デトロイト・モーター・シティ

担当マスター:赤本はる
開始12/05/25 22:00 タイプボイスドラマ オプションお任せオプション
状況 SLvB 参加/募集8/8 人
料金10000 Rex 分類事件
舞台国アメリカ 難易度普通

◆周辺地図
参加者一覧
レティシア・モローアッチ(sa0070)H水 アルベルト・ルードヴィッヒ(sa0074)E火 パク ユナ(sa0340)H火 アイン・ネーダー(sa1289)A火
柴神 壱子(sa5546)H風 ジェラール・テステュ(sa8825)E火 カスク・シュパーテン(sa9797)H水 イェルク・マイトナー(sd3107)P火
オープニング
●音遠きナイトビュー
 一定の間隔を守り、鉄槌が落ちる。それは鉄の塊を飴細工の様に歪曲させる。
 一定の間隔を守り、ベルトコンベアは動いて行く。それは歪曲した鉄を次の工程へと運んで行く。
 一定の間隔を守り、アームは鉄を掴む。それは他の歪曲した鉄と組み合わされ、自動車のドアとなる。
 ここは工場、自動車生産工場。
 各中小企業で造られた、大小様々なネジとボルトとその他パーツが集い、一定の間隔を守り、組み合わされ、やがてそれは一台の高級自動車へと変貌していく。もう、何十年も前、男の子達が憧れたアメリカのスーパーカー。

 けれど、哀しきかな、今、その一種の音楽だとも、リズムだとも、リリックだとも言えそうな、一定の間隔は乱れた。
 鉄槌は乱雑に落ち、ベルトコンベアは止まったり動いたり、早くなったり遅くなったり。アームは宙を掴み、我が身を掴んでだた空回りを繰り返す。
 それは、全く不愉快な不協和音だった。その中を、また、焦燥かられた人の足音が響いて行く。
 その手は分厚い壁へと掛けられて、ただ、困惑する。想う、この外に広がっているのであろう、デトロイトの夜景を。
 窓無き工場からそれを今、見る事は出来ない。
 ただ、外が恋しい。


●希望夢見るファクトリー
 その工場は希望だった。
 アメリカ、ミシガン州・デトロイト。アメリカ五大湖に存在する巨大都市の二つ名を、社会の授業で習わなかった者はいないだろう。
 『自動車の街』
 自動車産業で栄えた、ミシガン州随一の巨大都市。
 そして今は、アメリカ随一の犯罪都市。

 自動車産業の衰退と、人種問題、失業率の増大により、この都市のダウンタウンからは急激に人が消え失せ、過去の栄光を残し廃墟と化して行った。
 もはや自動車産業の面影は薄くなり、犯罪都市、廃墟都市として有名になっていくこの街を、都市の住人は嘆いた。
 復興の為に死力を尽くして数年、某有名自動車会社の本社がこの自動車都市デトロイトに戻って来たのは数年前の事。
 それに伴い、最新気鋭の巨大工場も新設された。デトロイト、ダウンタウンから南へ10km川沿いに設置されたこの工場の屋上からは、ダウンタウンの夜景が良く見えた。
 この工場により、デトロイトも良い方向へと向いて行くに違いない――そう人々が希望を持った時、その希望を絶望に変えんが為、という事なのか。
 悪魔の影が差した。

 度重なる機械トラブル。一定の間隔で動いて行くはずの製造ラインは乱れ、従業員達や経営者、デトロイトの住民を焦燥と不安へと掻き立てた。
 日に日に、そのトラブルは酷くなり、そして――数台の完成品自動車が姿を消した。
 試作用にガソリンも入り、試運転可能の状態だった。まさか、盗難かと皆慌てふためいたが、直ぐにそうではない事を悟る。
 従業員が、見えない何かに轢かれて飛んだのだから。


