてルシファーは‥‥ここにはいない。
 お忘れか。今は『暗黒時代』なのだ。それはディアボルスが跋扈した、現代とは似つかぬ世界――その違いは、魔将各位の個人的スペックに留まらない。キニスの分布から、魔軍のパワーバランスに到るまで、現代とは条件が異なっているのだ。それが何を意味するか、正確に答えられる者は、現代にはもういないだろう‥‥確かなのは、あのベレトは恐ろしくタフだという、それだけなのだ。
「しかしだな。要するに皆で挑めばいいってことだろ。なら結局、やることは同じじゃないか」
 アントーニオが言った。その手には、軍刀ともバットともつかぬ、奇妙な棒が握られている。アルケミーが終わったのだ。
「そういうことなら、やらせてもらうぜ!」
 上空のカミーユが、真下に向けてテラを放った。ズゥン!
「グアアアアア!」
 ベレトはのたうち、真上に顔を向け猛毒の息を撒き散らす! カミーユはまともに浴びたが、サンウリエルの加護か、ダメージはさほどではなく、そしてその隙にアメリアが、ベレトの口に銃弾を注ぎいれた。
「やらせないっ!」
「ヒュウ、アメリアも腕を上げたな。すっかり頼もしくなったもんだぜ」
「お世辞はあとで、カミーユさんっ!」
 そんな夫婦の、空でのやりとり。それが仲間を勇気づけたか、あるいはもともと、誰も怖気づいてなどいなかったか。
「この世は確率上最悪の展開に転げ落ちてもおかしくはない‥‥でも、あのルシファー戦を生き残った私たちがこんな所で死ぬモンですか。生き残って未来をつかんでみせるわよ!」
 レティシアもぷてら軍団をけしかけた。手応えは、ある!
「ようし、これが伝家の宝刀、ってやつだ。完封してやるよ」
 そこへ駆け寄るアントーニオ、その手にあるのは、うまくいけば一撃で葬らん(ホームラン)という恐るべき武器!
「バッター、打ちました、カッキイイイン!」
 カッキイイイン‥‥魔的な鱗。ダメージ完全無効化。そしてイッパツで折れるマイバット。
「アッー凡退!」
 ドンマイドンマイ!
 で、アントーニオが死者の間で土を拾うかどうかはさておき、その間にも仲間たちが怒涛のラッシュを決めている!
「グラアアアア!」
 のたうつ尻尾が、SINNらを巻き込み、傷つける。だが撒き散らされるはずの猛毒の息は、メイリアがラファエルの加護で、愛しき風で、霧散させ防ぐ! そして皆へのサナティ!
「もうこれ以上はやらせませんー。必ず皆で無事に帰りましょうー!」
「了解です」
 天音も挑む! 隼人もナタクも再びの猛ラッシュ! たしかに、その手数の多くが弾かれるし、敵は恐るべきタフネスを誇っていた――が、それでも、蓄積させた傷が、ついにその巨大ダムを穿つ!
「オノレエエエエェェェェェ‥‥」
 のたうつベレトが、痙攣するベレトに変わり、やがて――動かぬベレト、そして、消えゆくベレトとなる。
「思えば彼ら魔将も、ルシファーに利用されただけの可哀想な魂なのかもね。だったらその無念、此処で晴らしてやろうじゃない。きっちり弔ってやろう?」
 アルベルト、万感の思いと共に、メギドを詠唱した。憐れな魔の塊は、神の手に包まれ、この世から、いや、あの世の中の記憶の残滓から、完全に姿を滅することとなった。

●vsバアル:魔将の上に立つ者
 助けに来て――ティファニーの切なる願い。だが、その時を待っている暇などなかった。
「バァァァァアァァァァルゥゥゥゥ!」
 ズバシャア。野太い落雷に貫かれ、アンリはよろける。
「プハーやばいなちょっとこいつは‥‥オリヴィエ、先に言っておく、俺がやられそうになったら――」
「わかってるよ義兄さん、死体をうっちゃって必死に逃げ延びてみせるから!」
「オウ、そいつはあんしんだ」
 軽口を叩ける程度には回復したアンリだったが(ティファニーさんありがとう)、しかし、本当にやばい。挑めば落雷が襲い、離れてもやっぱり雷を浴びせてくるのだから。
「うあああっ‥‥でも、ここで死ぬわけにはいかないんだ! 夫のナタリー君や娘の未来の為にも、いずれは双子を仕込んで貰おうと思っているボクのためにもね!」
「おいばかやめろミリーナ、それは死亡フラグびんびんだ」
 アンリの忠告もさもありなん、ミリーナはすでにぼろぼろだ。傷を癒されるなり、転移銃アクケルテを構え、そして放つ――ヒット。だがそれは、再び落雷に見舞われることを意味する。
 そしてバアルもまた、恐るべき体力を有しているように思われた。こんなペースで消耗していては、話にならない。
 だが。直後、ズドォンという凄まじい音がして、バアルが前につんのめった。
「‥‥?」
 後頭部に直撃。バアルは撃たれた頭を押さえ、振り向いた。だが、誰もいない。いやその直後、側頭部に再び銃弾が刺さった。ズドォン。
「!?」
 バアルはまだ、気づけないでいる――その先に、ダニエル・マッケランが臥していることを。

「さすがにタフだな」
 ダニエルはそうごちながらも、巨大なライフルのスコープから目を離さず、バアルの急所に狙いを定めていた。
 メタスタシスと特殊迷彩を併用して、バアルの背後を取る。その作戦は予想以上の効果をあげていた。第一に、自動反撃を受けないということ。どうやら自動カウンターには、有効距離のようなものがあるらしい。ゆえに長距離射撃は、ノーリスクでの攻撃が可能なようだ。第二に、いまだに存在を気づかれずにいること。バアルが、自身の能力を把握しているなら、今の攻撃が『よほど遠距離からのもの』であろうことは推測できるはずだ。だがこの時代、そんな攻撃手段が、まさか地面に伏せた存在からなされているとは、なかなか思考が及ばないでいるのであった。
 こうして、ダニエルが貴重なダメージと、そしてなにより時間を稼いだのだ。

「やるじゃんマッケランさん‥‥おい、なんで妙子、よりによってこんな時に弓を持ってこなかったんだよ」
 朽葉に声をかけられ、妙子はうっすらと目を見開いた。そして言った。
「だって、そんな必要なかったから」
 妙子はいまや、全ての準備を終えていた。その手にある武骨な大剣は、青白きオーラを纏い、自身もまた同じ色の炎を噴き出しており、さらには陽炎がその全身を覆っていた。