●ノンクラッシュ・エスケープ
 すぐに従業員達は避難し、地元教会からSINNが呼ばれた。
 工場の精密性や機密の為か、要請された人数は最低限のもの。現場へ急行したSINN達をすぐさま襲ったのは、鉄扉が閉まる轟音だった。
 そして、動かない。
 彼らは工場内へと閉じ込められた。
『――そこは最新の工場です。壊れれば壊れるほど、デトロイト住民への負担はどんどん増えて行くでしょう。困難だとは思いますが、速やかに元凶を排除し、そこから脱出して下さい』
 教会へ連絡を取った際の返事だった。
 決して壊さず。
 SINN達は溜息をついた。耳を劈く様な機械音に金属音の不協和音。怪音溢れるこの工場――
 何として、脱出するべきか。


◆マスターより

工場内について:自動車製造ラインと制御室、テスト用ランスペース、従業員用スペースで構成されています。
 工場は広大で、闇雲に歩くだけでは解決しないでしょう
 従業員は皆避難済みで、人は一人も居ません。

成功条件:【悪魔の殲滅及び工場から脱出】
大成功条件:【工場を破壊させない、しない】

描写・作風について:ボイスリプレイ用の為、台詞中心になります。
 その為、通常時の描写、作風とは大きく異なる可能性があります。


 そんなわけで、ボイスリプレイ原作を担当させて頂きます。赤本はるです!
 現代祓魔という事で、現代っぽく機械音溢れる工場での戦闘シナリオ。
 皆のプレイングとボイスを楽しみにしています!

 では、エンジンとモーターが溢れる自動車の街、デトロイトへといってらっしゃいませ!

■ボイスリプレイとは
 このシナリオは「おでっくす2012特別企画」の一つである、「ボイスリプレイ」です。
 予約・参加を行うには、「おでっくす2012」に来場された方に配布したステッカーの裏面に記載されたパスワードを関連付けする必要があります。
 ボイスリプレイは、ショートシナリオのリプレイに加え、STARSボイスアクターによるボイスドラマが作成されます。
 プレイングには、PCに行わせたい行動内容と共に、第三希望までのSTARSボイスアクター名、声や発音に関する補足などを記入してください。REXi.LLCの担当者が希望順に直接打診を行い、担当声優を決定します。希望クリエーターへの打診が承諾されなかった場合、希望クリエーターがいない場合は、担当者が選出します。
リプレイ
全編通して再生




オープニング


●攻撃性アーム


「わぁ!」
 ケーブルに蹴躓き、アルベルト・ルードヴィッヒ(sa0074)が悲鳴をあげた。
「大丈夫?アルベルトさん」
「そこらへん、ケーブルだらけね。なんで通路にケーブルがこんなに」
 レティシア・モローアッチ(sa0070)が考察する中、柴神 壱子(sa5546)が差し出した手を掴み、立ち上がりながら、アルベルトは弱音を吐く。
「うひ〜まだランスペースには着かないのかな‥‥もうヘロヘロ」
「頑張ってアルベルトさん!これからもっと大変だから!」
「‥‥えぇ?」
 壱子の言葉に、アルベルトは怪訝な表情を浮かべる。それに答えるが如く、轟音が通路の奥で響き渡った。
「イェルク!危ないわ、下がって!」
 音に反応し、レティシアは叫んだ。イェルク・マイトナー(sd3107)は喚くように返事をする。
「わりぃ!それにしても、ここから先はイカれてやがるぜ!」
 聞こえるのは、モーター音。その音は先ほどから巻き戻しと再生を繰り返している。
 その奥、聞こえるのは機械音。何かが振り落される衝撃、何かが軋む衝撃。好き勝手にガチャガチャと響いている。
 揃って不協和音。
 レティシアと壱子は、偵察として、それぞれパペットを行かせていた。その結果、見たものは、出鱈目に動き行方を阻む機械達。
「きめぇ。勝手に動いてやがる!」
 イェルクは思わずそう叫んだ。彼の背後に、他3人が駆け寄る。アルベルトは息を切らしながら声をかけた。
「大丈夫、かな、ひぃ、ひぃ」
「お前の方がヘバってるじゃねーか!‥何ともねぇ、ただ、あの機械、襲ってくるぜ」
「そのようね。この奥は、さらに多くの機械達が邪魔をしているわ」
「蹴っちゃダメ?」
「ダメよ」
「だよな。避けてくしかないのか」
 レティシアの忠告に、イェルクは舌打ちをした。
「楽しい障害物競走になりそうだな。アルベルト、俺の後に着いてきなよ。転ばないようにしてやる」
「ありがたいねぇ。じゃ、女性たちは自分の後ろに、エスコートして‥‥」
 と、格好良く振り返るアルベルトであったが
「イェルクさん、ゴンスケでアーム達を傷つけないようにどかせるかどうか、やってみるね」
「ケーブル回収は任せて頂戴」
「おう、頼もしいな!」
「‥‥自分は転ばないように頑張って歩こうかね。とほほい」
 肩を竦めるアルベルトであった。