「一撃で殺す」
 妙子は飛んだ。凄まじい速度でバアルに肉薄するや、すでに振り上げていたデュランダルを、とてつもない風圧とともに叩きつけた。
「ゲコーッ!」
 カエルがひしゃげた。その身まで達した。その威力たるや。だが、宣言どおりとはいかなかった。
「本当にタフだね。でも何発耐えられるかな」
 妙子はグラビィタを成就させ、再び無慈悲な一撃を繰り出した。目にも留まらぬ一閃をバアルはまったくかわせず、まともに肩に受けて、ネコの首がどこかへ埋まった。
 たまらず、凄まじい速度で後退をするバアル。だが妙子は恐るべき浮遊速度でピッタリとついてくる。そこへダニエルの援護射撃をもろに背に受け、思い切りぐらついてしまう。すかさず襲い来る、さらなる最強の一打。
「バ‥‥ァル‥‥」
 魔将は、妙子の中に、圧倒的な実力を感じた。この人間のどこから、これほどの力が生まれるのか――魔将たる自分でも理解が及ばない、だが、ここが死に場所である、という事は、歴戦の悪魔にはもう理解できていた。
 それからしばし後。妙子がついに膝をつくとき、すでにバアルの姿も、そしてあらゆる悪魔の姿も、その場から消えているのだった。

●試練のおわり:去る者、残る者
 妙子はいまや、全身をボロボロにして横たわっていた。命に別状はないが、己の全てを出し尽くした結果だ。
「驚いたよ‥‥せいぜい二撃までには倒すつもりだったのに。あたしの剣を六発も耐えるなんて‥‥」
「そ、そうか」
 朽葉は、むしろあんたの実力に驚きだよ、と思ったが、口に出したら、なんだかバケモノ扱いみたいに聞こえてしまう気がして、やめた。
「あー腹減ったー!」
 亜理沙も、妙子の横に大の字になると、ニヤリと隼人に呼びかける。
「さすがのエロ狼も、妙子にはもうかなわねーんじゃね?」
「にゃにおう!? なんなら今度腕試しでも‥‥って、おー試練が終わるみてーだぜ」
 死者の世界が消えていく。すべてが光に包まれていく。ピエールは、何度も何度もSINNと神に感謝を述べ、我々と彼らの功績が後世まで残ることを、願い続けた。
「もちろん、それは叶いますよね。だって今から、その当事者が、後世に戻るんですから」
 ラミアがそう言い終えた直後、皆は、いつもの死者の間に戻ってきていた。

「お疲れ様。ピエールの魂は、無事に天界へと旅立てたようだよ」
 姿無き賢者の声。エティエンヌはうなずいたが、一方で、天をあおぐと。
「ということは、まだこの場に留まっている魂もあるということだね」
「残念ながら、その通り」
 賢者の声に、凪は拳をぎゅっと固める。
「ディアボルスが消滅しても未だに殉教者達は昇天できないままなのか‥‥いつか全員を昇天させたいな」
「一つでも多く、哀しい魂が浄化されますように。真に彼らが悪のもとを離れ、等しく神の御許で祝福されますように。光あれ。神の御業により幸いあれ」
 アルベルトがX字を切って、祈る。と、そこでマリクが、手からスレッドを伸ばしてみせると。
「そういや、こういう力って、今後どうなってくんでしょうね? まあ、ハンドラーのコレは、神とも悪魔とも関係ないみたいですが」
「ルークスは存在し、神の御業はそこに実在している。神の子たる人が、それを使えたとしても、別にいいのではないかな?」
 賢者はそんなふうに言う。と、そこでレティシアが、別のことを言い出す。
「『死者の間』と『姿無き賢者』‥‥いずれその存在の秘密を聴き出したいなあと思っていたけど、結婚と出産ですっかり忘れていたわねえ」
「‥‥もしかして、ピエールさんは『姿無き賢者』さんの知り合いとか、ひょっとしてご本人だったりしますかー? もしそうなら、賢者さんの無念も晴れればいいなって思いますー。誰も来ない所でひとりぼっちは寂しいでしょうからー」
 メイリアがそう語りかけると、暗い空間のどこかで、笑ったような音がした。
「私はあれほど勇気ある存在ではないよ。それに私は寂しくはない、長い刻を眠って過ごし、必要なときは‥‥こうして誰かと話していられるのだからね」
「それで、結局‥‥あなたは、何者なのです?」
 蘭華が問うた。答えは、用意されていたかのように、すぐだった。
「私は、賢者と呼ばれる存在。必要な者を、必要な場所へ導くための存在だよ。それだけが‥‥神が私に与えた、尊き使命なのだよ」

●同窓会会場:いざ、開幕
「よーし準備もこんなもんかな‥‥あ、戦いに出てた皆が帰ってきたようだね!」
 悠は、集団でやってくる足音を聞きつけたようだ。なかでも、タッタッタッと駆ける音、そして、バタン。
「ただいまー!」
 壱子だ。まっさきに悠のもとへ駆け寄り、そして抱きつく。
「イッちゃんお疲れ様! 美味しい料理用意しといたよ!」
「待ってましたー!」
「とりあえず、みんなにハグー!」
 と、こちらは歩夢だ。ヒメコや浅葱など、かたっぱしから抱きついていく姿に、あの戦いの疲れは見られない。
「愛子、今戻ったぜ」
 ジョニーも来た。愛子は「おかえりなさい」と、パペットと共に頭をさげる。
「祝勝会の準備はばっちりか? 子供が産まれるまであと少しだから、張り切りすぎて無理してたりしねぇだろうな?」
「大丈夫だよ、みんな頑張ってくれたから。ホラ、パパにおかえりなさいって」
 愛子はおなかを撫でながら、ジョニーとひとしきり話し込む。ハーケンもニアの肩に「終わったよ」と手をのせている。
「みんな元気だった? いやぁ懐かしいねぇ! イオーロの扉を皆でバーンして壊したのも、もう何年前だっけ? お寿司もピザも美味しかったよね‥‥」
 アルベルトがにへらと言えば、リーリヤもにへらと「ウォッカもありますよ」。
「おー、懐かしい顔ぶれがそろってんな。最近の調子はどんな感じだ?」
「わ、お久しぶりです! また会えて嬉しいです。お元気でしたか‥‥?」
 カミーユとアメリアも、談笑が止まらない。妙子も、あの鬼神の如き奮闘とその代償のことなどおくびにも出さず、ケロッといまどきの女の子らしく、会場をキョロキョロして朽葉の袖を引っ張ったり。
「久しぶりだね、マリア。前より頼もしくなったかも?」
 翼は、アクアフェアリーのマリナと共に、マリアに挨拶。
「ええ、おかげさまでね! 急に呼び出しちゃったけど‥‥でも、無事に終わってよかったわ!」
「まったくだ。これも、悪を根源から断つための残務処理とでもいったところか?」
 ディミトリエもそう言い、いつになく口の端を歪めると。
「さきの聖戦でお役御免を覚悟していたが、備えは無駄ではなかったようだ」
「人生、何があるかわからないってね。さあさ、盛り上がって行くよ〜」
 ナタクはそう言って、蘭華とハイタッチ。
「ヒメコさん、アンナリーナさんっ、逢いたかったー!」
 蜜は女子らと手を結んで、輪になってはしゃいでいる。そんな様子を、サイワとセイワはほっこり眺め。
「皆、元気にしているねー‥‥良かった‥‥」
「うんうん、良かった良かった!」
 と、手を結び合う。
 なんていい日だろう、と陽平は鼻の下をこする。これはこれでいいものだ、とアドリアンは肩の力を抜く。
「ごはんもたくさんあるけど、まずは疲れた体に、甘いものをどうぞ、なんだよ」
 愛子は、スイーツの並んだテーブルを指さした。氷室開き饅頭、水ようかん、わらび餅――腕によりをかけた甘味がそこにはあった。
「キターッ! 戦いの後はお腹も空くよねっ! 食べて食べて食べまくるぞー!」
 壱子が駆け寄ると、僕と私もと白夜と亜理沙が群がり。
「無くなる前に全種類食べておかないとね!」
「って白夜は準備係だったんだろ!? どーせツマミ食いしてたくせに!」
「いやそんなこと、半分くらいしかできてないよ!?」
 といった美しいやりとりのさなか、アリスがズドーンと、不思議な香りのする鍋を運んできて。
「はーい、ソテーを作ってみたわ☆」
「いや明らかにソテーではないよ!?」
 スウソは思わずジャンピング退避。
「働いた後の飯はタダ飯の次に美味い、そしてタダ飯より結果的に安いってのがいいとこだよな‥‥というわけでほれ、オリヴィエも好き嫌いしてないでひたすら食え、なんでも食わないとでかくなれないぞ?」
 アンリは、その不思議な鍋風ソテー(?)を、ビッグスプーンですくって、オリヴィエに近づける。
「いやいや義兄さんもまだまだ成長期だから、遠慮なくさ!」
「俺よりオリヴィエが――」
「先に義兄さんが――」
「あーん髪を盛ったりドレスを着てたら出遅れたのよー」
 と、そこへ駆け込んできたのは、クローディアだ。
「で、どのタダ飯が余ってるのかしら――」
「「どうぞどうぞ!」」
 アンリとオリヴィエ、同時にソテー鍋(あるいは鍋ソテー)をクローディアの口に押し込んだ。
「むほっ、熱っつ! 熱っつ、からの‥‥苦すっぱー!」
 クローディア、悶絶!
「そうかな。けっこう美味しい、けど」
 しかし、腹ペコはやなは、とくに問題もなくその鍋ソテー(ないしはソテー鍋)をガツガツいくのだった。

「よーし、今夜は朝まで飲むわよー! ひゃっはー!」
 ティファニー、キャンティ・クラッシコをどっかとテーブルに置いて、喚声をあげる。
「おい、開ける前から瓶を割るなよ」
 アントーニオの忠告を聞きもせず、ティファニーは超速でコルクをこじ開けた。
「よーしどんどん飲もうぜ」
 ゴスタも、レイヴェンスと蜜にドバーッとワインを注ぐや、両手にボトルを構えてあちこち注ぎ攻勢へ。
「おう、お疲れさんゴスタ‥‥お、これはうまっ! やっぱすげーなオズウェル!」
 レイヴェンスは魚の蒸し物をかじるや、オズウェルの背中をバンバン叩いて賞賛。
「料理はまだまだあるぞ。無くなるそばから補充してやる。この1年で俺が学んだ各国の料理の数々を、みんなにふるまうことにしよう!」
 叶望は不自然にカッコいいポーズで宣言するや、厨房へ戻っていった。
「ん、どんどん運ぶわよ!」
 マユリもパペット軍団を繰り出し給仕に尽くす。セイディもせかせか運び、ルナールもエイコラ運び、アンナリーナもモグモグ溜め込み――
「ってつまみ食いで食い尽くすのやめろや!?」
 ルナールがアンナリーナの両ほっぺをムギュッと掴むと、ブホォ、となにか飛び出してルナールの顔を染め上げた。

●同窓会会場:今の、わたし
「ところでみなさん、この1年はどうしてましたかー?」
 メイリアのそんな一言が、話し出すきっかけとなった。そして、なんだかエラそうに腕を組んだ白夜が、その先陣を切り始めた。
「ふふ、この一年何をしてたかって? 一時期はね? ちゃんと仕事をしようと思ってたんだ。でもね、途中で信念を曲げていいのか‥‥いいや、よくない! 働いたら敗けだ! ってことで今流行りの投資で一儲けしようとしたんだ。途中までは良かったんだけど‥‥調子にのって全財産溶かしちゃった♪」
 てへぺろっ。そんな姿を見て、アントーニオはひたいを押さえる。
「完全な死亡フラグだぞそれ‥‥まあ人のことは言えないか、俺も投手から投資家に転身して、なんとかやってたものの、イギリスのアレ関係でダメージが‥‥」
「ったくもう。あ、私はね、支部でしていたネットショップ事業を本業にしたのよ。社長さんよ社長さん。やっぱ堅実に稼がないとね」
 どやぁ、と胸を張ったのはティファニーだ。白夜は「それだ!」と目を輝かせ。
「なにそれ、1日1時間のネット作業で誰でも月収100万円みたいな!?」
「まったくちがいます」
 ティファニーは、ダメだこの子は、と説明を諦めた(なおプライベートでの金遣いに関してはティファニーもゲフン)。
「どんな店も、軌道に乗るまでは容易ではないのだが‥‥」
 と、真面目に話を継いだのは、累で。
「俺もなんとか、京都‥‥日本の古都の路地裏にある、職人達の集まる町屋長屋界隈で奮闘しているところだ。自作の和の布小物を扱う店で、ありがたいことに、徐々に軌道に乗ってきたようだ。ちなみにそのコースターは俺が用意したものだ」
「えっホント!? すごいすごい!」
 壱子は、なにげなく置いていたジュースグラスを持ち上げ、しげしげと眺めている。
「あっいちこさんも頑張ってるよ、くりえいたぁ、ってやつでね!」