●俊敏性モーターサイクル


「ヨハネ言う、「師よ、師よ、我らに従わぬ者の、御名によりて悪魔を追い出すを見しが、我らに従わぬ故に、之を止めたり」」
 勝手に動くアームの恐怖は、別働隊の四人にも。
「ルークス言い給う、「止むな、我が名の為に能力ある業を行い、にわかにわれを謀り得る者なし。我らに逆らわぬ者は、我らに膝まづく者なり」」
 いや、この制御室周辺の方がより酷い。パク ユナ(sa0340)は目の前に広がる光景を見て、舌打ちをした。
「‥‥どう?」
「この機械達自体にはキニスは感じられない。感じるのは‥‥制御室」
 ジェラール・テステュ(sa8825)は鍛えたディプレンドを用い、制御室を指差した。
 制御室は塔の様に、工場の中央に鎮座していた。その塔を囲む機械という機械が、滅茶苦茶な動きで行方を阻む。
 ユナは溜息をついた。
「まるで制御室を守る騎士のような機械達だね。この中を突っ切らなきゃいけないの?」
「憂鬱の極みだね」
 ジェラールも肩を竦めたその時、毛色の違うエンジン音が背後で唸りを挙げた。
「準備、オーケーなんだよ。にゃはは」
 くたびれた不協和音の中、そのエンジン音は小気味良い。
 カスク・シュパーテン(sa9797)がロードバイクで登場。赤い髪を掻き揚げ、大型バイクを駆る姿は様になった。
「アイン君もバイクに乗っけちゃった」
 その上、背後にはアイン・ネーダー(sa1289)を乗せていた。
「気を付けてね。アイン」
「はい、ありがとうございます」
 ジェラールの言葉に、アインは笑顔で応えた。
「本気?バイクで一気に駆け抜けるなんて」
「アームは傷つけちゃいけないっていうしね、スピード勝負で行くっきゃないっしょ」
「オーケー。あたしはパペットでアシストするよ。スピード勝負はあたしも賛成だしね」
 そう言うユナに頷いて、カスクはバイクのエンジンを吹かした。もはや、いつでも走り出せる。
「カスク様、参りましょう!」
「行くよー!」
 ロードバイクが走り出した。
 後部に座るアインはエンジェリングであり、天使の環も装備している。悪魔にとって、またとないご馳走。アームの殆どが、アインへと触手を伸ばす。
 バイクの轟音、機械の唸り声、ハンドルを切る音――
「カスク様、あそこでいいのですよね?」
「そう、計算によればだね!あの地点でサンクトゥアリィをすれば、全部巻き込めるはずなんだよっ!」
「は、はい――舌を噛みそうですが、任せてくださいっ」
 祈りを捧げるアイン。
「絡め取ってやるよ」
 ユナがワーム型のパペットを使ってアインへと伸びる機械を拘束した。
「ナイスだ、ユナ!」
 そう言って、距離を詰める為ジェラールは駆け出す。ユナもそれに続いた。
 それでも、機械達の猛攻は止まらない。アームはついにロードバイクのタイヤを捉え、破裂させた。
「うひゃあ!」
「神様、私達頑張りますので、力をお貸しください――」
 アインとカスクは宙へと放り出される。アームがアインの身を掴み、引き裂こうと力を入れる。
「アイン!」
 ジェラールが叫ぶ。
 その時、祈りは成就した。機械達は音を失くし、ただのオブジェの様に動きを止めた。
 アインとカスクは通路へと落下した。
「いてて」
「カスク様、これをお使いください」
「にゃはは、ありがと‥‥でもさ、まずは自分に使いなよ」
「そうですね」
 アインは苦笑いをして、カスクと己の身に、回復薬を使用した。
「はぁ。無事で良かった」
 ジェラールが溜息交じりに胸を撫で下ろす。カスクは後頭部を掻きながら苦笑いだ。
「にゃはは、心配かけたね、で、これからだけど」
「皆さん、サンクトゥアリィは、今使った他に、もう一度使えますが‥‥」
「つまりその間に何とかしないと、自分たちはこの位置に戻されて」
「機械達の餌食ってところだね。急ごう」
 アインとカスクの説明に、ユナがそう返して走り出す。
「ええ」
 アインも頷き、彼女達は駆け出した。