 どやぁ、と胸を張ってから。
「大学も卒業してね、いきなりフリーのイラストレーター兼造形作家を目指してみたんだけど、ちょっとずつ仕事も入ってきたというか‥‥柴犬をモチーフにした作品は、しばわんマニアに大人気になり、つつ、ある、ぽい!」
 そう言ってふところから、しばわんのフェルト人形を取り出――したつもりが、なんだかクマーな毛皮を着たマイダーリンの人形を取り出しちゃったので、あわててしまいこむ。
「喜ばしいことだな。ちなみに自分は、特段の変化はない」
 ジュラルディンはそう言ったが、それはつまり、ぬいぐるみやカバンのオーダーメイド業が、相変わらず堅調ということだ。
「私も看護学校を無事卒業して、そのまま看護の仕事をしています。大変で忙しいですが、とても充実しています」
 天音はきりりとそう述べたが、チラ、と白夜を見るや、その瞳がへろへろと揺らめいた――ああ、姉さんの事さえ除けば充実ですとも、と。
「ボクはまだ大学なんだけど、通いながらお姉ちゃんの会社でバイトもやってるんだー。コンピューターの扱い得意だから経理まとめたり、車の腕を活かしてお姉ちゃんの送迎したりとか色々やってるよ♪」
 悠はそう言うと、マリアとアリアに向き直り。
「そういや二人はこの一年どんな感じだったのかな? マリアちゃんとか特に忙しそうなイメージがあるけど無茶して体壊したりしてない?」
「うーん、たしかに毎日大変だけど、体は元気ハツラツよ! どっちかというとエンリコさんが疲れてるかも‥‥」
 マリアのぼやきに、「あー‥‥」とうなずくオルフェオ。さておき。
「私は本当に、いつにない充実した1年でした。みなさんも元気でしたか? 浅葱様は?」
 アリアに話を向けられ、浅葱は「元気にしてるよ」とうなずきつつ。
「最近は日本にあんまり入ってきてない海外の歌曲をまとめたりとかもしてるねぇ‥‥日本以外にも行ってるしねぇ。おかげですっかり、聖戦機関からは離れてるよ」
「私もあちこち出張ってますわ♪」
 とは瑞玉だ。夫と諸国漫遊しつつなにやらアヤしい活動をしてるらしいことをほのめかすと、マリアとアリアに「おひさしハグですわ♪」と抱きつきつつしっかり胸を揉むのは忘れない大丈夫これは浮気ではない。
「ん、あたしも慈善事業であちこち飛び回ってるわよ。パペット劇やってるんだもの。どんなのかっていうと、んんー‥‥Japanのサルマワシ? そんな感じ」
 言うなり、マエダが『反省』のポーズをし、マリアを笑わせる。
「あとは、パペットの有効活用や魔法の実用化の研究をしてるわ‥‥ん♪ ナカノ、パソコン持ってきてくれたのね。ん、こんな感じよ」
 マユリは論文発表用のスライドを皆に見せる――だがその途中で、マエダが誤クリックしてしまい。
「パペット使っての慈善事業も、この研究の一貫ね‥‥って、んっんー!」
 なにやら精悍な男の顔が画面に出たので、マユリはあわててパソコンを抱きかかえ。
「これは気のせい、目の錯覚、超常現象、オニノカクランってやつよ!」
 ――その、オニノカクラン氏も、知る者にとっては懐かしい顔であった。
「ふふふ、なんだか面白いものを見てしまいましたね‥‥え、私ですか? この1年は、祖国ロシアがめちゃめちゃにされてしまったので頑張っていましたよ。ええ、つまり良い事をしていたわけです、とても良い事ですよ」
 リーリヤは、何万本めかのウォッカを空けながら、ニヤニヤと肩をすくめる。おいおい、とアントーニオは水のグラスを渡してやりつつ、マリアに向き直り。
「で、なにかやりたい事は見つかったかい、機関長さん?」
「そうね‥‥みんなの話を聞いてたら‥‥恋がしたくなったわね!」
「そんな事言うとまたエンリコ様が胃を押さえますよ」
 アリアは冷静にツッコみ、ラミアはくすくすと笑う。
「でもたしかに、おめでたい話が多いですよね。私はいまもルークス市国に勤めてるので、ハーケン兄さん夫婦やアシェン夫婦、レティシア義姉さん夫婦に限らず、いろんな話が入ってきます」
 ラミアは、親族の近況や言付けを済ませると、ちらりと龍馬に向き直った。
「ん、俺か。俺は今は遊覧飛行のパイロットの職に就いた‥‥まったく、平和になったおかげだな」
「ええ、平和になりましたが‥‥なぜかまだチャンピオンはやめられません。まあ、娘のアイナも生まれましたし、割と幸せなんですけど」
 ナイは照れくさそうに頭をかき、そしてアシェンは遠慮なく娘の写真をアチラコチラに見せつけていた。
「そうそう、悪魔がいようがいるまいが、あたしは相も変わらず総合スポーツセンターで、マルチ・スポーツ・インストラクター稼業ってね」
 ナタクはえっへんと胸を張り、そうだと思ってたわ、とはレティシアの言。
「変わらぬ日常が一番ってやつですよ、ええ」
 マリクはのんびりとからあげを頬張る。エティエンヌはそれを眺め、微笑みながら。
「マリクさんとは3月に会って以来だから‥‥それほど『久しぶり』でも無いかな?」
「ですかねえ。で、例のゲンゾクのほうは?」
「還俗ならまだ、引き継ぎや後始末に手を付けたばかりでね。まあ数年後のつもりだから、のんびりやるよ」
「まーエクソシストも暇になっちゃったもんねー」
 と、割り込んだのはアルベルトで。
「自分はヨーロッパの国々を回って巡回神父しつつ、悪魔の痕跡とか残ってないか確かめてたりしたんだけど、まーそっちのほうはサッパリだよね」
「そうだな。私もそういった任務は積極的にやってみたが、空振りに終わってばかりだった」
 こちらはラティエラで、遠い目をして、続ける。
「今では、秘跡機関らしい仕事といえば、伝統的な典礼への参加くらいかもしれないな。あとはもう、自分が育った孤児院で子ども達を教えるほうが主流になっている」
「おかげさまで、残党狩りなんて名目で世界旅行を楽しませてもらってるようなもんだ」
 アンリがそう言う横で、オリヴィエもうんうんとうなずき。
「でも義兄さん、吸血鬼狩りと称しながらヒッチハイクで移動するのは、もうウンザリなんだけど」
「安心しろ我が弟よ、この調子で旅を続ければやがて森が宿となり、吸血鬼狩りがウサギ狩りや魚釣りとなるのだ、資金的にな」
「ウサギじゃなくてキツネを狩りなさいよ」
 とはアリスのツッコミだがさておき。
「私も夫と冒険の旅中だよ! 仲良くやっているよー! だって、ヒーローとヒロインなんだから!」
 スウソがにこやかにそう言うと、「ヒーロー?」と耳を広げたのはアーサーで。
「ヒーローといえば俺‥‥おっとなんでもなかった、俺は大真面目に、ちゃんとボケながら聖職者やってんだから」
「大真面目にボケるなよ」
 ビートがビシィとツッコむ。アーサーは口笛を吹くと。
「アーサーがボケないと世界が亡ぶという都市伝説があるから仕方ない。そういや最近、謎のヒーロー、タリスマンブレードが子供相手にヒーローショー時々やってるらしいよ。チャリティの一環らしいけど、正体誰だろうな‥‥」
「そんな怪しいヤツは今度地下牢にしょっぴいてやるぜ‥‥ん、俺か? 俺は聖職のパラディンとして相変わらずの日々なんだよな。変わらない俺、最高」
 ビートがポージングすると、歩夢も負けじとナイスポーズを決めて。
「はいはーい、私も可愛い奥さんやりながらパラディン続けてるよー!」
「そんなツッコミ必至のセリフを次々と繰り出さないでください、せっかくエロ神父もいなくて休めると思ってましたのに」
 オルフェオはやれやれと首を振ると。
「かくいう僕も、相変わらずのパラディン稼業です。生活も変わっておりませんし‥‥ですのにわざわざ召還状なんて送られて参りましたのでエンリコさんとなにかを厳選する試練ですとかなにかそういう恐ろしい想像をしてしまいましたね」
「お前も完全にボケ役じゃねーか」
 ビートはオルフェオの左の膝を、歩夢は右の膝をカックンさせた。左の膝をカックンされたら右の膝も差し出すべし、聖書にもそう書かれている。
「私もパラディンとして、魔を断つ刀として、異端の残党狩りをしてきましたが、やはりみなさんの言う通り、大きな戦いはなかったですね‥‥あ、でも大事件はありました、何しろこの前唐突にある人から結婚を前提に告白を受けましたからね」
 カグヤはそう言って、ポッと赤面。
「いいねー、若い人は恋に戦いに熱心で。おじさんはもう34だしねー、もうしばらくしたら、今度こそ完全に引退かなー。若い皆に任せてれば大丈夫でしょー。あ、カフェの店長は今後も頑張るよー?」
 博信がそう言ってカグヤの肩を叩くと、カグヤは「ありがとうございます!」と言いつつも。
「‥‥でも私、30歳ですよ?」
「えっ、驚きだなそれは」
「というか博信さんがまだ34歳だったってののほうが私には驚きで‥‥」
「そ、それは禁句」

 同時刻、ちょいと離れた場所で、奇しくもセイディが。
「よかった、ヒメコさんも陽平さんもお元気そうで‥‥え、私ですか? その‥‥」
 頬を赤らめ、言いよどみ――そして。
「その、恋人と先日婚約致しまして、それで家事の練習などを‥‥」
「わあ、花嫁修業なのですね!」
 ヒメコがぱちぱちと手を叩く。
「じ、実は私も少々」
 ラティエラも、セイディと同じく頬を赤らめたが――しかしセイディ、今度は別のことで、顔を曇らせる。
「あとは兄の見舞いですね‥‥兄が収容所から出て、普通の暮らしが出来るようになればいいのですけど。元クドラクが完全に自由になる日はいつでしょうか‥‥」
「お兄さん、そうなんだっけ‥‥あ、あたしも、兄さんたちとはその‥‥結婚に関していろいろ相談というか、説得というか」
 今度は蜜が赤面した。
「今、大学二回生なんだけど、レイヴェンスさんと将来どちらかの国で一緒に暮らすことを考えて、パスポートの取得方法や、留学もした方がいいのかと調べたり‥‥」
「ああ、日本かイギリスか‥‥仕事も考えないとな。今までもメール中心だったしな‥‥こうして久々に会えて、俺‥‥」
 レイヴェンスは無意識に蜜の肩を抱いて、ふと、周りに気づいて、慌てて離れた。
「あらあらお熱いこと♪ みなさまもっと大胆になればよろしいのに」
「よし、変な酒でも仕込むか」
 瑞玉と亜理沙の悪だくみはセルゲイが事前に防いだが、それはそれとして。
「兄達から話は聞かされてるよ‥‥大変そうだな」
 累は蜜にそう声をかけた。蜜の兄とは幼馴染なのだが、妹の話を聞かされすぎて正直うんざりしてたのは内緒。
「へー、二回生で、そんな結婚とか異国へ引越しとか‥‥大変ッスねー」
 陽平はそう言いながらも、あれ、ひょっとして自分もそのうちそんな苦労を味わうのかも? と思ったりなんかしたがそれはワキへ押しやって。
「俺はこの春から、やっと大学一年生スよ。入学以降、アパートで一人暮らしだし、新生活いろいろ大変だなーって思ってたけど‥‥蜜さんにはかなわないッスね」
「ふふ、二年目には余裕もできるかも?」
 蜜はそう励ます。
「そういえば陽平、誕生日プレゼントありがとうなのです」
 ヒメコがあらためてそう言うと、陽平は「ども」と自身の首を掴んで。
「で、どうスかヒメコさんは?」
「故郷のカプリ島で頑張ってますよ。観光案内や、ご近所さんのお手伝いや‥‥聖戦機関のお仕事もやってますけど、最近めっきり依頼がないので、おばあちゃんに日本語と料理を習ってるのです」
「おっ料理! 食べてみたいッスねー」
「料理‥‥そうだ、今度陽平のお家に遊びに行きたいのです! そしてお料理を作るのです!」
「ええっ!? ジョ、ジョシが来るならちょっと掃除とか、その‥‥」
 陽平がわたわたしたので、ヒメコも、あっなんか思い切ったこと言っちゃったかなと慌てたり――そんな様子を、妙子はにやりと眺めると。
「うちならいつでも遊びにきていいよ? あ、あたしも今年から大学生なんだ。弓道の推薦でね。聖戦機関さまさまだね」
「俺は蜜と同じで二回生。地理学専攻。ま、ほとんどカメラいじってるけどな。妙子も今度一緒に行くか?」
 朽葉がカメラ片手にそう言う。妙子は彼にカメラを教わって以来、けっこうハマってるのだそうだ。
「いいよ、何撮る?」
「おやっ妙子ちゃんのヌードかなあ?」