●破壊性カーズ


「はぁ、やっと着いた」
 アルベルトは息を整えた。
「酷い有様」
 壱子は辺りを見渡し、レティシアがため息をついた。
「あちこちの壁が、ボコボコになっているわ」
「あれが体当たりしたんだろうな」
 イェルクが顎で指したそこには、車が二体。
「はぁ‥二体も居るのか――わぁ!」
 アルベルトが呟いた瞬間、車は急遽ハンドルを切り、こちらへと向かい発進してきた。
 パペットを準備しながら、レティシアは叫ぶ。
「やっとホスティアが得られるって、喜んでいる様ね!」
「ゴンスケ!おいで!ほーちゃん、上へ!」
 壱子はゴンスケを近くへと呼び寄せ、梟のほーちゃんを天井高く舞い上げた。
「一体、こっちに来るよ!」
「任せろ!」
 イェルクが名乗りを上げた。
「ゴンスケをアシストに回すよ!」
「おう!来いワン公トナカイッ!」
 壱子の指令を受け、イェルクは駆け出した。
「頼むぜ!般若!レディンテグロよぉ!」
 刀構え、その顔に聖面をつけ、魔法を唱える。般若の面、鉄の塊すら切り伏せる力を与える。
「行くぜッ!!」
 イェルクは日本刀を振り上げて、突進してくる車へと相対した。凄ましいスピード。イェルクはその突進を躱し、自らの刃をそのフロントへと突き立てた。
「ぐぅッ!」
 斬鉄の恩恵を受けたとはいえ、凄い負荷だった。息を切らして、地面を踏み、振り返ってもう一度。ゴンスケが車のタイヤへと、ワイヤーソーを絡ませる。
「お願いゴンスケ!」
「良いワイヤーだワン公ッ」
 イェルクが囃し立てた途端、
「ッイェルクさん逃げてぇッ!!」
 壱子は悲鳴を上げた。何故なら、もう一台がイェルクへと向かい突進してきたから。
「――ッ!」
「イェルク!ぷてらお願い!」
 イェルクは轢かれ、車の下敷きとなった。レディンテグロで回復するといえど、すぐに治癒は無理だ。レティシアはパペットのぷてらに聖水の詰まった手榴弾を噛ませ、浮かべた。
「手榴弾のお薬よ。直接飲み込んで頂戴!」
 素早くぷてらは車の内部へと、フロントを破って入り込み、手榴弾を爆破させた。
 アクセル、猛スピードで車は動き出す。内部にいるぷてらを追い出そうと、ぐるぐると回転する。
「ぐっ‥‥!」
「イェルクさん!」
「大丈夫だ壱子‥‥よくもやりやがったな!」
 イェルクは痛む体を引き摺って吠えた。
「貴方は止まってなさい。ぷてら、フリーズパペット」
 もう一台の車が行こうとするが、車体の一部を凍らされ、動きが緩慢になった。
「ワン公ッ!そのままそいつを止めてろよ、おりゃぁッ――!」
 イェルクは駆け、車を一刀両断した。
「我もし神の指によりて、悪魔を追い出さば、神の国は既に汝らに至れるなり!」
 そして、アルベルトのプリティカにより、一台目は浄化された。
「きゃあ!こっち来ないで!」
 イェルクがもう一台を打ち取ろうというその時、車は標的をレティシアへと変えた。凍てついても元最新車、そのスピードは人を轢き飛ばすのには十分だった。
「あぶない!」
 アルベルトは叫び、レティシアを突き飛ばした。
 轟音と共に、鈍い衝撃音が辺りに響く。
「アルベルトさんッ!」
 壱子が悲鳴を上げた。
「どうしましょう――」
「女性を守るのが、男の務めってね‥‥大丈夫だよ」
 狼狽するレティシアへと、アルベルトは優しく声をかけた。
「その通り、任せとけっ――!」
 イェルクはその間に走り、車へと一撃食らわせる。攻撃を受け、車は標的をイェルクに変えたようだ。
「おりゃああああッ!」
 車とイェルクは真正面からぶつかった。無論、イェルクは吹っ飛ぶ。車のバンパーに刀を刺し。それは丁度エンジンを貫き、車は動かなくなった。
「我もし神の指によりて、悪魔を追い出さば、神の国は既に汝らに至れるなり」
 アルベルトの静かな祝詞により、車は全て浄化された。
「イェルクさん、アルベルトさん大丈夫!?」
 壱子は猪の一番に怪我人二人の心配をした。
「全然平気だぜ、これぐらい‥‥ぐえ」
 と、強がるイェルクと比べ
「腰が痛いよぉ。こりゃ走れないなぁ」
 アルベルトは正直だった。レティシアは胸を撫で下ろした。
「ま、無事で良かったわ。問題は、またあの機械だらけの道を通らないといけない事だけど」
「制御室に行った皆を信じよう」
 壱子は、遠くを見て言った。そう、制御室へと思いを馳せるかの様に。