 白夜がズザーと潜り込んできたので、朽葉は真っ赤になって「バッカ野郎!」と追い散らす。
「うふふ、若いっていいわねえ‥‥ま、かくいう私も、今は二回生なのだけど。日本に帰って、医大に入り直したのよ」
 涙湖がそう語ると、セルゲイも続けて。
「俺もまだ大学。残って研究を続けてるよ。SINN時代の給料とバイトでなんとか食っていけてるけど、いつかは研究で食っていきてーわ‥‥」
「夢なんか見ないほうがいいですよ。俺も日本の大学院で、AI制御の自律トイドールの研究をしてますが、研究費が渋いんで、早期終了して、さっさと欧州企業に就職しちまうか、迷ってますし」
 マリクがぼやくと、セルゲイは「せちがれーなあ‥‥」と天をあおいだ。
「みんな、頭よさそう。はやなはまだ、じょしこーせー。テストは点数いいし、友達いっぱいだけど、なんでか『ふしぎちゃん』って呼ばれてるの」
 なんでだろう? と首をかしげるはやなに、「たしかに謎ね‥‥点数高いのは」とはレティシアの弁。
「みんないろいろ頑張ってるんだねー。ボクなんか単なる主婦だよ。もちろん満足はしてるけど」
 ミリーナが恥ずかしげに言うと、「それが一番勝ち組すよ」と春乃がぼやいたり。
「俺達も普通の夫婦ってとこか」
「ええ、ほぼいつも通りですね」
 こちらはカミーユとアメリア夫妻。
「組織のカジノでディーラーや用心棒みたいなことしてたりっつー感じだよな」
「そうですね‥‥私もディーラーの腕が上がりましたし、カミーユさんのお手伝いをしたり、妙な客がきたときのために射撃の腕をあげたりとかしたり‥‥」
「それ思いっきりフツーじゃないだろ!?」
 凪がツッコむと、皆もそうだそうだとうなずいた。
「ま、そっちはともかく、アメリアとの新婚生活満喫中ってのが報告かな」
「し、新婚‥‥まぁ、そうですね‥‥」
 カミーユの報告に、顔を赤らめるアメリア。
「こいつもすっかり気が強くなったもんでな、昔のおどおどした頃とはだいぶ変わったもんだぜ。最近は俺の方が尻に敷かれてる気がするときもあるからな。あるいは俺の方が丸くなったっていうか」
「別に尻に敷いてませんよ! そりゃ昔と比べたらだいぶ‥‥ちょっとは、変わりましたけど! ‥‥きっと!」
「ふうむ、たしかにタフになったように見えるな」
 ダニエルの言葉に、アメリアは「そうですか‥‥?」と、ちょっと嬉しそうにした。
「私もごくごく普通ね。子育てと、あと研究と‥‥」
 レティシアはそう報告したが、蘭華いわく「その研究内容は決してごくごく普通ではない」とのこと。
「子育てかー。うふふ、私もこの子を産んだらそうなるのね。今は2人暮らしを満喫してるけど、すぐに3人暮らしを楽しめるのね☆ よーしお料理の修業がんばっちゃうんだから!」
 アリスはそう宣言し、ぜひとも上手になってほしい、とオズウェルは切に願った。
「いいじゃん、気合入れろよなオズウェル!」
「あ、はいゴスタさん‥‥きき、気合‥‥」
 拳を握り締めてプルプルしてみたが、レイヴェンスの目には、追い詰められた小動物のようにも見えてしまった。
「俺も、夫婦でいつも通り‥‥っていうやつかな。愛子の店を夫婦一緒に回して、最近は調理も腕が上がったぜ。休日にはストリートファイトもやったりな」
 ジョニーがそう言うと、「それはジョニーさんらしいですねえ」とナイも苦笑。
「結婚してもう1年になるんだね。あ、赤ちゃんを宿してからは、もう七ヶ月になるんだよっ。二人目の子供が楽しみだなあ‥‥」
 愛子がはそう言ってジョニーに寄り添う。
「えっ‥‥もう二人目‥‥? どうやったの‥‥?」
「違うよ珠里ちゃん、一人目は養子だってば!」
 愛子と珠里のやりとりに、メイリアはくすくす笑うと、頬を幸せそうに染めつつ。
「私もとっても幸せな新婚生活を送ってますー。私の大学もありますから子供はまだですけど、そのうち、作りたいなって‥‥」
「おやおや大胆発言ですねえ」
「そ、そういう意味じゃないですよ蘭華さんー!」
「いえいえ、夫婦なら自然な営み(意味深)ですから☆ しかし、かくいう私も必死に営みまくってるんですが、なかなか子供に恵まれませんねえ。夫はあの通り、触っただけで妊娠しかねない絶倫狼なのですが‥‥まさかどこかで子種を浪費しまくってるのでは‥‥?」
「さっきから問題発言&冤罪でしばくのやめてぇ!?」
 隼人は蘭華のムチをバシバシとケツに受けていた。愛だよー。
「アハハハハ、子供はできたらできたで大変だけどねー。僕なんか男女の双子ができちゃってねー。ミアとミストっていうんだけど」
 ニアは、今は預けているらしい2人の子供の画像を皆に見せる。ハーケンはその様子を見守りながら、しかし、と腕を組み。
「大変なのはそれだけじゃないんだ、これがな。イタリアで小さいホテルを始めたんでそっちも大変だし、そのうえこの年で祖父になりそうというね‥‥結婚した義娘の一人に子供が出来てなー、これが」
「なんだそりゃ? ガキと孫がほぼ同時たァね」
 奏一朗は肩をすくめて感心する。と、凪がおずおずと。
「あー、その話なら俺からしよう。とりあえず俺は、今は高校で教師をやっている。生徒たちの相手はある意味ディアボルスを相手にするより大変だが毎日充実していて‥‥ん、本題だが。セイワと結婚したのは知っている者もいるだろうしそれからの話も知っている者もいるだろうから省くが‥‥セイワが俺の子を妊娠中だ」
「わー、おめでとー‥‥って、子供!? え!? だってさっきまで戦ってたし‥‥!?」
 スウソは愕然とセイワを見た。サイワは「もちろん知ってた」というふうにうなずくと。
「だって、止めたけど、止まらないんだよ」
「あの、妊娠していたのに戦いに出た事はごめんなさい‥‥ちなみに私たち姉妹は、医学系の大学へ通っています。今は私だけ休んでるけど」
 セイワがそう言うと、「休むべきは戦いのほうだろ!?」と、東雲 燎(se4102)がツッコんだり。
「まーまー、結果オーライということで☆ めでたい席で細かいことは気にしない!」
 ニアは手をパンと叩いて話を打ち切る。スウソは最後に「凪兄、泣かしちゃ駄目だよ!」とだけ念を押してやった。
「久々、だけど‥‥おめでたの、話も、多くて‥‥なんだか、聞いてるだけで、幸せになるよ‥‥また、会えて、良かった‥‥あ、あたしもね、実はその、おめでた‥‥というか、もう、産まれて‥‥」
 珠里がうつむいてそう言うと、翼は「マジで!?」と飛び上がる。
「えったしか、大学で獣医を目指してたって聞いてたけど‥‥いつの間に!?」
「うん、先日‥‥伊勢に‥‥」
「って犬にだった!?」
「ハッ、犬にとってはオオゴトだったろーよ。キツネとリスにとっても大騒ぎだもんなァ」
 ルナールはニヒルに肩をすくめた――が、その表情は、冷笑的というより、すっかりこなれた、優しいもので。
「みんなお祝いありがとさん。オイラも祝福しといてやるよ‥‥って、ちょいと照れくさいね。あーあ、色々必要になってくンだろーし、仕事も頑張んねェとなァ」
「ふふ、めっちゃニヤニヤしてるよ、ルナールったら」
 アンナリーナがそう言って見上げてきた。ルナールは、もはや否定する気にもならず、そんなふうに丸くなった自分を、素直に受け入れていた。
「人生、いろいろだねェ」
「ふふふ、結婚ていいものなのねー」
 クローディアも、相次ぐ幸せの波に、自分まで幸せそうで。
「私はケコンとかまだだけど、その恩恵は受けてるのよー」
「えっ‥‥どういう意味です?」
 天音の問いに、クローディアは。
「いま私は、おねーちゃんが支部でやってたネットショップ事業を本業にすべく、お手伝いに入っているのよー。バイヤーのお勉強をしながら、各国を学んで色々な品物に触れて勉強しているところなのよー。って、それはいいんだけど、おねーちゃんが結婚して別生計になった分、家計に余裕が出たのよー‥‥おにーちゃん頑張れ‥‥まじ頑張れ‥‥」
「は、はあ‥‥」
 天音が首をかしげる先で、アントーニオが「また無断で高い酒買いやがって」とティファニーに頭をかかえていた。
「でも、ついついご飯を目の前にすると、がっついてしまうのはかわらないのよー‥‥よし、これ残ったら持って帰ろう」
 クローディアがタッパーを取り出すと、白夜が「僕もー!」と飛んできたので天音も頭をかかえた。
「ちょっと全部取らないでくださいよまだ食い溜め‥‥もとい食ってるんすから」
 春乃も食事ペースを速めた。なぜなら。
「こっちもコンビニバイトだけが収入源すからね。プロのバイオリン奏者への道は遠いっす、でも以前よりはいい旋律を出せるようになったんすよ」
「たしかに、以前よりいい表情してるもんねえ」
 浅葱は、春乃のとげとげしさが消えたのに気づいていた。それはきっと、演奏にも影響しているだろう。
「悪魔が居なくなったら、なんかいろんな雑念が消えて‥‥あとはそう、うまいもんをたらふく食えばよくなりますかね」
 春乃はもぐもぐしながら言った。
「バイオリンのプロかあ、いいねえ! 振り返ってみるとSINNの皆ってほんと多芸な人多かったよねぇ‥‥ボクも戦いの中で色々役立つスキル身についたし、卒業したらF1レーサー目指してみたいなーなんて思ってるんだ。やっぱり乗り物運転するの楽しいもんね!」
 悠も、自身の夢へアクセルを踏み込む。
「平和になると、創作行為もはかどるってわけね。そういえば貴方も、ずいぶん丸くなったようだけど」
 涙湖はアドリアンに問いかけた。
「そんな風に見えますか? 久々にひと暴れできてすっきりしたせいかもしれませんね」
「いえ、そうじゃないわね。以前なら、どんなに暴れても満ち足りない顔をしていたもの」
「‥‥否定はしませんよ。あの戦いから1年以上。祖国ロシアの再建と、市国への報告の行き来で忙しい日々を送っていましたが、それも、やっているうちに、なんと言いますかね‥‥」
 アドリアンは、言葉を探せないでいた。芽生えたなにかは、これまでの人生にはなかったものだから。
「その感覚、わからんでもないな。そうした活動のほうが、無駄なことをしていない気がするんだ」
 龍馬もそういった。彼もまた、戦闘のために磨いたものを、平和の中で活かす者となっていた――と、そこへ叶望が、料理を終えてのんびりしにきた。
「どうやら喜んでもらえたようだな。お持ち帰りが必要ならあとでもう一度仕込むとしよう。ああそうだ、俺の話だが」
 叶望はきりりと眼鏡を押し上げると。
「学校を卒業したあと日本に帰って、父が神父を務める教会で助祭をしている。その傍ら、今までメモってきた料理のレシピを1冊の本にする作業をしている」
「おやおや、予想通りといいますかなんといいますか」
 リーリヤはそう言ったが、続く言葉にはウォッカを吹いた。
「あと、もうすぐ結婚をする予定だ」
「ブッ‥‥もう、これは飲まずにはいられませんね、ええ」
「もう、倒れても知らないわよ?」
 マリアは苦笑する。と、そこへギィがやってきて。
「よおマリア! 俺はあれから思うところあって、世界放浪の旅してたんだが、他ならぬマリアの頼みとあって馳せ参じたぜ!」
「あら、ありがとう!」
「いやー馴染みの顔に会うのは、本当に楽しいもんだ。マリアはもう、俺の手の届かないとこにいっちまったからな」
「そ、そんな事はないわよ?」
「そうかい? じゃあそういう事にしといてもらうか! 何か困ったことがあったら、いつでも呼んでくれ。俺はお前の騎士だからな‥‥って、うお?」
 ギィの視線の先に、隼人が突如出現した。そしてウォルンを成就すると。
「さーマリアにアリア、成長を確かめてやるから、2人まとめてクロスアウッ‥‥」
「テメェ隼人ォ!」
 ギィは拳を隼人の顔に打ちつけ――いや!
「ふはははは残像だ! って誰だぁ!?」
 転移した先で羽交い絞めにされた! ダニエルだ!
「俺か? 幻影だ。ともかく観念するんだな」
「にゃにおぅマッケランのくせしやがって! タイマンで俺に勝てるとでも――」
「衛兵さんこちらです」
 オルフェオだ。実に手際よく、衛兵A〜Zを召喚していたらしい。
「「「今宵の地下牢は血に飢えているぞ!!」」」
 声を揃えた衛兵たちが、ズドドドドと隼人に迫る! 逃げる隼人! 追う衛兵!