●混乱性システム


「制御室到着ぅ!何がいるかなっと!」
 カスクは勢いよくその扉を開けた。
「わぁ!」
 そして悲鳴を上げた。無数のケーブルが襲いかかってきたからだった。
「これは‥‥プラセラントだね!コンピューターをジャックするんだよ」
「なるほど、それで機械達が暴走していたわけだ」
 階段を昇り、やってきたジェラールは納得した。背後のユナは、しれっと言う。
「燃やせば良いんでしょ?任せて頂戴」
 そして自らのパペットであるジャックを使役する。
「ジャック、行って焼き尽くしてあげな」
 ジャックはケーブルの海へと飛び込み――その身を炎で包んだ。
 無数のケーブルが蔓延るが、そのほとんどが燃えていく。
「綺麗に燃えて頂戴」
 だが燃え残った一本のケーブルが伸びてきて、ユナの腕を捉えた。
「はっ」
 一瞬、気を取られジャックの動きが止まった。その隙に押し寄せてきた新たなケーブルが、ジャックを絡め捕る。
「ジャックが」
「危ないッ!」
 ユナが思わず呟いた時、制御室からさらに眩暈がするかのような量のケーブルが溢れジェラールが悲鳴を上げた。それらは触手伸ばし、アインの方へと延びる。
「神様――!」
 アインは祈りを捧げた。その祈りは通じたのか――ケーブルはアインを捕えられない。アインの身が透き通ったからだ。
「あれは、天使の環ラミエルの幻影か!」
「その通りです。ジェラールさん‥‥」
 アインは階段を昇って現れた。
「燃やすことなら私も得意です。天使様、お願いします」
 そして腕を振りかざし、制御室へとイグニスを放った。
 ケーブルの殆どは燃え尽き、解放されたジャックが炎の影より飛び出してくる。
「まだ動いてるのかい?でもね、そろそろご退場願うよ」
 しぶとく動くプラセラントへ、ユナは皮肉げな笑みを送った。ジャックが駄目押しの一撃を喰らわせる。
「これで終わり!我もし神の指によりて、悪魔を追い出さば、神の国は既に汝らに至れるなり」
 ジェラールがプリティカを唱え、キニスの気配は消え失せた。
「終わったね」
「はぁ、よかったです」
「どれ、制御室で遊んでみようかな♪」
 ユナやアインが胸を撫で下ろす中、カスクが意気揚々と制御室に入った瞬間、結界は終了。彼女達を元の位置へと戻した。
「‥‥ありゃ」
「残念だったね、カスク」
「にゃはは。失敗失敗」
 ジェラールの言葉を受けながらも、カスクは満足そうな顔で制御室を見上げる。
「ようやく、いいメロディを奏でてくれるようになったね」