「‥‥やれやれ、いつもの、懐かしい光景ってやつですかね」
 マリクは自分の食べ物を確保すると、そそくさと壁に張り付いて、よくある騒動を閲覧するのだった。

●同窓会会場:予定どおり、ぐでぐで
 懐かしい顔同士、宴は大いに盛り上がり――やがて、旅立ちの刻がくる。
 はしゃぎあうアンナリーナとセイディとヒメコとオズウェルと――肩を組むゴスタとビートとレイヴェンスとアーサーと――パイを投げまくるアンリとオリヴィエと、それを喰らってガンギレする奏一朗などとも、もうお別れの刻だ。
「ヒメコさん‥‥料理、楽しみにしてるッス。部屋、かたしとくんで」
 陽平の言葉に、ヒメコはこくりとうなずく――この、純粋などきどきとわくわく。陽平は、平和っていいな、と噛み締める。
「さて、そろそろ時間だけどよ‥‥なんだろ。やばいなほんと‥‥こうやって久々に蜜に会えんの、嬉しくて‥‥少しだけ、いいか?」
 レイヴェンスは、思い切り顔を赤くしながら、えいやっと蜜を抱き寄せる。
「わー‥‥」
「こうやって顔見れると、やっぱ嬉しい。会いたかった‥‥蜜。いつでも、何処にいても。蜜のこと、愛してるよ」
「う、うん‥‥あたしも‥‥」

「んー、まだまだ見飽きないわね」
 マユリは辺りを見回す。クローディアと壱子と白夜は最後の聖戦にいそしんでいるし(余り物の奪い合い)、他にも、酔いつぶれたりべろべろな仲間がちらほらと。
「だから飲みすぎないように言ったのに」
 エティエンヌがにっこり微笑むは、へたりこんだマリクで(こんなに酔わせてどうするんですか‥‥とか言ってるぽい)。
「ほらほら珠里さん、もっと飲みましょうよ。もうお酒が飲めるんですし、このウォッカはスッキリ飲みやすくて――」
「あの、リーリヤさん‥‥も、もうお開きだから‥‥あとそれ、あたしじゃなくて伊勢‥‥」
 とまあ、そんなカンジで、朽葉も撮影対象があられもなくなり始めてるので、とりあえずカメラをしまう。
「ちゃんとした集合写真、先に撮っとけばよかったなあ。あ、マリア、現像したら送るんで、みんなに配ってもらえるか?」
「わかったわ。よろしくね」
「ほらティフ、帰るぞ」
 アントーニオはティファニーをおぶさる。ティファニーはサナティの余地なく潰れている。あの試練と、そして同窓会の激闘とで、もはや皆のメモリーは尽きているのだ。
「むにゃ‥‥あーたはタフねえ‥‥」
「飲んでなかっただけだ、介護役なんでな。なに、ホテルに君を届けたら、どっかのアフロと男の隠れ家的バーにでもいって飲み直すさ」
 その店にはたまたま、メイリアと、その騎士(ナイト)もいたりするのだがそれはさておき。
「よーし、残りの片付けはテスラ軍団に任せて、はいはい、解散解散、また来週☆」
 ニアがそう手を叩くと、セイディは「来年では‥‥?」と首をかしげ、はやなは「来月くらいがいい」と言ったが、どうなるかは我らが神の御心次第、あるいはマリアやエンリコの気分次第かもしれない。

MVP
狼牙 隼人 (sa8584
♂ 人間 パラディン 風
酒匂 博信 (sh4156
♂ 人間 パラディン 地
鷹羽 歩夢 (sj1664
♀ 人間 パラディン 水
鷺沼 妙子 (sp1602
♀ 人間 パラディン 地
オルフェオ・エゼキエーレ (si1323
♂ 人間 パラディン 地

参加者一覧
志島 陽平(sa0038)K地 レティシア・モローアッチ(sa0070)H水 アルベルト・ルードヴィッヒ(sa0074)E火 クローディア・エヴァーツ(sa0076)E水
ミリーナ・フェリーニ(sa0081)P火 栄相 サイワ(sa0543)E地 栄相 セイワ(sa0577)A風 ティファニー・エヴァーツ(sa1133)A水
ニア・ルーラ(sa1439)H水 月島 悠(sa1735)H水 メイリア・フォーサイス(sa1823)A風 ジョニー・ジョーンズ(sa2517)P火
ナタク・ルシフェラーゼ(sa2677)P風 アーサー・ラヴレス(sa4830)P火 柴神 壱子(sa5546)H風 アントーニオ・インザーギ(sa5938)H風
狼牙 隼人(sa8584)P風 須経 蘭華(sb0118)E地 ナイ・ルーラ(sb0124)E地 皆本 愛子(sb0512)H地
琴宮 涙湖(sb1982)A火 神代 翼(sb3007)A風 三輪山 珠里(sb3536)A風 東雲 凪(sb4946)P風
アドリアン・メルクーシン(sb5618)P火 霧生 亜理沙(sb6207)E風 ラティエラ・テンタシオン(sb6570)A地 ディミトリエ・シルヴェストリ(sb9264)P風
ハーケン・カイザー(sc1052)H風 セルゲイ・クルーツィス(sc4350)A風 郡上 浅葱(sd2624)A風 媛 瑞玉(sd3404)P風
鷹羽 叶望(sd3665)E地 アシェン・カイザー(sd3874)E火 東雲 燎(se4102)H火 カミーユ・ランベール(sf0920)A地
ビート・バイン(sf5101)P火 望月 白夜(sf5133)H風 望月 天音(sf6090)P水 ギィ・ラグランジュ(sf9609)P地
ラミア・ドルゲ(sg8786)P風 アメリア・ロックハート(sh1732)A水 種子島 カグヤ(sh3932)P風 酒匂 博信(sh4156)P地
オルフェオ・エゼキエーレ(si1323)P地 鷹羽 歩夢(sj1664)P水 エティエンヌ・マティユ(sj6626)E地 ジュラルディン・ブルフォード(sn9010)H風
ダニエル・マッケラン(so1035)P地 リーリヤ・パルフョーノフ(so2515)H地 マユリ・バルギース(sp0231)H火 鷺沼 妙子(sp1602)P地
羽原 春乃(sp3482)P風 マリク・マグノリア(sp3854)H水 来海 朽葉(sp4469)H水 ルナール・シュヴァリエ(sp6369)K水
アンリ・ラファイエット(sp6723)K水 オリヴィエ・ベル(sp7597)K風 鷹宮 奏一朗(sp8529)K火 セイディ・ゲランフェル(sp8658)K水
ゴスタ・ユオン(sp9246)K火 美月 はやな(sp9368)K水 千種 蜜(sp9590)K地 アンナリーナ・バーリフェルト(sp9596)K風
アリス・フリュクレフ(sq1159)K水 上随 スウソ(sq1318)K風 ヒメコ・フェリーチェ(sq1409)K風 オズウェル・クローチェ(sq1494)K水
上月 累(sq2012)K火 レイヴェンス・エーベルト(sq2046)K風 南郷 龍馬(sq3216)A風
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