 ユナは目を閉じて、その周囲に満ちる規則正しい機械音に聞き入っていた。
 

●環光性ナイトビュー


 規則正しい機械音、それは音楽の如く。低重音はメタル音楽、落下音はテクノミュージック。
 その中を歩く足音。やがて階段を昇り、扉を押しのけて開ける。
 風が吹き込んだ。
「わぁ、綺麗です」
 アインが感嘆する。彼女の眼下には、夜景が広がっていた。
「デトロイトの夜景だね。SF映画みたいだなぁ――いてて」
「あー痛ェ。夜景で回復できねぇもんかな」
 アルベルトとイェルクは、痛む体をさすりながら、その風を身に受けた。
「そうだね。ほらあそこ、迎えの車が来ているよ。帰りにあそこに寄って帰ろうか」
「あとご飯もー!お腹減っちゃった!」
「言うと思ったわ」
 ジェラールの言葉に続いた壱子の台詞に、レティシアは呟いた。
「おいしいアメリカンご飯!ほら早く行こうー!」
 壱子ははしゃぎ、我先にと階段を駆け下りていく。
「全く、花より団子だねぇ」
「名物は何だろうな」
「男勝りな女戦士が気に入るものもきっとあるよ、にゃはは」
「やめて」
 ユナのぼやきにジェラールが答え、カスクがボケて階段を下って行った。
「ハンバーガーとか凄いもんありそう」
「自分たちは食べ物屋の前に教会だね、とほほ」
 イェルクとアルベルトも、呟きながら屋上から去って行った。
「あの輝き全部の中に人がいるのよね。このまま衰退していったらあれも消えちゃうのよね」
「それは、寂しいです」
「上手くいくといいわね、この工場」
「はい。きっとその頑張りは、神様も見ています‥‥」
 呟いて、アインは心の中で祈った。この街の未来と、安寧を。
「‥‥神様、お願いします」
 話しながら、シスターと科学者も工場の中へと消えていった。
 風の音だけが残った。

●スタッフ


レティシア・モローアッチ(sa0070):雨月れん
アルベルト・ルードヴィッヒ(sa0074):哲也
パク ユナ(sa0340):みーた
アイン・ネーダー(sa1289):沢木柚葉
柴神 壱子(sa5546):桜月 秋姫
ジェラール・テステュ(sa8825):瀬良ハルカ
カスク・シュパーテン(sa9797):瀬良ハルカ
イェルク・マイトナー(sd3107):塩人
ナレーション:鏑木はる

音楽:音楽素材/魔王魂
原作:赤本はる
編集:大田奏音(REXi)
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